「データがなくなったぞ!」バグ発生でお怒りメール2,000通。家計簿アプリ「おカネレコ」が語る200万ダウンロード到達までの道のり。

2014年10月24日 |
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  • 収益は広告6割:課金4割。
  • 実は家計簿は日本の独自の文化である。
  • バグが発生し、2000通のメールが送られてきた。

家計簿アプリ「おカネレコ」を運営している、スマートアイデア株式会社さんにお話を伺いました。

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※スマートアイデア株式会社 代表の江尻尚平さん。

「おカネレコ」について

最初は「おカネレコーディングダイエット」というアプリ名だったんですか?昔の記事にそう書いてあったんです。

江尻:
はい、最初は「お金のレコーディングをすることで節約する」という意味を込めて「おカネレコーディングダイエット」っていうアプリ名にしていたんです。

でも、実は「レコーディングダイエット」って商標登録されていたんですね。それで「おカネレコ」に変更した感じです。

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どうして「おカネレコ」をつくったのでしょうか?

江尻:
「家計簿アプリ」って昔からいろいろあったのですが、使い方が難しいアプリが多かったんです。

それで「みんなはどう思っているのかな?」と思って、600人くらいに調査をしてみました。

そしたら「45%の人が家計簿を途中であきらめている」という結果になった。続けられている人が2割しかいなくて、残り40%はそもそもつけない人。

「家計簿つけたいんだけど、途中で断念した人」が45%いたと。

江尻:
はい、さらに「続けられている2割」の人に、「どのように家計簿をつけているのか?」を聞いてみたら1位が紙の家計簿で、次にエクセル家計簿、アプリでつけている人は数%しかいなかった

「これはやっぱりニーズがあるんじゃないか」と考えて、自分でも続けられるくらい簡単な家計簿アプリ「おカネレコ」をつくろうと考えました。

当時の家計簿アプリは、どういうところで複雑になっちゃってたんですか?

江尻:
例えば、「入力画面」が最初にきてるアプリってひとつもなかったんです。

ホーム画面があって「書き込む」ってボタンを押して、項目と値段を選択して・・・っていう感じのアプリばかりだった。

なので、そのステップをどれだけ削って、入力の手間を短縮にできるかを徹底的に考えました。

結果的には、計算機をベースにしたインターフェースにして「何を押せばいいか」が直感的にわかるようにしました。

リリース当初はどうでしたか?

江尻:
リリースは2012年の8月で、最初は全然だったんですけど、2013年の3月あたりから新生活シーズンのせいかユーザーが伸びはじめました。

いま累計200万ダウンロードで、MAU(月間のアクティブユーザー)でいうと65万人です。

プロモーションはほぼやってないですが、現在も月5-10万ユーザー増えていっていますね。

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iOSとAndroidってどのぐらいの割合なんですか?

江尻:
iOSユーザーが90%(Android10%)ぐらいです。 Androidは1年遅れてだしたからか、そこまで振るわない状況です。

iOSはアクティブ率が高いせいか、「ファイナンス」のカテゴリでずっと良い位置にいて、その結果、おそらくランキング経由でユーザーが増えています。

あと、意外と口コミが多いみたいですね。Twitter上でも「どんなアプリ使ってるの?」「おカネレコを使ってるよ」っていうやり取りをよく見ます。

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「おカネレコ」のユーザーや、アプリの使い方について

どんなユーザーが使っているんでしょう?

