広告費ゼロ円で「現地の大学生」が各国版アプリを立ち上げ。世界180万ダウンロードのノート投稿アプリ「Clear」が語る、海外インターン採用と集客施策

2018年04月23日 |
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世界180万ダウンロードの勉強ノート投稿アプリ「Clear」さんに、海外でゼロからユーザーを伸ばした施策など聞きました。


※アルクテラス株式会社 代表取締役 新井豪一郎さん(中央)、湖山洋平さん(左)、広報の大沢俊介さん(右)

Clearについて

「Clear」について教えてください。

新井:
「Clear」は学習ノートの共有アプリです。世界で180万ダウンロードを突破していて、累計で20万の勉強ノートが公開されています

他人のノートをみて勉強したり、質問や意見などのコメントを通じて、「学生同士での学び合い」が促進される場所になってきていますね。

会社の従業員は20名、開発メンバーは 5 人で運営していて、海外版は「現地のインターン生」に運営を任せることで成長しています。

ユーザー層としては、高校生がメインになっていて、アクティブユーザー(MAU)の60〜70%を高校生が占めていますね。


※日本が130万ダウンロード、海外が50万ダウンロード

これまで「広告費ゼロ」で成長してきたそうですが、うまくいった施策があれば教えてください。

湖山:
アプリだけではなくWEB版の「Clear」をつくり、ネット上にノートを公開することで、検索エンジンから集客する方法がうまくいきました

例えば、グーグルで「高1 数学A 確率」と検索した学生が、WEB版の「Clear」にたどり着いて、アプリをダウンロードするという流れです。

ちなみに、WEB版の「Clear」に載せている、アプリのダウンロードボタンって、当初は「ページの下部」にしかつけていなかったんですよ。

それを「ページの上下」の両方につけたことで、アプリのダウンロード率を3倍に伸ばすことができました。

おもしろいですね、ほかにはありますか?

新井:
途中から「ユーザー名検索」に対応したところ、それが思ったよりもつかわれたことです。

当初は「ノートは単元名で検索されるだろう」と考えて、もともと「ユーザー名検索」には反対していたのですが、やってみたらニーズがありました。

なぜなら、「あのユーザーの良いノートを探したい」という、ユーザー行動があったためです。

いまは、Clear内の検索ワードの「上位10%〜15%ほど」をユーザー名検索が占めています。ユーザー検索はできるようにして良かったです。

現地インターンの採用について

海外ではどうやってアプリを伸ばしているのですか?

新井:
海外については、現地で学生インターンを採用して、インターンが中心になり各国版を立ち上げています。

その国のことをよく知らない日本人が、一生懸命マーケティングするよりも、現地の学生にやってもらったほうが絶対にいいと思うんですよ。

なので、現地の優秀なインターン生に運営を任せて、その国ごとにマーケティング施策を行なっています。広告費用は1円もかけていません

海外は4カ国に展開していて(タイ・台湾・中国・インドネシア)、とくに数字が伸びているのはタイ(40万DL)と台湾(10万DL)です。

現地にはオフィスも置いていなくて、在宅OKのリモート勤務にしています。基本はLINEグループでやり取りして、打ち合わせはスタバで行なっています。

インターンは「どんな人」を採用してきたのでしょうか?

新井:
まず、インターンとして採用しているのは、現地の「トップ大学の学生」が中心です。これは単純に優秀な学生を採用したいという意図があります。

中でも、とくに「日本語学科」の学生を狙ってアプローチしました。なぜなら、日本に関心を持っていたり、日本語ができる学生が多いためです。

アジア圏のトップ大学の学生は、だいたい英語を話せるので、少なくとも英語ができる人がいれば、コミュニケーションは取れると思います。

学生にはどうやってアプローチしたんですか?

新井:
学生へのアプローチ方法は、無料の採用媒体だったり、現地のFacebookグループに「インターンに興味ありませんか?」とポストしました。

他には、チュラロンコーン大学(タイの東大)でビジネスハッカソンを主催したり、SNSや掲示板サイトを通じてリクルーティングしましたね。

インターンの時給については、現地のアルバイト給与水準に+20%程度と、すこし高めの給与を設定したところ、優秀な学生を採用しやすかったです。

どうしたらインターン主体でうまく立ち上げできるのでしょう。なにかコツなどはありますか?

