ポストに「刺さって届く箱」が体験を改善。お花サブスク「ブルーミー」会員10万世帯までの成長の裏側。広告効率2〜3倍になった戦略PRと説明コスト理論。

2022年12月08日 |
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※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2022年9月28日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/ndabfde9bb772

お花のサブスクの「ブルーミー」さんを取材しました。


※ユーザーライク株式会社 取締役 CMO 戸口 興さん

「ブルーミー」について教えてください。

戸口:
いろいろなお花がポストに届く「お花の定期便」です。2016年にサービスを開始していて、会員数としては10万世帯を突破しています。

僕らは、日常の中での楽しさやワクワク感やプレゼント感のようなユーザー体験を大切にしていて、お花はその一つの手段として捉えています。

お花屋さんにいくのが大変、どのお花を買えばいいかわからないといった、物理的なハードル・心理的なハードルを下げる設計にすることで、お花を飾る習慣のなかった方が、ユーザーさんの約80%を占めています。

ポストに「刺さって届く箱」がユーザー体験を改善

ブルーミーが「急成長できた要因」を教えてください。

戸口:
やはり、サービスのど真ん中って「品質」だと思うんですよ。そこを突き詰めてずっと改善してきたことが、大きかったかなと思います。

例えば、ユーザーさんにお届けする箱も、何世代にも渡って改良していて、箱の強度などをずっと調整しているんですよね。

一番よかったのは、ポストから少しはみ出て「半投函される箱」を採用したことでした。これもポストへの投函として認められていて、日本で唯一ポストに刺さって届くサービスになっています。

この形状にすると、強度が上がってお花が潰れにくくなったり、大きなお花を入れられるので、品質が上がって解約率の改善につながりました。

また、刺さったときに目立つので、マンションのポストに刺さっているのを見かけると「こう届くんだ!」とサービスの理解になるんですよ。

つまり、真剣な「検討フェーズ」の手前にいる人が見たときに、商品の理解が進むことで購入意欲が上がるんですよね。

当初は、ポストに全部入れる箱の形状で、お花が潰れてしまうこともあったのですが、この「半投函」という形にしたことで、改善されました。

箱で工夫した点は、ベリベリと開けられるようにしたこと。この設計は「何が入っているのかな?」という、ワクワク感を引き立たせます。

なぜなら、多くの人の記憶の中には、子どもの頃にプレゼントをもらったときに、ワクワクしながら箱を開けた思い出が、残っているからです。

マーケティングの歴史で、先人がつくってきた「イメージの資源」をいかに活用するかという発想も、スタートアップにとっては重要なんです。

ユーザーインタビューで顧客の解像度を高めるコツ

ユーザーインタビューに力を入れているそうですが、インタビューで「意識していること」はありますか?

戸口:
ユーザーインタビューでは、ブルーミーをつかってくれた「キッカケや背景」を理解することを意識していますね。人って背景があって、キッカケがあって、行動するものじゃないですか。

つまり、背景やキッカケがあって、はじめて態度変容が起きるんですよね。そこの「トリガーが何だったのか」をよく聞こうと。

例えば、家族構成が変わったことをキッカケに、自分の生き方をそこから新しくしようと思って「ブルーミーをはじめた」という方がいました。

背景を聞いてわかったのは、その人は花を嗜好品と捉えていて、生活の中で良い花を飾れている自分は「素敵な女性である」と考えていたんです。

つまり「花のある暮らし」を継続することには、その人にとって「素敵な女性として生きること」を続ける、という強い意味があったんですよね。

だから「花が定期的に届くこと」にも意味があって、スーパーで買うよりは割高になっても、ブルーミーをつかってくれたと。

このように、ただ「花が買いたい人」よりは、その先のユーザー体験として「継続する意味」を持つ人のほうが、長く継続しやすいとも考えていて。

そこの意味づけは、ひとりひとりバラバラで、こうと言い切れないですが、モノの先にあるユーザー体験まで、つながっているかが大事だなと。

ユーザーインタビューは、ずっと全社的にやっていて。プロダクトもマーケチームも僕もやっていて、会社のカルチャーのど真ん中にあります。

毎月1回アルバイトさんも含めて全社で集まって、ユーザーインタビュー結果を共有して、みんなでデイスカッションもしています。

サービスが成長すると、ユーザーさんから「ユーザー数」になりがちです。でも本当は10万人とかじゃなくて「ひとりひとりの人間」じゃないですか。そうなってしまうのが嫌で、こういうことを続けていますね。

