オワコン社長から新卒に転生して、売上8億円のハイパーカジュアルゲーム「Snowball.io」を生んだ芸者東京が語る、米国App Storeで1位になるまでの裏側

2019年03月11日 |
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米国AppStoreで1位になったハイパーカジュアルゲーム「Snowball.io」の裏側について聞きました。

※本記事はAppLovin株式会社より、依頼を受けて執筆したPR記事です。


※芸者東京株式会社 CEO 田中泰生さん、田口聖久さん、竹下義晃さん、AppLovin 片木智也さん、中村裕さん

もともと「芸者東京」さんは、なにをしている会社だったんですか?

田中:
創業当初は、電脳フィギュアというAR(拡張現実)の製品がヒット作でした。

その後、ソーシャルゲームの黎明期に、ガラケー向けに「おみせやさん」というゲームをつくったところ、それがGREEとかmixiプラットフォーム上で、ものすごくヒットしたんですよね。

基本無料で、アバターやガチャに課金してもらうモデルなのですが、毎月コンスタントに1億円ほどの収益が、4〜5年ほどあがっていました

いまでも、GREEでスマホから遊べますけど、未だに月1,000万円くらいの収益にはなっていますね。


※累計ユーザー数400万人、ピーク時は1日のアクティブユーザーが40万人いた

めちゃめちゃ順調だったんですね。

田中:
はい。それで、ぼくは「おみせやさん」のおかげで小金持ちになって。やる気がなくなってしまい、会社にほとんど行かなくなったんですよ。

何をしていたかというと、ゴルフと狩猟です。2013年は年間200ラウンドはゴルフをしていました。2014年には狩猟をしていましたね

たまに会社に社長がきたかと思うと、ゴルフの素振りをしていたり、狩猟で捕まえてきたイノシシを会社で捌いたりしてる、そんな状態でした。

しかも、なまじ実績があって自分にはセンスがあると思っていたから、社員がつくるゲームをみて「こんなのはダメだね」と文句だけは言っていたんです。

いま振り返ると、ただの暴君でしたね。運動部のOBのようにたまにきて文句を言うだけのおっさん。そんなやつ社員からしたらむかつくと思いますよ。


※5年間くらいずっとあそんでしまった。

そんな状態でも会社は大丈夫なものなんですか?

田中:
いえ、崩壊していきましたね。会社は惰性で大きくなり、人も増えましたが、社長は会社にいないしゲームは当たらないしで、だんだん社員も辞めていきました。

社員はぼくを恨んで辞めていくんです。怨嗟の声と言いますか「死ぬほど嫌い」「社長はオワコン」呪いのような言葉を残して辞めていきます

その頃辞めていった社員には、せっかく入ってくれたのにいい思いをしてもらえず、いま思うと申し訳ない気持ちでいっぱいです。

そして、人間って失敗が続いてお金を失うと自信がなくなるんですよ。だんだん、自分には能力がないんじゃないかと、自分をすごく疑うようになりました。

自分には能力なんてなくて、いままで運が良かっただけじゃないか、過去の自分も疑うようになって、うつ状態になった時期もありました。

そうだったんですね。

田中:
当時のぼくの考えとして、社員にとっての芸者東京は、自由にゲームがつくれて会社がお金を出してリスクもとる、こんな天国みたいな環境ないよなと思っていました。

自分が会社員時代そう思って働いていたので、みんなそう思うものだと思いこんでました。

でも、それってマネジメントでもなんでもなくて。自由と裁量さえ与えれば勝手にがんばるだろうと、自分の基準を押し付けていただけでした

ぼくは、個としてはゲームをつくって当てたこともあったけど、社長という会社を率いるリーダーとしては、なんにも仕事をしてなかった。

社長としてやる気がないのであれば、ゲームがヒットした時に会社を売却するべきでした。中途半端に続けたせいで会社を荒廃させてしまったんです。

そこからどうなるんでしょうか?ゲームはつくって出すわけですよね。

田中:
ゲームはつくるんですけど、完成までいかないし出しても当たらないんですよ。

当たらなくて当たらなくて、最後に「パズルオブエンパイア」というゲームがやっと出たのですが、それまでも外れてしまって。

このゲームは開発に5億円かけて、プロモーションもずるずるやった結果、10億円くらい損失が出ました。売上も全然上がりませんでした。

ソシャゲって本当に「ゼロかイチか」の世界なんですね。当たるタイトルは当たるんだけど、外れるタイトルはゼロに近い形にしかならなくて。

しかも「パズルオブエンパイア」は自分で言うのもなんですけど、収益性はともかくゲームとしては面白かったんですよね。

そのせいでまだいけるんじゃないかと、諦めきれなくて中途半端に続けてしまったんです。

そんなに損失が出ても会社は大丈夫だったんですか?

