お相撲さんが膝を回して空を飛ぶアプリ「グルコサミン」、女子高生が反復横跳びするアプリ「はんぷく!」など、数々のクリエイティブなアプリを生み出す、hamonの弘中さんにお話をお伺いしました。
ゲーム会社を退職し、夫婦でアプリ開発で独立
今年からアプリ開発者として独立されたのですよね?
弘中:
はい、2013年1月に独立しました。前職は夫婦ともにコンシューマーゲームの会社に勤めていました。
夫婦での活動は珍しいと思いますが、夫婦でアプリを開発することでのメリット、デメリットは?
弘中:
メリットは意思疎通がしやすいこと。お風呂に入っている時にアイディアが出たら、風呂あがりに相談できるスピード感。
デメリットは、仲が良いとこだわりが言いにくくなること。
ただ、夫婦ともに、今まで家庭用ゲームをつくってきたので、素人っぽいのはだしたくないという気持ちがあり、8割完成していても開発をやめるアプリもある。
独立前と後のギャップはあった?
弘中:
最初1、2ヶ月くらいは苦労したが、3〜4月くらいには思った通りになってきました。
4月には関西ローカルの、朝のテレビ番組に取材されて業界内では知名度があがって、テレビ放送後には、地方のゆるキャラのアプリの依頼やゲーム開発依頼がきました。(受託開発は基本的には断っている)
「お相撲さんのおっぱい」が奇跡を起こす
今までに一番ダウンロードされたアプリは?
弘中:
継続的にずっとダウンロードされているのは、「グルコサミン」。グルコサミンはカテゴリで50位とかをうろうろしているが、毎日数百ダウンロードされている。
グルコサミンの企画はどのようにおもいついた?
弘中:
当初は「スーツのビジネスマンが、膝を回しながら歩くリズムゲーム」だったのですが、インパクトがなく、おもしろくなかったんです。
その当時、ソーシャルゲームのリリースが乱発している時期で、金のフレームに、女の子のキャラがおっぱいをのせているアイコンのアプリばかりで、
「また金色のおっぱいでたよ!」「もはや、金色のおっぱいアイコンつかっただけでヒットするんじゃない?」ってネタにしていた。笑
「それを男でやったら絶対おもしろいな」と考えて、おっぱいの大きい男といえば力士だなという結論にいたりました。
映像にしてみると、力士が膝を回しているだけで面白く、力士に物理エンジンを仕込んでとばしてみたら、めっちゃおもしろかった。悪ノリし続けたらああなりました。
くだらないことを考えるのが好きなんでしょうか?
弘中:
そうですね、くだらないことばかり考えています。
アプリ開発者は海外も視野に入れるべき
「萌えキャラアプリ」の海外反響がすごかった話
弘中:
「はんぷく!」という、女子高生が反復横跳びするアプリをだしたとき、海外のオタク層にスゴい受けたんですよ。
フランス語、ドイツ語、英語などで、熱烈な応援メールをもらいました。
UIとか画面内の文字だけは英語にしていましたが、ストアの説明文とかもローカライズがめんどうくさくて、「オタク文化は不滅だ!」って英語でかいただけです(2行くらい)。
※女子高校生が反復横跳びするゲーム。
アプリをたくさんつくると収益化のノウハウはたまる?
弘中:
はい、ひとつもヒットタイトルがなかったからこそ、「少ないダウンロードでいかに収益をあげるか」を特化して研究しました。
コツはとしては、海外のほうが圧倒的にユーザーが多いので海外を狙うことです。やっぱり国内を重視している人が多いですけどね。
「ビール瓶切り」というアプリが、インドのアプリストアランキングで1位をとったことがあったが広告単価が低すぎて全然儲からなかったことがあったんです。
その時に「海外で効果の高い広告」を研究してから、海外からの収益もかなりあがるようになりました。
インドで1位になった「ビール瓶切り」インドでなぜヒット?
弘中:
インドのポータルサイトで検索したりもしたが、全然原因がわからない。笑
自然に1位になることはないと思うので、インドの有名人が紹介したとかテレビで紹介されたのだと思う。
※「ビール瓶切り」マッチョが手刀でビール瓶を斬るアプリ、デザインは海外ぽい。
「海外で受けるネタにしよう」と最初に考えている?
弘中:
いえ、基本的にネタは国内向けですが、英語にローカライズして全世界にだしておくと、それなりにダウンロードされます。
ポケモンやドラゴンボールが世界中で売れているように、日本のデザインは世界に通用します。ただ海外では「色が少ない」というのは受けないと思うので、カラフルにすると良いと思います。
無名のアプリ開発者は、どのようにプロモーションすべき?
弘中:
とにかく「面白いアプリ」を考えてつくることです。本当におもしろいアプリは、口コミだけであっという間に1位になったりする。
結果的にレビューサイトでも取り上げられやすく、プロモーションにもつながる。シンプルに、売れてないアプリは面白くないです。おもしろくないものが売れるはず無い。
いろいろ聞いてみました。
どのくらいのペースでつくっているんでしょう?
弘中:
結果的に月1個くらいです。実質、開発期間は1〜2週間で、残りは悩んだり考えたりしている。
AndroidとiPhoneはどちらがおススメ?
弘中:
開発的の入門という意味ではiPhoneアプリがオススメ。全くどこにも紹介されていないアプリでも一日数百くらいダウンロードされるので、モチベーションも維持しやすいのではないかと。
アプリのヒットは予想できますか?
弘中:
はい、「これいける!」と思ったアプリはだいたい売れています。「これはわからないな」というアプリは大抵売れない。
開発者目線でも、アプリ市場は年々盛り上がっていますか?
弘中:
昔はトップ10に入らないと食べていけなかったけど、今は100位ランキングでも食べていけるくらい収益がでるようになった。
ランキング100位のアプリを10本だして、月収100万を目指すというのは可能性としては十分ある。
アプリ開発者は、生計を立てられている?
弘中:
交流会を主催した時は、40人中半分くらいは食べていけているレベルでした。
もしかしたら、食べれる人たちだけ集まっていたかもしれないけど、少なくとも、10人に1人は食べれていると思う。
これからアプリ開発者目指す人にアドバイスお願いします。
弘中:
「なんだこのアプリは!」とみんなが驚くアプリをつくれば、絶対売れる。「自分の個性をどれだけアプリにこめられるか」に集中したほうがいいです。
売れたアプリを研究するのもいいけど、個人開発アプリはアイデア勝負ですよね。
かっこいいですね、芸術家みたいですね。
弘中:
売れない芸術家ですね、笑
hamonさんの、今後の方向性を教えてください
弘中:
受託はやらずに、自社アプリに特化して作り込んだゲームを発表したいです。誰かを雇ったりという予定もなく、夫婦二人でおもしろいゲームをつくりたいです。
編集後記
ありがとうございました。取材を終えてみて感じたことは、
・開発者としてのクオリティへのアプリのこだわりがスゴイ
・金色のおっぱいアイコンのくだりは革命、有史に残る出来事
というところです。
ヒットアプリ開発者の方は、企画力・創造力が素晴らしく高い方ばかりですね。金色のアイコンの発想の転換は衝撃的でした。ぜひhamonさんの今後に注目してみてください!
協力:hamon