「1日35,000曲が投稿、18歳以下が約7割」コラボでつながる音楽アプリ 「nana」100万ダウンロードを突破し、結婚したユーザーも3組は存在する。

2015年10月13日 |
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今回は音楽コミュニティアプリ「nana」さんにお話を伺いました。結婚するユーザーがでるほど、音楽を通じて人が仲良くなっているのだとか。

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※株式会社nana music 鈴江美月さん(左)、安西結さん(右)

知らない人と音楽コラボするアプリ「nana」

「nana」について教えてください。

安西:
「nana」は音楽コミュニティアプリです。手軽に音楽(自分の歌や演奏)を投稿することができます。声だけで「顔出し」をしなくていいので、投稿のハードルが低いのも特徴です。

リリースは2012年11月で、代表の文原と社員9名で運営しています。ユーザー数については、100万ダウンロードを超えていて、アクティブユーザーで見ると、iOS8:Android2くらいの割合です。

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どんなことができるアプリなのでしょうか。

鈴江:
nanaは「音楽コラボ」を前提につくられたサービスです。例えば、投稿されている「ギター伴奏」に対し「自分の歌」を重ね合わせて、新しい音楽をつくることができるんですね。

そのため、nanaを通じて「音楽が伝播していく」というのもおもしろくて。「誰々ちゃんがコレ歌っていて、いい曲だったから、私も歌ってみよう」という感じですね。

実際、とある路上ミュージシャンが投稿した「ギター伴奏」に、1,000人が「歌」をつけてカバー(コラボ)した結果、まったくの無名曲が、10万再生まで伸びたこともありました。

nana_collaboration
※nanaは「JASRAC」と「JRC」と包括契約している。そこに登録されている曲は(演奏や歌であれば)投稿してもOK。

どのようなユーザーが多いのでしょうか?

安西:
一言でいうと「音楽好きの女子高生」が多いです。ユーザーの年齢は、18歳以下が69%、22歳以下で86%で、10代がすごく多い。男女比では男性24%、女性76%になっています。

ざっくり分類すると「1.歌う人」「2.楽器を演奏する人」「3.聞くだけの人」がいて。1と2のユーザーにより、1日3〜4万の曲が投稿されています。

曲を投稿する人は「プロ」というよりも、楽器を家の中で弾いているだけ、カラオケは好きだけどバンドはやってない、といった「サンデーアーティスト」がメインです。

nana_userdata

コミュニティとして起きていることで「nanaならでは」のことはありますか?

安西:
世代を超えて「音楽に出会える場」になっていることですかね。例えば、40〜50代の楽器ユーザーさんが「昭和の名曲」を弾いて、女子高生が「なにこれ良い曲じゃん」となったり。

逆もまた同じで。nanaには「ボーカロイド」や「アニソン」が好きなユーザーも多いので、40〜50代の方が「いまどきの曲」に触れるきっかけになったり。

「ユーザー同士」が交流することもあるんですか?

安西:
そうですね、自分の歌を投稿すると「上手だね!」とか、よくコメントが返ってきます。とくに「コラボ」はコミュニケーションの起点になるんですよね。

例えば、Aさんが尾崎豊の「I Love you」のギター伴奏を投稿したとします。それに対してBさんが「すてきなギターですね、歌わせてもらいます」と歌をつけてコラボをする。

すると、Aさんとしては「私のギターに、すてきな歌をつけてくれて、ありがとう」という気持ちになりますよね。そこから「フォロー」し合って、コミュニケーションをとるようになったり。

たしかに、それは親近感がわきそうです。

安西:
はい。「趣味の合う音楽仲間」は、見つかりやすい場だと思うんです。「nana」で知り合って、オフ会やカラオケに行ったり、中にはライブを開催するユーザーもいて。

究極は、その結果「結婚したユーザー」も3組知っています。サポートに「結婚しました」とメールがきたり、オフ会で「赤ちゃんができました」と、ご報告いただくこともあるんですよ。

ユーザーを増やす施策。

「ユーザーを増やす」という意味で、工夫したことはありますか?

安西:
ASO(アプリストアの検索対策)とローカライズ(翻訳)は頑張りました。アプリは日本語と英語のみですが、ストアの情報(タイトル、説明文、キーワード)は、15言語に対応しています。

例えば、英語、中国語(繁体字、簡体字)、韓国語、ポルトガル語、ロシア語などですね。

その施策のタイミングで、新規流入も5〜6倍に増えました。ちなみに、いまの新規ダウンロード数の1〜2割は海外だったりします。

nana_aso

「ASOのコツ」は何かあるのでしょうか?

