名古屋で「草野球ゲームアプリ」をつくって生活している、個人開発者さんを取材しました。「個人開発者特集2017」の第一弾です。
※furuApplications 古田 悠さん
どうして古田さんは「個人アプリ開発者」になったのでしょうか?
もともと、システム系の会社で働いていました。ただ、その会社がめちゃくちゃ暇すぎて「定時が待ち遠しい」という毎日だったんです。
それで、だんだん「何してるんだ、これでいいのか…?」という気持ちになってきて。それだったら「アプリで独立しよう」と決断しました。
独立する前にも、勉強を兼ねてアプリはつくっていました。ただ、収益は月1万円もなかったので、全然うまくいってはいなかったですね。
アプリで独立してみてどうでしたか、どうやって生活していたのでしょうか。
独立して1〜2年くらいは、貯金を食いつぶしながら生活していました。どんどん減っていく「貯金の残額」をみるのは怖かったですね…。
結局、いくつかアプリを出したけど、大きな売上にはならなくって。そうしているうちに「次は収益をださないとヤバイ」という状況になってしまった。
追い込まれてしまったんですね。
そう。ただ、2015年に出した「草野球チームを作ろう!」という、アプリの評判が結構よかったんですよ。
それで、もう一度「草野球チームを作ろう!」をベースに、草野球をテーマにした「野球シミュレーションゲーム」をつくり直すことにしました。
そうして、10ヶ月かけて完成したのが「草野球チームを作ろう!レジェンド」というアプリでした。2016年3月にリリースして、現在までに約4万ダウンロードされています。
このゲームには「草野球あるある」をたくさん盛り込みました。自分も高校から野球をやっていたので、そこでの実体験をもとにしています。
「草野球あるある」というのは、たとえばどういうことですか?
たとえば、いきなりゲームをはじめて、試合するとボコボコにされちゃうんですよ。普通のひとは「クソゲーだな」と思うかもしれないですが、草野球ってこうなんですよね。
草野球って、投手は四球(フォアボール)ばかりだったり、エラーで何点も入ってしまったり、ひどいときは「いつ試合終わるんだ?」という展開にもなり得ます。
そういう、リアリティをあえて重視しました。すると、草野球をやっている人には「ああ、やっぱこうだよね…」とわかってもらえるんです。
なるほど、おもしろいですね。
それから、草野球で何が一番大事かというと「当日、試合に来てくれること」なんですよ。技術の高さとか上手さとか、そういうことじゃない。
試合前には「出欠を確認する」というシステムを入れたのは、そういう理由です。
あと、育成要素についても、普通のゲーム感覚だと「打撃に特化しよう」と個性を出しがちですけど、それだとこのゲームでは勝てません。
なぜなら草野球だから。草野球というのは「まず守れるように」しないと試合にならないんです。笑
※粘り強く電話をかけていると、選手が来てくれる謎のシステム。草野球をやってる人にはウケがよかった
いま「草野球チームを作ろう!レジェンド」の収益については、どれくらいになっていますか?
アプリの収益は、約300万円(課金 150万円、広告 140万円)になっています。
リリースしたときは、そこまでだったのですけど、夏休みと甲子園のおかげで、月に40万円くらい売上があがった時期もありました。
特徴としては、Androidの収益が好調なこと。Androidって「おじさん層」が多いから、草野球やっている層と重なっているのかなと。
全体のダウンロード数でみると、iOSとAndroidでほぼ半々なのですが、課金収益でみるとAndroidのほうが3倍以上多くなっています。
Androidについては、1ダウンロードあたりの収益も、100円を超えていますね。
上手くいった「アプリのマネタイズ施策」があれば教えてください。
広告マネタイズの話でいうと、試合終了後に「動画インタースティシャル」をいれたところ、月に5万円ほど収益の上乗せができました。
ユーザーの反応はすこし心配でしたが、そこまで大きな反発はなかったので、入れてよかったなと思っています。
「課金マネタイズ」という意味ではどうでしょうか?
