2名の個人開発者さんを取材しました。「個人開発者特集2017」の第五回です。
<目次>
・月々10万円を安定して稼ぐ「既読回避アプリ」開発者が語るユーザーデータ
・個人で80アプリを公開する「元バンドマン開発者」の乱打型アプリ開発術
1、月々10万円を安定して稼ぐ「既読回避アプリ」開発者が語るユーザーデータ
※個人開発者の西原さん。昼間は大手ネット企業でエンジニアとして働いている。
西原さんが「つくっているアプリ」について教えてください。
LINEのメッセージなどに「既読」をつけずに読める、「のぞきみ」というアプリをつくっています。
もともと、これは「勉強目的」でつくりはじめたアプリです。平日に1〜2時間ずつ進めていって、1〜2ヶ月かけて完成させました。
アイコンも自分でつくったんですよ。ただ、デザインのセンスも技術もなかったので、Keynoteをつかって記号を組み合わせて、それっぽくしました。笑
※他SNSのメッセージも読めるが、利用率で見るとLINEが99%。
どうして「のぞきみ」をつくろうと思ったんですか。
Androidには「通知領域から情報をとってくる」という仕組みがあるのですが、それをつかって「なにが出来るかな」と考えていました。
そのうち、「LINEのメッセージ」を取得できることに気付いて。それなら「既読」をつけずに読めるアプリをつくってみようと。
ためしに、GooglePlayで検索してみたら、似たようなアプリもいくつかあって。意外とダウンロード数も大きかったので、需要はあるんだろうと判断しました。
いまアプリの「ダウンロード数」などはどれくらいですか?
リリース7ヶ月で、10万ダウンロードされています。経路としては「ストア検索」を中心に、1日に700〜800ダウンロードずつ増えています。
ユーザーの、男女比はほぼ半々くらい(男性48:女性52)、年齢層としては「若い女性」と「年配の男性」の比率が高いですね。
アプリがつかわれているのは、夕方から夜にかけての「夜の時間帯」です。新規ダウンロードも夜になると伸びてくる傾向があります。
アプリの収益としてはどんな感じですか?
安定して「月10万円くらい」の収益にはなっています。収益モデルについては広告で、ほぼバナー広告から収益があがっています。
もともと「お小遣いになればラッキー」くらいのつもりでしたが、思っていたよりは収益的にもうまくいったのかなと感じます。
このアプリは、30日後の継続率も40%くらいあって。初期の離脱さえ乗り越えられれば、長くつかってもらいやすいジャンルなのかもしれません。
アプリの運営で「うまくいっていること」は何かありますか?
わりと「レビューを集める施策」はうまくいっています、アプリの評価も730件ついていますね。
具体的には「アプリをよく使ってくれている人」に絞って、「アプリを気に入っていますか?」という質問から、レビューをお願いするようにしています。
条件としては、「メッセージを何通受信した」とか「利用開始から何日以上」というところで、セグメント分けしています。
かなり「レビュー返信」も熱心にされていますよね。
レビュー返信については、時間があるときに返しています。レビューを返信したら「評価を上げてくれた人」の割合がすこし多くなりました。
あと、「この機能をつけてほしい」というレビューには、その機能を実装したときに「できましたよ」と返信してあげると、星5にしてもらえたこともあります。
それから、アップデートのコメントに「花粉症の治療はじめました」とか遊び心を入れておくと、それにレビューで反応してくれる人もいますよ。
開発者の西原さんのツイッター
アプリの評価を高くするために実践しているたった3つの事 – masaibarの雑記 https://t.co/9Lcm3r9LQ8
— masaibar (@masaibar) June 19, 2017
のぞきみ(Andorid)
2、個人で80アプリを公開する「元バンドマン開発者」の乱打型アプリ開発術
※個人開発者のTecco 西本誠さん(会社で働きながら、個人でアプリを開発している)
アプリ開発は「どういう経緯」ではじめたんですか?
もともと、アプリ開発は「おもしろそうだな」と趣味感覚ではじめました。それから、ずっと会社で働きながら、個人でアプリをつくっています。
4年くらい前は、大手のカメラメーカーで働いていました。2016年にSupershipに入社したことをきっかけに、エンジニアとして働きはじめました。
アプリは80本だしていて、累計50万ダウンロードされています。昔から、バンドをずっとやっていたくらいで、もともと創作活動は好きなんです。
※個人で80アプリを公開(とくに、この1年半で50本くらい出したそう)
80本のなかで「一番収益化できているアプリ」はどれですか?
