本日は「おっさん☆たまご」「つめこめ☆おっさん」などおっさん系ゲームで躍進する、株式会社comceptのインタビュー記事をお送りします。
comceptは「ロックマン」「バイオハザード2」「鬼武者」などヒットゲームシリーズを生み出した稲船 敬二さんが創業した会社、ゲーム業界ではかなり有名かとおもいます。
(※株式会社comceptのお二人、左:矢杉さん、右:富田さん)
「おっさん☆たまご」について
どのようにして「おっさん☆たまご」は出来たんですか?
矢杉:
最初は「ゆで卵をつくるゲーム」を考えていました、ただそのままだと面白くないので、卵むいたら何か出てくるゲームをつくりたいなと。
それで本屋に行ったら「おじさん図鑑」っていう本が推されていたのがヒントになり、「ゆで卵をむくとおじさんが出てくるゲーム」の企画が出来上がりました。
ゲーム性を考える上では「なめこ」も参考にしましたね。
卵が時間をかけて茹でられていくのと、放置系のゲーム性があってるということもあり。
※おっさん☆たまごは、放置系のおっさんコレクションゲーム。
comceptさんでは「おっさん☆たまご」が代表作になりますか?
富田:
代表作にはなるんですけど、実は最初につくったアプリタイトルなんです。(※comceptはコンシューマーゲームがメインの会社)
われわれ基本的には企画会社で、開発部隊を社内に持っていなくて、サウンドやプログラミングに関しては、外部の開発会社に依頼してつくりました。
コンシューマーゲームとアプリだと、いろんな意味で違うと思うんですけどどうですか?
矢杉:
コンシューマーやってた頃は、自分が面白いと思うものを突き詰めて、「さあユーザーの皆さん、このゲーム面白いでしょ」っていう感じで出してたんですけど、無料アプリって、ユーザーに合ったものを出さないと全く遊んでもらえない。色んな人の感覚でモノを捉えることが大事です。
あとはコンシューマーの人は、いろいろ盛っていっちゃう傾向が強いんですね。つまり、いろんな機能を付け加えて、すごく操作のしづらいゲームになってしまったり。
スマホのゲームはシンプルにどんどん削って遊びやすくしないと受け入れてもらえない、その辺は「おっさん☆たまご」を通じて実感したところです。
2013年の4月に出して、今のダウンロードはどのくらい?
矢杉:
「おっさん☆たまご」シリーズで180万ダウンロードです、ただ、ほぼ初代の「おっさん☆たまご」が占めている状況ではあります。
リリース当初の反響はどうでしたか?
富田:
実は、初月で30万ダウンロードを超えていたんです。考えられる大きな要因は特になくて、クチコミですね。
矢杉:
1つ良かったのは、ツイッターとFacebookの投稿機能をつけていたので、「これあの先生に似てる」みたいな感じでツイートされていたり。
一部、インセンティブつき(ポイント付与)のシェアもあるんですけど、インセンティブのないやつがビックリするほど沢山投稿されていた。
富田:
多分、キモかわいい加減がちょうど良かったんでしょうね。汚くも嫌らしくもないし、おっさんの絵柄が女子高生に受け入れられたのは大きい。チームメンバーのうち、デザイナーの2人は女性で、おっさんを描いてるのも女性なんです。
春のおったま! おっさんたまご、むいちゃいました。「銭湯のクマさん」 ゲームアプリ「おっさん☆たまご ちょっとだけよ~春~」#おっさんたまご https://t.co/iNVmjMLxVC 永井先生に似てる pic.twitter.com/QfPF3W46ls
— Sarina (@poteto_1130) 2014, 6月 29
テレビで10万ダウンロード伸びた!
メディアに取り上げられたりとかはありますか?
