世界3,800万DL「旅かえる」のヒットポイントさんに、中国でヒットして起こったことを聞きました。
※本記事はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンより、依頼を受けて執筆したPR記事です。
※株式会社ヒットポイント プロジェクトマネージャー 高崎 豊さん(右)、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 金田一 確さん(左)
「旅かえる」が中国でヒットして起こったこと
「旅かえる」について教えてください。
高崎:
「旅かえる」はかえるを旅に送り出すゲームです。旅の支度をしてあげると、日本全国を旅したかえるから、お土産や写真をもらうことができます。
かえるは放っておくと旅に出て、3〜4日帰ってこないこともあります。その間にプレイヤーができることは、庭のクローバーを収穫することくらいです。
本当にこれだけのゲームなのですが、5ヶ月で3,800万ダウンロードされる結果になりました。その8割近くが中国からのダウンロードです。
どうして「旅かえる」は中国で流行ったのでしょうか?
高崎:
どうして流行ったのかはわかりません。アプリも日本語しか対応していなかったですし、かえるって苦手な人も多いと聞きますよね。
本当にまったく予期せぬヒットでした。気づいたときには、中国のユーザーさんから「仏系ゲーム」と呼ばれて、SNSで話題になっていました。
意味としては「ただ見守るだけ。何もしなくていい」、ガツガツしたゲームとはちょっと違う「悟ってる系ゲーム」として受け入れてもらえたようです。
中国でヒットするとどんなことが起こりますか?
高崎:
中国で「旅かえる」が一気に広まると、多い日には「1日380万ダウンロード」という、よくわからない数字が出たこともありました。笑
あと、これほど急激にぐーっと伸びてくると、準備もできずに対応も後手に回ってしまって、業務にもかなり支障が出てしまいましたね。
まず、電話が鳴り止まない。中国からたくさんお問い合わせをいただきました。でも、会社には電話が1回線しかなかったんです。ずっと電話が鳴りっぱなしでした。
取材の連絡も100以上いただきました。なかなか回答できずにいたところ、しびれを切らした中国の記者さんが、会社に突撃取材にくることもありました。
それはすごいですね。
高崎:
アプリにひとつ不具合が出てしまったときは、解像度の高いスクリーンショット付きメールが殺到して、半日でメールサーバーがパンクしましたね。
どんどん仕事が回らなくなって、いろいろとヘルプを頼んだりもしたのですが、結果的にプログラマーが寝込んでしまったこともありました。
これは、深夜まで残業が続いたわけではなく、慣れない電話対応やサポートのヘルプ仕事が続いて、ちょっと気が滅入ってしまったようです。
そこからはどうやって問題解決していったのでしょうか。
高崎:
ほかにも、偽物のアプリやグッズが生まれたり、勝手にコラボがはじまっていたり、いろいろな問題が起こっていたので、優先順位をつけて対応していきました。
まずは、ユーザーに関わる問題です。「殺到している問い合わせ」をなんとかしないといけませんでした。
ひとつ効果的だったのは、「よくある質問」のページをつくって、いきなりメールや電話がこないようにしたことです。これでかなり落ち着きました。
そこからは、権利に関わる問題、収益に関わる問題を解決していきました。中国でのパブリッシャーやライセンスパートナーを探したりです。
なるほど。「リリース前に戻れる」としたらどこを改善しますか?
高崎:
もし、リリース前に戻れるならば「アプリのタイトル名」だけでも、中国語や英語にはローカライズしておくべきだったなと思います。
タイトルを先につけておかないと、商標だったり著作権の問題にも、かなり対応しづらくなってしまうというのが大きな理由ですね。
今回は、日本語のまま流行ってしまったので、中国では「旅行青蛙」という通称で呼ばれて、その名前で大量に偽アプリまで出てしまいました。
とくに、偽アプリだとわからずにダウンロードされた結果、出していないはずの「Android版の不具合」の問い合わせまで、こちらに来てしまうのは辛かったです。
「旅かえる」のマネタイズについて
「旅かえる」のマネタイズについて教えていただけますか。
高崎:
「旅かえる」の収益スタイルとしては、広告とアプリ内課金の両方を取り入れています。
広告を入れるときには、郵便ポストにかえるの友達から「チラシ」が届いて、それをタップすると広告が表示されるようにしています。
ちょっと無理はありますけど、なにかこうした「現実とつながる設定」があるだけでも、ユーザーさんは受け入れてくれやすくなると思うからです。
課金については、先にあそんでいるユーザーさんに「はやく追いつきたい人」のために、初期ブーストの選択肢を用意する、という考えで入れています。
おもしろいですね。
金田一:
Unity Adsの視点から、マネタイズでわかったことを挙げると、ゲームの月間の広告収益額で「旅かえる」は世界1位だったんですよ。
これだけ収益をあげられたのは、まず圧倒的なダウンロード数があったことと、中国での広告収益性の高さ、この掛け合わせの力が大きいです。
だいたい、中国のeCPM(広告の収益性)としては、4,000円弱くらい出ていましたね。
高崎:
広告については、途中からUnity Adsさんを導入したところ、客単価(1ユーザーの広告収益性)を20〜30%改善することができました。
売上自体も大きく伸びましたし、同じような広告ばかり出ることも解消されたので、導入して良かったと思っています。
「ねこあつめ」の経験からできた写真システム
ヒットポイントさんで「旅かえる」をつくったのは、「ねこあつめ」をつくったチームと同じなんですよね。何人くらいでつくられているんですか?
