本日はちょっと変わったアプリのインタビュー記事をお送りします。この画像を見たことはありませんか?
この画像は「49人目の少女」というアプリに登場するキャラクターです。いわゆる「放置ゲーム」と呼ばれるジャンルのアプリですが、このアプリがかなりの収益をあげているという噂を聞いて開発元の株式会社Nagisaの井上さん(写真左)にお話を伺ってきました。
「49人目の少女」が話題になったワケ
「49人目の少女」はどのように企画したのか?
育成ゲームが当時結構出ていて、ウチでも一個作ってみようかってなったんです。いくつかあった企画のひとつでした。
育成ゲームって捕獲・捕食・搾取とか、そういうイメージがあったので、そのキーワードで、「現代社会に搾取されてる人達」ということを考えた時に、あるアイドルグループを思いついて、じゃあそれで育成ゲームをやってみたら面白いかもしれないということと、
あとは単純に「ブサイクな女の子がパーツ単位で美少女に変わっていく」という進化の過程が、コミカルで面白いのではないかと思いました。
開発期間はどのくらい?
開発自体は早かったですね。ベースの部分は2週間で完成しました。その後、イラストやバグの対応などのアップデート対応をし続けた感じです。
今のダウンロード数はどのくらいでしょうか?
11/8リリースで、iOSとAndroid合わせて30万DL超えたぐらい。1日でいうと、iOSが1日1,000~1,500DL、Androidは1日500〜600DLです。
ピーク時のAppStore総合ランキングで7位くらいのときは、1日25,000DL程増えていましたね。
リリース直後のDLの動きはどうでしたか?
11/8の金曜の夕方に公開して、月曜日からプレスリリースを送ろうと思っていたのですが、
代表の横山が金曜日にFacebookでフライングで告知したのがきっかけに始まり、土曜日の段階でTwitter上で話題になり2,000DLくらいまでユーザーが増えて、そこから4,000DL、15,000DL、20,000DLという感じで増えていきました。
(データ参照:Appannieより)
Twitterがベースで拡散していったのでしょうか?
そうですね。完璧Twitterです。進化に必要なアイテムで「オタク」を集めるのですが、「シェアすると次のステージでオタクが50人もらえる」という感じで、SNSでシェアすることでゲームを有利に進められるというインセンティブを与えました。これの効果が大きったですね。無茶苦茶大きかったです。
(補足:進化したタイミングで、シェアを促すポップアップが出てくる。)
進化が完了した際の「シェアするとオタクプレゼント」は、TwitterとFacebookのみなのですが、Twitter:Facebookでシェアされる比率は9:1くらいです。結構、画像が画像なので・・Facebookには投稿しづらいのかも。
あとユーザーが中高生の若いユーザーが多かったです。それもフォロワーが数人〜何十人レベルの規模の人達ばかりで、友達の間でTwitterで伝播していくようなイメージでした。
レビューサイトでは取り上げられましたか?
はい、一応それなりに載ったのですが、そこまでの大きな影響はなかったように感じます。やはり「Twitter上でユーザーがユーザーを呼んで」という風に広がっていったように感じます。
なぜここまで広まったのでしょうか?
結局、この手の育成ゲームもそうですが、良いサービスを作ったらいかにそのサービスを使っているユーザーがユーザーを呼ぶサービス設計を作れるか。ここが非常に重要です。
あと、このゲームを出す少し前にTwitterのアプリがアップデートして仕様が変わって、タイムライン上にサムネイル画像が表示されるようになったことも大きかったと感じます。
今までは「詳細」という文字を、タップすると画像が見えたりしたのですけど、タイムライン上でデフォルトで画像が表示されるようになった。
多分このブサイクな女の子の絵がTwitterのタイムラインを占めるっていうとんでもない現象が起きて、「なんだなんだ?」ってなってた人が結構いるのではないでしょうか。
進化して美少女を目指せ!夢と狂気のアイドル育成ゲーム 【49人目の少女】 http://t.co/2i1e11TZsU #49人目の少女 pic.twitter.com/7XlDzIr5D0
— Shohei Oka (@Okashoooo) 2014, 1月 8
気になる収益額やマネタイズについて
プロモーションは何か行いましたか?
