国内最大級のスマホアドネットワーク「nend」を運営する、ファンコミュニケーションズさんに、アプリの広告マネタイズのコツなどを聞きました。
※株式会社ファンコミュニケーションズ(左から)二宮さん、浅見さん、中野さん。
マネタイズの成功事例
よく見かける「良くない広告配置」についておしえてください。
中野:
良くない広告配置として見かけるのが、「広告バナーの上に、連打ボタンを置く」です。これをやってしまうと、あるとき広告収益(クリック単価)が、ストンと落ちる可能性があります。
理由は「誤クリック」が発生しやすいためです。実際クリック単価が1~2円にまで下がるケースもありますね。
たとえば、連打系(クッキークリッカー系)のアプリであれば、ユーザーの目線を意識して「スコアの近く」などにバナーを置くべきです。
実際に、とあるアプリでは、広告の位置を連打ボタンから離し、ユーザーの目線の位置に変えたところ、CPM(広告1,000回表示したときの収益性)が大きく上昇しました。
「いまの広告配置は正しいか?」を見分ける目安としては、「クリック単価が3~4円以下」「同じ広告ばかり表示される」の2つです。これが続いたら広告の位置変更などを検討すべきです。
「目線を考えて、広告を置いている」というのを、実際のアプリで説明いただくことはできますか?
中野:
「ねこ艦」というクッキークリッカー系ゲームの事例でお話します。
この「ねこ艦」というゲームでは、基本的に「ユーザーの目線」はスコア(数字)に向いています。なので、その近くに広告を置くと、うまくいく可能性が高いわけですね。
そこでこのゲームでは、スコアを表示するバーに「チラシが届いてるニャン」と、ネイティブ型の広告をたまに表示しています。そうすることで、ゲームの収益性を底上げしている。
あとは「メイン画面」に戻ってきたタイミングでも、数回に一回インタースティシャル広告をだしています。これも「ユーザーの目線」の先にあるため、高い収益性がでています。
「少ないユーザー」で収益化しているアプリの事例はありますか。
中野:
これは、とあるカジュアルゲーム「アプリA」と「アプリB」の収益例です。この2つのアプリは広告の位置や、表示タイミングがまったく同じなんです。
ところが「アプリB」のほうが、ずいぶん収益性が高い。これは「アプリBのほうが、1ゲームが短く、リザルト画面(ゲーム結果の画面)への到達時間が早い」というのが要因です。
簡単に言うと「アプリBのほうが、広告と接する回数がずっと多い」ということですね。だからこそ、少ないユーザーで収益をあげることができる。
どんなアプリにも言えることですが、「ユーザーが息をつく暇」を多くつくることが、広告収益の最大化につながります。
余談ですが、ゲームのリザルト画面では、「インタースティシャル広告」と「レクタングル広告」の併用がオススメです。「リザルト画面」は一番の稼ぎどころなので。
「アプリのダウンロードを増やす」ためにやるべきことはありますか。
中野:
ASO(アプリストア検索の最適化)は大事だと感じます。実際に、ランキング上位には上がっていなくても、「検索からの流入」で成立しているアプリも意外にありますね。
とある脱出ゲームでは「脱出」というキーワードから、リリース初日から500ダウンロード、そして検索ランキング上昇により、2日目には5,000ダウンロードくらいの流入があったそうです。
アプリはダウンロード数が増えないと、大きく稼げないですか?
中野:
そんなこともないです。最近は「ダウンロード数を増やす」よりも「1ダウンロードあたりの収益を増やす」という方向に目がむいているデベロッパーも出てきていて。
よくカジュアルゲームだと「1ダウンロード10~20円の収益があればイイね」と言われますが、1ダウンロードで50円くらい出ているアプリもあるんです。
そういうこともあって、少ない数千ダウンロードであっても、アプリを何十タイトルもつくって、大きく収益を積み重ねている人も、実際にいたりしますね。
「いきなりテレビでアプリが取り上げられた」このとき何をすべきでしょうか。
浅見:
アドネットワーク会社には連絡したほうがいいですね。ユーザーが入れ替わることで、広告効果が変わってくる可能性があるので。
なので、急にアプリがヒットしたり、テレビにでたら、アドネットワークに連絡して「調整できそうであればお願いします」と相談してみると良いと思います。
「広告モデルのアプリ」のトップクラスだと、どのくらいの収益がありますか?
二宮:
アプリで「年間の広告収益が1億円を超える」というのは、実はあり得る話です。
nendは個人開発者の登録も多いですけど、単月1,000~2,000万円のアプリも普通にありますね。ただ「月100万円を稼げるアプリ」というレベルは相当の上位です。
2015年に流行った「アプリの傾向」があれば教えてください。
中野:
やっぱり「恋愛系」に絡めたアプリは強いです。今年ヒットした「リア充爆発しろ!」もそうですが、女性を取り込めるとユーザー層が厚くなるので、ランキングも維持しやすい。
二宮:
ちなみに、ここ数年で「App Storeで1位になったときのインストール数」って、ほとんど変わっていないんですよ。大体の平均で言うと「1日10万ダウンロードいかないくらい」です。
全体の「スマホの数」は増えているはずなんですけどね。強烈にプロモーションをかけているゲームが多いからなのかもしれません。
最近「アプリ開発者たちが困ってること」ってなんですか?
二宮:
やっぱり「集客」は大きな課題ですよね。アプリがダウンロードされない。とくに個人開発者さんができることって、ASOやツイッター連携くらいしかない。
そういう意味では、これからは「市場を読みながらアプリをつくる能力」も必要だと感じます。言い換えると「自分がつくりたいアプリ」ばかりだと難しいかもしれない。
たとえば、いま何がマーケットで流行っているのか。どんな広告主がたくさんお金をつかっているのか。彼らが広告をだしたくなるアプリとは何か。そういうことですね。
力のあるデベロッパーさんは「今どんな広告主さんが調子いいですか?」とよく聞いてきます。それを聞いて「広告主の求めるターゲットユーザー」に合ったアプリをつくるわけですね。
そういう「市場を読む」ということも、考えないといけない時期が来ているのかもしれません。
取材協力:株式会社ファンコミュニケーションズ