田中:
いえ、いよいよ会社の蓄えがなくなってきて、あれほどあったお金も残り3億円程になってしまいました

そこでようやく目が覚めたんです、42歳になって何やってんだって。それで、2017年末にすべてを変えようと会社に戻ってきたんですね。

やり直そうと決めた2017年末の時点で、スタッフが60人くらいいたので、毎月なんだかんだと3,000万円のお金が消えていっていました。

つまり、あと1年で会社が死ぬというところまできていました。

会社に戻ってきてからは「なにを変えた」のでしょうか。

田中:
生き方から変えることにしました。もう新卒からやり直そうと。40すぎてパッとしない自分を、神様が新卒として転生させてくれたことにして

そして、ダメ社長のせいで瀕死になった会社を立て直す、ミッションを任された22歳の新卒なんだ、そういう設定で生きることにしました。

新卒なので、会社にも毎日朝早くからいくようにして、社員は年上なのでさん付けで敬語、命令するのではなくお願いをするようにしました

でも、そんなことしたって、社員にとっては関係ありません。会社が傾いてぼくに愛想をつかして、多くの社員たちは去っていきました。

残ってくれたのは、はるか昔にぼくがまだ輝いてた頃を知ってる古参社員と、最近入ってきた過去の事情を知らない若い新人たちでした。

彼らは、新卒設定で全てをやり直そうとするぼくに、なぜかついてきてくれました。感謝しかありません。

会社を立て直すために何をしていったのでしょうか?

田中:
まず、ソーシャルゲーム事業を辞めると決めました。同時に、このままだと会社がなくなるので、新しい事業をつくらなくてはいけませんでした。

それで、ブロックチェーンやAIなどいくつかあった事業案の中から、ひとつ「ハイパーカジュアル」ゲームを選択しました。伸びてる分野だというのと、残りの資金でギリギリ勝負できそうだと思ったからです。

このハイパーカジュアルは、お客さんひとりが見てくれる広告収益が、1ダウンロードの獲得コストを上回るゲームがつくれると、成立するモデルです。

その状態をつくってから、世界を対象に大きくプロモーションをかけるのが前提なので、まずはゲームをつくっていくことにしました。

どのようにゲームをつくっていったのでしょう?

田中:
ハイパーカジュアルの世界で当時No.1だった、Voodooという会社を倒そうと思って、彼らのやり方を研究しました。

彼らにならって、ユーチューバビリティという「いかに動画広告で映えるか」という視点から、プロトタイプを高速でつくって、世界に向けてだしていこうと。

突破すべき指標としては、大きく「獲得コスト・継続率・収益性」と3つあったので、それをひとつずつ順番にクリアしていこうと考えました。

このときから、AppLovinさんにもアドバイスいただきながら、ゲームの数値の改善を進めていきました。

はじめの手応えはどうだったのでしょう。

田中:
最初のころは、ヒットしているハイパーカジュアルゲームの上っ面だけ真似ていたんですが、全く結果が出ませんでした。

ゲームをつくってテストしてみて、Voodooさんの実現している数値(CPIやLTV)が、とてつもなくすごいものだと初めて実感しました。

そして、失敗を何度も繰り返して、ハイパーカジュアルがすごく奥深い分野であることを知りました。

ただ、当初は「こんなの無理だ」と思っていた目標値も、多くのプロトタイプをつくって改善を重ねるうちに、不思議なことに突破するゲームが現れるんですよね。

そして、ひとつのゲームが、設定していた締切期限ギリギリになって目標値を突破すると、ほかのゲームもバンバン突破できるようになるんです。

高速でテストを繰り返す中で、何をするかぱっと見でわかるゲームはやっぱり良いよねなど、細かいノウハウがチームに蓄積されていきました。

そうやって、たくさんアプリをつくっていく中で、出てきたもののひとつが「Snowball.io」でした。


※Snowball.io(AppStore/GooglePlay

プロモーションについてはどうやって進めていくのですか?