ユーザー同士で「対戦」できるようにして、その「試合チケット」を課金アイテムとして販売したのは、上手くいったのかなと考えています。
このシステムのおかげで、ユーザーも長くたのしんでくれているし、いまでも収益を安定してあげることができています。
まとめると、アプリに「課金とソーシャル性」を入れたのが上手くいった、ということかなと思います。
たしかに。リリースから1年以上たっても、収益になっているわけですよね。
そうですね。逆に、広告でのマネタイズだけだったら、収益がガタ落ちしていたと思いますし、本当に課金を入れておいて良かったなと。
ちなみに、一番売れているのは「試合チケット(65枚 2,400円)です。毎週ランキングを更新しているので、最後に1位をとるために課金してくれる方もいます。
でも、最初は課金をいれるの怖かったですね。バグがでてクレームきたらどうしよう、大量に問い合わせがきたらどうしようって。
実際、たまにクレームもありますけど、個別にきちんと対応すれば問題なかった。なので、個人アプリでも課金を入れるのはおすすめしたいですね。
運用コストについても、月1,000円のレンタルサーバーで十分運用できています。
二作目の「レジェンド」では、かなりデザインが良くなっていますが、どうやって解決したんですか?
デザインについては、自分があまり得意ではなかったので、学生さんに手伝ってもらいました。
これは、名古屋の「美大の学園祭」に乗り込んで、デザイン科のお店に行って「手伝ってくれる人いませんか?」と頼んでみたんです。
さすがに、怪しまれるかなと思って、妻と子供も連れて行きましたけど。笑
そうしたら、一人学生さんを紹介してもらえて、デザインのお仕事をお願いできることになりました。
今年に「脱出ゲーム」を出されているのはなぜですか?
脱出ゲームって「ダウンロードが伸びやすい」とよく聞くじゃないですか。それで「実際、どうなんだろう?」と試しにつくってみたんです。
結果としては、本当にダウンロードされましたね。簡単に数万ダウンロードまで伸びました。たしかに、つくりたくなる気持ちもわかるなと。
ただ、ダウンロード数は伸びやすい分、すぐに勢いが落ちてきてしまいやすい。一度クリアした人は二度とやらないでしょうし。
そういう意味では、簡単ではないと思いました。しっかり高いクオリティでつくらないと、10万ダウンロードを超えるのもむずかしいなと。
いままで「個人でのアプリ開発」をやってきてどうですか。
まず、個人開発はたのしいですね。なにより、自分が「やりたいようにやれる」というのが良いところ。
時間を自由につかって仕事ができるし、誰かに「何か言われて仕事をやる」という必要性もない、そういうところが気に入っています。
いまは、「自作アプリの収入」を軸にしつつ、知人に紹介された中で「やりたい仕事」があれば、それを多少こなしつつ生活しています。
ただ「アプリ業界は厳しいな」というのは感じますね。これだけがんばっても、収入は「サラリーマンと同等」くらいなわけですし。
これからアプリをつくる人に、何かアドバイスするとしたら?
個人的には「定番ゲーム」をもとに、アプリをつくってみることをおすすめしたいです。
たとえば、野球・将棋・オセロといった、昔からある「完成されたゲーム」を題材にして、そこにオリジナルな要素を入れてつくってみる。
そうすることで、素人が「ゼロからルールをつくる」という必要性もなくなるし、定番ゲームの「神がかったルール」に乗っかることができます。
アプリの「成功確率を上げる」という意味では、そういった方法もアリではないかなと考えています。
開発者さんのツイッター
ふるあぷさんのツイッター(個人アプリ開発ネタがおもしろいです)
1年間アプリ作り続けてそこそこヒットすれば数百万
一方、1年間サラリーマンしてればほぼ確実に数百万— ふるあぷ (@yu_fur) August 8, 2017
独立して背水の陣でアプリ作るのって無謀に見えるでしょ?でもサラリーマンしながら作りたいアプリ作る方が無謀な場合もあるんだよね。
— ふるあぷ (@yu_fur) February 21, 2017
独立してアプリ開発者になるなら貯金額は1本リリースする期間×当てるまでの本数が必要になるわけで、仮に2年分用意したとしたら2本/年でも4本以内に当てなきゃならないっていう…
— ふるあぷ (@yu_fur) February 21, 2017
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