ダントツにおいしい!と感動させないとダメ。ガトーショコラから学ぶ4倍値上げしても売れるブランディングの秘密。

2014年02月17日 |
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本日は「1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ 4倍値上げしても売れる仕組みの作り」という本を紹介します。
この本は、ケンズカフェ東京というお店のオーナーシェフの書いた本です。

当初、500グラム1300円で売っていたガトーショコラを、
ブランディングを強化することで、最終的には250グラム3000円で販売することに成功し、
現在は、(多い月は)月に1000本以上販売しているそうです。

アプリは直接的には関係ないのですが、
ブランドを確立していく、良い商品をつくっただけでは成功しないなど、
参考になるところが多かったのでポイントを絞って紹介していきたいと思います。

あらすじ

元々レストランをメインにしていたが、
そこでデザートとしてだしていたガトーショコラが「とてもおいしい」と人気になった。

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(出展:ケンズカフェ東京)

それもそのはず、
ガトーショコラはシェフが本場の味を元に日本に持ち込んだ自信作だった。

ガトーショコラが評判になるにつれて、
持ち帰り販売への対応や、通販での対応などお客さんからの要望がたくさんでてくる。

最初は「ガトーショコラのお店じゃないのに」と乗り気ではないところがあったが、
最終的にはガトーショコラの専門店として成功した。

「職人は黙っていいものをつくっていばいい、
商品力さえ磨いていれば多くのお客様に真っ当に評価されて売上があとからついてくる。」

このように考えがちだが、現代のビジネスでは通用しない。
売り方、ブランディング、ネット対応などを真剣に考えるべき。

最初の値上げ-量は半分なのに値上げ

当初はガトーショコラを500グラム1,300円で販売していたが、
250グラム1,500円に値上げをした。

値上げをした理由は、
最初は単純にデザートとして出していたものを持ち帰り対応していた程度だったが、
ガトーショコラを単体でビジネスとして成立させようと考えたため。

「サイズが半分になったけど値上げ?」と嫌な顔をして買わなくなった人もいたが、
むしろ、結果的に販売数は増えた。

販売数が増えた理由はなぜか?

1,300円⇒1,500円に上がったことで、
自分の家族へのお土産からちょっとした手土産の商品になり、商品の格が上がったのである。

手土産として買う人が増えたおかげで、
「もらって美味しかったから」とお土産をもらった人が買いにくるケースも増えた。

二回目の値上げ-商品力にふさわしい値付けをした。

二回目の値上げは、
1500円⇒2000円に値上げをした。

当初は自分の決断に半信半疑だったが、
友人知人にガトーショコラをプレゼントをして「これいくらだと思う?」とヒアリングをしたところ、
1500円以下という答えはほとんどなかったので、2000円でも勝負が出来ると割り切った。

また、値段にふさわしい商品力を備えていることが前提になるが、
値上げによる商品の格上げをするとお客様のレベルも上がる。

お客様のレベルが上がると、チョコレート通も増えるので本物を提供しないと納得してもらえなくなる。
値上げにあわせてチョコレートのクオリティを上げ、パッケージも見直して商品力自体も上げた。

三回目の値上げ-専業でやっていくために1.5倍の値上げ

2000円⇒3000円に値上げをした。

レストラン業からガトーショコラ1本に絞ることを考えていたので、
利益を出していくために値上げをして大胆な仕切り直しをする必要があると考えた。

「とんねるずのみなさんのおかげでした」の食わず嫌い王決定戦で、
藤井フミヤさんが紹介してくれるという話もあったため、テレビ放映の前に急遽値上げを決行。

値上げにあわせて、材料もパッケージもより高級なものに見直した。
常識的に考えると1本3000円のガトーショコラは高すぎるが、
だからこそ話題になるし、食通たちが「一体どれだけおいしいのか?」と興味をもってくれやすくなる。

結果的に値上げは大成功、テレビで紹介された月は2,800本以上売れた。

「1本3,000円のガトーショコラ」というインパクトが強烈だったのか、
その後もテレビや雑誌などでも紹介されるようになり、売上は安定した。

原価ではなくお客さんの満足度で値段を考えるべき。

飲食業会では原価率3割というのが定説になっている。
例えば1本1000円のワインは3000円で売るというように。

しかし、この「原価率から値段を決める」という方法は、
売り手側の都合しか考えていない間違っている方法。

大切なのはお客様の満足度で、
極論1円のモノを1万円で売って喜んでもらえるならそうするべき。

ブランドを強化する方法

クオリティの低いトップブランドは存在しない、
商品力・クオリティこそブランドを育てる大前提。

クオリティを上げるための努力は惜しまない、他よりも「ちょっとおいしい」ではダメ。
「ダントツにおいしい」と感動してもらえないとトップブランドとは呼べない。

ネーミングも工夫

当初は「ケンズカフェ東京のガトーショコラ」としていたが、
最高級の品質をシンプルに伝えるためにはどんなキーワードが適切かを考え、
「特撰ガトーショコラ」という名前に変えた。「特撰」とは「より手間をかけている」という意味。

