慶應大学を中退して「占いアプリ」で独立した男が語る、あえて「有料アプリ」をつくるメリットと、サラリーマンがポケットマネーでアプリを公開してみた話

2017年10月16日 |
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4名の個人開発者さんを取材しました。「個人開発者特集2017」の第六回(最終回)です。

<目次>
1、慶應大を辞めて「占いアプリ」開発者になった男
2、サラリーマンが「ポケットマネー」でアプリをつくった結果
3、初めてつくった「囲碁アプリ」が7万円の広告収益に
4、父と娘で協力して「RPGアプリ」をつくった話

1、慶應大を辞めて「占いアプリ」開発者になった男


※個人開発者の安達直央人さん。

安達さんが「アプリ開発者になった経緯」を教えていただけますか?

2013年に慶應大学に入学したのですが、すぐに9ヶ月で中退してしまって、アプリ開発者として独立することにしました。

個人的には「大学で学べることって、自分でも勉強できる」と感じたので、それなら早くアプリをつくったほうがいいなと。

友達や家族からは、散々「もったいない」と言われましたが、どうしても自分のアイディアと技術で勝負したくなってしまったのです。

いまアプリはどれくらいダウンロードされていますか?

メインは「吉方位マップ 」という占いアプリで、4万ダウンロードされています。このアプリは途中から有料にしたところ収益化できました。

無料から有料にかえても、そこまでダウンロード数が変わらなくて、2/3くらいまでしか落ちなかった。なので、有料化してよかったです。

去年9月に有料化してから、累計の収益は43万円くらい。最近は月5万円くらいの平行線です。ずっとニーズが一定数あるという感じ。

ただ、時期によって変動はあります。2月の「恵方巻き」のときが一番収益がよくて。あとは、夏休み・GW・年初めもすこし伸びますね。


※運気の良い方向がわかる占いアプリ。開発期間は6ヶ月くらい。

ほかのアプリというか、アプリ全体の調子はどうですか。

7つのアプリをだしていて、累計だと74,000ダウンロードという状況です。ゲームアプリもつくったのですが、そっちは散々でした…。

ゲームは大赤字ですね。半年かけてつくったのですが、ダウンロードもされないし、収益もあがっていません。酷い目にあいました。笑

なので、いまは九星気学のアプリに集中して、アップデートを繰り返しているところです。

いまはどうやって生活しているんですか?

一昨年までは実家にいたので、そのときの貯金をつかいつつ、なんとか生活しています。ただ、そこまで悲観的にはなっていません。

「吉方位マップ」のアプリは、アンインストールしている人が半分くらい、残りの半分のユーザーはずっとつかい続けてくれています。

確実に「ユーザーの需要」はあると思うし、Android版も開発しているので、なんとかなるかなと。

アプリ開発もたのしんでいます。つくるのがたのしいのが第一、自分のアイディアが形になるのが第二、ユーザーが喜んでくれるのもうれしいです。

これからアプリつくる人に「自身の経験」からアドバイスをするとしたら?

