「キモカワおじさんアプリが10代女子に大ヒット」250万ダウンロードのおじさん収集ゲーム「みつけて!おじぽっくる」が女子高生にクチコミされた理由。

2014年11月20日 |
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「みつけて!おじぽっくる」、脱出ゲーム「CUBIC ROOM」などをつくっている個人アプリ開発者、「Appliss」の貝森さんのインタビューの後編です。

【前編】はこちら。
「プログラミング未経験、貯金100万円で独立」脱出ゲーム「CUBIC ROOM」を生んだアプリ職人のこだわり。

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※Applissの貝森さん。

「おじぽっくる」ができるまで。

もともと、「おじぽっくる」はどのように企画ができたんですか。

貝森:
構想をつくったのは1年半前なんです。元々は妻の「ちっさいおっさん」というアイディアでした。それを聞いて「あ、これは引きがあるだろうな」って可能性を感じたんですよね。

ところが、キャラとゲームをつくってみたところ、しっくりこなかった。

え、しっくりこなかったんですか?

貝森:
はい。それで一度、客観的に判断しようと思って、半年企画を寝かせておくことにしたんです。客観的にみるには、時間をおいて脳の記憶をリセットする必要がある。

「自分の作品」に対しては盲目になってしまうけど、「他人の作品」にはいろいろダメなところが言えるのはそのせいですよね。

半年後みなおしてみたら、どうでしたか?

貝森:
「このままだとダメだ」とはっきりわかりました、半年間おいてみてよかったですね。笑

具体的には、まずゲームとして「動き」がなくてつまらなかった。当初「ウォーリーを探せ」みたいな2Dゲームとしてつくっていたのですが、3Dでつくりなおしました。

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けっこうガラッとつくりかえたんですね。

貝森:
そうですね、この時「ゲームの面白さの軸」を変えたのが一番大きかったと思います。

つまり3Dにすることで「おじぽっくるを見つける面白さ」じゃなくて、「おじぽっくるの動きを見る面白さ」に変更しました。

キャラデザインも変えたのでしょうか?

貝森:
キャラデザインも再度つくり直しました。「おっさんをキモかわいくする」というバランスがうまくいっていなかったので、スラムダンクの安西先生やマリオを参考に、頭身も変更しました。

ただ36種類いる全キャラをデザインしていると時間がかかるので、ベースの部分だけ統一してあとは装飾で変化をつけることにしました。

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なるほど、スラムダンクの安西先生ってキモくないですもんね。

貝森:
そうなんですよ、タプタプしててかわいい。ああいうのが多分女性に受け容れられるんじゃないかなと思って参考にしたんです。

まずはいいところを取り入れて、オリジナルコンテンツに昇華させていくのは、積極的にやるようにしています。有名な話でいうと、手塚治虫先生も初期の絵柄はディズニーに影響をうけていたそうですね。

「時間をおいて寝かせてみる」というのはよくやるんでしょうか?

貝森:
そうですね、やっぱり企画時に「これは面白い!」と思っても、実際つくると大したことないということが経験上よくあります。

なので、僕は頭の中のイメージよりも150%ぐらい面白くなるまではリリースしないと決めています。

9月の新学期と同時に火がついた。

いま「おじぽっくる」のダウンロード数はどのぐらいなんでしょうか?

貝森:
「みつけて!おじぽっくる」のダウンロード数は約250万ダウンロード(iOS170万で、Android80万)です。まだ伸び続けてはいますが、もうピークは過ぎたんじゃないかなとは思っています。

ビジネスモデルはどんな感じでしょうか?

貝森:
90%以上が広告収益です、課金収益の比率はiOSが3%、Androidは8%くらい。学生ユーザーが多いせいか課金率は高くないですね。

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「おじぽっくる」をだした当時の手応えはどうでしたか?