パッケージングは高級ブランド並

巷のケーキ屋では安価な組み立て式の折り箱をつかっているが、
ケンズカフェでは貼り箱と手提げ袋をつかっている。

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(出展:ケンズカフェ東京Facebookページ)

高級ブランドを購入しパッケージングを独自に研究。
パッケージングの参考にしているのはティファニー、ルイヴィトン、エルメスなど。

エルメスやヴィトンの小物を入れても違和感がないものを目指してつくった。
そのため「スイーツが入っているようには見えない」とよく褒められる。

「金の時代」と「銀の時代」、リボンの色にも理由がある。

パッケージングの世界には大きく「金の時代」と「銀の時代」がある。
「金の時代」はわかりやすい見栄えが受ける時代、銀の時代はシックでモダンな雰囲気が受ける時代。

2012年に、貼り箱を包んでいるリボンの色を銀から金に変更した。
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(出展:ケンズカフェ東京Facebookページ)

理由は、2012年まではデフレが続いて質実剛健の時代だったから「銀の時代」だったが、
アベノミクス以降株価が上昇し「金の時代」に突入したと感じたから。

ローカライズは自己満足であってはいけない。

本場フランスのガトーショコラは、
ケンズカフェで提供しているガトーショコラの2倍の砂糖をつかい、
バターの配合比率も高くてどっしりと濃い味。

これをこのまま日本で提供して、
「これが正真正銘、本場フランスのレシピなのだから、この味がわからないのはおかしい」
と言うのは作り手の自己満足であり独善である。

日本は”高級チョコレート後進国”であり、
本場のチョコレートが普及するにはまだ発展途上という背景もある。
食べた人が心の底から喜んでくれる味を提供するほうが適切。

100個試して、他の分野の一流を知る

リミュエールという映画評論雑誌の編集長の言葉、
「映画評論家になるのは簡単だ。年間100本の映画を観れば誰でも評論家になれるに違いない」

一定数以上の場数を踏むことはあらゆる分野で本物を見分ける眼力を養う。
年間100件以上のフランス料理を食べ歩いてガトーショコラのある店では必ず注文した。

そこでわかったことは
ケンズカフェのガトーショコラはどの一流レストランにも負けていないという事実。

他にも、
花屋さんを100店ほど利用
床屋を10年かけて100店を利用
クリーニング店を100店利用 して本物を見極める力をつけた。

実際にやってみると、
自分の小さな世界に閉じこもっているだけでは決してわからないことが必ず見つかる。

メモ:
これは実践しようと思った、アプリの場合などでもまずは自分がリリースするジャンルのアプリやWEBサービスを100個は使ってみる、ということをやってみると良さそう。

1品ビジネスのメリット

ガトーショコラ、1品のみに特化したからこそ日本一になれた。

スポーツにいろいろな種目があるようにスイーツにも多種多様な品目がある。
どのスイーツもいっぺんに極めることは難しい。

ガトーショコラに絞ることで1つの商品のみに集中できるので、
圧倒的にクオリティの高いものをつくることができる。

つねにガトーショコラのことばかり考えていられるので、
商品も洗練されダントツの商品力を獲得できた。

1品に特化していると大量生産ができることもメリット、
ケンズカフェでは1社のチョコレートを年間4トンつかっている。
そのため価格交渉力も高まり、仕入れの価格も下げてもらえている。

メモ:
アプリ業界もこれだけ競合が増えてきていて、似たようなアプリもどんどん出てきている状況。
この特化というのは特に中小のアプリ開発者にとっては有効な戦略だとおもう。例えば、脱出ゲーム専門、パズルゲーム専門、健康系アプリ専門など、
ひとつに絞って徹底的に商品力やノウハウを磨き上げる。

一回そのジャンルでブランドが確立されたら、
受託でもかなり良い仕事が入ってくるのではないだろうか。

ユーザー層が同じアプリをつくっていくことで、
アプリ間でのユーザー送客の効率が非常に高くなるというメリットもあるはず。

あえてレシピを一般公開する理由

レシピをあえてぐるなびレシピで公開している。
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(出展:ぐるなびレシピ

