有料のゲームアプリをつくって暮らしている、「Q-cumber Factory」さんにお話を聞きました。
※株式会社PUMO 取締役 竹下功一さん(左)、Q-cumber Factory 佐藤徹志さん(右)
有料ゲームアプリについて。
「Q-cumber Factory」について教えてください。
佐藤:
ゲームアプリをつくっている、個人デベロッパーです。過去に出したアプリは4本、すべて有料です。事務所のボロアパートで作業しています。
※すべてiOSアプリのみ。
「有料アプリ」だけで生計を立てているのは、スゴイですね。
佐藤:
まあ、これがちょっと厳しいんですよねぇ。独身での実家暮らしだから、なんとか続けられている感じです。これまでの貯金を崩しつつも。
アプリの累計売上は、どのくらいになっているのでしょうか?
佐藤:
4年間の累計で、売上800万円くらいになっています。最高で月100万円を超えたこともありますけど、結局長くは続かないですよね。
アプリ開発をはじめる前は、なにをしていたんですか?
佐藤:
もともとシステム開発会社で、エンジニアとして働いていました。ところが、2008年のリーマンショックで、会社がヒマになってしまって。
ほんとうにヒマすぎてヒマすぎて。ついに週休4日になってしまいました。当然、休みの日は無給です。だから、お財布にも響きましたねぇ…。
それでちょうど、その頃にiPhone3Gが出たんです。個人でもアプリが出せることを知って、趣味でゲームをつくりはじめたんですね。
最初は「なんとなく」つくりはじめたんですね。
佐藤:
そうです。ただ結局その流れで、2011年の末には、会社をやめてしまいました。ゲーム開発に集中したくなってしまったんです。
それで、いくつか練習用ゲームをつくりつつ、2012年4月に初めて公開したのが「Rogue Ninja」というアプリでした。
「Rogue Ninja」はどれくらい売れたのでしょう?
佐藤:
3万ダウンロード(360円)で、400万円くらいの売上になりました。ほとんどはリリースから1年間での売上です。
「売上 = ダウンロード数 × 360円」になっていないのは、「値下げセール」をやっているのと、為替レートでアプリの値段が変わるためです。
ダウンロード数(売上)の内訳としては、日本が50%、アメリカが25%、欧米(カナダ、イギリスなど)が25%という感じです。
スゴイですね、その後に出したゲームはどうだったのでしょう?
佐藤:
その後、2013年に出した「Ninja Striker」は、30万ダウンロード(120円)されたものの、売上は200万円くらいでした。
一見、ダウンロード数は多く見えますが、9割は無料ダウンロードです。「ファンを増やそう」と考えて、無料セールをやったからですね。
そして、2014年に出した続編が「Ninja Smasher」でした。これは1万ダウンロード(480円)に終わりました。売上も100万円くらいです。
※「Ninja Smasher」の、8割はセールによるダウンロード。
あれ、どんどん下がっていませんか?
佐藤:
下がっていますねぇ…。前作で上がった知名度で、「Ninja Smasher」はボーン!とくる予定だったのですが、ぜんぜんこなかった。
しかも、「Ninja Smasher」は、ほぼ国内でしかダウンロードされていません。
どうして、海外でダウンロードされなくなったんですか?
佐藤:
海外のAppStoreで「フィーチャー」されなかったのが大きいです。いままでは、いろんな国のAppStoreで紹介されていたのですが…。
一応、海外の有名メディア「Touch Arcada」「Pocket Gamer」で、ゲームを紹介してもらえたりもしたのですが、火はつきませんでした。
3DS版「Ninja Smasher」について
※ここからPUMOの竹下さん(3DS版のパブリッシャー)も加え、3DS版の話などを聞きました。
3DS版「Ninja Smasher」は、どうしてつくることになったんですか?
佐藤:
有料のスマホゲームが、あまりに売れなくなってきたので、これは「新しい方向性を考えないとヤバいな」と思ったんですね。
そこで、3DSのパブリッシャーをされている、PUMOさんに相談して、ゲームを出してもらえることになりました。
※3DS版「Ninja Smasher」コントローラーで遊べるようにした、開発期間は半年くらい。
PUMOさんにお願いすれば、スマホゲームを3DSで出してもらえるんですか?
竹下:
ケースバイケースではありますね。ご相談いただければ、その都度検討するような形です。
3DS版「Ninja Smasher」では、移植の開発は佐藤さんと一緒に進めて、PUMOは主にパブリッシャーとしてお手伝いしました。
スマホから3DSへの移植で、大変だったところはありますか?
佐藤:
最近のスマホとくらべると、どうしても3DSは端末スペックが劣るので、そこは調整が必要でした。
たとえば、スマホから3DSにそのまま移植すると、カクカクしちゃったり、メモリが足りなくて、ゲームが落ちてしまったりするんです。
3DSのスペックは、感覚的には「iPhone3GS」くらい、という感じでしょうか。
なるほど、ほかに工夫したところはありますか?
竹下:
忍者モノのゲームということで、北米版のローカライズは「NARUTO」でつかわれている単語を参考にしました。
たとえば「火遁の術」って、海外では「Fire jutsu」で通じるらしいんです、「NARUTO」の影響で。直訳で「Spell of Fire」にするより、忍者っぽさがでるんですね。
「NARUTO」の影響力は、海外ですごく大きくて。以前、ヨーロッパのゲーム屋さんにいったときも、「NARUTO」だらけでしたよ。
※ちなみに「仙人モード」は「Sage Mode(賢人モード、賢者モード)」でした。
「有料アプリ」を売るテクニック。
「有料アプリ」を売るコツや、気をつけるべき点をおしえてください。
佐藤:
アプリを公開して、すぐ「値下げセール」はやらないほうが良いですね。なぜなら、すぐ買うユーザーは、そこまで値段を気にしないからです。
一方、セールで買うユーザーの心理は、「安いから買う」というよりは、「セールしているから買う」だと思うんですね。
なので、セールをやるなら「少し開けてから」やったほうが良いと思います。
なるほど。
竹下:
あと「値下げセール」をやるときは、まずは「定価」でストアに出したほうがいいですね。
たとえば、定価が「480円」だったら、公開と同時に「半額セールで240円」にするのではなく、まず「480円」で公開してから、「240円」に価格を変更するんです。
そうすると「値下げ・セール情報」として、メディアやbotが検知してくれます。価格変更を自動で取得する仕組みに引っかかるからです。
ほかには何かありますか?
竹下:
もうひとつは「下げ幅(割引率)」も重要だと思います。400円から値下げするなら、200円じゃなくて、底値の100円にしてしまう。
やっぱり「底値」を待っているユーザーさんって多いんですよ。あと、値下げ幅が大きいと、メディアで紹介もしてもらえやすいですし。
何年も前ですけど、400円→100円に値下げセールをしたら、1万ダウンロードから100万ダウンロードまで伸びたアプリもありました。
これからも佐藤さんは、ゲーム開発は続けていけそうですか?
佐藤:
なんとか続けていきたいですね。
目標は年商600万円です。経費などで200万円としても、会社員時代の年収400万円を確保しようと考えると、そのくらい欲しいです。いけるといいですねぇ。
取材協力:Q-cumber Factory、株式会社PUMO