女子高生が開発した「負のSNSスパイラル」から抜ける勉強アプリの話と、広告収益120万円の「zipアプリ」開発者が語る、チャットサポート3つのメリット

2017年09月12日 |
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2名の個人アプリ開発者を取材しました。(「個人開発者特集2017」の第二回です)

<目次>
・女子高生アプリ開発者(当時)が、対スマホ兵器の「勉強アプリ」をつくった理由。
・収益120万円の「zipアプリ」開発者が語る、チャットサポート導入3つのメリット。

1、女子高生アプリ開発者(当時)が、対スマホ兵器の「勉強アプリ」をつくった理由


※大学生アプリ開発者の羽柴彩月さん、慶應大学2年。

羽柴さんが「つくっているアプリ」について教えてください。

高校1年のときにアプリ開発をはじめて、高校2年になって「STUGUIN」という、中高生のための勉強支援アプリをリリースしました。

最初は、わたしも「アプリなんて全然つくれないかな…」と思っていたんですけど、意外とつくれてしまいました。開発期間は半年くらいでした。

いま、累計だと13万ダウンロードされています。まさか、こんなに多くの人につかってもらえるなんて、ほんとうにうれしい気持ちです。


※アプリのデザインなども含めて、基本的にすべて一人でつくったそう。

アプリ開発はどうやって勉強したんですか?

iOSアプリは「Life is Tech!」という、プログラミングが学べるキャンプで教わりました。Androidのほうは、本を買って勉強しました。

プログラミングキャンプは、わたしがパソコンのネットサーフィンが好きだったのをみて、父が「これ、興味あるんじゃない?」と薦めてくれたんです。

それで、なんとなく「プログラミングが出来たらかっこいいな」というイメージもあったので、行ってみようかなと思いました。

どうして「勉強支援アプリ」をつくろうと思ったんですか?

あの、高校生になってスマホを買ってもらったら、勉強に集中できなくなってしまったんです…。

たしかに、SNSって便利で楽しいのですが、気になってしょうがないんですよね。

LINEとかツイッターを、無限にグルグルと巡回してしまったり。ずっと「負のSNSスパイラル」から抜けられなくなるというか。

それで、そういう「スマホのせいで、勉強に集中できない」のは深刻な問題だなと考えて、「STUGUIN」をつくることにしました。

どういう仕組みで「勉強に集中できる」ようになっているのでしょう。

ひとつは、勉強時間を計測するための「タイマー」が付いているのですが、これはアプリが閉じると計測が止まるようになっていて。

たとえば、ユーチューブとかって、アプリを閉じると動画が止まっちゃいますよね。それって「意外と抑止力になっているな」と思うんですね。

それを「STUGUIN」にも応用して、ほかのアプリに移動すると、タイマーが止まるようにしました。

タイマーが止まることで、「LINEみるのやめなきゃ」と思うきっかけにもなるし、勉強の集中にもつなげられるんじゃないかと。

タイマーを止めたときに「ツイートボタン」がでてくるのはなぜですか?

ツイッターに「これだけ勉強した!」とつぶやくことで、自分のモチベーションにもなるし、周りの人にも「がんばっているな」と思ってもらえるから。

ツイッターで「勉強アカ」をつくる人もいるので、そういう「勉強しよう」という人たちの間で、広まりやすくなるだろうと考えました。

なるほど、おもしろいですね。

あとは、友達に「勉強してる?」と呼びかけるボタンもつけていて、それを送り合うことで「勉強しよう」という空気をつくれるようにしてます。

ほかには、「ライバル機能」というのもあって、ライバルとして登録した友達が「勉強タイマー」で計測を開始すると、通知がくるようにもしました。

勉強した時間を「グラフ化」もしてくれるんですよね。

そうですね。グラフをみることで「数学ばかりで国語が足りてない」と気付けたり、頭のいい友達が「どういう勉強をしているのか」わかったりします。

今後の新機能としては、志望校を登録してもらって、志望校別の「勉強時間ランキング」をだしたら、盛り上がりそうだなとも考えています。

これまで「ダウンロード数が大きく伸びた」タイミングってありますか?

テレビや新聞で取り上げられたこともあるのですが、なんだかんだ「ツイッターで拡散されたとき」が、一番ダウンロードが伸びました

ホテル経営している女子大生社長と、ミス東大の女子大生の子にも、ツイートを拡散してもらえたときは、一気に数千ダウンロードも増えました。

そうなったのは、「勉強に興味ある学生」がフォロワーに多かったから、だったのかなと思います。

収益はどうやってあげているんですか?

収益はないんですよ。バイト代で運営しています。サーバー代とかドメイン代とか、月に数千円ではありますけど。だから赤字なんです。笑

でも、いまのところ「マネタイズ」を行うつもりもなくって…。

広告はダサくて貼りたくないし、有料化するとサービス開発に全力を捧げないとならなくて、大学の研究やインターンができなくなるから。

ちょうど今年の夏から、サイバーエージェントでインターンも、はじめようとしているところなんです。

「ユーザーサポート」なども一人でやっているのでしょうか。

はい。ユーザーサポートは「LINE@」でやっています。送られてきた問い合わせに「1対1」で返す分には、「LINE@」が無料でつかえるので。

最初はメールでやっていましたが、中高生にとってはLINEのほうが送りやすいだろうと、「LINE@」を開設することにしました。

そしたら、ほとんどの問い合わせが、LINEになりましたね。メールとは比較にならないくらいに。

羽柴さんからみて、もっと大学生は「アプリつくったほうがいい」と感じますか。

アプリの開発に興味があるなら、つくったほうがいいと思います。でも「就職に役立ちそう」みたいな理由だと、むずかしいんじゃないかなと感じます。

というのも、知り合いに頼まれて開発を教えても、わりと「わかんない、むずかしい」みたいになって、すぐやめてしまうんですよ…。

なので、結局は「自分の得意なこと」で、がんばったほうがいいのかなって。

たとえば、デザインが好きなひとなら、Illustratorを本当に楽しそうにさわるし、そういう感じで時間をつかったほうが、有意義だと思っています。

開発者の羽柴さんのツイッター

(機械学習を勉強したり、カンファレンスに出たり、大学生というよりエンジニアアカ)