「レシピを公開して大丈夫なの?」とよく心配されるが、
もちろん真似されることは折り込み済み。

レシピが同じであったとしてもブランド力がないと1本3000円では売ることはできないし、
例えば同じ材料費を使おうと思っても大量生産できなければ高くついてしまうため、
「1品特化」というビジネスモデルを真似しないとコストがあわない。

レシピを公開することで広く知ってもらうきっかけをつくっている。
レシピページにはバレンタインの前後は1日2万のアクセスがある。

またお店では、ガトーショコラ教室も定期的に開催している。
参加者につくりかたを丁寧に教えている。

ガトーショコラの真のおいしさがわかる人が増えれば、
自分の店がかならず選ばれるという自信があるから。

メモ:
アプリでも例えば「健康アプリ」に特化してある程度力をつけた後は、
「成功する健康アプリの作り方」をセミナーで教えてもいいし、kindleの電子出版で販売してもいいし、アプリをつくりたい企業にコンサルに入ってもいい。そうした展開のマネタイズ方法もありだと思う。

クチコミはどこからはじまるかわからない

タネをまかないと花はさかない。
知人や近所の人たちに機会があるごとにガトーショコラをプレゼントしている。
味や価格帯についての意見をもらうため。

近所のネイルサロンの女性オーナーにもガトーショコラをプレゼントしたことがあった。
そのオーナーは「おいしかったのでお客さんにも紹介しておきますね」と話していた。

実はこれがテレビで紹介されるきっかけになっていた。

藤井フミヤさんの弟の奥さんがネイルサロンの勤務者で、
彼女にクチコミが伝わったことで、

藤井フミヤさんの元にもガトーショコラが届き、
「おいしい!」と感激してもらいテレビで紹介してもらえることになった。

「テレビで紹介してもらえてブレイクしてラッキーだね」と言われるが、
これは偶然ではなくて必然。

1年後なのか5年後なのかは神のみが知ることだが
ガトーショコラの商品力を磨き続け、いつ表舞台にでても恥ずかしくない状態にしていて味には絶対的な自信があった。

これを常に実践していたから、
全国ネットで藤井フミヤさんのような著名人にも紹介してもらえた。

メモ:
これは本当ににそうで、どこでどうつながっているかわからない。
目の前のユーザーを満足させるというのを忘れてしまったらその先はないと思う。なにげなくブログで書いたことが、大きな取材につながることもあれば、
知り合いの知り合いが実は有名人だったというのは何気によくあること。

おわりに

いかがでしたでしょうか?

かいつまんで紹介しましたが、
成功したケンズカフェのオーナー自身が書いたということもあり、
当たり障りのないノウハウをまとめた本とは迫力が違って、非常に楽しめます。

本自体もそこまで厚くないのでさらっと読めますよ。

その他にも、
・クレジットカードに対応すべき理由
・おつりには曲がっていない新札(新券)しか使わない
・限定という言葉でスペシャリテ感を高める
・異業種のブロガーにアプローチする理由
・SNSやメルマガ活用のコツは覚えてもらうこと

などなど、
「なるほど」と思わされるところがたくさんありました。
気になった方は書籍の方で詳細を読んでみてください。

アプリのレビューサイトに送られてくるレビュー依頼などを拝見して一番よく思うのが、
「これより、高機能なアプリもうあるじゃん」ということです。

競合がどんどん増えている状況では、
・圧倒的につかいやすいアプリをつくる(商品力を強烈に高める)
・切り口を変えてまだ価値を提供できていないアプリをつくる(独自のポジションをとる)

ということが必要なのだなと感じます。
(もちろん簡単ではない)

ケンズカフェのガトーショコラも、
・パッケージ含め、圧倒的に高い商品力を磨き続けた。(商品力を強烈に高める)
・元々は日本に本格的なガトーショコラがまだ少なかったこと。(独自のポジションをとる)
というのは成功要因として大きいと感じました。

他よりも「ちょっとおいしい」ではダメ。
「ダントツにおいしい」と感動してもらえないと、トップブランドとは呼べない。
という言葉が印象的でしたが、

「良いものつくっているだけでは売れない」も真実ですが、
商品力のないものが成功するなんていうことはないということですね。

ちなみに、ガトーショコラ買ってみようかと思ったら売り切れでした。。
気になった方は再開したときにでも公式サイトをチェックしてみてください。

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