ランキングが下がってきた時にブースト広告を1回うちました。20,000DLくらい。
20,000DLというと100〜200万円のコストがかかると思いますが、その分のコストは回収できるのでしょうか?
はい、回収は早い段階でできました。
マネタイズはどのように行っていますか?
広告とアプリ内課金です。課金に関しては、多い時は1日10万円以上課金されていました。
広告のほうはCPC、CPI、自社の広告配信システムを含めて1日40万円とかです。
調子が良かったアドネットワークはありますか?
nendとamoadが良かったですね。広告案件が良いというのも有りますが、両社の窓口の人も熱心に調整してくれたりして。数字も安定していましたね。
CPIやCPC広告ではGameFeat、AppliPromotion、DirectTAPなども安定的に収益をあげてくれました。
また、それらの広告とは別に実は自社で開発したアドツールも入れているのですがそれが一番稼ぎ頭となりました。このツールは近々外部へも提供予定なので、他のデベロッパーさんのマネタイズにも大きく貢献できると思っています。
リリースから今までの収益はどのくらい?
11/8のリリースから12月末までの2ヶ月弱で1,300万円(課金+広告収益)くらいです。
1DLあたりの収益性でいうと40円くらいですね。
他のアプリと比べて収益性はかなり高いです。当社は「かめカメラ」という累計80万DLされたカメラアプリをだしていますが、それと比べても収益性は数倍くらい違いますね。
滞在時間とか起動頻度はやっぱりカメラアプリのほうが良いですけど。
1,300万円の課金と広告の内訳はどのくらいですか?
広告8:課金2という感じですね。広告は4箇所ぐらいに入れていますが、どれかに偏ることはなく満遍なく収益になっている感じです。
課金は100、200、300円と用意しています。100円がたくさん売れると思っていたのですが、フタを開けてみたら300円が一番売れていたのは想定外でした。
たしかに300円がお得感のあるようにつくっているのですが、想像以上に高い課金メニューが売れるという結果になりました。
(補足:広告の配置)
そう考えると、思っているよりも積極的に課金は入れていったほうが良さそうな気もします。
損はないと思いますけど、開発面で手間がかかることと、リアルマネーが動くと色んなリスク検証もしっかりやらないといけないので、そのバランスだとおもいます。
その他いろいろ聞いてみた。
続編のほうの調子はどうですか?バージョンアップはしなかったんですね。
アップデートして続きの物語を作るか、別アプリでだすか議論していたのですが、アプリ自体の容量が結構重くなったり、あとはクリアーしてアプリをアンインストールしてる人も多かったので、別アプリで出すことにしました。続編はDL数では伸び悩んでいますね今2万DLくらいです。
(補足:続編の「49人目の少女inUSA」もリリースしている。)
iOSとAndroidユーザーの違いは何か感じましたか?
Androidはユーザーが離れにくくて、課金をめちゃくちゃするという印象です。DL数の割にそこそこ収益は上がってますね。
ただ「49人目の少女」に関しては、Android版はユーザーが全然伸びなくて。Android版のダウンロード数は30万DLのうちの5万DLくらいです。
社内でも議論したんですよ。あれだけツイートされてるのになぜAndroidのDLは伸びないのかと。
「GooglePlayの新着ランキングに入れたらユーザーが離れにくい」とか「思ったよりも超課金する」みたいなことはなんとなく分かったのですが、Androidは本当に未だに掴めないという感じですね。
海外で多少DLもされているようですが、どうして広まっているのでしょうか?
特に何かをしたということではなく、勝手に広まっていますね。課金もちょこちょこされています。
特にアプリ自体のローカライズもしていなくて、アプリの紹介文などのメタデータを翻訳しただけです。
キャラの「ブサイクさ」はパッと見で印象的ですが、何かこだわりはあったのでしょうか?
そうですね、「ただのブサイク」じゃなくて「ちょっと愛嬌のあるブサイク」にしました。細かいところなのですが、目の瞳の黒い部分にちょっとだけ白い点々が入っているんですよ、それの有り無しで実はキュートさが全然違ったりします。
気持ち悪い感じで進化していくのかなと思ったんですけど、そうはしなかったんですね。
そうですね。美少女になった後は、整形のしすぎで・・・。最後のオチは内緒ということで(笑)
他に「49人目の少女」を通じて教えていただけるノウハウはありますか?
