放置ゲーの収益性は10倍!「アルパカにいさん」はアジアでも人気の汚いクールジャパン。ココソラさんインタビュー

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本日は「アルパカにいさん」でおなじみココソラさんの取材記事をお送りします。

放置系ゲームは本当に収益性が高いのか、グッズは儲かるのか、ココソラさんの独特なアプリは実は海外でもダウンロードされている、アプリを企画するときにどんなことを考えているのか、などなど、皆さんが気になるであろうお話を中心に伺ってきました。

cocosola_app

アルパカにいさん・放置ゲームについて知りたい!

「アルパカにいさん」のDL数は今どのくらいでしょうか?

野澤:
初代アルパカは500万ダウンロードです。

500万DLもいくと色んな声かかると思うんですけど。どういったものがありますか?

野澤:
コラボ系が多かったです。全然アプリを出したことの無いような会社さんから協業のお話が来たことも。

前田:
「何かアプリ作ってよ」みたいなのもありました(笑)

大手からも声かかったりもしますか?

前田:
色々あったんですけどほとんど断わってしまいました。

野澤:
コンシューマー機のメーカーさんから「アドバイスをください」みたいな話とかもありましたが「わからないのでできません」と(笑)  コラボ系も作業量が増えそうということもあり、やはり断ってしまっていました。

グッズはどうでしょうか?

野澤:10社くらいお話を頂きました。実際にその中の会社さんにグッズ化して頂いているのですが、売上で言うとグッズよりアプリのほうが良かったという結果になっています。
キャラクターのライセンス料としてグッズ売上の数%が入ってくる形式でした。

グッズは儲かると思ってました、その考えは甘いですね。

野澤:
アルパカは会社がキャラクタービジネスとしてやっていける程にはなりませんでしたね。記念にはなりましたが(笑) アプリの寿命は非常に短いので、人気がなくなってしまえば同時に売れなくなっていくのかなと感じました。

アプリが好きな人達以外にも売れるような何か・・・例えば「コップのふちこさん」みたいに「こういう風にユーザーが遊ぶんだ」って明確な遊び方があるとか(笑)

alpaka_nuigurumi

グッズは手間がかかりますか?打ち合わせしたり、契約書巻いたりとか。

野澤:
ほぼ監修だけしてた感じです(笑)

商標取得がちょっと面倒だった以外は特に何かをしていたわけではありませんでした。本来であればグッズ専門のチームを作って、企画を練って上手いこと営業をしていくべきだったのだと思います(笑)

ちなみに放置ゲーって1DLあたりの収益性高いと言われていますけど、実際のところはどうなんですか?

前田:
アルパカは確かに高かったです。広告会社さんからはコンバージョン率も良いと聞いています。

放置ゲームだと暇な時に遊ぶから、広告の効果も高くなるのでしょうか。

野澤:
放置時間に他のゲームをやろうとして広告をクリックするのでコンバージョン率も高めになっていくのかなと思います。過去にリリースしたパズルやアクションゲームと比べると広告収益は全然良い実感はあります。

収益性はどのぐらい違いますか?

前田:
あくまでアルパカの場合ですが(1DLあたりの)広告収益は10倍ぐらい違いました。

10倍?すごい。長くプレイしてもらうことが前提ということですかね?

前田:
短くてもいいけど全部やりきってもらうというのを心がけています。スパッと2、3時間に凝縮する感じです。アルパカの場合は、リピート率がすごかったですね。その2、3時間を何周もしてくれるようで。

ただ放置ゲームはスクリーンショットでゲームの雰囲気が見えちゃうので、インパクトのあるものを作らないと、インストールされない印象がありますね。

野澤:
コアファンの方だと100周したという人もいました(笑)

前田:
あとは待たせてる時にどれだけ目を引くことができるか。放置ゲームはそれが無いと、たぶんすぐ飽きられちゃうんです。

その辺りのバランス「最初の進化までは短めにする」とかあるんですか?

前田:
最初はユーザーを引き込むために短めにしています。あと進捗が見えるようにする。目に見えて「進んでるんだ」っていうのがわかるようにした方が多少待てるかなと。

飽きさせない工夫は「パーセンテージを出す」ですかね。新作の「ロボットやめたい」だと下に今の進化の全体の出現率のパーセンテージが出るんですけど、これは「まだ終わりじゃないよ」っていうのを明示するためです。

robot_percent

「アルパカにいさん」初代もアップデートは続けているんですか?

野澤:
レアキャラの追加等をしています。現在はよりコアなユーザーが残っているのかなと思っています。

放置ゲーでうまくいくためには、まずインパクト?