新井:
インターンのチームは「少人数で運営する」というのが、重要なのではないかと考えています。

実は、もともと「1チーム、5〜6人」でやっていたのですが、パフォーマンスが上がらなくて、インターンを解散してしまったことがあって。

人数が増えると「一人あたりの責任」が軽くなってしまうのだと思います。これを「責任分散の法則」と呼んでいるのですが、タイでも台湾でも同じ失敗をしました

そういうことがあってからは「少数のやる気のある学生」に任せるようにしています。現在はタイは2人・台湾は1人で運営していますね。

また、インターン生が抜けるときは、できれば「同じ大学の人」を紹介してもらって、また優秀な学生を呼んできてもらえるようにもしています。

海外立ち上げ「2つのコンテンツ戦略」

海外版をゼロから立ち上げるとき「どんな施策」を打っていくのですか?

湖山:
まず、アプリの初期コンテンツの準備は、現地の大学生に「高校時代のノート」を譲ってもらって、それを運営側でアプリに公開していましたね。

ローンチ後は、インターン生に「TOEICで900点取った勉強法」のようなブログを書いてもらい、現地のFacebookグループに投稿していきました

ブログ記事の最後には、アプリのダウンロードリンクをつけて、ブログを読んだ人に「Clear」のことを知ってもらえるようにしています。

それを繰り返すことで、タイでは1日200〜300ダウンロード、台湾では1日100ダウンロードずつ、ユーザーを集めることができました。※リリース当初の数字(現在はもっと伸びている)

また、台湾ではネットメディアに「いいノートの取り方」という記事を寄稿したところ、以降の1日のダウンロード数が2倍(1日100DL→200DL)になったこともあります。

まずはネットに記事を出していくんですね。

湖山:
はい。次にノートが増えてきたらSNS運用を開始します。コンテンツは「Clear」に投稿されたノートをSNSにも投稿していきます。

上手くいっているSNSは国によって違って、タイはFacebook(5万いいね)が、台湾はインスタ(1.5万フォロワー)がうまくいっていますね

台湾ではブログなどの「文字文化」が盛んで、インスタに文字を載せても読んでもらえました。逆に、タイでは文字が読まれなくて、画像や動画の反応が高かったです。


※著作権はユーザーにあるが、配布権はClearが持っている。

なるほど。

湖山:
ちなみに台湾では、アプリで「インスタはじめました」と告知したら、熱心なユーザーたちがフォローしてくれて、1日に500人以上フォロワーが増えました

彼らがフォロー・コメントをしてくれたことで、インスタの「Explorer」タブにも表示されて、ユーザーの友達からのフォローも増加しました。

海外版の立ち上げにおいて「撤退判断」はどのようにしていますか?

新井:
これまでお話ししたことを継続しつつ、6ヶ月で「続行すべきか撤退すべきか」を判断しています。

具体的には、現地調査とインターン採用に1ヶ月、プロダクトを公開するまでに2ヶ月、プロダクト運営と成果検証に3ヶ月かけるイメージです。

インターンの給料は別にして、1国あたりの予算は60万円(出張予算10万円×6ヶ月)と、最低限の予算と時間で立ち上げの判断をしています

ちなみに、台湾やタイは親日国なので「日本で話題の〜」というサービスが受け入れられやすいと感じました。他の国より先に進出してみるのも良いかもしれません。

各国でアプリを運営してみて「国によるユーザー行動の違い」は何か感じましたか?

新井:
SNSでの行動習慣が違うので、それに沿った「ユーザー行動の違い」は傾向としてはあると感じました。

例えば、タイは「シェアやいいね」はめちゃめちゃされるけどコメントは全然つかない。これはFacebookとかでもそうらしいんですよね。

一方、台湾では「Q&A」の機能も使われていて。ただ「その人が努力をした結果、質問をしている」というものじゃないと、みんな一切コメントしてくれない。

あと「ユーザー同士が喧嘩する」というのは、不思議なことに日本だけだったんです。年齢が高校生くらいになるとかなり少なくはなってきますけどね。

喧嘩の起点としては「このノート下手ですね」といった、失礼なコメントから始まるものが多いようです。

アプリを運営していて「現地インターン生だからわかること」っていうのも多いんでしょうか。

湖山:
たくさんありますね。例えば、台湾の「Clear」では半分のノートに説明文が入っていなかったんですよ。日本だと90%くらい入れてくれるのに。

この理由は「中国語がスマホで入力しにくいから」だったんですよね。なので直接入力しなくても説明文が入るような仕組みが必要だなと気づけたり。

それから、現地でつかわれているSNSなども、日本からニュースや文献を読んでいるだけだと、なかなかわからなかったことも多いです。

そうした情報も「現地の学生の声」を聞くことで、正確な情報を掴みやすくなるなというのは感じます。

取材協力:アルクテラス株式会社

Clear(公式サイト

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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