検証に9ヶ月かけたサービスが約2年半で450万食を突破。「つくりおき.jp」が語る、公開の翌月に「継続率100%」に至ったサービスづくりの事前検証のポイント。

2023年01月09日 |
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※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2022年10月24日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/n2e10e064cafd

約2年半で450万食を突破した「つくりおき.jp」さんを取材しました。


※株式会社Antway 代表取締役社長 CEO 前島 恵さん

「つくりおき.jp」について教えてください。

前島:
少し手間のかかる、おいしい家庭料理をお届けするサービスです。累計提供食数は450万食(2022年8月時点)を突破しています、お客様の8割が共働きの子育て世帯です。

2020年2月の正式リリース以降、徐々に対応エリアを拡大していて、現在は1都3県の一部エリアに展開しています。従業員数は約310名です。

※ 2021年の5月時点で「MRR1億円を突破」している(現在のMRRは非公開)

どのように「つくりおき.jp」を着想したのでしょう?

前島:
僕の家庭は父親がうつ病(現在は寛解)になってしまい、その期間は母親がずっと4人兄弟を育ててくれました。とくに食事をつくることは大変そうで、母が台所で泣いている姿を見かけたこともあります。

そういう原体験もあって、リクルートでエンジニア・PMとして働いた後に、起業をするときに「機会の平等化」に関するサービスをやりたいと思って。海外の事例を3,000社調べて、勢いのある領域を絞っていったんですね。

結果的に、フードデリバリーなどの食の領域、とくに中食領域が伸びていることがわかり、市場の伸びと原体験から「つくりおき.jp」をつくりました。

9ヶ月の事前検証で「ウケるサービスを設計した」

最初はどのように「検証」を進めたのでしょうか?

前島:
はじめは「質的調査」と「量的調査」を繰り返しました。

まず最初に、簡単なページをFacebook広告に出して、テストマーケティングをやってみたところ、かなり手応えがあったんですよね。1事前登録あたりの獲得コスト(CAC)は約1,500円でした。

登録してくれたのは「子育て中の主婦の方」がとても多くて、事前登録者のほとんどが女性でした。

このように、まずは「事前登録してくれる人がいるか」「どんな人がメイン属性になり得るのか」を、量的調査で検証しました。

そこからはどのように「検証」を進めましたか?

前島:
次に登録いただいた約50名に連絡して、「なぜ登録いただけたんですか?」「食事にどんな課題を抱えていますか?」とインタビューをしました。

するとひとつ発見があったんです。それは「料理をつくるときの罪悪感」についてでした。僕の固定観念はここで壊されることになります。

当時はミールキットが出てきた時期で、ミールキットは「つくらない罪悪感」を解消するために、少し調理の手間を残していると言われていました。

当時は僕も「そういうものなんだな」と考えていましたが、インタビューをしてみると「料理をつくらないことに罪悪感を感じている人」は、実際にはかなり少ないことに気がついてきます。

たしかに「罪悪感」は存在していましたが、それは冷凍食品を毎日出すことや、成分がわからない食事を子どもに出すこと、に対する罪悪感でした。

つまり「料理をつくる手間」はなくしたい人が多いことに気づいて、そこで振り切って「食事の手間を0にする」という方向性を定めました。

レンタルキッチンで「ウケる料理の正体」を検証

前島:
そこから「どんな料理を提供すべきか」を検証するために、料理人の方を雇って、レンタルキッチンでグループインタビューを実施しました。

いろんな方に料理を食べてもらってお話を聞く。それを繰り返していくと、「ちょうどいい塩梅の料理」が掴めてきたんです。日によって料理を変えると「ウケた日」と「ウケなかった日」があったんですね。

具体的には、簡単なおひたしのような、レンジで簡単にできる料理を出した日は「こんなの自分でつくれますよ」とウケなかったんです。

また逆に手の込みすぎたものを出した日も「これを毎日は食べたくないよ」とウケませんでした。

ところが、ちょっと手が込んだ「ホッとする味」の料理を出すと、これなら毎日食べたいということで、とてもウケたんですよ。 

少し手間はかかるけど、ホッとする味。そういう「おいしい家庭料理」が、求められていると結果的にわかりました。

つまり、シンプルすぎると「自分でやるよ」となるし、手が込みすぎると「毎日食べたくない」となる。適度に手が込んでいることが大切でした。

「手間をなくす体験」を軸にサービス内容を固めた

前島:
体験としては「手間をなくすこと」にこだわりながら、「どう運んでどう渡すか」「どう申し込んでもらうか」を考えました。

そうなると、店舗ではなくデリバリーだ、アプリではなくてLINEだ、料理を日持ちさせて週1回受け取れるようにしようと、決まっていきました。

選ぶ手間もしんどいと聞いたので、手間を減らして楽になってもらうため、メニューを選べない「おまかせ形式」を採用しました。

料理の製造は「外注か内製か」で悩みましたが、工場の方に「家庭向けで、お惣菜で、手作り感があって、週替わりのメニューにできますか」と聞くと「それはできません」と言われてしまって。