野澤:
振り幅が大きければ良いかっていうと、そういうわけでもないかと思っています。

前田:
アルパカ以降出てきたアプリってみんな1回の進化で突拍子もない変身をするイメージがあるのですが、最初の姿と関連性が薄すぎるとそんなに面白くないのかなと。

前田:
ある程度ユーザーが想像できる範疇が良いですかね。例えば「お化け屋敷」だったら、入る前にいきなり驚かされたらびっくりしただけで嫌な気分になると思います。お化け屋敷というのは、あそこ出そう出そうっていうドキドキ(ユーザーの予測)があって、驚かされることで初めて面白いと感じるのかなって。

今回の「ロボットやめたい」も、ユーザーは「ロボットが人間になりたいんだ」っていうお決まりの予測ができていて、その上で少し不穏な空気があるから「あれ、これ人間になるよな?」「人間になってるけど…これでいいのか?」という展開にしています。

放置ゲームの元祖って何なんですか?

前田:
元祖は分からないですが、実は放置ゲーム的な事はすごい昔からやってました。

野澤:
3年前くらいにツールアプリに放置の遊び要素を付けて「時間が経つとアイテムが生成できる」みたいなのを出していました。普通のツールアプリだと広告をクリックしてくれるところまでいかないので、遊び要素を取り入れて広告を見てもらえるように(笑)

いま放置ゲームを「アルパカ系」とか言っていますよね?ジャンル化してパッケージが1個できたわけですよね。マリオが出て、マリオ系ゲームとか言われるように。

前田:
「アルパカ系」って言ってるのって画面上に何かメインのものがいて、
周りに捕食対象がいて、それを画面上で拾わせるとか、そういうのがアルパカ系みたいになっていますね。経験値を貯めて変身していったり。

話は変わりますが、グーグルの検索キーワードで「アルパカ」と「アルパカにいさん」が、2013年は同じ動きをしてるんですよ。アルパカにいさんのおかげで、アルパカというキーワードが盛り上がってる。


(補足:青が「アルパカ」、赤が「アルパカにいさん」。横が時間軸で、縦がGoogleの検索回数。完全に同じ動きをしている。「アルパカ」の検索回数が伸びたのは「アルパカにいさん」のヒットによるもの。アメリカで火星探査機(MARS)が飛んだ年は、チョコレートバーの「マーズ」の売り上げが伸びたのと同じような感じ。参考:クチコミの効果は広告の10倍!クチコミを生みだす6つの原則とは?

野澤:
確かに今年は結構アルパカアルパカって言われてますよね。悪いイメージも付けちゃったけど(笑)

前田:
グーグルで、当時は「あ」って入れると、アルパカよりもアルパカにいさんが補完されてました。

那須にアルパカの牧場があるんですよね。たぶんそこ、間接的に宣伝効果になってると思うんですよ。アルパカにいさんのおかげで。そういう声はかからなかったんですか?

前田:
かからなかったですね。グロテスクだからですかね(笑)

野澤:
テレビ番組でアルパカ特集をしていて、本当に一瞬だけアプリの画面がノーマルアルパカしか映ってないところだけ流されていました。グロテスクはNGなんだと思います(笑)

海外の話について知りたい!

App Annieのデータを見ると、ココソラさんのアプリはアジアでダウンロードされていますね。

前田:
そうですね。日本が60%ぐらいで、後はアジアで40%とか。台湾、香港、韓国です。

野澤:
台湾とかは大体遅れてブームがやってくるみたいな感じです。

2013-12-23 16.11 のイメージ
(アルパカにいさんは、マカオAppStore総合6位、台湾AppStore総合9位などアジアでもDLされている。AppAnnieより)

何か海外でやってることあるんですか?

野澤:
英語版を出しているくらいです。

前田:
ただ、台湾の人は英語よりも日本語の方が受け入れられる感じがあります。当初英語版は出していなかったのですが、海外を全て英語で表示するようアップデートしたら日本語に戻して欲しいという要望を貰いました。

あえて日本語で出した方が良いんですか?

前田:
あくまで自分たちのアプリはですが、アジアは日本語で出しても変わらない気がします。日本語を読める人が多いのかもしれません。

まず日本で売れて、日本の勢いが落ちてきた頃に台湾が急に上がって来て、台湾も下がった頃に、韓国が来たりとか。

野澤:
アルパカの時は、それがちょうど一気に重なって、両OSで10日間で100万ダウンロードとかもありました。

すごい。DLの瞬間風速はパズドラ以上ですね。海外って日本に比べて1DLあたりの収益性はどうなんですか?

