※SlideStory運営、株式会社ナナメウエのCEO瀧嶋さん(左)とCCO石濱さん(右)。
SlideStoryができるまで
「株式会社ナナメウエ」はどのような経緯で創業したんですか?
瀧嶋:
創業は2013年の5月ですね。もともと大学のゼミで知り合った二人で「一緒に起業しようぜ」という感じではじめました。
最初は自社アプリをつくりつつ、クラウドソーシングで受託開発をこなしていたのですが、2013年の12月に3,000万円の資金調達をして、今は基本的にSlideStory1本に絞っています。
今年1月の段階ではこの2人しかいなかったのですが、いまはメンバーが10名ほどです。資金調達後にWantedlyや求人サイトでメンバーを集めました。
SlideStoryはどのような経緯で生まれたのですか?
瀧嶋:
最初は、Hondaが出してるRoadMoviesを見て「あ、動画ってすごい良いな」って純粋に1ユーザーとして感じたんですね。
その後、自然と動画サービスを作ろうという話になって「どうやったらより身近で手軽に楽しめる動画サービスになるか」と話しながら原型ができていった形ですね。
※「SlideStory」は写真・フィルタ・音楽を選ぶだけで動画が簡単につくれるアプリ
資金調達はどんな感じで決まったんですか?
石濱:
資金調達は、ある意味たまたまなんです。もともと僕がIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)っていう有名な起業イベントでスタッフ(アルバイト)をやっているときに、Skyland Ventures(ベンチャーキャピタル)の木下さんという方と知り合って。
後日、Facebook上で自社のニュースを流したら、木下さんから「すごい面白い」ってメッセージがきて。そこからEastVenturesの松山大河さんを紹介いただいたりして、とんとん拍子に資金調達がきまりました。
じゃあ石濱さんがIVSのスタッフをやってなかったら、その資金調達はなかったかもしれないってことですか。
石濱:
なかったかもしれないですね。SlideStoryはリリース当初から数字がすごく伸びていて、ちょうど「お金集めて思い切ってやっていくべきか」って悩んでいたんですよね。
良いタイミングでそういうお話をいただいたなと感じます。
SlideStoryについて
SlideStoryのダウンロード数などはどのくらいですか。
瀧嶋:
2013年の10月にリリースをして、今は150万ダウンロード弱という状況です。現状はiOSだけなのですが、Android版も検討中です。
使い方としては、Vineと違って面白さを狙った動画よりも「この旅行楽しかったよね」「このデート幸せだったね」みたいにプライベートで思い出を記録するような動画が多いです。
動画作成数でいうと、5月の時点で累計200万動画ほどつくられています。一日でいうと10,000-15,000動画ぐらい。
一人あたりで平均すると2-3個ぐらいですかね。ほんとに何十個もつくるヘビーユーザーと、割と2-3個作ってたまに見返すだけというライト層に分かれています。
※SlideStoryでつくられた動画。クリックするとTwitpicのページに飛びます。
SlideStoryは若いユーザーが多いですか?
瀧嶋:
10代のユーザーも卒業シーズンぐらいから増えてきています。それまでは20代の女性ユーザーが多かったです。
やっぱり、イベントの前はユーザーがぐっと伸びますね。クリスマス、バレンタイン、卒業式、お正月とか。動画の作成数も、去年のクリスマスの時には突然ぼーんと数字が伸びました。
Androidが出たらまた伸びそうですね。でも既に海外ユーザーも多いんですよね?
