撮影組数は約10万組。出張撮影サービス「ラブグラフ」が成長した理由。カップルから家族向けに転換して依頼が3倍。非合理な決定が「選ばれる理由」につながる話。

2024年02月12日 |
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※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2023年11月29日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/n00bc1fe562fd

出張撮影の「ラブグラフ」さんを取材しました。

株式会社ラブグラフ 代表取締役CEO 駒下 純兵さん、CCO 村田 あつみさん

「ラブグラフ」について教えてください。

何度も見返したくなる写真を撮影する「出張撮影サービス」です。2014年にスタートして、累計の撮影組数としては約10万組となっています。

撮影ジャンルは「家族」が半分以上を占めています。最近伸びているのは「プロフィール写真」で、これは2年で3倍に依頼数が伸びています。

例えば、カッチリ撮った写真よりも、自然に撮った写真のほうがマッチ率が高いという理由で、マッチングアプリに使われる方も多いようです。

ラブグラフはどのように立ち上がったのか。

駒下:
もともと、僕は学生カメラマンとして活動していて、全国のカップルを趣味で撮影していました。

2014年に、撮影したカップル写真を載せた「ラブグラフ」というフォトサイトを公開したところ、これが話題になって初日に3万PVほどを集めました。

これはどちらかというと、ただの写真集的なサイトで、そこに「撮影依頼」というページをつけて、依頼が来たら撮影をしていましたね。

ただ、当時住んでいた大阪から、全国を回ってカップルの写真を撮ろうとすると、交通費や移動時間が結構かかってしまいます。

そこで、これは「現地のカメラマン」と「現地のお客さん」をつないだほうがいいのではと、カメラマンを募集すると、全国のカメラマンが手を挙げてくれて。これが本当のラブグラフのスタートになりました。

なので、ビジネスモデルとか事業計画は何もなくて。カメラマンがただ好きで活動していたところからはじまりましたね。

初期はお金ももらっていなくて。「価値を感じた分だけ払ってください」というお気持ち制からはじめて、徐々に有料化していきました。

そこから1年後くらいに、全国から依頼も増えたし、大きい会社との取引も増えてきたということで、法人化したのが2015年でした。

村田:
初期に成功したのは、写真の左下に「ラブグラフ」とロゴを入れたことで、そこから認知が高まるサイクルをつくれたのは良かったです。

SNSに写真を載せるときに「ラブグラフで撮ったよ」と言及してくれる方もいたのですけど、ポンと写真だけを載せている方も多かった。

そういう投稿でも「ラブグラフの写真なんだ」と伝わるようにしたことで、サービスが広がりました。

カップルから「家族向け」にフォーカスしたら依頼数が3倍に急成長したワケ。

駒下:
ターニングポイントになったのは、2019年にメインの顧客層を「カップルから家族」に変更したことで、そこから急成長がはじまります。

法人化してから資金調達もして。STRIVE(旧:グリーベンチャーズ)というVCから、根岸さんという優秀な方が出向してきてくれました。

そのときに市場の選定をしたんです。カップルの写真って市場がものすごく小さかったんですよ。だから、広告を打っても費用対効果が合わない。

そこで、事業を伸ばすために「広告で獲得できるプラン」をつくろう、そのためには顧客層を変えよう、ということで家族にフォーカスしました。

当初は、カップル向けに「1万円の撮影プラン」を出していたのですが、これを家族向けに「2.3万円の撮影プラン」に刷新。撮影枚数も増やしてニーズに合ったプラン内容にしました。

家族向けという大きな市場に出すと、広告から獲得できるようになり、これによって新規の依頼数が3倍に伸びて、これまでには見たことのない金額の売上が立つようになっていきました。

広告は例えば、検索広告(リスティング広告)で「家族 撮影」「七五三 撮影」などに出稿。

村田:
驚きだったのは、わたしたちは価格を上げたら「依頼数は当然減るものだ」と思っていたのに、価格を上げたら依頼数が3倍に増えたことです。

価格も2倍以上になっているのに、依頼数が3倍になったということで、市場が大きなところで勝負するって、ものすごく大事だったんだなと。

駒下:
また、既存サービスよりも「すこし便利にすること」を徹底したのも成長のキッカケになりました。

例えば、撮影サービスでいうと、写真のデータがもらえない、フォトブックにしないといけないとか、細かい不満も結構あったんですね。

そこは、写真はデータでもらえたほうがうれしいよねとか、電話よりもWeb予約ができたほうが便利とか、ニーズに合わせて最適化しました。

そこからも、大変なことはありつつも、順調に事業が成長していきました。

2020年の4月には、ミクシィと業務資本提携を行い「みてね出張撮影」を開始、2022年の3月にM&Aを通じてミクシィの子会社になりました。

今では「家族アルバム みてね」からの流入は、ラブグラフの依頼数の約1/3を占めるほどになっています。親和性の高いサービスとの連携は正義です。

ラブグラフの写真撮影で「大事にしていること」を教えてください。

駒下:
僕らは点ではなくて「線で写真を撮ること」を意識しています。どうしても写真って一瞬をパンと撮って終わりがちです。

でもそうではなくて「何枚か見たときに、思い出がより鮮明に思い返せる、ストーリーが伝わるような写真を撮ろう」という話をよくします。

例えば、子どもがグズってしまって、お母さんが困り顔であやしていたら、それも含めて「ありのまま」を撮るようにする。

いつか親子で振り返ったときに「あんた、このときずっと泣いとってんで」みたいな会話ができたほうが、思い出として尊いじゃないですか。

なので、「将来に見返したら、泣いている姿も愛しくなると思うので、この写真も撮っておきますね」と伝えたりします。

カメラマンがそう考えていれば、そういうコミュニケーションを取るようになるし、お客さんにも写真をより尊く感じてもらえると思うんです。

初心者でも「物語のある写真」を撮るには、どんなことを意識するといいですか?

