今回は大阪で個人でアプリ開発をしている「スキップモア」さんに、お話を伺いました。スマホアプリだと赤字だったけれど、3DSでは調子が良かったゲームの話など。
※スキップモアのユウラボさん。
「スキップモア」について
「スキップモア」について、教えていただけますか?
ユウラボ:
現在は個人でアプリを開発していて、全部でアプリを45本リリースしています。
もともと、ガラケーのFlashゲームをつくっていたので、その頃からのゲーム制作歴でいうと、もう10年くらいゲームをつくっていますね。
アプリをつくりはじめたきっかけは、何だったのでしょうか?
ユウラボ:
2011年にだした「イクラプチプチ」が最初のアプリです。このアプリは、当時予定していたiPhoneアプリの開発案件が止まったことがきっかけで、その空いた時間でつくりました。
そして、その「イクラプチプチ」が、1本目にしてAppStoreの総合1位をとってしまったため「簡単やん!」と勘違いして、アプリをメインにつくりはじめた感じです。笑
アプリ開発の「プログラミング」は、別の方にお願いしているんですよね。
ユウラボ:
そうですね、僕が企画やグラフィックなどの制作を、プログラミングは「株式会社うららワークス」さんに担当してもらって、分業でアプリをつくっています。
もともと、うららワークスさんは、昼間は普通に会社で働いていたんですね。
それで2011年末にだした「ハードル地獄」の収益が大きくでたので、「もう独立しちゃいましょう!」と口説いていたら、3ヶ月後ぐらいにほんとに独立してくれました。なので責任重大です。笑
「ハードル地獄」はどのくらいダウンロードされたのでしょう?
ユウラボ:
「ハードル地獄」は150万ダウンロードされて、1,300万円ほどの広告収益になりました。1ダウンロード当たり8.6円ぐらいの収益ですね。
この「ハードル地獄」の収益が、うちの資本金のような感じになっていて、おかげでいまも開発に工数のかかる「ドランシア」などのアプリがつくれている感じです。
「ドランシア」について
去年末にだした「ドランシア」の調子はどうでしょうか?
ユウラボ:
12月にリリースして、ダウンロード数は・・・たぶん皆さんが思っているよりもかなり少ないです。
「ドランシア」は、昔つくっていたPC版のFlashゲームを、スマホに移植したものですね。
他のアプリも並行しながらですけど、開発期間は7カ月くらいかかりました。もう、つくるのがかなり大変で、途中からは完成させるのが目的になっていた感じです。
PC→スマホへの移植だと、操作性など大きく変わるかと思います。そういう意味で工夫をしたところはどこですか?
ユウラボ:
そうですね、やっぱりスマホで「ドランシア」を遊ぶ時の難点は「操作性」です。
そこは、操作ミスが起こりにくくなるように、「表示されているボタン」よりも、実際にタッチで反応するスペースは大きくとって、操作性をカバーしています。
スキップモアさんのブログで、「縦画面と横画面どちらが良いか?」を考察していたのも、おもしろかったです。
ユウラボ:
結局、遊びやすさを優先して横画面にしました。
縦画面のほうが「広告モデルとの相性」は良いでしょうし、「縦画面で空中戦をメインにする」という方向性も考えたんですけどね。
※縦画面verのデモ画像。
ドランシアを出してみて、意外だったことはありますか?
ユウラボ:
「ドランシア」のメインキャラは5体で、ゲームを進めていくと手に入るコインでキャラが購入でき、最終的に50体以上の敵キャラが、プレイヤーキャラになっていくんですね。
それで意外だったのは、最弱キャラの「スライム」でクリアしてくれる人が思ったよりも多かったこと。
「スライム」は武器を持っていなくて、攻撃判定も4ドットくらいしかなく、難易度が相当高いのですが、それでもクリアしてくれる人が何人かいたのは、ありがたいことです。
ゲームは「すべてオリジナル」でつくるのが楽しい。
スキップモアさんのゲームの「ドット絵」ってすべて自作しているんでしょうか?
ユウラボ:
そうですね、ドット絵はオリジナルでつくっています。
ただ、一度つくったドット絵は、他のゲームにも使い回しています。例えば、「爆発」のエフェクトだったり、モンスターのグラフィックなどです。
「今のドット絵」と「昔のドット絵」で何か変わったことってありますか?
ユウラボ:
サイズという意味では、今も昔も「16×16」で一緒です。
ただ、「テイスト」については、時代の流れで自然に変わっていきましたね。一度、これまでつくってきたドット絵を、年代順に並べてみたことがあって。
昔は、ガラケーの容量が20キロバイトしかなかったので、色数を減らす必要があったから、こういうファミコンみたいなグラフィックになっている。
そして、いまは「ベビースキーマ(なぜ赤ちゃんがかわいく見えるか?)」という要素を取り入れて、「頭は大きく、目が離れていて、体は小さく」という感じにしています。
※アタマを大きくして、書き分けは髪型で差をつけている。
「音楽(BGM)」もオリジナルなんでしょうか?
