「ブラック労働からのうつ病」で会社を解雇され、アプリで独立したが月収195円。ギリギリのアプリ開発者が語った「敗北者の遺言」と残金67,000円の通帳

2017年09月26日 |
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会社を解雇されてアプリ開発で独立したという、個人開発者さんを取材しました。「個人開発者特集2017」の第四回です。


※個人アプリ開発者 魅了屋 平井博康さん

簡単に自己紹介をお願いします。

2016年の1月から、個人のアプリ開発者として活動している、魅了屋の平井(32歳)といいます。

もともとは、工場のシステムなどをつくっている会社で、エンジニアとして働いていました。やることがとにかく多くて忙しい会社でした。

そのうち、激務だったこともあって、うつ病になってしまって…。何度か「休職と復職」を繰り返したあとに、会社を解雇されてしまいました

会社側としても「これ以上は、めんどうみきれない」ということになったようで、退職勧告を受けた後に解雇という形になりました。

そうだったんですか…。

でも、辞められて良かったです。体調がわるくて「半日休ませてください」というと、上司から烈火のごとく怒られるような環境だったので。

いまも2週間に1回のペースで、心療内科に通院しています。抗うつ剤と睡眠薬をもらって。症状はかなり軽くなっているんですけど。

そこから、どうして「アプリ開発者」になったんですか?

まず、会社を解雇されてから、1年ほど転職活動をしたんですよ。でも、それが全く上手くいかなかった。

転職サイトに登録して、履歴書を送ると返事がこないんです。いい返事はもちろん「お祈りメール」すら来ませんでした。せめて祈ってほしかったですよ。笑

そういう時期に、アプリ開発者のイベント(あぷまがないと)に参加して、「自分もアプリつくりたい」という気持ちになったのもあって。

それで、アプリで独立してみようと。会社を辞めるよりも「開業届け」を出すほうがずっと簡単でしたね。


※2016年1月に個人で独立した。

独立してみて「アプリの収益」のほうはどうですか?

3つアプリをつくって、収益は3,700円くらい。月収だと195円ですか。独立して1年半ほど経ちましたが、いまのところ全然儲かっていません。

広告会社の、最低振り込み金額も「5,000円〜」なんです。なので、まだそこまで届いていなくて、お金が振り込まれてさえもいない。笑

たとえば「どんなアプリ」をつくっているんですか?

たとえば「Blowser」というアプリをつくりました。これは「息でスクロールできる」というブラウザアプリなんですけど。

これをつかえば、寝ているときにでも、手をつかわずにネットが見られます。眼鏡屋のおっちゃんに見せたら、ものすごく驚かれました。

でも、結果は473ダウンロードしかされず、広告収益も500円しか稼げていません。「これはいける」という感覚はあったんですけどね…。


※Blowser(iOS

他にはどんなアプリがありますか。

最近は「PastimeHint」というアプリを出しました。

これは、気分が落ちているときに、「キュウリをかじろう」とか「お茶をいれて飲もう」とか、気晴らしの方法を教えてくれるアプリです。

ちなみに、提案をずっと拒否していると、最後は「とっとと寝ろ」みたいに出て終わります。笑

これは、19ダウンロード(有料240円)されていて、アップルの手数料を引くと、3,000円くらいの収益になりました。

Android版もあって、5人が買ってくれました。でも、5人全員が返金を求めて「払い戻し」になった。有効インストール0。悲しいアプリです。


※PastimeHint(iOS/Android

独立してから「失敗したな」と思うことってありますか。

独立1年目に、事務所を借りたのは失敗しました。戸越公園という駅の近くに、月38,000円の安いところを借りたんですけど。

事務所をかりたのは「自分を追い込むため」でした。制限をかけることで「自分を追い込んだほうがやる気になる」って言うじゃないですか。

芸人さんが借金をして自分を追い込んだり。でも、それを真似したら見事に失敗した。もう、ただ追い込まれただけだった。笑

独立資金も、自分で130万円用意してたのですが、事務所やパソコンにつかってしまって、残金も67,000円まで減ってしまいました。

いまは、コワーキングスペース(月8,000円)をかりて、作業をつづけています。

お金のほうは大丈夫なんですか?