Amazonで「割引検索」ができるアプリですね。このアプリは、25万ダウンロードされているのですが、すごくインド人につかわれていて。
とくに、ここ半年でみると「インド人が80%を占める」というほどになっています。
なぜか公開して1年半たってから、いきなりインドで火がついて、そこからインド人が毎日200人ほど、入ってくるようになりました。
このアプリは、Amazonのストアにも出していますが、感覚的なユーザー規模はGooglePlayの1/6くらい。思ったよりはダウンロードされています。
※ダウンロード数は「インド、アメリカ、日本」の順に多い。
このアプリの「収益モデル」はどうなっているんですか。
収益については「広告モデル」ですね、Amazonのアフィリエイトは入れられないみたいで…。
ちなみに、インド人って広告をめちゃくちゃ押してくれるんですよ、クリック率も3%ほどあって。ただ、広告単価が低いからあまり儲からない。笑
クリック単価でいうと、アメリカだと1クリックで30〜40円くらいですけど、インドだと1クリック1円にもならないくらいです。
しかも、インド人ってアプリをすぐ消しちゃうんです。そういうところは、ちょっとマネタイズしにくいところではあるかもしれませんね。
ほかに「インドユーザーの特徴」ってなにかありますか。
インドのユーザーはみんな優しいですね。インド人はレビューでも「よかったよ、最高!」って、すぐに星5をつけてくれます。笑
よく、モハメドさんとかアハマドさんとかから、褒めてもらえるようなレビューがついています。
それに比べて、日本のユーザーは厳しいですね。ある意味「贅沢」に慣れてしまっていて、少しでも気に入らないとケチをつけてしまう傾向がある。
このアプリの評価も、全体だと星3.7くらいなんですけど、日本だと星3ギリギリくらいです。
それ以外のアプリも収益化できていますか。
ほかには、「赤ちゃんの泣き止む音」を出すアプリとか、「赤ちゃんの名前」をレコメンドしてくれるアプリも、わりと収益になっていますね。
もちろん、稼げていないアプリも多いのですが、アプリ全体でみると「ほぼ寝ていても生きていけるくらい」は、月の収益があがっています。
おもしろいのは、一番開発の手間がかかっていない、ボタンを押したら「ピンポーン」と鳴るだけのアプリが、月5,000円程の収益になっていて。
そういう、良くも悪くも「努力と成果が結びつかない」みたいなことが、アプリではよく起こりますね。
※「居酒屋のピンポン」は8,000ダウンロード
それくらい収益があると「アプリで独立しよう」とはならないんですか?
もちろん、考えてはいるんですけど、それよりも僕は会社って「勉強する場所」だなと思っていて。
とくにSupershipに入ってよかったのが、周りに教えてもらったり教え合ったりして、ものすごく自分の技術が磨かれたことなんです。
たとえば、以前は1日かかっていたことが、1時間でできるようになったり。そのおかげもあって、アプリもたくさん出すことができた。
会社は「お金をもらいながら勉強できる」という場所で、そこで得た知識を「個人の活動にもいかす」というサイクルが出来ているというか。
なので、会社で働くのも続けていきたいなって、思っているんですよね。
おもしろいですね。
いま、スタートアップの仕事も、個人で4〜5社のお手伝いをしているのですが、それも「リモートOK」の仕事ばかりなので、いつどこでやってもいいわけです。
そういう感じで、わりと自由に仕事をしています。
アプリ開発で「意識していること」があれば教えてください。
自分のスタイルは「思いついたら形にする」というものです。リリースしないと気が済まないタイプなので、動くならリリースしてしまう。
人からは「アイディアマン」と言われるのですが、どちらかというと自信がないんです。数を打っていかないと当たらないなと思っている。
逆にいうと、あまり期待していないんですね。期待しちゃうと疲れちゃうから。10個だして1個くらい当たればいいかなと。
なるほど。
意識しているのは「検索流入」くらいです。さっきのアプリでいうと「Amazon 割引」で検索するひとがいるだろう、と思いながらつくる。
あと、アプリの言語は基本的に「日本語と英語」に対応しています。Amazonの割引アプリだけは、13ヶ国語に対応しました。
ただ翻訳ってめんどうなので、なるべく言葉はアイコンに置き換えています。そういう「工数をかけないようにする工夫」は意外と重要かもしれません。
開発者の西本さんのツイッター
(アプリを楽しくつくっているのが伝わってきます)
今朝またアプリを思いついて1時間でリリースなうしてしまった。
これで82本目か。
100本いきそうだな。。。— Tecco ⚔ 超高校級の暇人 (@tecco_master) May 29, 2017
なんか好きなことをやろう!ってことにフォーカスされがちだけど、それと同じくらい嫌いなことやらない!ってのが割と大事だと思うんだ
好きなことをやろう!って論じている人はすでに嫌いなことやってないと思うし— Tecco ⚔ 超高校級の暇人 (@tecco_master) July 22, 2017
4つのプロジェクトを行き来しながらやってて脳みそ活性化しすぎて疲れた。
でも10時間続けても全く疲れないくらいに楽しい。
自分の作りたいもの作ってるときがやっぱ最強なんだなと再認識。— Tecco ⚔ 超高校級の暇人 (@tecco_master) July 30, 2017
Amazon割引ショッピングアプリ(iOS/Android)
個人開発者特集2017
【第一回】草野球ゲームで収益300万円。「チケットと対人戦」を入れて収益を上げるコツ
【第二回】女子高生が開発した勉強アプリと、収益120万円「zipアプリ」のチャットサポート
【第三回】1本で300万円稼げたガラケーアプリと、まりもアプリが今でも収益化できてる理由
【第四回】会社を解雇されアプリで独立したが、月収は195円のアプリ開発者の日常
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