2名の個人アプリ開発者を取材しました。(「個人開発者特集2017」の第二回です)
<目次>
・女子高生アプリ開発者(当時)が、対スマホ兵器の「勉強アプリ」をつくった理由。
・収益120万円の「zipアプリ」開発者が語る、チャットサポート導入3つのメリット。
1、女子高生アプリ開発者(当時)が、対スマホ兵器の「勉強アプリ」をつくった理由
※大学生アプリ開発者の羽柴彩月さん、慶應大学2年。
羽柴さんが「つくっているアプリ」について教えてください。
高校1年のときにアプリ開発をはじめて、高校2年になって「STUGUIN」という、中高生のための勉強支援アプリをリリースしました。
最初は、わたしも「アプリなんて全然つくれないかな…」と思っていたんですけど、意外とつくれてしまいました。開発期間は半年くらいでした。
いま、累計だと13万ダウンロードされています。まさか、こんなに多くの人につかってもらえるなんて、ほんとうにうれしい気持ちです。
※アプリのデザインなども含めて、基本的にすべて一人でつくったそう。
アプリ開発はどうやって勉強したんですか?
iOSアプリは「Life is Tech!」という、プログラミングが学べるキャンプで教わりました。Androidのほうは、本を買って勉強しました。
プログラミングキャンプは、わたしがパソコンのネットサーフィンが好きだったのをみて、父が「これ、興味あるんじゃない?」と薦めてくれたんです。
それで、なんとなく「プログラミングが出来たらかっこいいな」というイメージもあったので、行ってみようかなと思いました。
どうして「勉強支援アプリ」をつくろうと思ったんですか?
あの、高校生になってスマホを買ってもらったら、勉強に集中できなくなってしまったんです…。
たしかに、SNSって便利で楽しいのですが、気になってしょうがないんですよね。
LINEとかツイッターを、無限にグルグルと巡回してしまったり。ずっと「負のSNSスパイラル」から抜けられなくなるというか。
それで、そういう「スマホのせいで、勉強に集中できない」のは深刻な問題だなと考えて、「STUGUIN」をつくることにしました。
どういう仕組みで「勉強に集中できる」ようになっているのでしょう。
ひとつは、勉強時間を計測するための「タイマー」が付いているのですが、これはアプリが閉じると計測が止まるようになっていて。
たとえば、ユーチューブとかって、アプリを閉じると動画が止まっちゃいますよね。それって「意外と抑止力になっているな」と思うんですね。
それを「STUGUIN」にも応用して、ほかのアプリに移動すると、タイマーが止まるようにしました。
タイマーが止まることで、「LINEみるのやめなきゃ」と思うきっかけにもなるし、勉強の集中にもつなげられるんじゃないかと。
タイマーを止めたときに「ツイートボタン」がでてくるのはなぜですか?
ツイッターに「これだけ勉強した!」とつぶやくことで、自分のモチベーションにもなるし、周りの人にも「がんばっているな」と思ってもらえるから。
ツイッターで「勉強アカ」をつくる人もいるので、そういう「勉強しよう」という人たちの間で、広まりやすくなるだろうと考えました。
なるほど、おもしろいですね。
あとは、友達に「勉強してる?」と呼びかけるボタンもつけていて、それを送り合うことで「勉強しよう」という空気をつくれるようにしてます。
ほかには、「ライバル機能」というのもあって、ライバルとして登録した友達が「勉強タイマー」で計測を開始すると、通知がくるようにもしました。
勉強した時間を「グラフ化」もしてくれるんですよね。
そうですね。グラフをみることで「数学ばかりで国語が足りてない」と気付けたり、頭のいい友達が「どういう勉強をしているのか」わかったりします。
今後の新機能としては、志望校を登録してもらって、志望校別の「勉強時間ランキング」をだしたら、盛り上がりそうだなとも考えています。
これまで「ダウンロード数が大きく伸びた」タイミングってありますか?