貝森:
初めは低空飛行でした、最初の2週間くらいは数万ダウンロード程度だったんです。「半年も開発に時間をかけてこれか・・・」と引退も脳裏によぎったくらいでした。笑

開発者仲間に「これは口コミで絶対ヒットする」と勇気づけられたりしつつ待っていたら、9月に入り学校が始まった途端、一気にランキングが伸びました。「夏休みは学生のクチコミが発生しない」ということなのでしょうね。

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※9月に入った瞬間、クチコミでランキングが急上昇。学生のクチコミがきっかけとしか考えられない。(データはAppAnnieより)

となると、高校生ユーザーが多いんですか?

貝森:
Twitterで見ている限りは、10代の女の子が圧倒的に多いです。

例えば、女子高生ひとりに流行るとその仲間内のグループに広まって、そこから部活とかのグループに広がっていくという感じなのだと思います。

「コレクションを早く集めた方が勝ち」みたいに競い合ってる人も結構いました。

ダウンロードが大きく伸びたタイミングはありましたか?

貝森:
テレビ番組(ZIP!、ズムサタ)に取り上げて頂いていたときですね。

ZIP!さんの時は「今流行りのアプリを街で探す」みたいなコーナーで、女子高生が「おじぽっくるにはまっています」ってコメントしてくれた

「おじぽっくる」が映ったのはたった5秒間ぐらいでしたが、3万ダウンロード(iOS)も増えました。ズムサタのときは1分ほどで5万ダウンロード(iOS)ぐらいでしたね。

海外からのダウンロードはありますか?

貝森:
台湾、香港ぐらいですね。ローカライズはしていなくて、チュートリアルなんかほぼ日本語なのに。

台湾はやっぱ日本文化が好きだからでしょうね、ただ他の地域はさっぱりです。

クチコミでバズった2つの理由。

どうして、ここまでクチコミでバズったんでしょうか?

貝森:
うまく拡散されるきっかけになった要素が2つあるかなと考えています。

ひとつが「コレクション要素」です。「出現するおじぽっくるの順番」は人によってバラバラに出るように調整していたんです。

すると友だちと見比べた時に、「え、私それ出てないんだけど」という感じで共有したくなる。

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※画像:@an_n_1019さんのTwitterより。

なるほど、もうひとつは何でしょうか?

貝森:
もうひとつは「写真の共有機能」(スクリーンショット)ですね。

おじぽっくるの場合、アングルを自由に動かせるので、人によって撮れる写真が違います。「こんな面白い写真撮れたよ」と共有が楽しくなるのも大きかったと思います。

あと、「3Dのバグ」もわざと残したのも良かったです。例えば、おじぽっくるが床にめり込んだりして、ハプニングが起きると笑いを誘ったりするので。

10代の女性をターゲットにするにあたり気をつけたことは?

貝森:
「親近感」「操作性」「掴みの5分」の3つです。

まず「親近感」は、ゲーム内の部屋を「一般的な1K」の間取りにして、あたかも自分の部屋におじぽっくるが出現してるような感覚になりやすいようにしました。Twitterでも「うちの間取りに似てる!」とつぶやいてくれている人もいましたね。

「操作性」は、「指1本で自由に動けるか」を必須条件でつくりました。両手が必要な操作にしてしまうと、電車内で「ゲームやってます」って感じが出て、女性からすると恥ずかしいだろうなと思って。

最後に「掴みの5分」というのは、「最初の5分でサクサクと進むようにしよう」ということです。スマホのゲームって最初の5分のテンポが悪いと間違いなく飽きちゃうので。

その他いろいろ聞いてみた。

今リリース時に戻れるとしたら、何を変えたいですか。

貝森:
「動画の撮影機能」をつけてみたいです。というのも実は、Twitterで「つまんないけどハマる」っていう意見が多かった。笑

「つまんないけどハマるってなんだ?」と考えてみたのですが、たぶん「おじぽっくる」はゲームとしてよりも「動きのかわいさ」が受けているってことだと思うんですね。

ペットみたいな感じですかね。

貝森:
そう。例えば、子犬や赤ちゃんを見てると、動きが読めなくて面白いし可愛いじゃないですか。

おじぽっくるもそういう「動きが癒される」的なところが受けたんだと思う。そこに動画をいれたらどうなるかが気になります。

「おじぽっくる」という名前にした理由はあるんでしょうか?