複利で効くのは「どこをみて仕事をするのか」が明確になること。チームの指標や自分の成果もあるけど、僕ら誰のために仕事してるんだっけ?と。

これは企業としての「OSづくり」みたいなもので、何をやるにしてもベースの考え方として機能するものだなと感じます。

ブルーミーで「大事にしている指標」はありますか?

戸口:
よく見ているのは、FVR(フラワー・バリエーション・レート)で、これは色んな花や色味をいかにマッチングできるか、という指標です。

実際に、FVRを高めて「色んなお花を届ける」ほうが、継続意向が高くなり退会率が低くなることが、データとしてわかっているんですよ。

FVRって「給食の献立」にも近いと思います。わかめご飯がめっちゃ楽しみなのって、わかめご飯がたまに出てくるからですよね。

でも「人気があるから」と言って、わかめご飯ばかり出すと満足度が落ちてしまう。同じ商品でも喜びが最大化される順番や頻度がある。

もしくは、Spotifyなどのレコメンド機能にも近いと思います。いろんな曲が聞けて、その人にとって出会いや発見があるから楽しいわけですよね。

こうした感性のサイエンスを、在庫やオペレーションのところから、体験や感覚を起点にずっと試行錯誤しています。

困っている花屋さんを助ける企画からサービス急成長

ブルーミーの運営で「ここは転換点だった」と思うことがあれば教えてください。

戸口:
SNSで見かけた「世の中の課題」から、自社で企画を実施したところから、サービスが急成長したことがあって。

2020年に緊急事態宣言で季節イベントが中止になり、ツイッターで花屋さんが「お花が余って困っている」と声を上げていたんですね。

それを社員が見つけてきて「何ができないかな?」と。それで実施したのが花屋さんからお花を1万本買い取って、無料で配るという企画でした。

次の日に、リリースを打つと反響がものすごくて。並行して「この活動をぜひ広めてください!」と、インフルエンサーさんにも声をかけました。

するとSNSでめっちゃ話題になって、テレビ番組から取材もたくさん来て、世の中ですごく話題にしてもらった。その瞬間に、デジタルマーケティングの投資を意図的に強化したんですよね。

検証しつつ広告をたくさん出した。すると、通常時に比べると2~3倍の効率で集客することができました。つまり、広告コストも安くなったし、登録してくれるユーザー数もめっちゃ伸びた。

なぜかというと「話題になっている瞬間」って、ブルーミーというサービスについて説明するコストが、めっちゃ減ってる状態なんですよね。なので、そのタイミングで広告を打つと効率がよくなったと。

その急成長によって、サービスのフェーズが一段上がって、大型の資金調達にもつながって、テレビCMや品質にさらなる投資もできました。

これは戦略PRともいうのですけど、運もあってバコンとハマったんですね。なかなか設計してもハマらないのですけど。

当時はポジティブな話題が少なかったんですよ。会社が倒産したりイベントの中止が重なっていた時期に、少しでも明るくなれるような話題を提供できたのも、よかったのかなと思います。

基本ムーンショットはないけど、ムーンショットって必ずある。年に1回ほどチャンスがあって。常に嗅覚を磨いていないと見つけられないなと。


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【取材協力】
ユーザーライク株式会社:https://userlike.jp/
ブルーミー:https://bloomeelife.com/
CMOの戸口さん:@ko_toguchi

【告知】ユーザーライクさんでは、各職種で採用も強化中。エンジニアやマーケターなど募集しているそう。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。
https://userlike.jp/recruit/

※続きのマニアックな事例は5つほど、note購読者向けにまとめています。ユーザーインタビューのコツ、テレビCM実施のポイント、獲得数がすごく伸びた「広告クリエイティブ」の話、などご興味あればご覧ください。
https://markelabo.com/n/ndabfde9bb772

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