テレビや新聞で取り上げられたこともあるのですが、なんだかんだ「ツイッターで拡散されたとき」が、一番ダウンロードが伸びました。
ホテル経営している女子大生社長と、ミス東大の女子大生の子にも、ツイートを拡散してもらえたときは、一気に数千ダウンロードも増えました。
そうなったのは、「勉強に興味ある学生」がフォロワーに多かったから、だったのかなと思います。
わたしが作ったiPhoneアプリ「STUGUIN(スタグイン)」がついにリリースされました!学生のための勉強サポートアプリです!ぜひダウンロードしてください!#STUGUINhttps://t.co/RA6VMfAAfd pic.twitter.com/ash9GvRUmX
— Satsuki Hashiba (@shiba1014_) January 17, 2015
・勉強時間を計測して可視化
・勉強時間計測中はSNSをいじれない
・友達の勉強記録がみれる
・友達に『STUDY?』とだけメッセージを送れる
・友達をライバル設定すると相手が勉強を始めた時に通知がくる
・綺麗なUI/UX
・アプリリリース当時女子高生すごいアプリだ・・・ https://t.co/Wy8Qjp0UxA
— 龍崎翔子 (@shokoryuzaki) 2017年3月24日
https://twitter.com/misstodai16_2/status/845823377176604672
収益はどうやってあげているんですか?
収益はないんですよ。バイト代で運営しています。サーバー代とかドメイン代とか、月に数千円ではありますけど。だから赤字なんです。笑
でも、いまのところ「マネタイズ」を行うつもりもなくって…。
広告はダサくて貼りたくないし、有料化するとサービス開発に全力を捧げないとならなくて、大学の研究やインターンができなくなるから。
ちょうど今年の夏から、サイバーエージェントでインターンも、はじめようとしているところなんです。
「ユーザーサポート」なども一人でやっているのでしょうか。
はい。ユーザーサポートは「LINE@」でやっています。送られてきた問い合わせに「1対1」で返す分には、「LINE@」が無料でつかえるので。
最初はメールでやっていましたが、中高生にとってはLINEのほうが送りやすいだろうと、「LINE@」を開設することにしました。
そしたら、ほとんどの問い合わせが、LINEになりましたね。メールとは比較にならないくらいに。
羽柴さんからみて、もっと大学生は「アプリつくったほうがいい」と感じますか。
アプリの開発に興味があるなら、つくったほうがいいと思います。でも「就職に役立ちそう」みたいな理由だと、むずかしいんじゃないかなと感じます。
というのも、知り合いに頼まれて開発を教えても、わりと「わかんない、むずかしい」みたいになって、すぐやめてしまうんですよ…。
なので、結局は「自分の得意なこと」で、がんばったほうがいいのかなって。
たとえば、デザインが好きなひとなら、Illustratorを本当に楽しそうにさわるし、そういう感じで時間をつかったほうが、有意義だと思っています。
開発者の羽柴さんのツイッター
(機械学習を勉強したり、カンファレンスに出たり、大学生というよりエンジニアアカ)
はじめての機会学習に成功した。。。感動して泣きそう
— Satsuki Hashiba (@shiba1014_) July 25, 2016
スタッフ以外でTシャツ着てるのわたしたちしかいない🤔 #tryswiftconf pic.twitter.com/CvF7vPOIRY
— Satsuki Hashiba (@shiba1014_) March 2, 2017
2、収益120万円の「zipアプリ」開発者が語る、チャットサポート導入3つのメリット
※個人開発者の田畑浩平さん。昼間は「合同会社サイブスタジオ」という開発会社でエンジニアをしている
田畑さんが「つくっているアプリ」について教えてください。
zipファイルが開ける「quick-zip plus」というアプリをつくっています。もともとは「自分がほしいから」という理由でつくったアプリです。
自分は「プログラミングが趣味」という人間なんです。土日にコードかいていても苦にならないし、ひたすらレゴをやっている感覚というか。
だから、個人でのアプリ開発は、やっていて本当に楽しいですね。
アプリの「ダウンロード数」などはどれくらいですか?