矢杉:
テレビに何度か(自然に)取り上げられました。それも、ちょうど勢いが落ちてきた頃にテレビにでたので、そこは運がいいなと思いますね。
めざましテレビで「女子高生の間で今おっさんが萌え」みたいな特集で「おっさん☆たまご」が紹介されて、その日だけで2-3万ダウンロード伸びて、しばらく勢いが続きました。
富田:
ズームインサタデーで「つめこめ☆おっさん」が紹介された後は、10万ダウンロード伸びた。
「つめこめ☆おっさん」はその時「50万ダウンロードいった!」みたいなタイミングだったのですが、そこから100万ダウンロードまで1カ月くらいで到達したので、その後の伸びもすさまじかった。
日本と海外のダウンロード比率はどうですか?
矢杉:
「おっさん☆たまご」は、日本70%:海外30%くらい。海外は台湾25%、その他5%のイメージです。
台湾で伸びたのはなぜですか?
富田:
台湾で伸びたのは謎なんですよね。現地に詳しい人いわく、台湾でも「おじさんブーム」が来てるからではないかと。あとは4gamerさんの記事を、勝手に現地語で紹介してるサイトがあるからという話もある。笑
矢杉:
「おっさん☆たまご」のFacebookページで、「いいね!」を押してくれてる人が半分くらいは台湾の人なんです。
課金やグッズ展開について
「おっさん☆たまご」は、広告と課金だとバランス的はどうでしょうか。
矢杉:
広告メインですけど、課金も意外とあるなって感じ。広告8、課金2くらいではありますけど。
課金もほんとゆるく入れてて、課金しなくても十分遊べるバランス。どっちかっていうと「どうやったら長く遊んでもらえるか?」を軸に考えてました。
矢杉:
最初「おっさん☆たまご」をつくってたときに「アプリの寿命は3カ月だ」って聞いてたんですが、1年以上経ってもじわじわ続いているので「アプリのカジュアルゲームでも良いもの出せば続く」という印象です。
コンシューマーでそんな長く売れるタイトルってそんなにないので、スマホのほうが良いもの出せば息が長い、っていうのは結構面白いなと感じましたね。
「これ、うまくいったな」みたいなことってありますか。
富田:
グッズかな、iPhoneのカバーとか。金銭的にはうまくいってないんですけど笑。グッズが出て「何これ気持ち悪い」をきっかけに知ってもらうことができているのではないかと期待してます。
その点では「情報の発信源は絶対女子高生であるべき」と思ってるんですよ。女子高生から発信していって、それを何となく女子大生のあたりまで引っ張っていったり、
あと女の子に流行ってると、男の子たちも「やっとかんと話でけへん」となりますよね、そんな情報の流れがあると思うんです。
(※オフィスに飾ってあった「おっさん☆たまご」グッズの写真。)
グッズが「話題のキッカケ」になるってことですね。
富田:
そうですね。あとこの前、元モーニング娘。の吉澤ひとみさんが、ブログで「おったまキャメラ」を使って、自撮りの写真を載せてくれていたんですね。
「これはチャンス!」と思って、おっさん☆たまごグッズを事務所宛にお送りしたところ、iPhoneのカバーを実際に使ってくれていました。ちゃんと渡してくれたということですね、嬉しかったです。
(画像:吉澤ひとみオフィシャルブログより)
「つめこめ☆おっさん」について
「つめこめ☆おっさん」は設定が面白いですね。
富田:
「女の人におじさんがくっつく」とかは、スタッフの女の子たち嫌がってるんですけどね。「ほんとに嫌なナイーブな人もいるんですから」ってキツく言われたね、笑
(※「つめこめ☆おっさん」は電車におっさんをつめこんでいくパズルゲーム。100万ダウンロード突破している。)
「つめこめ☆おっさん」のほうが「おっさん☆たまご」より課金割合が多くなりますか?
矢杉:
課金は多いですね。逆に広告が少ない。横画面なんで、割に合った広告ってのがなかなかなくって。途中から全画面広告でGAMEFEATさん入れたりして、多少良くなりました。
全画面広告は自社広告の効果も結構高かったかな、テレビでガッと上がったときにも、他のタイトルにユーザーが流れたので。
全画面広告は最初「タイトル画面に出したら苦情来るかな」って心配はしてたんですけど、意外とそういうのは少なくて、ホッとしてます。
課金アイテムはどれが一番売れますか?