一番大きいのは先ほどもお話しましたが、「ユーザーがユーザーを呼ぶ仕組み」です。
「進化が完了した時に、ツイート・Facebookでのシェアに対してインセンティブを用意してあげると、ユーザーがシェアしてくれるのでは。」という予測があったのですが、それが予想以上にうまくいきました。
もうひとつは、先ほどお話した、Twitterのタイムライン上でサムネイル画像が表示されるというのが大きくて、インパクトのある進化過程を見せることで「何だこのアプリは!」と思わせることができた。
あとは一回つくってしまえば、イラストと企画だけあれば量産が出来るということです。
それで2014年には育成ゲーム(放置ゲーム)のCMSを出そうと考えています。「49人目の少女」のアプリの枠をベースに、イラストだけ用意すればテンプレに当てはめてアプリが簡単につくれるというものです。
ただイラストやボイスは用意するのに時間がかかりますけどね。こういったアプリは、特にイラストが勝負みたいなところはあるので。
「49人目の少女」のイラストやボイスはどうやってつくったのですか?
ボイスは「ココナラ」というサイトで声優さんに頼みました。ココナラだと1つ500円で出来ます。
イラストは「ランサーズ」を使用しました。ランサーズさんにはいつもお世話になっています、ありがとうございます。
クラウド系のサービスを活用することで、コスト削減することが出来て非常に助かりました。イラストや音声1本に5,000円のコストをかけていたらちょっと厳しいですよね。
他に面白い情報などはありますか?
「49人目の少女」に集まったユーザーを他の自社アプリに誘導しています。「自社の他アプリをダウンロードしてくれた人にオタクをプレゼント」というインセンティブをつけています。
自社の新作アプリが公開されたタイミングで実施したところ、1回で短時間に2,000ダウンロードぐらいのユーザーを流すことができました。
2,000DLくらいあればAppStoreのカテゴリランキングで、圏外から一気に20位以内くらいには入れるのでプチブーストになります。
育成ゲーム(放置ゲーム)はおすすめですか?コツはありますか?
おすすめはおすすめですね。ただ多分同じことをやって失敗するデベロッパーさんも居ると思う。
育成ゲームって昔から一杯ある中で、やっぱりヒットしてるのってアルパカにいさんとかに限られてるので、企画とイラスト次第かなと思います。
取材協力:株式会社Nagisa
おわりに
先日の「アルパカにいさん」の記事でも紹介しましたが、放置ゲームの収益性の高さに驚きました。
アプリをやってみるとわかりますが、「49人目の少女」は切り口やイラストのインパクトはあるものの、ゲームとして斬新なシステムという訳ではなく、クオリティも真似できないくらい高い訳でもありません。
これは決してバカにしている訳ではなく、恐らくこの事例を参考に、このまま放置ゲームをつくって真似してもうまくはいかないだろうということです。このくらいの面白い企画を用意してもヒットするのはごく一部だと思います。
参考にすべき点は、もちろんアプリのジャンルなどにもよりますが、
・ユーザーのシェアに対してインセンティブを与えることがDL急増のキーになった。
・放置・育成ゲームでも一定数のユーザーは課金した。
・課金を設置するなら高いメニューも用意しておくと良い。
というようなエッセンスです。
「49人目の少女」に関しても、開発段階からマネタイズ・集客面にも目を向けて、仮説を立てたうえで策を打っているのが分かります。
こうした地道な仮説検証の繰り返しをしてノウハウとして蓄積していくことがヒットの陰にはあって、忘れてはいけない大切なことだと感じました。
Nagisaさんには、もう一つ別のアプリのお話も聞いてきたので、また後編として別の記事にてご紹介したいと思います。
後編はコチラ:
ソーシャル拡散で30万ダウンロード!動画作成アプリ「SLIDE MOVIES」をユーザーが喜んで宣伝する理由とは。
オタクをスワイプで回収してアイドルと握手。お金を集めてブサイクなアイドルを美少女に進化させようというゲーム内容です。いわゆる放置ゲー。(AppStore/GooglePlay)