貝森:
検索しやすい名前にしました。「ちっちゃいおっさん」「小さいおっさん」だと他のWEBサイトがたくさんヒットしてしまうんですよね。固有名詞を考える時は、事前に検索して見てみるようにしています。

既にクリアしちゃってる人もいますが、「おじぽっくる」はアップデートの予定はありますか?

貝森:
アップデートで何かを追加してもすぐにクリアしてしまうでしょうし、エンドレスな内容にしたところで飽きられて終わるのは嫌だなと思っていて。

続編はつくらずに「おじぽっくる」というキャラだけ引き継いで、違うゲームをつくろうと考えています。

「飽きられて終わるのは嫌」というセリフは、ジャンプの漫画家とかもよく言う気がします。

貝森:
クリエイターとしては、「良い思い出」のうちに終わって欲しいんですよね。なので元々サクサクとクリアできるようにつくっていました。

「おじぽっくる」に対するリアクションでおもしろかったことはありますか?

貝森:
「電車内でおじさんを見るとおじぽっくるだと思っちゃう」っていう意見があった。笑

おじさんって一般的には「ちょっと気持ち悪い」とか言われちゃうけど、おじぽっくるの影響で「あのおじさんカワイイ」に変わるのはおもしろいなあと思いました。

あと、ケーキ屋さんがオーダーメイドされて作ったと思われる「おじぽっくるケーキ」の画像をTwitterで見つけた時は、嬉しかったですね。

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画像:@boston_clr25さんのTwitterより。

「おじぽっくる」のTwitterの公式アカウントすごいですね、18,000フォロワーもいる。

貝森:
アプリ内のテレビ画面にTwitterアカウントを映してるのですが、そこからフォロワーがどんどん増えました。

たまに「現実世界におじぽっくるを潜ませた画像」をつくってツイートすると、皆すごくリツイートして拡散してくれます。

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※ゲーム内のテレビ画面でTwitterアカウントを紹介している。

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※上記のような写真が、毎回数百リツートされている。女子高生のTwitterパワースゴイ。画像は「みつけて!おじぽっくる」公式アカウントより。

個人のアプリ開発は楽しいですか?

貝森:
楽しいですね。いまや個人で世界に発信できる時代なので、良くも悪くも今までの常識が通用しないところが楽しいですね。

あと、会社員時代に比べて通勤がなくなったのがほんと嬉しいです。満員電車ってストレスも溜まるし、エネルギーの消耗が激しいじゃないですか。

毎日1-2時間も時間が奪われてしまいますし、ある意味もったいないと思います。

最後に、告知などがあればどうぞ。

貝森:
もし「おじぽっくる」をグッズ化してくれる会社さんがいらっしゃれば、ご連絡いただけたら嬉しいです。ユーザーからも「グッズ化しないの?」って問い合わせがすごい来ているんです。

贅沢をいうと、特に「ガチャポン」はずっと抱いていた夢なので、ぜひ挑戦してみたい。他にも「おじぽっくる」とのコラボなどもお話がありましたらお声がけいただければ嬉しいです。

取材協力:Appliss

みつけて!おじぽっくる(Appliss WEBサイトへ
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編集後記

話を聞いてみて偶然のヒットではないということがわかる。当初のゲームやキャラクターデザインを、半年寝かせてみた結果ガラっと変えてしまった話もおもしろいですね。こだわりのレベルが違います。

【前編】はこちら。
「プログラミング未経験、貯金100万円で独立」脱出ゲーム「CUBIC ROOM」を生んだアプリ職人のこだわり。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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