安西:
ASOでポイントだと感じたのは、「キーワード」と「ユーザー体験」をつなげることです。

どういうことかというと、例えばタイトルに「無料カラオケ!」というキーワードを入れたときは、たしかに流入が増えたんですね。でも、そのユーザーはアプリに定着しませんでした。

これはなぜかというと「nanaのコンセプトはカラオケではないから」です。「無料カラオケ」というユーザー体験を期待してきた人に、カラオケのユーザー体験を提供できなかった。

つまり「ダウンロードが増えること」と「アクティブに使ってくれること」は別の話なんだということですよね。結局「口コミ(ソーシャルとリアル)が最強だな」と感じています。

なるほど、他にはありますか?

安西:
ユーザーがTwitterでシェアするとき、画像が入るようにしたことで、Twitter経由の流入が増えました。

これは「誰と何を歌ったか(演奏したか)」というコラボ内容が、画像内に自動で生成されるようになっています。

nana_tweet
※「nana」に投稿された曲をシェアしたときのツイート。画像が自動生成される。

独自文化やタイアップ

「日本と海外ユーザーの違い」で何か感じることはありますか?

安西:
日本人のほうが繊細だと感じます。日本のユーザーは「完成度を上げてから、曲をアップすべきだ」というメンタリティを持っている。

投稿するときにも「わたし、そんなに上手じゃなくって、下手なんですけど、よかったら聞いてください!」とコメントを添える人も多い。「謙虚に謙虚に投稿している」という感じですね。

一方、海外ユーザーは大胆です。「テンポがめちゃくちゃなギター演奏」でも、堂々とアップしている。決して上手でなくても「私のすばらしい演奏を聴いてくれ!」という感じですね。

あと、海外ユーザーはコメントにも「積極さ」がありますね。例えば「あなたの歌うまいね! で、私もこの歌うたってるからさ、よかったら聞いてみて!」みたいな。笑

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ほかに「nana」に投稿されている音声で、特徴的なものはありますか?

安西:
nanaでは「クリエイティブなコラボ方法」が、いつの間にかどんどん生まれていて。私たちも、どこから出てきているのか、全然わからないんですよ。笑

例えば、Aメロ・Bメロを半々に分けて歌う「デュエット形式」のコラボや、1人1フレーズずつ歌っていく「リレー形式」のコラボもあります。

あと「声系」でいうと「50問50答」や「声面接」というのもあって。架空の「アニメの予告編」や「CM」を、つくっている人もいますね。

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※リレー形式の「Let It Be」、質問に早口で答える「50問50答」、演技力を測定する「じゃがりこ面接」などユニークな音声がたくさん。

nanaの「リアルのイベント」も開催されているんですよね。

鈴江:
はい、「nanaフェス」というリアルイベントを、8月に開催しました。有料イベントにも関わらず、延べ1,000人以上が集まってくれまして。イベント自体は赤字でしたが、やってよかった。

このイベントは、nanaらしく「一緒に歌ってみんな友だちになれる」という場にしたかったんですよ。「リアルの場」でやる音楽・調和の楽しさを、味わってもらいたいと。

「イベントのブース」はどんなものがあるんですか?

鈴江:
例えば「みんなでアカペラを歌うブース」「ギターの弾き語り体験ブース」など、見ているだけではない、参加型のブースをたくさん用意しました。

人気だったのは「歌唱力をガチ審査する」というブース。ソニーミュージックの現役プロデューサーが、その場で採点してくれるんです。一応、甘口と辛口コースを用意しました。笑

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たしかに、やってみたくなりますね。

鈴江:
そうですね。あと、おもしろかったのは「楽器のセッション」が出来るブースです。

もう、親子くらい歳の差がある、おじさんと中高生が、仲良く歌っていて。それで、セッションが終わると「またnanaでコラボしようね」と話してたり。これはすごいことだなと。

街で女子高生に「一緒にセッションしよう」と声をかけたら、まずいと思いますけど、そういう、普段は絶対めぐりあえない人たちが、音楽を通じて交われていたのは、良かったです。

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アプリ上の「タイアップ企画」もいろいろやっているんですね。

鈴江:
そうですね。例えば、新規バンドのボーカルを募集する「素人女子ボーカルオーディション」、合格者はメジャーデビューすることができるのですが、投稿が2,000件以上もありました。

あと「片平里奈さんの新曲をみんなで歌おう」という企画ですかね。「受賞者」は片平里奈さんと一緒に、ライブのステージ上で歌うことができる。これは1,500人に歌われました。

他には、アニメ「それが声優!」のセリフオーディションを実施したり。「受賞者」はガヤ役として、アニメに出演することができます。

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おもしろいですね、今後も積極的にやっていくのでしょうか。

安西:
今後も、アプリや音楽関係の会社と、コラボしていきたいです。とくに「音楽教室」との提携は試してみたいですね。nanaに練習ログをアップして、講師がフィードバックする、みたいな。

とくに「個人レッスン」って、上達が実感できなかったり、リアクションがなかったりすると、挫折しやすいから。そこはnanaへ投稿することで、カバーできるのかなと考えています。

取材協力:株式会社nana music

nana(iOS/Android
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