江尻:
ユーザー層でいうと女性が7割、男性が3割。年代はけっこう幅広いです。

あと、おカネレコはITのリテラシーがあまり高くないユーザーさんが多いんです。

先日ユーザーインタビューを開催し、1年半以上使ってるユーザーさん4人くらいに来ていただいて、お話をお聞きしたんですね。

そこで「Evernoteってありますよね」って言ったら「は?なんですかそれ」って誰も知らなかった。

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けっこうその場で入力する感じなんですか?レシート撮影タイプの家計簿アプリだと「週末にまとめてやるみたいな人が多い」って聞いたことがある気がします。

江尻:
ユーザーアンケートで「どれぐらいの頻度でおカネレコを使いますか?」と聞いたところ、約7割の方が1日に1回以上は入力しているという結果になりました。

データで見る限り、若いユーザーのほうが「毎日その場で入力する派」が多くて、年齢が40代くらいになると「まとめて入れる派」が少し増えるかなという感じです。

レシート撮影タイプの家計簿アプリは、「カメラでレシートを撮る」という動作が必要で、移動しながら入力できないからではないでしょうか。そのため、まとめてやる傾向なんでしょうね。

ユーザーインタビューしていて感じることはありますか?

江尻:
「PCを日常的につかう層が確実に減っている」というのをすごい感じます。

例えば、大学生の子にとってはパソコンが「レポートを書くためのツール」になっているんです、一応自分では持ってるんですけど使わない。スマホでぜんぶ完結しちゃうから。

MAU65万はすごいと思いますが、アクティブ率をあげるためにうまくいっていることは?

江尻:
「入れ忘れ防止機能」はけっこう使われています。毎日夜になると、プッシュ通知がとんできて入力を忘れないようにする機能です。

プッシュ通知ではあるのですが、レビューの中でも「知らせてくれるから良い」みたいなコメントもあって、自分でオンにするから「プッシュ通知」じゃなくて「リマインド」と認識されているみたいです。

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マネタイズについて。

マネタイズはどうですか、広告と課金の割合はどのくらいでしょうか?

江尻:
今のところ、収益については広告6割:課金が4割ぐらいです。

Androidは月額で、iOSは単発。これはiOSは月額ができないのでやむを得ずです。

広告は利便性を失わない程度に、ほぼフッターにつけているだけです。やっと、ビジネスとしては、回るようになってきたところです。

400円のプレミアム課金をしてくれる率ってどのぐらいでしょうか?

江尻:
だいたい無料ユーザーの4%前後ぐらいが課金してくれています。

1年ほど使うと「申し訳ないんで」と課金してくれるユーザーさんも多いみたいですよ。笑

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「家計簿」は日本独特の文化。

海外版も出されてるんですよね、調子のほうはどうですか?

江尻:
アメリカで少し伸びていて、(英語版が)3万ダウンロードを超えたところです。

レビューをみていると評価も悪くないですね。アメリカだと税務申告しないといけない層が多いので、エクセルエクスポートの機能を使って、税理士にそのままデータを送る人が多いようです。

アメリカでも「家計簿」ってつけられているんですか?

江尻:
実は「家計簿」って日本の文化なんです。なのでアメリカではいわゆる「家計簿」はつけないんですよね。

「家計簿」にちょうどはまる英単語もないですし、税務申告ソフトは売っていても家計簿ソフトは存在しない。

日本でも最初からあったわけではなくて、「家計簿」っていう概念を主婦に浸透させた方が「主婦の友」にいらっしゃったらしいですよ。

そういう意味では日本が特殊で、そもそも家計簿が習慣になっている国が少ないということです。

海外ユーザーからのおもしろい反応って何かありますか?

江尻:
アメリカの女性から「ピンクの色が明るすぎる、ダークなピンクにしてほしい」っていうコメントがありました。

アメリカ人からすると、いわゆる日本の「ピンク色(さくら色)」って子どもっぽすぎるみたいですね、色の感覚が違うのはおもしろいですよね。

あとアメリカでランキングあがると、オーストラリア、イギリス、カナダもダウンロード数があがるんです。やっぱりそのあたりは連動している印象です。

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「おカネレコ」はベトナムで開発している。

今、何人ぐらいで運営されているんですか?

江尻:
日本が4名で、開発は基本的にベトナムの開発パートナー会社があって、そこで開発しています。

海外との遠隔での開発だと、細かいニュアンスを伝えるのが大変じゃないですか?