野澤:
感触的には日本の10分の1ぐらいですかね。

前田:
もっとうまいデベロッパーさんは違うのかもしれないですけど。アルパカはその辺の対策をちゃんとしてなかったんで(笑)

アルパカの場合の広告収益はCPIとCPCどっちが収益になるんですか?

野澤:
CPC(クリック課金型の広告)が中心です。

前田:
そもそもCPI(インストール課金型の広告)って最初入れてなかったんですよ、アイコン型も付けてなくて。広告はバナー(CPC)しか使ってなかったんで。

野澤:
ココソラのアプリは欧米系ではすごく受けが悪くて・・・罵られるコメントばっかりでした。誉め言葉じゃなくて本当の意味で頭おかしいって(笑)

前田:
ただアルパカだけは受け入れられたんですよ。欧米人が「世界最高のゲームだ」ってツイートしているのを見たことがあります(笑)

アルパカはビジュアルが日本(アジア)っぽい感じなのでなかなかダウンロードして貰えないのですが、欧米でも1回遊ばれると評価はすごく良いみたいですね。

海外で遊んでもらうためには、まず日本でヒットするということ?

前田:
ココソラの場合は、日本でヒットしたものはアジアでもヒットしていました。欧米は的を絞ったやり方が必要かもしれません。

アプリの企画についてアドバイスをもらった。

今アプリ開発してる人、すごいたくさんいますけど、何も実績無くてこれからヒット狙いたい人はどうしたらいいですか?

前田:
人と交流してアドバイスをもらったり、色々吸収した方が良いと思います。特にヒットアプリの開発者に話を聞くと参考になる事も多いと思います。

あとはたくさんリリースしていくことだと思います。最初は何作ったら売れるか分らないですし。

アプリを作って、自分が想像した通りのリアクションをユーザーからもらえて、その結果ランキングが上がっていく、というのを繰り返していくと、自然と精度が上がって行くのではないかと。

自分が思ってたのと世の中のリアクションのすりあわせは、どういう風にやってるんですか?

前田:
一定数売れないと何とも言えないのですが、レビューサイトやTwitterを見て、自分が「ここだめだな」と思った所を、同じように「だめだ」と言っている人がたくさんいれば、それはある意味間違っていないです。

自分の予想と世の中の反応で、予想外の反応が来たことってありますか?

前田:
「ドキ! 水着ねこ」というアプリが予想に反して大ゴケしましたが(笑)、その他はあまり予想外の反応は有りませんでした。アルパカも出す前から、自分達で想定していた部分はちゃんと評価された手ごたえはありました。

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(補足:「ドキ! 水着ねこ」はネコちゃんをポロリさせるゲーム。ポロリとツイートもできる機能も!(謎)(iOS/Android))

当時、どのような事を心掛けてアプリ作りをしていましたか?

前田:
「ぴよ盛り」みたいなゲームを目指してたんです。

あのアプリは1画面ですごくシンプルに世界観が凝縮されていました。アルパカは画面タップしてひたすら吸収させて進化を見ていくだけなんですけど、笑ったりとか、怖がらせたりとかいう要素を全部詰めこめたと思います。

あとは、映画は参考になります。映画館で見る映画は途中でやめることができなくて、2時間くらいはユーザーの心理を引っ張っていかないといけない。

だから映画を見てどういうユーザー心理を与えているかっていうのを考えたりします。

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(補足:「ぴよもり」はドンブリの上にひよこを投げて積んでいく人気ゲーム。初代は結構昔のアプリです。(iOS/Android))

演出の仕方みたいなことですか?

前田:
演出もそうですね。とにかくユーザーが楽しいと思える心理ですかね。

ゲームとしてのゲーム性や操作性を考えるのは私達は正直言って苦手です。あくまで見せ物としてのコンテンツを考えています。時間を使ってもいいと思わせるものと言いますか・・・

野澤:
「どうなっちゃうんだろう」っていう心理でしょうか。実際にメディアさんでも「この先が気になってしょうがない」というのが、良く取り上げられています。自分達でも本当にそればかり考えます。

たしかにココソラさんのアプリって、ゲームという感じではないですよね。

前田:
そうですね。あと、単純に斬新なものと、心理的な要素を考えて作ったものって全然違うと思うんです。斬新なものって誰でも作れる。

野澤:
突拍子のないものを作れば良いだけなんで。だけど、それがユーザーに受け入れられないと結局意味が無くて・・・

前田:
「変なの作ってるわ」で終わっちゃう。マーケットを見ていても「すごい変な世界観のアプリ」がよくありますが、落とそうと思えない事がよくあります。

お二人が同じことを話しているのはすごいと思う。通じ合っているというか。

前田:
元々こういう考えがあったわけではなくて、自分達の経験に基付いて考えも変化してきました。

野澤:
ゲームを作り始めてから少しずつ蓄積してきたというか・・・アルパカを出す前くらいから心理的な要素を意識するようになりました。

前田:
アプリがあふれすぎていて、そうしないと売れなくなってきた感があります。例えば、「これ面白い」って思うパズルゲームを出しても、今はそれ以上のクオリティーのアプリが既にある。

