「最初はお小遣い稼ぎだった」上原さんがアプリ開発者になった理由と「新宿ダンジョン」ヒットの裏側。

2014年08月25日 |
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個人開発者「UeharaLabo」の上原さんへのインタビュー記事をお送りします。今年リリースした「新宿ダンジョン」はなぜあれほど話題になったのか、また過去のヒット作のデータなども聞いてみました。

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UeharaLaboについて

上原さんはどのようにアプリ開発者をはじめたのですか?

上原:
元々は機械の内部制御とかのプログラマーとして働いていたのですが、あまり合わなくて辞めてしまったんです。

「じゃあ何しよう?」となった時に、「上原テトリス」というゲームをつくったところネットで話題になって、「やっぱりつくるんだったら、人に喜んでもらえたほうが楽しいなあ」と思った。

「上原テトリス」ってニコニコ動画でめっちゃ人気でしたよね。

上原:
はい、当初は身内ウケしか狙ってなかったのですが、ニコニコに動画をアップしてみたら、やたら再生数が伸びていきました。いま150万再生くらいされています。

「上原テトリス」は動画で人気がでた後に、PCのフリーソフトとして公開したような流れです。その後、iPhoneアプリが流行りはじめた頃に、ゲームアプリの開発をはじめました。

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※「上原テトリス」の動画はニコニコ動画でみられる(URL)。

最初からアプリで生計を立てる意気込みでつくっていたんですか?

上原:
いや、最初は「お小遣い稼げればいいや」という感覚でつくっていましたね。2012年の9月10月くらいに個人開発ではじめました。そうしたら意外にお金にもなって、楽しいので続けているという感じです。

「上原の冒険」について

初ヒットというか、手応えのあったアプリはどれでしょう?

上原:
上原の冒険」というアクションゲームですね。はじめ半年くらいは有料350円にしていたんですよ、高いですよね。でもこれがゲーム一本目だったのでそういうのが分からなかった。

結果、ある程度は話題になったんですけど、皆「有料アプリは買わねー」しか言ってこない。

それで他の無料アプリを出してみたら、「上原の冒険」よりダウンロード数も伸びるし売上も高かったので、「上原の冒険」も2013年の7月くらいから無料に切り替えました。

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※「上原の冒険」横スクロールの2Dアクションアプリ。

無料化したらダウンロード数は増えましたか?

上原:
はい、すごい勢いで増えました。その時に「時代は無料アプリだな」って確信しましたね。もし始めから無料にしてたら、もっと良いスタートを切れていたと思います。

「上原の冒険」は無料化してから30-40万ダウンロードされています。有料の時代は無料セールも含めて2-3万ダウンロードしかされなかった。

「上原の冒険」の収益性はどのくらいでしょうか?

上原:
「上原の冒険」の1ダウンロードあたりの収益は20円くらい。アクションゲームでは比較的高めな数値だとは思います。

元々有料アプリとしてつくっていたので、全40ステージとボリュームがある。それで長く遊んでくれるユーザーも多くて、収益も高めになっているのかなと。

「上原の冒険」のAppStoreランキングが上がるときって何が起きるんですか?

上原:
ランキングが上がる時はゲーム実況ですね、有名な実況者さんがyoutubeとかニコニコで動画を作ってくれたときです。

ゲーム実況は「脱出ゲーム」「放置ゲーム」も流行ってますけど、やっぱりこういった「罠」があるアクションゲームは、見ている方も楽しいし、リアクションもとりやすいので相性が良いと感じます。

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※「上原の冒険」のランキング推移(データはAppAnnieより)

「新宿ダンジョン」について

「上原の冒険」以降にうまくいったアプリはどれでしょう?

上原:
やはり今年だした「新宿ダンジョン」が圧倒的ですね、「新宿ダンジョン」のダウンロード数は約50万ダウンロード、収益性は「他のアプリよりは低めかな」という感じです。

ただ、開発に1年くらいかかっちゃったので、正直労力も含めると赤字というレベルなのですが・・・。

もっと簡単につくるつもりだったんですけど、新宿駅は予想以上にダンジョンでした。まさか6個も駅繋がってるとは思わなかったんです。

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どうして新宿を「ダンジョン」にしたんですか?