田中:
まず、ゲームをプロトタイプ的につくったら、AppLovinに広告を出してテストプロモーションしてみて、スケーラビリティ(大きく数字が伸びるか)を確認していきます。

それがクリアできたら、スケーラビリティがあっても収益性(LTV)が高くないと赤字になるため、継続率や収益性を改善しながら、AppLovinでテストプロモーションを繰り返し実施します。

収益性(LTV)が獲得コスト(CPI)を上回ることを確認できたら、いよいよ本番キャンペーンとして巨大なプロモーションを実施していくという流れですね。

「Snowball.io」の場合はどうだったのでしょうか。

田中:
10月にテストプロモーションをしたところ、それなりにスケールしそうだとわかって、そこからゲームの内容を改善して継続率を改善していきました。

当時、会社の資金も枯渇してきていて、年内にはいよいよ当てなきゃまずいという状況でした。

しかし、ハイパーカジュアルはうまくいくほどプロモーションのお金が必要なモデルなので、つくれる限りの法人クレジットカードを、つくったりもしていました。笑

本当は、その前につくっていた「Sling and Jump」が本命だったのですが、本番では思ってたほどスケールしなかったんです。

そして、これが最後のチャンスだと言う絶望感の中で「Snowball.io」の本番プロモーションに臨みました

結果として、年内ギリギリに「Snowball.io」が大成功、アメリカのAppStoreランキングで1位を獲得することができました

※2018.12/16にアメリカのApp Store(無料総合)で1位になった。

いまの「Snowball.io」の数値はどのような感じですか?

田中:
2月末時点で、世界で約2,000万ダウンロード、アプリの収益は8億円ほどになっています

意外なことに、いまでも「Snowball.io」はデイリー数百万円の収益があがっていて、月1億円ほどの収益にはなりそうなんです。思ったより息が長いなと感じています。

未来のことはわかりませんが、とりあえず会社を続けていける状態にはなりました。

竹下:
「Snowball.io」の1ダウンロードの収益性(LTV)は国によっても異なりますが、主戦場であるアメリカだと60〜70円です。収益のほとんどが広告収益で、課金収益は0.1%程度しかありません。

田口:
継続率としては、1日後の継続率は50%、7日後の継続率は20%という感じです。io系のゲームは継続率がわりと高めに出ますね。

プロモーションにつかった「各サービスの特徴」を教えてもらえますか?

田中:
広告プロモーションについては、AppLovin、Facebook、Googleの3つをメインに使いました。

FacebookとGoogleの広告は、大きな海に投げ込む感覚というか、捉えられる面積が大きくてじわっと広がっていく感じなんですよね。

一方で、AppLovinは劇薬という感じでした。ハイパーカジュアルゲームとの相性が非常に良いため、ゲーム好きな人に短期間でスケールを狙えるパワーは、凄まじいものがあります。

実際に、米国で「Snowball.io」が1位になったときは、1日40万インストールほどプロモーションで獲得していたのですが、うち80%がAppLovin経由でした

AppLovinを通じて、カジュアルゲーム好きの層に受け入れられると、ランキングも上がっていきますし、自然流入にも良い影響がありました。

ハイパーカジュアルをつくる中で「やって良かったこと」があれば教えてください。

田中:
ずっと、データドリブンの姿勢でやっていて、データを何よりも信じていたことです。

たとえば、新しいゲームを出すときには、みんなでそのゲームの動画広告をみて「獲得コストの予想」をするんです。それで、結果が一番近かった人は僕から500円もらえるという遊びをしています。

これがおもしろいのが、当たるようになってきたと過信してると、そのあとは大きく外したりするんですよ。だから、自分のセンスがいかに間違っているか、という戒めになるんですね。

たとえば「Snowball.io」が当たったら、つくった人を神様のようにすごい、その人の感覚は全て正しいんじゃないかと思うじゃないですか。でもこれって滅亡へのはじまりだと思っていて。

当然その人が外れたことを言うときもあるし、社内に「神様をつくらない」ようにしないといけません。神がいるとしたらデータだけなんです。

なので、これはクリエイターとしてのセンスを常に疑い、データを見なくなった瞬間にぼくらは死ぬんだ、という戒めのためにやっています。

AppLovin側から出たもので「数字の改善」につながった施策などはありますか?