村田:
これは「はい、チーズ!」で撮らないこと。そうすると、つくられた瞬間じゃなくて、自然な瞬間が撮れやすいんですよ。

例えば、「はい、チーズ!」って言って、「えー、もう何したらいいか分からん、あはは!」とおどけているチーズの2秒後を撮るようにする。

もしくは「じゃ、撮るよ~」って言って、「もう今日ほんま緊張するなー」と言ってるときに撮っちゃう。

集合写真とかでも「はい、チーズ!」の1秒後くらいに、「あー終わった~」となっている瞬間が、実は一番みんな笑顔なんですよ。

駒下:
あとは、意識を「写真」に持っていくのではなく、他に向けてあげること。これも自然な写真を撮りやすくするコツだと思います。

例えば、お子さんがいたら「お子さんのほう見てください!」とか、ペットがいたら「ワンちゃんをコッチに向かせてください!」と言ったりします。

ミクシィによる買収のときに「意外と評価された」と感じたポイントはどこですか?

駒下:
やっぱり買収というと、売上はどうなんとか、アクティブ率はどうかとか、事業の数値を当然見られるじゃないですか。

でもここだけの話、何社かの競合を並べたときに、最後は結局「ラブグラフの写真が良かったから」と言ってもらえたんですよ。

「家族アルバム みてね」をやっている、ミクシィの取締役の笠原さんが、この件を決めてくれたのですが、そのように言ってもらえて。

買収について議論をしたときに、みてねのデザイナーチームに「どの会社が一番いいと思う?」と聞いたら、満場一致でラブグラフだったと。

サイトや写真から、ラブグラフの世界観を評価してもらえて。僕らもそこに価値があると信じていたので、とても嬉しかったんですよね。

この経験から得たことを「教訓」として伝えるなら、どのようなことが言えますか?

駒下:
非合理の合理性を信じることです。会社をやってると「合理的な意思決定」はどんどん増えていきます。

なぜなら「合理の力学」が強過ぎるから。議論になると合理っていつでも勝っちゃいますし、合理的であるほど正解のような気がしてきます。

でも、非合理に見える判断をつみ重ねることが、他社との競争優位性につながり合理的な結果を生む、というのは大きな学びになりました。

非合理な意思決定をするためには、社長とか経営陣の「意思」が必要です。つまり意思がないと、だんだん差別化できない会社になります。

なので、非合理の合理性、非合理な意思決定を連続的にできるかどうかが、競争優位性をつくるために大切なのではないかなと。

ラブグラフも合理性を突き詰めたら、カメラマンも教育しないで数を集めていたかもしれません。それだと世界観は崩れていました。

でも、まずやさしい人を採用しよう、技術もこのレベルまでは守り切ろう、非合理にこだわった結果、大きなディールにつながったと考えています。

やっぱりラブグラフのお客さんって、プロのモデルとかではなくて、一般の家族の方や初めて写真を撮る人がほとんどなんですよ。

となると、腕はあっても「なんか怖いな…」と思われたら、それだけで表情が硬くなったりするし、いい人のほうが「いい表情」が撮れるんです。

カメラマンに「世界観やコンセプト」を共有するための工夫を教えてください。

村田:
カメラマンのコミュニティをSlackで運営していて、コミュニティは縦・横・斜めと「網の目状」に広げることを意識していますね。

例えば、カメラマンになるまでに、ゼミと呼ばれる「カメラマン養成講座」にご参加いただくのですが、卒業後には「1期生・2期生」など同期のコミュニティをつくったり。

ほかには、スタバ部やボードゲーム部といった部活をつくったり、地域別のコミュニティをつくって、誰でも何かの軸で「横のつながり」が生まれやすくなるようにしています。

あと、全国からカメラマンを集めて、年に1回「周年パーティ」を開催して、そのときにMVPの発表や表彰式などもやっています。

—-

【取材協力】
株式会社ラブグラフ:https://corporate.lovegraph.me/
ラブグラフ:https://lovegraph.me/
駒下さん(@komage1007
村田さん(@murata_atsumi

【告知】ラブグラフさんでは、マーケターや事業責任者を募集中。スタジオ事業や、インバウンド旅行客向けの撮影サービスもはじめているとのこと。ご興味あれば下記サイトからご覧ください。
https://herp.careers/v1/lovegraph

※ 以降は+αの事例をnote購読者向けにまとめています。サービスの指標を伸ばした2つの施策、リピート率を高めるための戦略、組織の生産性を関係性から高めるコツなど、ご興味あればご覧ください。
https://markelabo.com/n/n00bc1fe562fd

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