2名の個人アプリ開発者を取材しました。「個人開発者特集2018」の第二回です。
<目次>
・大学生(当時)が開発した「勉強しないと止まらない」目覚ましアプリ
・運用費がほぼゼロ円でも優秀だった「アプリ意見箱」3つの効果
1、大学生(当時)が開発した「問題を解かないと止まらない」目覚ましアプリの話
※個人開発者の加藤千人さん。今年DMMに新卒入社した24歳。
加藤さんが「つくったアプリ」について教えてください。
大学3年生のときに「めざましあんき」というアプリをつくりました。これは「めざましと英語学習」を組み合わせたようなアプリです。
仕組みとしては、英単語の問題に正解しないと、アラームが鳴り止まないようになっていて。二度寝を防止しつつ、英語が勉強できるようになっています。
なんでそんなアプリをつくろうと思ったんですか?
もともとは、大学時代に塾と家庭教師のアルバイトをしていたのですが、先生として生徒にモーニングコールをかけていたんですね。朝の5時半くらいに。
これは、時間がなくて宿題をやりきれない、生徒に勉強してもらうためでした。もちろん、モーニングコールしてほしい生徒にだけです。
それで、モーニングコールのときに、英単語や年号のカンタンな問題を、3〜5問くらい出してたんですよ。頭を働かせて確実に目が覚めるように。笑
それを続けていたら、小テストで「朝出した問題」の正答率が、やたら高いことに気づいて。あれ、なんか効果でてるな?みたいな。
なるほど。
いろいろ調べていたら、学習したものを睡眠で記憶が整理された朝に、復習すると脳に定着しやすいという、論文や勉強法もあって。
もしかして、そういうロジックで成果が出ているのかなと、考えはじめたんですよね。
ただ、勉強に効果があっても「モーニングコールを続ける」って大変で。それならアプリ化してつかってもらえばいいのではないかと。
そんな経緯で「めざましあんき」をつくることにしました。
※かなり熱量の高い先生だったそうです(イラストはイメージです)
アプリはどうやってつくったんですか?
プログラミングスクールで勉強して、ある程度まで自分でつくれるようにして。ちょっと難しいところだけ外注してアプリを完成させました。
とくに「アラームが止まらない」という部分がうまく実装できなくて。そこだけ学生プログラマーに報酬を払って手伝ってもらいました。
アプリをつくろうと思ってから、完成まで9ヶ月ほどかかりました。アプリはAppStoreに公開しました。
アプリに収録されている「英単語の問題」はどう用意したんですか。
単語は自分で用意しましたね。かなり地道な作業で大変でした。
有名な単語帳に共通している単語、塾で教えていて「覚えたほうがいい」と思う単語、よく出るけど単語帳に載ってない単語などを収録して。
あとは「問題の選択肢」も、ひとつひとつ地道につくりました。ランダムにすると回答がすぐわかってしまうので。ややこしい選択肢になるようにして。
微妙に違った選択肢を並べることで、ちゃんと単語の意味を理解していないと、アプリのアラームが止められないようにしたかったのです。
アプリ化してみて「生徒の反応」はどうでしたか?
すごく喜んでいましたね。二度寝の防止以外にも「苦手な単語を発見する」というのが、受験生にとっては大きな課題だったみたいで。
つまり「めざましあんき」で解けない問題があると「この単語わかってなかった」と気付けるわけです。それを繰り返せば穴を埋めていけると。
ちなみに、もともとは生徒のためだけにつくったのですが、ストアにアプリを放置していたら、いつの間にか4,200ダウンロードされていました。
AppStoreの「二度寝」とか「二度寝防止」といった検索から入ってきたり。あとは、生徒が弟や妹にクチコミで広げてくれたのもあるようです。
アプリを運営してきて「想定外だったこと」ってありますか。
想定外だったのは、塾からのニーズがあったこと。塾から「このアプリを塾で導入したい」という問い合わせをいただいて気づきました。
そこの塾で、独自にリスト化している単語を「めざましあんき化してほしい」といった声をいただいて。
当初は、完全に学生にしか目を向けていなかったので、まさか「塾用のアプリをつくってほしい」と言われるとは思いませんでした。
なので、収益モデルとしては「塾向けのアプリ」をつくる方向性が、一番筋がいいのかなと考えています。
ちなみに、アプリをつくる前は「なにかでお金を稼いだり」とかしていたんですか?