個人なら「有料アプリ」もアリじゃないかと感じています。企業の参入もすくないですし、ちゃんとつくれば収益にもつながるので。

もはや、無料アプリだと「大企業の広告合戦」になっていて、逆に埋もれてしまうと思うんですね。

それにくらべて、有料ってランキングも入りやすくて、ランキングの順位もキープしやすいので、目立ちやすいのではないかなと。

実際に「吉方位マップ」も、ずっと有料150位くらいに定着しています。なので、個人的には有料アプリの開発はオススメしたいですね。

吉方位マップ(iOS

2、広告会社のサラリーマンが「ポケットマネー」でアプリを公開してみた結果


※個人開発者の坂本達夫さん、昼間はアプリの広告会社で働いている。

坂本さんのつくったアプリを教えてください。

今年の7月に「漫画ウォッチャー」というアプリをリリースしました。

これは、マンガ雑誌が「休刊」になったときや、祝日などで「いつもと違う曜日」に発売されるときに、お知らせしてくれるアプリです。

昔から「こういうアプリあったら良さそう」とは思っていて。ずっと、その気持ちにフタをしてたんですけど…ついに止められなくなってしまって

プレスリリースはFacebookで「400いいね」もついたのですが、ダウンロード数は全然だめです。目指せ累計100ダウンロードです。

アプリをつくるときに「考えたこと」って何かありますか。

はじめは「個人か、法人か」というのを考えました。フェイスブックで「メリット、デメリットおしえて」って周りに聞いてみたりもして。

結果としては、個人のデメリットは「無視できる範囲」だったので、個人にすることにしました。


※坂本さんが「周りに聞いてみた意見」をまとめたもの

法人も考えていたんですね、ほかにはありますか?

あと、どうアプリを開発するのか。僕はコードがかけないんですよね。独学というのも考えたのですけど、やはり時間もかかってしまいます。

それで最終的には、フリーランスエンジニアの「ティーテック」さんという方が、とても良い条件でつくってくれることになってお願いしました。

僕はサラリーマンですし、まとまったお金もなかったので助かりました。

アプリをだしてみて「わかったこと」って何かありますか。

まず、やっぱりアプリを出しただけだと、こんなにダウンロードされないんだなと痛感しましたね。

本業でアプリ広告の仕事をしていて、正直「100ダウンロードしかないアプリ」に対して、積極的に営業なんて行かないわけですよ。

でも、実際にアプリを出してみたら、「いやいや、それでもすげえことだよな」と思えるようになった。

なるほど。

あとは「広告を入れること」を含めて、アプリの修正って思ったより大変なんだな、と考えを改めました。

本職のアプリ広告の仕事のとき、アプリ開発者の人に「広告を入れてください、収益も上がります、実装も簡単です」というじゃないですか。

でも、いざ自分が言われる立場になると、「めんどうだな」とか「その開発リソースがあるなら、他の改善に使いたいな」という感覚になった。

言うほうは簡単にいうけど。笑

別に、広告をいれても「収益が上がる」のが保証されるわけじゃない。実装コストもかかるわけですし。そういう「言われる側の感覚」がわかるようになった。

これからまた「漫画ウォッチャー」はアップデートもしていくんですか?

そうですね。バージョン2では、マガジンで「はじめの一歩が休載です」とか、作品ごとの休載などを教えてくれるような機能をつけたい。

バージョン3では、ユーザーのフォローデータをもとに、たくさんある「漫画アプリ」のなかから、好みの作品をみつけられるようにしたい。

漫画アプリって、ダウンロードしただけだと継続しないんだけど、「お気に入り作品」がみつかることで、圧倒的に継続率があがるんですよ。

なので、漫画アプリのダウンロードにもつながるし、質の高いユーザーを送客できるはずだと。

なるほど、それはたのしみですね。

でも、もうお金なくなっちゃったんですよ。「いいお金のつかい方をしたな」とは思いますけど。笑

いまは、またサラリーマンとして頑張っていきながら、ちょっとずつお金を貯めていって、アプリを良くしていきたいなと思っているところです。

なので、もし一緒に手伝ってくれる方がいらっしゃったら、声かけてもらえるとうれしいですね。

漫画ウォッチャー(iOS/Android

3、初めてつくった「囲碁アプリ」が7万円の収益に


※個人開発者の神宮司さん(22歳)パソコンを教えるバイトをしながらアプリ開発している。

神宮司さんがつくったアプリを教えてください。

囲碁アプリをつくりました。これがはじめてつくったアプリです。グーグル先生に教えてもらいながら、プログラミングを勉強しました。

僕は6歳のころから15年ほど囲碁をやっていて。毎日一局は囲碁をうたないと死んでしまう、それくらい囲碁が好きだったんです。

あるとき、友達に「囲碁のアプリつくってよ」と冗談で言われたのがキッカケで、アプリを本気でつくりはじめることにしました。

アプリができるまでは、どれくらいかかりましたか?

完成までは1年かかりました。1日に平日は6時間、休日は10時間くらい、開発をしていました。

ようやく完成にたどり着いて、ストアへの「公開ボタン」を押すときには、なぜか涙がでてきましたね。

いままで頑張ったことを思い出したのもあるし、やっとここまできたかって。うれし涙なんですかね。いま思い出しても涙が出そうです。

いま「ダウンロード数」はどれくらいになってますか?