もう、お金ないんですよ。なので、バイトしようと思っていて。このまえも、近くのスタバのバイトを受けたんですけど…面接で落ちてしまいました

スタバって、若い大学生とかが多いので、若い人たちの話に聞き耳たてて、アプリのアイディアに活用できないかなと思ったんですけど。

それを、面接のときに正直に言ったのが、あまりよくなかったのかな…。スタバは自信あったのですが、倍率も高かったんでしょうね…。

いまは、また別のバイトを探そうかなと思っています。バイトをやりつつアプリをつくるのが、いまの自分には合っていると思うので。

いまはどうやって生活してるんですか?

いまは、実家暮らしなので。なんとか生き残れています。実家では慎重に暮らしています。親にイヤな顔をされないように

たとえば、風呂が汚れてれば掃除しますし、食器たまってれば食器も洗います。そんな感じで、率先して顔を売りながら生活していますね。

ぼーっとテレビで野球みてるように見せかけて、親父の晩酌セット(ビールと柿ピー)だけは、さりげなくスッと用意しておいたり。

そういうのが、実家で生き残るための秘訣なのかな、って思ってます。

毎日「どういう生活サイクル」なんですか。

まず、朝5時くらいにおきて、5時半にシュッと朝ごはん食べちゃって。そのあと、7時にスタバ入りしてから、9時からコワーキングスペースで作業をします。

それで、16時くらいまで仕事をして、家に帰って家事をやって、21時には寝てしまいます。

あの、夜は働けないんですよ。うつ病になったときに「暗い夜道」を帰っていたのを思い出すと、精神的によくないというのがあって。

アプリ開発はたのしいですか?

もちろん、たのしいですよ。アプリが完成した快感はすさまじいです。

いまは、自分のアイディアが「どれだけ世の中に通用するか」挑戦している感覚です。勝手に挑戦状を叩きつけて、叩き返されてるんですけど。笑

結果が出なくて「いやになる瞬間」は、いくらでもあります。でも、前に進むしかないかなって。

なんだかんだ、前向きですね。

なんでしょう…これは「自分の選んだ道」ですから。

今回の「アプリで独立する」という選択は、自分の人生で「はっきりと唯一」といっていいくらい、自分で選んだ道なんですよね。

いままでは、なんとなく大学までいって、みんなに合わせて漠然と就職して、わりと大きな会社に就職できて良かったねって人生だった。

でも、うつ病になったときに考えたんです。人生において、自分で「これでよし」と決断したことが、これまで一回もなかったなって。

それじゃあ、自分で決めたことをやり通すために決意をしようと。

実家にいる母親にも「個人で独立します」と宣言をして。そうしたら、自分の人生で「一歩を踏み出せたな」という実感がありました。

どうせ自分の人生なんて、誰も責任とってくれないんだから。ちょっと好き勝手やったっていいじゃない。いまはそういう気持ちです。

これから「アプリで独立する人」にアドバイスを送るとしたら?

まずは段階を踏みなさい。アプリで独立したいなら、何かしらのアプリをだしてみて、手応えをみながら進めなさい。そう言いますかね。

あとは、とにかく「開発のクセ」をつけなさい。毎日、1行でも1文字でもいいから、ちょっとでもコードを書くクセをつけたほうがいい。

それから「くよくよしないこと」も大事。アプリ開発って技術があればいいわけじゃないから。モチベーションが続かなければ意味がないんです。

まあ、これは遺言ですね。すでに敗北感が漂っている、自分からの遺言です。

開発者の平井さんのツイッター

(アプリはつまらないかもしれないが、自虐ネタは結構おもしろい)

個人開発者特集2017

【第一回】草野球ゲームで収益300万円。「チケットと対人戦」を入れて収益を上げるコツ
【第二回】女子高生が開発した勉強アプリと、収益120万円「zipアプリ」のチャットサポート
【第三回】1本で300万円稼げたガラケーアプリと、まりもアプリが今でも収益化できてる理由

【お知らせ】アプリの取材については「取材申請」のページから受付しています!

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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