上原:
もう普通に自分が迷ったからですね。単純に新宿駅をマッピングしたくなったんです。せっかくマップ把握するんだったら何かに使わないと考えていて、「じゃあゲームかな」みたいな感じですね。

よくネットで「新宿駅は複雑だ」って話題になっているのを見てたので、ある程度は話題になるんじゃないかとは2-3年前から思っていたんですね。

考えていた人は多そうですよね。

上原:
そうですね、実際リリースした後にエゴサーチしてると「俺もこれ考えてたのに先越された!」という声は多かった。けれど、結局誰もやらなかったみたいですね。たぶん広すぎて途中で諦めた人も多かったんじゃないですかね?

自分は沖縄に住んでいるので、「新宿ダンジョン」をつくりはじめて、旅費やら滞在費を払ってしまってたので後戻りできなかった。もう「途中で諦めたら勿体ないから無理やり完成させた」と言ったほうが近いかもしれません。

となると、アプリ開発の時間よりも、調査に時間がかかりましたか?

上原:
そうですね。マップ調査で7割、プログラム1.5割、グラフィックで1.5割という感じです。

調査も器具を持って歩くので大変でした、新宿を歩きすぎて足を怪我して血が出ましたもん。現代のダンジョンである新宿の恐ろしさを身をもって体感しました。

「新宿ダンジョン」を出したときの世のリアクションはどうでした?

上原:
とりあえず初日がすごかったですね、メディアでかなり取り上げられました。

普段はプレスリリースは送らないのですが「今回は載せてもらえるかもしれない」と送ってみたら、主要なレビューサイト、ニュースサイトほぼ全部で紹介してくれました。

2ちゃんまとめサイトでも話題になりましたし、ソーシャルでの拡散もすごかった。エゴサーチしていたのですが、本当に多すぎて追いきれないくらい。予想を大きく超えた結果で感動しました

リリースから少したって4月に第二波が来ているのは?

上原:
ITメディアさんの取材記事だとおもいます。その頃は新聞、ラジオでも紹介されていたので、その影響もあるかもしれない。

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※「新宿ダンジョン」のランキング推移(データはAppAnnieより)

「新宿ダンジョン」のレビューを見ると、かなり好評ですよね?

上原:
そうですね。「新宿ダンジョン」はできるだけ難易度が難しくならないように、初心者側に頑張って寄せたのは良かったと思います。

あと、Twitter上の電車愛好家の人たちにも評判がよかったのは嬉しかった。専門用語が飛び交う中で「何々が再現されてる!」と感想を言ってくれていて。何言っているかわかりませんでしたけど喜んでくれました。

クリアしちゃうと、やっぱりアプリを皆消しちゃうものですか?

上原:
はい、結局長く遊べるものではないので、いまは落ち着いてきちゃってますね。合わない人はすぐ消すし、気に入ってくれた人も短期間でクリアしちゃってる。

ただ、2周目を遊んでくれる人は結構いました。1回クリアした後も、マップに隠してある「お宝アイテム」をコレクションが出来るのですが、そのために遊ぶ人は意外に多かったと思います。

今もし「新宿ダンジョン」を出す瞬間に戻れるとしたら、何を改善したいですか?

上原:
戻れるとしたら、やっぱり自分の中では初心者ユーザーに寄せたつもりだったのですけど、それでも不親切だと感じた人もいたみたいなので、そこを改善したいです。

データを見てても「最初でもう訳が分からないから離脱した人」が大量にいた。

今はアップデートして、ゲームをスタートしたら「都庁に向かおう」「緑の切符を手に入れると、緑の改札が通れるぞ」とか簡単なヒントメッセージも入れています。

自分では「アイテムがあったら通れる」とかは常識だと思っていたのですが、通じない人も多いとわかった。

普段からゲーマー向けの難しいゲームを作り過ぎていたので、感覚にずれがあったのだと思います。そのギャップはもっと努力して埋めるべきだったと感じます。

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動画実況やアプリ開発について

ニコニコが動画実況のSDKを配っていたり、「Twitch」というゲーム実況サイトが注目されてたり、動画実況はこれから流れが来そうですけど、どう感じますか?