江尻:
そうですね、やっぱりなるべく細かくSkypeしたり、仕様書を細かくまとめたりというのは努力しています。

ただ、それでも理解できない部分もあるので、そういうときはベトナムに直接行ったりもしていますね。

「これから、ベトナムに開発をお願いしようかな」という人に開発会社の選び方をアドバイスするとしたら?

江尻:
やっぱり現地に行って「その会社が信頼できるかどうか」を見るのは重要だと思いますね。

うちも最初20社ぐらいの経営者に会ってみて、どういうふうに開発しているかを全部聞いて、「ここだったら絶対信頼できる」って会社をパートナーに選びました。

アプリって中長期でアップデートを繰り返さなくちゃいけないし、信頼関係で結ばれてないといけないと思います。

いま、開発してくれているスタッフ達は「おカネレコが大好き」と言ってくれて、がんばってくれています。

ベトナムだと開発コストが安く済むのがメリットですか?

江尻:
そうですね、日本よりコストを下げることはできます。ただ、コミュニケーションするコストも考えるとトータルのコストはそれなりにかかります。

それよりもベトナムが良いのは、すごい勤勉でまじめなことです。あと、日本語ができる担当をおいている会社が多いこと。

ただ品質の問題にはどうしてもぶつかるので、出す前にテストは日本でもしっかりやるようにしています。

例えば、ベトナムの人からすると「これはバグじゃない」っていうレベルが、日本だと「確実にバグだわ」ということがある。

ある種、日本人のクオリティ感覚が高すぎるっていうのもあると思うけど、そこは繰り返し伝えて「どのレベルがバグなのか」っていうのを理解してもらっています。

バグにより一日2,000通のメールが来て、涙したあの日。

ブログに「不具合で涙してしまった日もあった」と書いてあったのですが、すごい深刻なトラブルがあったんですか?

江尻:
ありましたね。初期の数万ユーザーの頃にひどいバグがあって、問い合わせメールが1日で2,000通きたんです。そのときはすごい大変でしたね。

それって、どんなバグだったんですか?

江尻:
「データが見えなくなる」っていうバグでした。データはなくなってはいないけど、表示されないっていう現象だったんです。

正確にいうと、すんごいタイムラグがあって、アプリを開いて1日後にデータが表示されるっていうバグでした。笑

当然、ユーザーがそれを見たら「あれ?データがなくなった!」って思うじゃないですか。それで「データがなくなったぞ」というメールが2,000通きました。

それに対して「データがなくなったわけではありません。修正しますので、アップデートまでお待ちください」っていうのを2,000通返信しました・・・。

「おカネレコ」にデータをいままで入力している以上「別のアプリ使えばいいや」じゃ済まないってことですよね、無料であっても。

江尻:
そういうことなんですよ。やっぱり家計簿ってデータが重要なので。

ほんと、アプリのアップデートのボタンを押すたびに未だにトラウマがよみがえります。「大丈夫かな・・・」って指が震えますし、胃が痛いですよね。

最後に告知などあればお願いします。

江尻:
「おカネレコ」でつかっている、ユーザーアンケートのシステムを外部に販売もしています。「質問テンプレート」も用意していますので、すぐに実施できるところも便利です。

もしアプリ内で、ユーザーアンケートを回収したい会社さんがいらっしゃればご検討ください!

アプリユーザー向けアンケートサービス「リサーチワン」
http://www.research-one.jp

取材協力:スマートアイデア株式会社

おカネレコ
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編集後記

「家計簿が日本の文化」だというのは驚きました。

そう、けっこう「おカネレコ」つかっている人って多いんですよね。(特にぜんぜんネット業界ではない普通の人)

合理的に考えると「マネーフォワード」「マネーツリー」のようなクレカ連動で勝手につけて記録してくれるタイプが便利だと思うのですが、現状は「おカネレコ」のようなタイプを好むユーザーがずっと多いということなのかもしれません。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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