片木:
「Snowball.io」に関しては、獲得コストや収益性(LTV)を改善できるよう、ゲームと広告実装の両方からアドバイスさせていただきました。

たとえば、3Dデザインをリッチにすることや、バトロワゲームの流行である「時間によるステージの縮小」などを提案した結果、獲得コストや収益性の改善につながりました

とくにio系ゲームは、ステージ制のゲームと違って、同じようなゲームを繰り返すことになるので、デザインを改善してプレイの質を上げることがポイントでした。

広告実装については、プレイ終了後に動画広告をみると、経験値やアイテムがもらえる「ルーレット」を置く改善案を提案した結果、収益性(LTV)が改善されました。

具体的な数値としては、アクティブユーザー(DAU)あたりの、動画リワードの視聴回数が0.06回だったのを、最終的に1.6回まで改善できました。

中村:
広告出稿サイドでは、本番キャンペーンの獲得コスト(CPI)はかなり細かく計画しました。

ランキングを上げて自然流入を伸ばすのも大事ですが、獲得コスト(CPI)を上げすぎると今度は収益性が下がってしまうため、バランスが難しいんです。

芸者東京さんには、ギリギリのラインで獲得コスト(CPI)を提案しましたが、AppLovinを信頼してくれて、すぐにGOサインをいただきました。

結果として、勢いがあるタイミングでボリュームを取り逃がさなかったことが、アメリカのAppStoreでの1位獲得につながりました。

田中:
僕らとしては、AppLovinさんは世界的に膨大なプロモーションのデータを持っていて、その数値をもとにゲーム開発の優先度を決められたのは助かりましたね。

あとは、ぼくらがテストをしているゲームを、すごく熱心にやり込んでくれていて、信頼できる定性的なフィードバックをくれるのも参考になっています。

最後に「ハイパーカジュアルに興味がある人」にメッセージなどあればお願いします。

田中:
ハイパーカジュアルって、プロモーション前提なので「広告会社を儲からせてる」と揶揄されることもあるけど、

むしろ、プロモーション前提だからこそ、奇抜な設定やIPを使ってバズらせるとかせずに、ゲーム自体が持つ本質的な面白さで勝負できると思います。

面白いゲーム性とはなにか、考えて創り出すことに集中できるというか。そして、世界中の人に遊んでもらえることも、このジャンルの良いところだと思います。

どんなゲームをつくっても、かける情熱や愛情って一緒じゃないですか。日本が世界と比べて10分の1の人口しかいないから、10分の1の情熱でやろうとはならないように。

だったら、最初から世界に向けてつくっていくほうがいいなあと。ただ、ぼくらいまだに社内でちゃんと英語を話せる人間はいなくて、パスポートの所持率も半分以下です。

そんな会社でも、日本から世界に向けてカジュアルゲームをつくって、ちゃんとリターンも出せることが伝われば嬉しいですね。

とくに、日本でもハイパーカジュアルをつくる人が増えたらいいなと思います。競技人口が増えてレベルが上がると、うちにもいい選手が入ってくるので。笑

全然知らない国の人たちが、自分のつくったゲームを遊んでくれるのは、すごく面白いことですよ。

というわけで、この記事読んで興味を持ってくれた方は、「ハイパーカジュアル道場」として芸者東京に入門してもらえたら嬉しいです。

入門とまでいかなくても、興味があればまずは気軽に遊びにきてもらえたら嬉しいです。歓迎します。

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今回は、全世界で大ヒットを記録したハイパーカジュアルゲーム「Dash Valley」のデベロッパー MadBox より Maxime Demeure 氏、そして日本でも人気の高い放置系ゲーム「Idle Miner Tycoon 『ざくざくキング:採掘王国』」 のデベロッパーKoliblri Games より Daniel Stammler 氏をそれぞれフランス・ドイツよりお招きし、パネルディスカッション形式でお話を伺います。

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取材協力:芸者東京株式会社、AppLovin株式会社
広告企画:アプリマーケティング研究所

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