高崎:
チームは7人チームですね。
「旅かえる」にメインで関わったのは4名、ぼくがディレクター的な立場で、あとはプランナー、デザイナー、プログラマーが一人ずつという感じです。
ただ「ねこあつめ」をつくった当時でいうと、ぼくとデザイナーの2人チームでした。そこからメンバーが増えたという形になります。
「ねこあつめ」での経験を踏まえて「旅かえる」に活かされているところはありますか。
高崎:
写真はそのひとつですね。「ねこあつめ」はユーザーさんが写真を撮ってアップして、それをみた人がまたクチコミを広げてくれました。
そういう仕掛けを「旅かえる」にも入れたいなと思ったんですけど、また「写真を撮る」にしてしまうと、同じようなゲームになっちゃうなと。
そこで、かえるから「写真をもらう」という風に変えつつ、みんな同じ写真だとつまらないので、写真が特別なものになるように意識しました。
具体的にはどういうことなんでしょうか?
高崎:
かえるが撮ってくる写真には、旅仲間が写っていたりいなかったり、ちょっとした風景がちがっていたり、同じ写真が出ないように工夫しています。
同じものばかりだと、SNSにアップしてもらえないので、なるべく不確定要素をたくさん入れて、ほかの人と写真が被らないようにしようと。
アプリの裏側には「日本の地図」の設定があって、山を通ると山の風景が写るみたいな計算がされて、写真が送られてくる仕組みになっていますね。
他にも「この動物と途中で合流して目的地まで一緒に行った」みたいなことも裏側では設定されています。
それはおもしろいですね。ほかにはありますか?
高崎:
もうひとつは「場所を分かりづらくする」ということも意識しました。かえるは写真をくれるんですけど、どこにいったかは話してくれません。
そうなると「写真にうつっている場所」というのは、知っている人ならわかるけど、知らない人はまったくわからないという状態になります。
そうすることで、ユーザーさんの間で「こんな場所に行ってきた」「え、ここいったことある」といった会話が発生しやすくなると考えました。
なかでも、透橋(すかしばし)という橋があるのですが、そこは橋のほんの一部分しか写っていないのに、わかる方がいてびっくりしましたね。笑
失敗してしまったアプリの話
ちなみに「失敗したアプリ」の話も聞いてみたいのですが、そんなアプリもあるんでしょうか?
高崎:
もちろん、頑張ってつくったけれど、成果が出なかったアプリというのもあります。それを失敗というのであれば失敗かもしれないですね。
とくに「ねこあつめ」をつくるまえは、わりと「数打ちゃ当たるだろう」という感じで、いろいろとアプリをつくっていたんですよ。
たとえば、「モグラッシュ」というゲームは、1万ダウンロードもいってないくらいで、「キラーパンダ」というゲームも、それほど成果は出ていません。
もともと、デザイナーがクオリティにかなりこだわるタイプだったので、アプリのクオリティ自体は変えていないつもりなんですけどね…。
むしろ、「ねこあつめ」(1.5ヶ月で開発)なんかよりも、「キラーパンダ」(3ヶ月で開発)のほうが、開発期間は長かったくらいです。
そのときと「ねこあつめ」以降では何が変わったんですかね。
高崎:
ひとつは「ターゲット層の違い」なのかなという気はしますね。
あとは、キラーパンダってよくある「ランゲーム」ですし、モグラッシュって「モグラたたき」ですし、結局は「似たようなゲーム」がたくさんあったんだと思います。
以前は、自分たちが「つくりやすいゲーム」みたいなものを、優先してつくっていた部分があって。売れたゲームをどこか真似してつくっていたり。
なので違う点としては、「ねこあつめ」から、ほかにはないゲームをつくれたのかなと。それで、ほかのゲームと「ちょっと違ったところ」が評価されたのかなと感じています。
最後にゲームづくりで「大切にしていること」を教えてください。
高崎:
開発者はエンターテイナーとして、ユーザーさんをいかに楽しませるかが、ゲームづくりとしては大切なんじゃないかなと思っていて。
たとえば、ユーザーさんがゲームを楽しみだしたら、もうそれは「ユーザーさんのもの」なんですよね。そこに開発者が入っていくのはあまり良くない。
「ねこあつめ」であれば、ユーザーさんの庭先に来ているねこは、誰しもがみている「しろねこさん」ではなくて、その人のところに来た「しろねこさん」なんですよね。
もしくは「旅かえる」でいうと、ユーザーさんが可愛がっているかえるは、こちらの手を離れたものなので、それを壊さないようにしたい。
なので、ゲームをアップデートしていくときも、その関係性を「よりよいもの」にしていくことが、指針になってくるという感じです。
たとえば「ねこあつめ」だったら、うちの子自慢ができるコミュニティをつくるみたいな、こっちからああしろこうしろという仕組みは入れない。
自分たちでも狙っていくんですけど、ヒットはユーザーさんがさせてくれるものなので、ユーザーさんの評価を大切にしたいなと考えています。
「Unity Ads」からのお知らせ。
Unityでは、開発者の皆さまがゲームづくりに最大限時間を投下できるよう、
周辺のやらなければいけないことをサポートする、というのを一つのテーマとし、収益化に関する設計をアイディア出しとともにサポートしております。
リリース前、企画段階からぜひご相談ください。また、当インタビューのベースにもなっている、Unite Tokyo 2018での講演は下記資料をご参照ください。
Unity Ads
https://unityads.jp/
お問い合わせ
ads-support@unity3d.co.jp
株式会社ヒットポイント
http://www.hit-point.co.jp/
※本記事はUnite Tokyo 2018での講演と個別インタビューをもとに再構成したものです
取材協力:株式会社ヒットポイント、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社
広告企画:アプリマーケティング研究所