瀧嶋:
はい、半分くらいが海外ユーザーです。タイと台湾が一番多くて、次に韓国ですかね。アジアで伸びたのはAppStoreでオススメされたりしたのは大きいと思います。
今年の2月ぐらいにタイでどーんと伸びて、タイのAppStoreでカテゴリ1位、総合でもトップ10に入ることが出来ました。
海外は、最初からローカライズはしてたんですか。
瀧嶋:
してましたね。特にアジアは最初から狙っていた地域だったので、最初の段階から9ヶ国語にローカライズして、タイ語と中国語にも対応していました。そこは抜かりなくやれたなと。
※各国でのAppStore最高順位、アジアではカテゴリトップ10に入っている国も多い。データはAppAnnieより。
日本と海外でできあがってくる動画の傾向の違いはありますか。
石濱:
海外はとにかく自撮りが多いんですね、女でも男でも。タイではピースしたり片目瞑ったり、自撮り写真が15枚並んでいる動画もよくあります。それを見ると少し日本と感覚が違うなと思います。
日本ではSNS上で見ていると、女子高生がつくった動画が意外とおもしろいんです。教室でストーリー仕立てての寸劇みたいなのを友達と一緒に撮っていたり。
海外ローカライズするにあたって、気をつけたことはありますか?
瀧嶋:
各国でよく使われているSNSが微妙に違うので、動画の共有先のSNSは国ごとに変えました。例えば、東南アジアではLINEと並んでWeChatがメジャーだったり。
実際SlideStoryでも、国によってはLINEと同じくらいWeChatで動画がシェアされています。
※上記は広報会議8月号に載っていた、アジア各国のSNSをまとめた図。Facebookは鉄板でインスタグラムも人気。(著)アジアクリックシンガポールの高橋学さん。
アプリのマーケティングなど
英語のアプリ名はすごい長いですけど、ASOも気にしていますか。
瀧嶋:
9ヶ国語それぞれでASO(アプリストア内の検索対策)はチューニングしていますね。絶大な効果ってほどではないですけど、多少は効果があると思っています。
※英語のSlideStoryのアプリ名(検索にかかりやすいよう色んなワードを入れているようだ)
マネタイズは今は入れていないんですか。
瀧嶋:
ほぼ入れてなくて、今はユーザーを集めている段階です。将来的には月額課金で機能を充実させたプレミアムプランみたいなのは考えています。
他の記事で見たのですが、動画のシェアとかレビューを促す、ポップアップのタイミングや頻度を工夫されているのですよね。
瀧嶋:
そうですね。例えば「アプリをシェアしてください」「レビューを書いてください」とただ出してるだけだと、ユーザーからするとすごいウザいわけですよ。
然るべきタイミングで出してあげることで、割とコンバージョンするようになります。要は「ユーザーが暇になった時に出す」のがベターということなんですけど、そこは細かく条件を決めて数値をみながらチューニングしています。
ひとつ成功事例を、具体的に教えてもらえるとしたら?
石濱:
動画を32秒最後まで見終わって、戻った時に「よかったらレビュー書いてください」ってポップアップを出すのはうまくいきました。
完成した動画を5秒までしか見てない人は飽きちゃってるわけじゃないですか。そこはちゃんと計測して最後まで動画を見た人を狙ってだしています。
ユーザーの気持ちとしては、完成した動画を見て「この旅行楽しかったな」と満足して感動しているタイミングなので「このアプリいいわ!」と思っている可能性が高い。
※自分でつくった動画を最後まで(32秒)見終わって、トップに戻ろうとするとレビュー依頼のポップアップが出てくる。
レビュー評価もけっこう高いですよね。
石濱:
やっぱり「純粋にレビューしてください」とするよりも高い評価をつけてくれますよね。あとは「レビュー投稿してくれたら楽曲あげます」という施策も、割と高い評価につながっている。
そういう施策をやってからは数値上も良くなっていますね。感覚値ですが評価は平均4.0だったのが平均4〜5くらいに、レビュー投稿数も1.5倍くらいにはなったと思います。
アプリづくりについて
やっぱり「良いアプリ」を作っていたら結果につながるものですか。
瀧嶋:
僕はそう信じてます。「ユーザーにとって気持ちの良いものを作っていこう」というのは一番思想として大事にしていて。
例えばデバックとかってすごくつらいんですけど、そういうさぼりがちなところを、どこまでやれるかの積み重ねだと思いますね。
動画系のアプリはどんどん増えていますか。
瀧嶋:
予想以上のペースで出てきてますね。2013年の12月末ぐらいからぽこぽこ出始めて、今年の4月ぐらいには飽和してきたなという状態。
Yahooさん、DeNAさんなどの資本力のあるところも参入してきています。
※ショート動画系のアプリがたくさん出てきている。
類似アプリも出てきていると思いますが、先駆者としては、類似アプリが出てくるとむかつくんですか?ある意味、誇りに思うものですか。
瀧嶋:
うーん、誇りには思わないですけど、むかつきもしないですね。
結局インターネットってどんどん似たサービスが出てくる世界なので、このぐらいは当たり前に出てくるよね、という感じです。そこから頭一つ抜けるにはどうしたらいいのかと、常に考えています。
これからアプリ作ろうとしている人に、アドバイスをするとしたら?