メニューの変更は「できても4ヶ月に1回です」と。これは自社でつくるしかないなと、レンタルキッチンで製造することにしました。

こうして、2020年2月に「つくりおき.jp」をリリースしました。初月は30名ほどが登録してくれて、驚いたことに「翌月の継続率」が100%だったんですね。これには手応えを感じました。事前調査を密にやって良かったなと。

そこからはメニューの刷新・開発・改善と、キャパシティを伸張しながら、プロモーションを拡大して、徐々にエリアを拡大していきました。


※初期は4坪ほどのレンタルキッチンで、システムも「STORES」のサブスクの機能を利用するなど、スモールスタートを意識したそう。

顧客の体験を改善できた「3つの成功施策」

改善施策① 「初回の継続率」をあげる施策

前島:
毎週メニューが変わる分、初回に届くメニューにもランダム性があるため、継続率が安定しない時期があったんですよね。

そこで初回については、必殺技的な「満足度の高いメニュー群」からお届けするようにすると、継続率を改善できました。

これはデータで「初回の満足度が高いと長期の継続率も高い」ということがわかったため、体験のファーストインプレッションを強化した施策です。


※現在は「全体のメニュー品質」が安定してきたため一旦この施策は止めている。

改善施策② アンケートで「メニューを改善する」

前島:
継続率については、色々な因果を分析しても、結局は「メニューの満足度」に尽きます。そのため新メニューの開発と構成の改善を続けています。

具体的には、お客様にLINEで「メニューの満足度」を毎週聞いて、満足度の低いメニューは入れ替えて、評価の高かったものだけを残していますね。

これだけの成果ではないのですが、毎週毎週メニューの改善を続けた結果、初期に比べると継続率を大きく改善できています。

メニュー構成は、「美味しさ(味)」だけではなくて「サービス(体験)」として考えることも意識しています。

例えば、お子さんのいらっしゃる家庭も多いため、辛いものを提供してしまって、子どもが食べないとなると「サービスの質」が下がってしまいます。

粒マスタードは、大人が食べると「アクセント」ですが、子どもが食べると「苦手なもの」になってしまうこともあるんですよね。

味だけではなくて、冷凍できるかどうかや、辛いものがどれだけあるかも、「お客様の継続率」に貢献すると考えています。

改善施策③ 交換日誌で「顧客からの声」に答える

前島:
お客様との「交換日誌」もずっと続けています。これはお客様からのご意見に毎週お答えするもので、120号以上まで続いています。

思想としては、お客様からのご要望には「やる・やらない」は別としても、真摯に答えようという想いがあって、初期から続けています。

お客様にとっては「こう思っているけどどうなってるかわからない」という状態が一番不安です。だから「できる、できない」「できないのはこういう理由です」と答えることは、ステータスを明確にする意味でも重要です。

また、僕たちは「ユーザー」とは呼ばずに「お客様」と呼ぶことも徹底しています。お客様は一人一人に生活があって、悩みや不安を持つ人間です。

1ユーザーと呼ぶと数字になりやすくて、指標をハックしよう、コンプレックスを刺激してやろうと、ハックする対象になりやすいと考えています。

でもそうではないですよね。数値ではなくて身体を持っている人間なんだ。幸せにする対象なんだということで「お客様」と必ず呼んでいます。

振り返って「つくりおき.jp」の成長につながった特徴があるとすると何だったと感じますか。

前島:
個人的には「フルスタックD2C」と呼んでいるのですが、配送以外の機能を「自社で持っている」というところは、特徴的かもしれません。

D2Cってマーケに特化した会社が多いんですよ。商品はOEMで製造したり、商品の製造などを外部に依存しているわけです。

一方で、マーケ以外に染み出して強みを持つことは、大きく伸びているD2C系の企業には多く見られる特徴だと感じます。

全部やるって大変なんですけど、お客様のご要望を正確に叶えようとすると、最終的にはそうするしかないんですよね。つまり「自分たちでつくる」しかないわけです。

僕らも自社キッチンをつくらずに、OEMで工場から真空パックで配送して、数ヶ月に1度しかメニューが変わらなかったら、LTV(顧客あたりの収益)は圧倒的に下がっていたかなと感じます。

なので、これが最終的に、模倣困難性、お客様の満足度、継続率、事業のKPI、営業利益、売上高につながると信じてやっています。

—–

【取材協力】
株式会社Antway:https://antway.co.jp/
つくりおき.jp:https://www.tsukurioki.jp/
CEOの前島さん:@keimaejima

【告知】Antwayさんでは各職種で採用強化中。マーケターや人事など募集しているそうです。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。
https://antway.co.jp/recruitment

※続きのマニアックな事例は4つほど、note購読者向けにまとめています。訴求軸を変えたら「CVRが改善した」LPのABテスト、潜在顧客の獲得に貢献した施策、長期で利用する人の特徴、などご興味あればご覧ください。
https://markelabo.com/n/n2e10e064cafd

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