リリース3ヶ月で、5,890ダウンロードされました。1,000いけば良いかなと思っていたので、個人的には満足の結果です。広告収益も7万円に届いています

囲碁の問題アプリって、そこまで多くなくて。全部で10こくらいしかないんですよ。そういうのがうまくいった要因だったかもしれない。

効果音は「気持ちいい音」になるようこだわりました。実際に碁盤にうった音を録音して。いい音になるまで何度もやり直しました。


※2017年8月末時点での数字。

初めてアプリをつくってみてどうでしたか。

本気でつくって良かったと思います。ずっと「アイディアはあるけど技術力はない」のままだと、結局なにもつくれないじゃないですか。

自分で考えて自分で行動する。そういうクリエイティブなことは好きですし、アプリ開発はすごくたのしいですね。

詰碁の森(iOS/Android

4、父と娘で協力して「RPGアプリ」をつくった話


※SevenStudioの若松慎一郎さん(と娘さん) WEB制作会社で働きながら、個人アプリをつくっている

代表作の「みんなクエスト」について教えてください。

娘が描いた絵やフォントをつかって、親子でつくったロールプレイングゲームです。

もともとは、当時5〜6歳だった娘が、絵を描くのが大好きで、自作の絵本を描いていたんです。絵も落書きみたいだったし、字も下手くそだったんですけど。笑

でも、設定とかを聞いていると、意外としっかりしていて。それで、これゲームにしたらおもしろいんじゃないか、と思って出来たアプリです。


※開発期間は、「1」は1年くらい、「2」は1年半くらい。なお、今年中に「みんなクエスト1&2」(リミックス版)を無料で公開予定とのこと。

アプリに入っている「子供ならではの発想」って何かありますか?

ひとつ、おもしろいのは「トイレシステム」ですかね。

このシステムは「いまこんな感じでつくってるよ」と娘に画面をみせたところ、「なんで家の中にトイレがないの?」と言われたのがキッカケで誕生しました。笑

「1と2」で大きく変わったところはどこですか。

フォントは大きく変わりましたね。実は1から2を出すまでに、娘の字がものすごく上手になっちゃって。学校の硬筆書写でも「賞」をもらってくるくらいに。

それで、子供らしくない字になっちゃったんですけど、本人は「上手な字を見てもらいたい」ということで、フォントをつくりなおしました。

いま「ダウンロード数や収益」はどれくらいですか?

1のほうは9,500ダウンロード(ほぼ無料セール)で、2のほうは520ダウンロードです。最近は月に計10本くらい売れているので、月1,000円程度の収益にはなっていますね。

これが本業ではないので、別に儲からなくても良いんですけど、もっとたくさんの人にあそんでもらいたいな、という気持ちはありますね。

親子でアプリをつくってみてどうでしたか。

僕も良い経験になったし、子供に「一緒に何かをつくる楽しみ」とか「モノづくりって大変だよ」という経験をさせてあげられたのは良かった。

いまでも娘は、友達と漫画を描いたりしていますね。最近は「おそ松さん」を描いたり、ちょっとオタクっぽくはなってきてますけど。笑

みんなクエスト2(iOS

開発者さんのツイッター

安達直央人さん(@naotoada
坂本達夫さん(@tatsuosakamoto
神宮司さん(@oubeika11
若松慎一郎さん(@wa3

個人開発者特集2017

【第一回】草野球ゲームで収益300万円。「チケットと対人戦」を入れて収益を上げるコツ
【第二回】女子高生が開発した勉強アプリと、収益120万円「zipアプリ」のチャットサポート
【第三回】1本で300万円稼げたガラケーアプリと、まりもアプリが今でも収益化できてる理由
【第四回】会社を解雇されアプリで独立したが、月収は195円のアプリ開発者の日常
【第五回】月10万円を稼ぐ「既読回避アプリ」と、個人で80アプリつくった開発者の話

【お知らせ】アプリの取材については「取材申請」のページから受付しています!

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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