普段ユーザーさんがTwitterやパズドラ等に使っている時間をいったん置いても、見てみたいと思わせるだけのもの・・・Twitter上で「こんなん出たよ、今これやってる」って言った時に「何これ?気になる」って思ってもらえるものじゃないとダウンロードして貰えないんじゃないかなって思っています。

野澤:
「やってもらえれば面白いのに」というゲームを作るのをやめようという話をよくしています。まずはダウンロードしてもらえないと絶対売れないので・・・。もちろん面白くないと継続して貰えないですけどね(笑)

それを鍛えるには、繰り返しやってくしかない?

前田:
そうですね。またすぐ時代が変わっちゃいますし。より個人のデベロッパーは、コンテンツの部分を意識して作っていかないと太刀打ちできない気がしています。

ロボットやめたい

ロボットやめたい。久しぶりの新作ですかね、また狂気に満ちた感じがしていますがメディアも結構話題になってたりしますか?

前田:
完全な新作は久しぶりで、9ヶ月ぶりになります。

野澤:
ねとらぼさんの紹介記事で安定のキモさみたいに書いて頂きました(笑)

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うん、これはキモいわ。(褒め言葉)
ロボットやめたい(iOS/Android

新作9ヶ月ぶりですか。その間は何をしていたんですか?

前田:
いったん、「アルパカにいさん」の続編を6月に出しました。

野澤:
あとはアップデートでレア進化を追加したりする感じでしたね。

前田:
本当に人間になっていく感じなんですけど。世界の人口が減少していったり、少し不安な要素を経て最終的には本当にアレな感じで終わります(笑)

ストーリー的に分岐とかはなくて1本ですか?

前田:
当初は分岐していましたが1本にしました。分岐で迷わせるとアンインストールの原因になりそうだったので「暇な時にただやる」という事に絞りました。

今の形ができて「すっごく面白くない」から「面白くない」くらいにはなったかなという感じでのリリースでした(笑)。

「ロボットやめたい」のココソラさんの評価は「面白くない」なんですね(笑)

前田:
初見のインパクトはあるのですが、待たせてる時にどれだけ目を引くことができるかっていうのが、アルパカに比べてちょっと弱い感じがしています。

今後も放置ゲーで行く予定なんですか?

前田:
放置要素は何かしら混ぜる予定ではいます。やりこみ要素のあるようなアクションゲームを作るのは苦手なので(笑)

野澤:
ビジュアルとか世界観だけで見せた方が良いかなって思っています(笑)

取材協力:COCOSOLA

おわりに

とても参考になるお話ありがとうございました。

世界中の人たちが「アルパカにいさん」「ロボットやめたい」などを遊んで、「日本のアプリ開発者はクレイジーだな、最高にクールだぜ」と言っているのを想像すると胸が熱いです。タイトルの「汚いクールジャパン」というのはもちろん褒め言葉。

そして、「放置系ゲームは収益性が高い」というのは本当でした。「アルパカにいさん」の場合ですが、通常時のアプリの10倍というと、1DLあたり30〜40円くらいにはなっていそうな気がします。

500万DLで単純計算すると、海外のDLの収益性などを差し引いても、億単位の収益を生み出している可能性が高いと思われます。

「ソシャゲでもなく、課金要素もない1つのアプリで」と考えると、割と伝説レベルだとおもいます。

こういった情報はちゃんと要素を分解して応用できるかが重要だと思います。例えば、「放置系ゲームは収益性が高い」という要素を分解して考えると、

・ゲーム開始時はサクサク進むようにして、飽きさせないようにする。
・短くてもいいから何度もアプリを起動してもらう工夫をする。
・1周が短いアプリでも何周もしてもらえるような要素を入れる。(コレクション追加、ハイレベルモードなど)

などが見えてきます、ヒットしているアプリ、収益性の高いアプリは使ってみて、研究するというのも勉強になると思います。

最後にココソラさんのオフィスで「写真撮りたいんですけど…」と申し出たところ、「これとかいいですよ!」と言われて撮ったTシャツの写真(なぜかDOOORSシリーズの58worksさんのTシャツ)を紹介して、締めたいと思います。

58works

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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