世界最強のソーセージを目指すという、謎の格闘ゲーム「ソーセージレジェンド」を取材しました。
※ミルク株式会社 代表取締役 谷 忠紀さん。
「ソーセージレジェンド」ができるまで
ミルクさんについておしえて下さい。どういう経緯でアプリ開発をはじめたのでしょう?
スマホのアプリ開発をしている会社です。2013年からカジュアルゲームを中心に、6本ほどアプリをリリースしてきました。
はじめは片手間でアプリを出してみたのですが、ほとんど収益にはならなくて…。正直「これで食うのは難しいなあ」という感想でしたね。
ところがその後、放置ゲームの流行がきて。そのとき出した「こんな息子に育てた覚えはない」というアプリが、それなりに上手くいきました。
それからはずっと、自社アプリの開発に集中しています。
※「こんな息子に育てた覚えはない」は、20万ダウンロードで、1,500〜2,000万円の収益に。
今年に出した「ソーセージレジェンド」は、どのように生まれたのでしょう。
もともとは「野生のキリンの喧嘩」からはじまりました。野生のキリンって、首を振り回して戦うんですよ。ニュースか何かで見たのですけど。
その様子がすごくおもしろかったので、実際に「キリンの格闘ゲーム」のプロトタイプを、サッとつくってみることにしたんですね。
なるほど、キリンからはじまったんですか。
はい。それでその「キリンの格闘ゲーム」を人に見せてみたんです。そしたら、リアクションが冷たかった。「え、なんでキリン?」みたいな。
あ、これはきっと受けないだろうなと。それで別のモノを探していて、うまくハマったのがソーセージでした。見た目のインパクトが強烈だと。
ただ、ソーセージって戦わないじゃないですか。なので、そこから「ソーセージをどう自然に戦わせるか」というのも考えましたね。
バトル方法については、どんなアイディアがあったのでしょう?
アイディアとしては、いろいろありました。キリンの首のように、縦に並んだソーセージが戦う、ヒモにつながれたソーセージが戦う、とか。
その中で、一番しっくりきたのが「フォークに刺さったソーセージが戦う」という形でした。いろんな意味で、しっくりくるのはコレだと。笑
※相手をペチペチして、ゲージ0になると負け(砕け散る)
これは人がソーセージ(フォーク)を持って戦っている、という解釈でいいんでしょうか。笑
そうですね。人がフォークをもって戦っているイメージです。
全体的には「中世の騎士道」をモチーフにしていて、新種ソーセージが手に入る「ソーセージ降臨」(ガチャ)も、伝説の剣が岩に刺さるような演出になっています。
開発期間としては、ソーセージの種類も増やしたかったので、3人で半年くらいかけましたね。他のゲーム開発も並行しながらですけど。
とくに「マグマ・ホットドッグ」など、すごく強い「レジェンド級」というソーセージが出てくるのですが、それを3Dでつくるのが大変でした。
※ソーセージは全26種類。ソーセージの写真を見ながら、3Dグラフィックを自作した。
「ソーセージレジェンド」公開後に起きたこと
実際に公開してみて、アプリのダウンロード数などはどうでしょうか。
5月にアプリを公開して、ダウンロード数としては、世界50万ダウンロードを超えたところです。iOSとAndroidは半々くらいです。
内訳としては、日本が25万ダウンロード、アジア(台湾・中国・香港)が25万ダウンロード、アメリカが1~2万ダウンロードという感じです。
日本ではどのように広がっていったのでしょう?
日本では、はじめにツイッターで話題になって、そこからYouTuberさんの実況で勢いがついて、ランキングが上がっていきました。
そこからはクチコミですね。同一端末で「2P対戦」も出来るようにしていたので、とくに男子高校生が教室などであそんでくれたようです。
対戦については入れておいてよかったですね。これがあると「ネタツール」になるというか、コミュニケーションが発生しやすくなるからです。
※ツイッターは「アプリマーケティング研究所」から拡散。YouTube実況は「ポッキー」さんの動画が影響力があった。
アメリカでもかなり話題になっていましたが、そこまでダウンロードされなかったんですね。
そうですね。アメリカの有名なバズ系のメディアで、紹介はされていたのですが、残念ながらそれほどダウンロード数は伸びませんでした。
たとえば「BuzzFeed」で記事になったり、「NowThis」の動画が、Facebook上で5,000回もシェアされていたりです。
ネタ的には、アメリカ人にもウケたようで、それはすごく嬉しかったです。笑
とはいえ、海外でこれくらい広まった日本のゲームって、そう多くはないと思うのですが、何がポイントだったと感じますか?
