年商30億円間近の「yutori」が語る、Z世代が求める「リアルさ」を武器に服を売る方法と、TikTokのコメントから服が売れる理由。

2023年03月06日 |
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※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2022年12月20日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/nb5f864dbeaa7

ストリートブランドを運営する「yutori」さんを取材しました。


※株式会社yutori 代表取締役社長 片石 貴展さん、マーケティングマネージャー 濱田 栞さん

「yutori」について教えてください。

片石:
約20のストリートブランドを展開している会社です。2018年に創業して、2021年の売上は約17億円、2022年の売上は約30億円の見込みです。

お客さんの8割は「中・高・大学生」のZ世代なのですが、Z世代を中心に狙っていくことが、ブランドの立ち上げやすさにもつながっています。

20代前半くらいまでの子って、ファッションに熱狂的で新しいものへの感度も高いので、いいものをつくれば早く広く拡大できます。

ブランド間で共通しているのは、「反骨精神」という精神的なテーマ性と、「古着からリバイバルして着想を得る」という洋服的コンセプトです。


※アパレル経験者は1割もいなくて「ほぼ未経験者」。従業員数は約80名(アルバイト含む)

「オリジナル商品への転換」で売上が6倍に急成長した

2018年のyutoriの創業から、どのように事業が成長していったのでしょうか?

片石:
もともとは、2018年にインスタに「古着女子」(5ヶ月で10万フォロワー)というコミュニティをつくったのがはじまりでした。

そのあと「9090」などのブランドをつくったのですが、最初は古着を市場などで仕入れてきて、1着1着インスタにのせて売っていたので、全然効率的じゃないし儲からなかったんですよね。

ところが、2019年に「タピオカT」というオリジナル商品を100着つくったら即完売したんですよ。それでシンプルにオリジナルをやろうと。

そこからの流れで、2020年に資金調達も並行しながら、基本は「オリジナル商品しか売らない」という戦略に、一気に切り替えたんですよね。

それが転換期になって。独自商品で濃いお客さんを集める戦略が当たり、2019年の売上1億円から、2020年には売上が6億円まで伸びました。

2020年は、ZOZOにグループ入りして、既存ブランドの商品ラインナップをどんどん増やしたこと、2021年はブランド数を増やしたこと、2022年には2社を買収したことなどで、会社が成長していきました。