ユウラボ:
音楽もオリジナルですね。アプリをつくるときって、音楽をフリー素材サイトさんから借りてくる方が、すごく多いじゃないですか。
でも僕の場合は、音楽をつくるのも、すごく好きなんですよね。逆に「人に任せてしまうのはもったいないな」と思ってしまうくらい。
「音楽をゼロからつくる」って、どんな手順でつくるんでしょう?
ユウラボ:
説明が難しいのですが、「溶岩のステージやから、こういう感じのリズム」というのをまず打ち込んでみて、そこにメロディーつけていくような感じ。
なので、まったくゼロからつくるというよりは、「むかし遊んだ、溶岩ステージの曲は、こんな感じだったなあ」と、思い出しながらつくっている感じです。
例えば「ドランシア」のステージ曲だと、1曲にどのくらいの時間をかけるんですか?
ユウラボ:
はじめに、大体3~4時間で原案をつくってみて、それを1日寝かせてみるんですよね。
そして、次の日にまた聞いてみて、気になるところがあれば修正して、というのを何回か繰り返しています。 完成版はバージョン3~4くらいになることが多いですかね。
あと、スマホってスピーカーが弱いので、ベースなどの低音が聞こえなかったりすることがあって。そこは実機で聞きながら調整したりもします。
スマホに適したゲームと、そうでないゲーム
これまで10年ゲームをつくってきて、「時代が変わったな」と思うことはありますか?
ユウラボ:
「ドランシア」をだしたとき、「gamecast」さんが、ユーザーにアンケートのような形で、感想を聞いてくれたことがあって。
それを見て、今のスマホユーザーは「強さが蓄積されていくゲーム」の方が好きなんだなと感じました。
だから「ドランシア」のように「負けると最初から」になるゲームよりも、もっと単純なゲームだったり、ソシャゲのようなゲームのほうが、今の時代にあっているのかなと。
「ドランシア」に関しても、リリースする前から「これは売れないだろうな」ということはわかっていました。
※アンケート結果はゲームキャストさんの記事より。
「売れないだろう」というのは、わかった上でつくっていたんですね。
ユウラボ:
はい、というのも「ドランシア」はヒットさせようと思って、つくったわけではなかったんですよ。
背景としては、PC版「ドランシア」をオマージュした「Slayin」という海外アプリがあってですね。
「オマージュ作品がでてるのに、オリジナルが出さないわけにはいかん!」と、「Slayin」に対抗してアプリも無料にして、半ば意地のような感じでつくりました。笑
※海外アプリ「Slayin」。現在有料100円で、推定100万ダウンロード以上。
なるほど。たしかにスマホの無料ゲームだと、「ドランシア」のような骨太のゲームとは相性がよくないかもしれませんね。
ユウラボ:
そうですね、「デバイスとゲームの相性」はあると思います。
やっぱり「骨太のゲーム」はスマホに向いていないですね。うちでいうと「ドランシア」や「フェアルーン」みたいなゲームは、スマホだとぜんぜん収益にならない。
ちなみに「フェアルーン」のアプリをだしたときに、一番多かったクレームは、「このゲームを十字キーで遊びたい」でした。笑
「フェアルーン」は、パブリッシャーのフライハイワークスさんに声をかけていただき、3DS版を出したのですが、そのおかげでアプリ版を含めて、開発費の回収のメドがつきました。
アプリ版だけだと赤字だったんですけどね。
3DSだとちゃんと遊ばれるんですね。
ユウラボ:
そうですね、なのでもう「骨太系のゲーム」はスマホで出さないと思います。いま開発中の「フェアルーン2」も、3DS専用のダウンロードゲームになる予定です。
一方でスマホは、カジュアルゲームとの相性が良いですよね。例えばうちの「ピクセルルーム」という脱出ゲームは、75万ダウンロードで、広告収益が550万円ぐらいになりました。
そんなこともあり、しばらくは「カジュアルゲームはスマホ」「骨太ゲームは3DS」と、うまくジャンルを出し分けていこうと考えています。
※ジャンルとインターフェースが「スマホ向きじゃないゲーム」はアプリだと厳しい。
最後に、告知などがあればお願いします。
ユウラボ:
3DSの「フェアルーン2」を鋭意制作中です。開発状況などをTwitterでつぶやいたりしてますので、気になる方はのぞいてみてください。
フェアルーン2の地下。もうちょっとだけ描き込むと思います。 #Fairune pic.twitter.com/0dznyiT3XX
— ユウラボ@スキップモア (@skipmore) March 11, 2015
取材協力:スキップモア
編集後記
ある意味で「完成度の高いゲーム」が収益的にうまくいかないのが、アプリのおもしろいところ。
今までゲームをやらなかった「ふつうの人」がたくさんいる市場になっているのと、デバイスの特徴を考える必要がある。興味深い。