矢杉:
一番売れてるのは「時間延長」ですね。たうりん(行動力回復)はゲーム中でいっぱいあげちゃってるから。
ただ「課金しなくても遊べ過ぎやろ」というのもあって、ちょっと難しい裏ステージを追加したところ課金率が上がったので、まぁ成功したのかなっていう印象はありますね。
これ裏ステージの発想面白いですよね。どっからきたアイディアだったんですか?
矢杉:
コンシューマーでよくやる「2周目」ってやつです。ボリュームを増やしたいけど、新しいのを追加するほど余裕がないっていう。
最初から入ってるステージは、ライトユーザーに向けてものすごい簡単にしてあるので、ゲーム好きの人用に難しい「裏ステージ」を用意したという形です。見た目の雰囲気などもガラっと変わるので、単なる「2周目」以上のものにはできたかなと思います。
コンシューマーゲームとアプリの違い
2作連続で100万DLを突破していますが、コンシューマーゲーム出身の会社だから言えるゲームのつくり方のコツなど?
矢杉:
自分たちではそんなに思ってなかったんですけど、よく言われるのは「手触り感がすごいいい」ということ、UIの動きであったりとかSEの使い方とか。
確かにそこはアクションゲームでフレーム単位で調整するようなのをずっとやってたので、その経験はいきているのかもしれない。
富田:
僕、元々そのファミコン時代にカプコンにいたのですが、今回すごく成功したんじゃないかなと思ってるのは、音楽なんですよ。
コンシューマーゲーム業界にいる人たちが音楽つくると「ゲーム音楽」をつくっちゃうんですよ。でもゲーム音楽を好きな人ってゲーム好きの人だけなんですよね。普段ゲームとかあまりやらない人達がゲーム音楽を聴いて、「いいやん!」と思うかというと絶対ノーなんです。
だから今回の「おっさん☆たまご」の音楽は、はっきり言ってしまうと誰もが楽しんだ「だんご三兄弟」をモチーフにしてるんです。アプリの音楽はそういう風につくらないとダメなんじゃないかなと思ってます。
アプリは、実際やってみて楽しかったですか?
富田:
めっちゃ楽しいですよ。ゲームつくってて一番楽しかったのってやっぱファミコンの時代やったのですが、それにすごく近いと思ってて。
ファミコンの頃ってゲーム会社も小ちゃくて、わいわい言いながらつくっていた。あとは、グラフィックより「工夫」が必要っていうんですかね、その辺も完全にファミコン時代かなって。
矢杉:
コンシューマーゲームでは、「お客さんの顔」ってそこまで開発中に見えてなかったんですね。スマホは「お客さんがどう遊んでるか」常に想像しながらつくっていかないとダメ、そこが全然違いますね。
本来はコンシューマーもそうしないといけないんですけど、自分のやってきた環境では結構難しかった。だからコンシューマーずっとやってた人が、スマホのカジュアルゲームを1回やると視野がすごく広がるんじゃないかと思います。
最後に何か告知などありましたらどうぞ。
富田:
「おっさん☆たまご」シリーズでは、結構他社アプリとコラボしているんです。
「育ててイケメン」「マッチに火をつけろ」「ちいさなおじさん たいへん恐縮ですが、しばらくの間お世話になります。」など、今後も機会があればやっていきたいと思っています。
矢杉:
弊社comceptは企画・ディレクションがメインの会社で「開発会社さんと組むことで化学反応を起こしたい」という思いがありますので、もし一緒に仕事してくれるパートナー会社さんがいたら是非、声かけてください。
取材協力:株式会社comcept
編集後記
コンシューマーゲーム出身の会社ならではの視点はおもしろかったですね。「カジュアルゲームで事業が成り立つと思ってなかった」と言ってたのも印象的。
あと、芸能人がアプリつかってくれているのを見たらグッズを芸能事務所に送るのってありなんですね、むしろグッズなければつくってしまうくらいの勢いでいい気がした。