感覚と観察から「新しいブランド」をつくる方法

ブランドを立ち上げるときに「何をどう考えて設計していくのか」をぜひ教えてください。

片石:
今後は1ブランドで売上100億円よりも、年商10~20億円のブランドを10個持つ企業が生き残ると思います。それだけ人の趣味は分散されています。

そこでyutoriでは、感覚的に「いいもの」をつくれる若い子を、クリエイティブの中心に置いて、それを僕らが抽象化・言語化する感じでやっていて。

ITのプロダクトのように的に、コンセプトやペルソナを研ぎ澄まして、言語的につくるというよりは、すごく感覚的につくっているんですね。

先に言葉でつくっちゃうと縮こまってしまうので、こういう服がかわいい、こういう人たちが実はたくさんいる、そういう感覚からはじめます。

一番にあるのは、新しくきそうな「テイスト」にいち早く参入して、ニッチなコミュニティの中での「パイオニアになる」ということ。

考えるのは、狙っているコミュニティの強さ、そこにどんな子たちがいて、どれぐらいパイがあって、どれぐらいお客さんにつなげられるかです。

これを捉えるにはシンプルにリサーチです。もう僕らはインスタもTikTokも見まくってるんで。遊んでるようなものですけど必ず根拠はあります。

このジャンルの子のフォロワーの伸びはこれくらいで、実はその子が着てる服をこのジャンルの子も着ている。このテイストは流行りつつあるねとか。

そういう意味では、インスタって都会の洗練された情報が多いけど、TikTokは地方にいる子の情報も目に入る。ここが意外と革命的なんですよ。

TikTokのおかげで地方にいる「日本の平均的な人」の動画が全国に流通するようになった。それを観察すれば流れがわかるんですね。

いま説明したのは「企画軸」の作り方ですが、もうひとつ「人軸」もあって2022年にA.Z.R社を買収してから、この手法も取り入れています。

例えば、A.Z.Rの中で一番大きいブランドが「Younger Song」なのですが、これは天晴という男の子が立ち上げたブランドです。

普通のブランドっぽいけど、実は中心になる「人」がいて、インフルエンサーのような感じでもある、クリエイターブランドなんですね。

例えるなら、有名デザイナーのブランドに近いですね。

TikTokのコメント欄から「服が売れている理由」

yutoriさんのブランドは「TikTokも成長要因」とのことですが、ぜひ詳しく教えてください。

濱田:
TikTokについては、ブランドのスタッフの子が、本当に「個人アカウント」のような感覚で運用していて、そこからブランドが広がっています。

例えば、ろいりいというアカウントでは、「9090」というブランドのスタッフの女の子2人組が、2人の日常などの動画を上げています。

そして、日常の動画に「その服どこの?」とコメントで質問がたくさんきて、「ここで買えるよ」という返信から洋服が売れているんです。

いまの若い子には「これ、売りたいんだろうな」という意図を察知する感覚があるから、あからさまに訴求し過ぎると嫌になっちゃうんです。

だから、自分たちから押し出すのではなくて、お客さんに「探させている」というか「覗いてもらって、聞いてもらう」スタンスを取っています。

売上との関連性については、TikTokで再生数(リーチ数)がこれぐらいあると、これぐらい売上インパクトがあるよね、という指標は持っています。

なぜTikTokの「個人っぽいアカウント」からそこまで洋服が売れているのでしょうか?

片石:
みんな「リアルなもの」を求めるからだと思います。消費者の目線が上がっていて、こちら側から仕掛けることがすごく難しくなっている。

受け手の感度が上がっているから、発信者が「心からいいと思っているか?本当にそう思っているか?」を簡単に見抜かるわけですね。

人が発信する「本当っぽいもの」に価値が集まる。この人はこういう人で、こういう格好をしてて、だからこれを良いと思うんだなと。

逆に、人が発信していても、無理にやらされている「嘘っぽいもの」って、コンテンツの強度が弱いから価値が集まらない。

いまの消費者って、感度は上がっているけど、キャッチアップする時間には耐えられない、というのが特徴なのかなと。

パッと流れてくる「数秒の速いコンテンツ」に慣れている一方で、その裏側を汲み取ったり考える気力や時間は惜しんでしまう。

「自立分散型の組織」でブランドを運営している話

片石:
yutoriでは「一定の発信力」がある子を現場では採用していて、勝手にチャレンジして失敗してもらって、現場で修正することを繰り返していますね。

発信力を持っている子って、仮説が当たっているからSNSでフォロワーが伸びるわけです。つまり、マーケティングの思考があるんですよ。

なのでそういう人を採用して、ビジネスのコミュニケーションや、ビジネスの方程式の組み方といったものを、学んでもらっています。

なぜこれができるかというと「洋服だから」なんですね。洋服は毎週新商品を出すんです。つまり、コンテンツを出す頻度が高いんですよね。

そのサイクルが早いということは、PDCAを何度も何度も回しやすい。すると自立型の学習ができるし、自律分散型の組織ができます。ビジネスモデルに企業文化が紐付いているわけです。

これが映画のような「3年で1作品をつくる」みたいなモデルだと、簡単には失敗できないのでそうはいきません。

だから、僕らはD2Cとは少し違います。時間をかけた商品を継続的に売るのが日本的なD2Cですが、僕らはどんどん新しい商品でお金を稼ぎます。

なので「単品通販」の積み重ねなんです。難しいのは「売れる商品」の難易度がどんどん上がっているところだと感じます。

例えば、2021年に約1万本売った「バルーンパンツ」というヒット商品は、2022年には早くも勢いが落ち着いてきています。

yutoriさんのブランド運営で「うまくいっている施策」があれば教えてください。

片石:
ポップアップは積極的にやっていますね。わざわざそこに来てくれる、熱量の高いお客さんに最初に商品を買ってもらいたいからです。

熱量の高いお客さんが「商品を買えない」とならないようにするのは重要なことだと思います。やっぱり、服を欲しいなと思ったとき、先に買っている人がいてカッコいいなと思ったら、なおさら欲しくなるじゃないですか。

ポップアップをやると、ブランドからの発信が増えるため、オンラインでの売上もかなり伸びる傾向がありますね。

また合同ライブや文化祭感というか、各ブランドのクルーが集まって、若い子たちだけでつくる異常な熱気を、雰囲気込みで体験してもらって、「この人たちから服を買いたい」と思ってもらうことも重要だなと。

やっぱり、商品の魅力も「運営している人」から伝えるほうが、ファンの熱量も高まりますし、そこもリアル感につながると思うからです。


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【取材協力】
株式会社yutori:https://yutori.tokyo/
片石さん:@katap_yutori
濱田さん :@hamcodayo

【告知】ブランドマネージャー、マーケティングマネージャー、IPO準備リーダーなどの職種を中心に、株式会社yutoriでは絶賛採用中!
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※続きのマニアックな事例は4つほど、note購読者向けにまとめています。インスタからのCVR(購入率)の改善事例、ブランド立ち上げ時の初期検証の方法、ブランド運営でよく見る指標、などご興味あればご覧ください。
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