ひとつは「3Dのゲームだったから」でしょうか。今までつくってきた「2Dゲーム」に比べて、明らかに海外での反応率が高かったですね。
平面の2Dゲームだと、どうしても日本向けになりがちですけど、3Dゲームは世界共通なので、狙えるチャンスが増えるんだなと。
なるほど。
もうひとつは「ローカライズ」です。はじめから、10言語に翻訳をしていて、どの国のユーザーでもあそべるようにしていました。
結果的に、10言語すべての国で、広まることはありませんでしたが、少なくとも英語と中国語への翻訳は、やっておいて正解でした。
アジアで予想以上に紹介されていたので、イタリア語とかをカバーするよりは、タイ語などに対応すべきだったのかもしれません。
タイのYouTuberさんの実況で、100万ほど再生されている動画もありました。なんだかんだ、日本のコンテンツは、アジアが強いのかなと。
※ローカライズ費用は、文字数が少ないので、1言語1〜2万円の予算で実施できたそう。
気になる「収益面」についてはどうでしょうか。
50万ダウンロードで、収益額でいうと約700万円です。1ダウンロードあたり13.5円の収益性ですね。
広告と課金の内訳としては、広告が85%、課金が15%です。ちなみに、全体の50%くらいは「動画リワード」が占めています。
バナーは全体の10%しかないので、下手にバナーを入れるなら、もはや動画広告一本で収益化していったほうが良いのかもしれません。
こうして見てみると、ほんとに動画の時代なんだなと感じますね。
日本と海外で比べると「収益性」に差はありますか?
やっぱり、日本が一番ですね。1ダウンロードあたりの収益性は、中国・香港・アメリカ・台湾と比べても、日本が2倍くらい良いですから。
課題とまとめ
振り返ってみて「課題」として感じることはありますか?
まず、ひとつは「継続率の低さ」です。1日で50%のユーザーが離脱しているので、そこをなんとかしないと収益性が伸びないのかなと。
ジャンル的な問題もあると思いますが、何回かやって「ああ、おもしろかった」みたいな感じでおわっちゃっている気がします。
今度リリースする「アップデート版」では、レベルアップシステムや、ソーセージの種類を増やしたり、そこをカバーする工夫も入れています。
たしかに。「1人モードメインの格ゲーは飽きやすい」というのもありそうですね。
もうひとつは、女性を取り込めなかったことです。想定していたよりもクチコミが広がりましたが、ダウンロード数は大きく伸びなかった。
冷静に考えて、ネタ的にもそうですが、アクションというジャンル自体、女性があまりやらないんですよね。パズルや脱出ゲームとちがって。
実際に、YouTubeに出した「公式動画」のアクセス解析を見てみても、8〜9割は男性で、ほとんどが10〜20代前半の層でした。
そういう意味では、かなり人を選ぶコンテンツだったのかなと。トップを取るようなアプリって、女性と子どもを取り込んでいますよね。
最近の「アプリ業界」についてどう思いますか。これからアプリをつくる人に伝えられることがあるとしたら?
正直にいうと、簡単ではないと感じます。いままで売上があった開発者からも「厳しい」という声が増えてきていて。完全に供給過多ですよね。
うちも、今年だした「忍者ステップ」というゲームは、一人で半年かけてつくったのですが、1万ダウンロードしかされず、爆死してしまいました。
世界中のアプリストアでの「フィーチャー」を狙って、海外ユーザーにウケそうなゲームをつくったのですが、そう甘くはなかったです。
3Dもすべてつくって、環境音もこだわって、半年かけて開発して、たった1万ダウンロード。こういうことが、普通に起こり得るんですね。笑
もちろん、他にはない「独自のアプリ」がつくれるなら、すごくチャンスがありますけど、そうでないなら、すぐ埋もれちゃうのかなと。
※爆死してしまったという「忍者ステップ」ふつうにクオリティは高い。
最後にメッセージなどあればお願いします。
せっかくなので、「ソーセージレジェンド」を開発しているうちに知った、ソーセージ雑学をお伝えしたいと思います。
まず、日本でもよく食べる「ウィンナー」ですが、これは本来「ドイツのウィーンのソーセージ」という意味なのだそうです。
日本語で「ウィンナー」というと、ニュアンスとしては「5センチ以内の短いソーセージ」という感じでつかわれていますけど。
あと「ホットドッグ」というのは、パンを含めて「ホットドッグ」なのかと思いきや、本来は焼いたソーセージのことをそう呼ぶのだそうです。
ちなみに、焼いていないソーセージを「フランクフルト」と言います。日本語では話されているうちに、意味が変わってしまったようですね。
取材協力:ミルク株式会社
編集後記
最近、ツイッターでアプリを紹介すると、すごく拡散されることが増えている気がします。アプリをつくったときには、動画で告知したほうが良いかもしれません。
世界最強ソーセージを決める、謎の格闘ゲーム「ソーセージレジェンド」
ソーセージ振り回して、相手をペチペチして、体力ゲージ0にしたら勝ち。
レアソーセージが空から降ってくる、ガチャみたいなのもある。 pic.twitter.com/aSFq56jyDu
— アプリマーケティング研究所 (@appmarkelabo) May 31, 2016
スマホが実験室のビーカーになるアプリ「BEAKER」
ビーカーになんでも入れて、観察したり、爆発させたりできる。
理科室でやると先生に怒られるけど、これならやりたい放題できる。 pic.twitter.com/wxKxHqscxV
— アプリマーケティング研究所 (@appmarkelabo) August 8, 2016
怒り狂った社畜が、オフィスを破壊していくゲーム「Smashy Office」
最後は、迫ってくるシュレッダーみたいなのに、押しつぶされて死ぬ。
キャラと武器をコレクションするとこは「クロッシーロード」のシステム。 pic.twitter.com/HcoC6blSVY
— アプリマーケティング研究所 (@appmarkelabo) May 11, 2016