STUGUIN(iOS/Android

2、収益120万円の「zipアプリ」開発者が語る、チャットサポート導入3つのメリット


※個人開発者の田畑浩平さん。昼間は「合同会社サイブスタジオ」という開発会社でエンジニアをしている

田畑さんが「つくっているアプリ」について教えてください。

zipファイルが開ける「quick-zip plus」というアプリをつくっています。もともとは「自分がほしいから」という理由でつくったアプリです。

自分は「プログラミングが趣味」という人間なんです。土日にコードかいていても苦にならないし、ひたすらレゴをやっている感覚というか。

だから、個人でのアプリ開発は、やっていて本当に楽しいですね。

アプリの「ダウンロード数」などはどれくらいですか?

2015年10月にリリースして、累計21万ダウンロードです。いまもストア検索などから「1日に約500ダウンロードずつ」増えていっています。

アプリの収益のほうは、月5万円〜10万円くらいになっていて、累計だと120万円になりました。

収益については「開発環境を整えること」ばかりに使っていますね。自分の部屋に「PCデスク・チェアー・ディスプレー」を置いたりです。


※2015年10月リリース。zipファイルが開けるアプリ(広告収益モデル)

「zipアプリ」ってたくさんありそうですが、そこまで「競合アプリ」って多くないんですか。

たしかに、世界にはこういうアプリがたくさんあります。ただ「日本語に対応してる」というだけで、日本では有利になれるんですよね。

日本人って「英語が苦手バイアス」が強いのだろうなと思います。競合アプリをみていると「英語だから★1」というレビューもざらについていますから。

だから「quick-zip plus」でも、英語にも対応はしているのですが、95%は日本のユーザーになっていますね。

アプリの運営で「うまくいったこと」があれば教えてください。

アプリに「チャットサポート」を入れたことです。これは「本当にメリットがあるな」と感じました。

ひとつ大きいのは、チャットに「嫌なこと」を吐き出してくれるので、レビューがあまり荒れないこと。

とくに「つかえない、クソアプリ」みたいな、ただ感情を吐き出したいだけの、あまり問題の解決を求めていない人を誘導できています。

あと、ユーザーが「何を求めているのか」わかるのもメリットです。チャットだとアプリ内から連絡できるので、問い合わせのハードルも下がります。

ちなみに、チャットの実装は「Helpshift」というサービスが便利です。月に5,000円くらいかかりますけど、入れる価値は全然あるなと思っています。

なるほど。

また、併せてポップアップをつかって「レビューのお願い」をするのも有効かなと思っています。

まず、「アプリに満足していますか?」と聞いてみて、満足していたら「レビューのお願い」をして、そうじゃなかったら「フィードバックください」と誘導する。

実際に、チャットとレビュー施策のおかげで、アプリの評価も「★4.4」と良い状態にキープできています。

レビュー関係で「気をつけたほうがいいこと」は何かありますか。

iOSアプリをアップデートして、レビューがリセットされると、ダウンロード数が落ちてしまうのは、気をつけたほうがいいかもしれません。

ユーザーからすると、レビューが「アップデートでゼロになった」のか、まだ新規アプリで「レビューがついていない」のか、見分けがつかないんですよね。

実際、以前にアップデートしたときに、レビュー数がゼロになった影響で、1日のダウンロード数が1/3くらいまで落ちてしまったことがありました。

※1日のDL数が、300〜400DL→100DLに落ちた(バグの影響もあったそうだが)

アプリの運営で「失敗したこと」があれば教えてください。

zipを解凍したあとの「ファイルの表示画面」に広告を入れたら、ユーザーに邪魔だと言われた上に、全然儲からなかったこと。笑

結局、そこの広告を外してしまっても、ほとんど収益が変わらなくって。なので、本当にまったく良いことがなかったんですよね…。

これは、やっぱり「ユーザーの目的」が決まってしまってから、そこに広告をだしてしまうと、邪魔にしかならないということですよね。

逆に、ユーザーが「何をしようかな」と回遊している状態なら、広告もみてもらいやすいのだと思います。

これから「アプリをつくる人」にアドバイスするとしたら?

自分の生活のなかで「困っていること」を洗い出して、それを解決するようなアプリをつくってみると、いいのではないかなと思います。

そうすることで、少なくとも「自分がユーザー」という状態になるので、つかう人の気持ちにも寄り添いやすくなるからです。

それと、まずリスクを取らずに「小さくつくる」のがいいと思います。いきなり、SNSみたいな「大きすぎるもの」をつくらないほうがいい。

zipアプリも、小さくつくっています。運営コストも、月1〜2万円(GitHubなど各種サービス)しかかかっていません。

開発者の田畑さんのツイッター

(最近は、アプリストア文言を中国語にローカライズしたら、上手くいったそうです)

quick-zip plus(iOS

個人開発者特集2017

【第一回】草野球ゲームで収益300万円。アプリに「チケットと対人戦」を入れて安定収益を上げるコツ

【お知らせ】アプリの取材については「取材申請」のページから受付しています!

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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