上原:
動画実況は流行りそうだとは感じますね。ただ、ネットで有名な実況者たち人気のある実況動画って、録画した動画をきちんと編集してるものが多いんですよね。

そのままプレイ動画をアップしても面白くなり辛い気はするし、そこまで急な波はこないんじゃないかなとは思います。

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※日本ではニコニコやyoutubeでの実況がメインだが、海外はTwitchなども勢いがある。

私もそれは同意見です。ただ、友だちの家でゲームをやるような感じで、Twitterの小さなコミュニティ内での、身内の実況は増えそうだと感じます。

上原:
それはありそうですね。大きい規模ではないかもしれませんが、動画見た方が内容がわかりますし、広まりやすいのは間違いない。

ニコニコのSDKは入れてみたいんですけど、今は個人はダメで企業だけなんですよね。あと自分のアプリって「重い重い」と言われるので、SDK入れて動画を再生したらもっと重くなりそうなのは心配です。

「アプリが動きません、星一つ」ってレビューでいっぱい書かれそう。笑

気に入っているアドネットワークはありますか?

上原:
アドネットワークは当初いろいろ試していたのですが、今はnend(ネンド)をメインで使っています。収益も安定していますし、使いやすいと思いますよ。

アプリ開発を「やってて良かったな」と思うときはいつ?

上原:
リリース後のエゴサーチを見ながら、ニヤニヤするのが楽しみですね。笑

自分のゲームは、「やっている人を見る」のが楽しいように作っているので、動画実況されているのを見てると、すごい楽しいです。

沖縄でアプリ開発するのって、実際どうですか?

上原:
かなりオススメしますよ、別にアプリストアはどこ住んでても共通じゃないですか。

沖縄は家賃はあまり安くないらしいですけど、物価はとても安い。食費も安く抑えられますし、ずっと暖かいので暮らしやすいです。

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今からアプリ開発で独立したい人にアドバイスするとしたら?

上原:
うーん、厳しい世界ではあるかもしれないけど、楽しいので勧めますね。

ただ、個人アプリはランキングが上がりにくくなってるのは感じます。今は普通にアプリを出しても埋もれちゃうので、どうにか話題になるようなアプリを狙ってつくるしかないです。

でも「FlappyBird」や「白いとこ歩いたら死亡」みたいなシンプルで面白いゲームがヒットすることもあるし、アイディア次第で大金を掴める可能性がある。まだまだ夢はある世界だと思いますよ。

最後に告知などがあればどうぞ。

上原:
「新宿ダンジョン」と「上原の冒険」の続編アプリが近いうちに出ます。ダンジョンの続編は「渋谷ダンジョン」で9月末にはでる予定です。

よくネットで「渋谷駅のほうが複雑だ、いや新宿のほうが」ってよく喧嘩してるのを見ますが、両方遊んでもらえると、この議論に終止符が打たれると思います。

結果的には新宿のほうが複雑で、渋谷のほうがずっとマッピングは楽でした。広さでいうと三分の一くらいじゃないでしょうか。最終目標は山手線の駅全部をダンジョン化して「山手ダンジョン」を作りたいですね。

他にも何か面白いことができるお話などあれば連絡ください!

取材協力:Ueharalabo

新宿ダンジョン(iOSAndroid
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編集後記

「新宿ダンジョン」のメディアに取り上げられっぷりは確かにスゴかったです。よく「メディアに取り上げられるためのテクニック」みたいな話もあったりしますが、結局のところはアプリがどれだけユニークでおもしろいかに尽きるよなと感じる。

いまの時代「ネット記事化」⇒「ソーシャル拡散」⇒「キュレーションアプリ・2chまとめ」という経路が完成しているので、企画力がある人にとってはすごく良い時代だと思います。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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