瀧嶋:
とにかくリーンスタートアップ的に、スピード重視でリリースしてしまうこと。最初に全機能がそろっていなくてもいいので、とりあえず人に見せられる段階まできたらだしてしまう。
それから、アップデートで機能を一つずつ追加していくと、お客さんにとっても自分たちにとっても、モチベーションが保ちやすいと思う。
石濱:
僕は「アプリをひたすら触る」ことをオススメしますね。ランキング上からアプリをひたすらダウンロードして「ここが良いね」「これは楽しいな」「なんでそれが売れているのか」と分析するのは、初心者でもできることです。
SWIFTとか技術的なことは全然わからなくていいので、先ずは今ある良いとされているものを触ってみると、感覚としていろいろ学べると思う。
確かに大事ですね。当たり前なんですけど、当たり前がわからない人も多くて、クソみたいなアプリも死ぬほどいっぱい出てきてしまっている。
瀧嶋:
それは僕もすごい思いますよ。
石濱:
僕たちなんかよりも技術的に優れている人ってよっぽどいますけど、本を出している人とかでも、プロダクトを見てみると「意外に大したことがない」と感じることも多い。
結局、「ユーザーからみて良いもの悪いもの」ってどんだけテック的な知識があるかではないんです。いま何が流行ってるとか、海外はアメリカでこれが受けているんだ、とかを理解していることのほうがむしろ重要なんじゃないかなって思います。
人のアプリのクソさはわかるのに、自分のアプリのクソさはわからなくなる「病気」みたいなのもあるんでしょうね。
瀧嶋:
意識しないと「つくってる側」と「使う側」の自分が一体化しちゃうんですよね。なのでリリース前には「これ、ほんとに良いものなの?」って自分に問いかけてみることは必要なことじゃないかなと思うんです。
なるほど。「クソだ」って言ってくれる人が周りにいるのも重要かもしれないですね。友だちに聞かれたらヘボくても「まあ・・・いいんじゃない?」って流したくなりますよね。
石濱:
確かにそうですね。僕も盲目になることがよくあるんです。英語の文献を読み漁って、すごい時間をかけて実装した機能って、イケてなかったとしても、良く見えちゃうんですよね。
そういう時に彼が「これはダメだ」って言ってくれるんですよ。そう言われてはじめて、また視点を変えて見られるようになる。そういう仲間をつくる、見つけるのも大事なことなのかもしれません。
最後に、今後の目標と告知などあればお願いします。
瀧嶋:
今年、SlideStoryについては300万ダウンロードを目指していて、海外にもどんどん進出していきたいと考えています。
また、動画と親和性の高い企業さんなどとのタイアップなども歓迎ですので、もし興味がありましたらご連絡ください。
取材協力:株式会社ナナメウエ
編集後記
ユーザーが感動しているはずのタイミングでユーザーレビューをお願いする話はおもしろかった、
SlideStoryはプロダクトをひたすら改善することで、ユーザーを増やしてきたんですね。
大学のゼミで一緒になった同級生と起業して、ある意味偶然知り合った投資家から資金調達して。どこでどんな出会いがあるかわからないものだ。