2015年10月にリリースして、累計21万ダウンロードです。いまもストア検索などから「1日に約500ダウンロードずつ」増えていっています。
アプリの収益のほうは、月5万円〜10万円くらいになっていて、累計だと120万円になりました。
収益については「開発環境を整えること」ばかりに使っていますね。自分の部屋に「PCデスク・チェアー・ディスプレー」を置いたりです。
※2015年10月リリース。zipファイルが開けるアプリ(広告収益モデル)
「zipアプリ」ってたくさんありそうですが、そこまで「競合アプリ」って多くないんですか。
たしかに、世界にはこういうアプリがたくさんあります。ただ「日本語に対応してる」というだけで、日本では有利になれるんですよね。
日本人って「英語が苦手バイアス」が強いのだろうなと思います。競合アプリをみていると「英語だから★1」というレビューもざらについていますから。
だから「quick-zip plus」でも、英語にも対応はしているのですが、95%は日本のユーザーになっていますね。
アプリの運営で「うまくいったこと」があれば教えてください。
アプリに「チャットサポート」を入れたことです。これは「本当にメリットがあるな」と感じました。
ひとつ大きいのは、チャットに「嫌なこと」を吐き出してくれるので、レビューがあまり荒れないこと。
とくに「つかえない、クソアプリ」みたいな、ただ感情を吐き出したいだけの、あまり問題の解決を求めていない人を誘導できています。
あと、ユーザーが「何を求めているのか」わかるのもメリットです。チャットだとアプリ内から連絡できるので、問い合わせのハードルも下がります。
ちなみに、チャットの実装は「Helpshift」というサービスが便利です。月に5,000円くらいかかりますけど、入れる価値は全然あるなと思っています。
なるほど。
また、併せてポップアップをつかって「レビューのお願い」をするのも有効かなと思っています。
まず、「アプリに満足していますか?」と聞いてみて、満足していたら「レビューのお願い」をして、そうじゃなかったら「フィードバックください」と誘導する。
実際に、チャットとレビュー施策のおかげで、アプリの評価も「★4.4」と良い状態にキープできています。
レビュー関係で「気をつけたほうがいいこと」は何かありますか。
iOSアプリをアップデートして、レビューがリセットされると、ダウンロード数が落ちてしまうのは、気をつけたほうがいいかもしれません。
ユーザーからすると、レビューが「アップデートでゼロになった」のか、まだ新規アプリで「レビューがついていない」のか、見分けがつかないんですよね。
実際、以前にアップデートしたときに、レビュー数がゼロになった影響で、1日のダウンロード数が1/3くらいまで落ちてしまったことがありました。
※1日のDL数が、300〜400DL→100DLに落ちた(バグの影響もあったそうだが)
アプリの運営で「失敗したこと」があれば教えてください。
zipを解凍したあとの「ファイルの表示画面」に広告を入れたら、ユーザーに邪魔だと言われた上に、全然儲からなかったこと。笑
結局、そこの広告を外してしまっても、ほとんど収益が変わらなくって。なので、本当にまったく良いことがなかったんですよね…。
これは、やっぱり「ユーザーの目的」が決まってしまってから、そこに広告をだしてしまうと、邪魔にしかならないということですよね。
逆に、ユーザーが「何をしようかな」と回遊している状態なら、広告もみてもらいやすいのだと思います。
これから「アプリをつくる人」にアドバイスするとしたら?
自分の生活のなかで「困っていること」を洗い出して、それを解決するようなアプリをつくってみると、いいのではないかなと思います。
そうすることで、少なくとも「自分がユーザー」という状態になるので、つかう人の気持ちにも寄り添いやすくなるからです。
それと、まずリスクを取らずに「小さくつくる」のがいいと思います。いきなり、SNSみたいな「大きすぎるもの」をつくらないほうがいい。
zipアプリも、小さくつくっています。運営コストも、月1〜2万円(GitHubなど各種サービス)しかかかっていません。
開発者の田畑さんのツイッター
(最近は、アプリストア文言を中国語にローカライズしたら、上手くいったそうです)
quick-zip plusについて、うめのんブログを参考にApp Store文言だけローカライズ。https://t.co/Pm454h8uY0
gengoで中国語(簡体字、繁体字)、韓国語、スペイン語、ブラジルポルトガル語、インドネシア語に発注中。
— 田畑 浩平@HOKUTO (@nerd0geek1) August 20, 2017
先日行ったApp Store上でのローカライズ、中国人の釣れっぷりがすごい。
パイの大きさか、キーワードが良かったのか、日本人同様母国語の選好が強いのかわからんけど、1桁だったダウンロード数がすぐに2桁後半に。
アプリの簡体字対応は優先度高めで決定。
他の言語はさほど変わらず。— 田畑 浩平@HOKUTO (@nerd0geek1) August 24, 2017
quick-zip plus(iOS)
個人開発者特集2017
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