大学1年のときに「靴の転売」をやってましたね。ボロボロの革靴を仕入れてきて、ピカピカに磨いて綺麗にしてメルカリに流すみたいな。
それは、最高で月140万円の売上になりました。利益だと60〜70万円くらいです。4,000〜5,000円で仕入れたものを9,000円ほどで売っていて。
そのときは「ただお金を稼ぐ」って簡単だなと。でも「めざましあんき」をやってみて、自分のやりたいことを収益化するって、すごく難しいんだなとも感じました。
以前から「商売するのはわりと好き」みたいな感じだったんですかね。
そうですね。家庭が貧乏だったんですよ。母子家庭でお金もなくて。お小遣いなんて1円もなかったので、自分でお小遣いを稼いでいました。
小学5年生のときには、チラシで買取価格を調べて、ブックオフで買い占めたものを、別のお店で売って差額で儲けたりしていました。
あと、友達に要らないゲームを1,000円で譲ってもらって、買取センターで2,000円で売ったりとか。
そうやって、貧乏だったから自分でお金を稼いでました。人生でお小遣いをもらったことってないです。
アプリをつくった経験は、就活のときにも役立ったそうですね。
はい。就活は10社以上から内定をいただけました。面接でアプリを見せるとウケが良かったですね。あと僕は面接でプレゼンをしていたんです。
面接官の方に「どういう仕事やりたい?」と聞かれたら、提案書をつくってきたので説明してもいいですか?みたいな感じでプレゼンして。
最後に「フィードバックいただけますか?」と逆質問をして。そのフィードバックが厳しかった会社の、志望度を高く設定していましたね。
ボロクソに言ってくる会社に入りたかったんです。自分の思考力とその会社の求めているレベルのギャップが大きいほどいいと思ったので。
最終的に、もっともコテンパンにされた会社が、DMMだったんですよね。それで、DMMに新卒で入社することに決めたという感じです。
これから「めざましあんき」はどうするんですか。副業みたいにやっていくんですか?
一応、これから「めざましあんき」で収益化することも考えていて。いま小さい塾に飛び込み営業もしています。わりと話も聞いてもらえますよ。
受付のおばちゃんに、いきなりスマホを出して「いまからアラーム鳴るんで問題解いてください」って話しかけたりしていて。笑
それで「このアプリを塾に導入していきたいので、良ければフィードバック貰いたいです」と聞いたり。手応えは結構あるなと感じています。
最後に、これから就活をする人に、アドバイスがあればお願いします。
新規事業をやりたい人だったら、まずは自分で試しになにか小さくつくって、商売をやってみるという経験をしたほうがいいと感じます。
なぜなら、やってみないと原体験が生まれないから。薄っぺらい学生になっちゃうんですよ。
アプリをつくるとか転売するとかなんでもいいと思います。まずは、自分の中で原体験をつくることが大事なのではないかと僕は思います。
あとは「他の学生とは違うこと」を経験すること。ボランティアとか学生団体とかインターンって、ほかの学生も同じようなことをやっていますよね。
それだと、あまり響かないんじゃないかと思うんです。
逆に、自分で考えてアプリをつくって、誰かのニーズを解消した話をするだけで、みんなと違った土俵で自己PRできます。そういった体験があると有利になるのではないでしょうか。
めざましあんき(iOS)
2、運用費がほぼゼロ円でも優秀だった「アプリ意見箱」3つの効果
※個人開発者の最上聖也さん。日中はDeNAでエンジニアとして働いている
最上さんが「つくっているアプリ」について教えてください
いつやったかを記録する「いつやった?」というアプリをつくってます。散髪にいつ行ったっけ。実家にいつ帰ったっけ。といった感じです。
リリースから半年ちょっとで、ダウンロード数は1,600、アクティブユーザー(MAU)は750人、収益は38,000円という状況です。
収益モデルは課金のみです。いまは月7,000円ほどの収益になっています。個人的には広告って嫌いなんですよね。世界を崩れされるのがイヤで。笑
※ダウンロード数は多くないが、半数くらい(46%)が使い続けてくれていると。
アプリ開発は「どういう感覚」でやっているんですか。
僕は、アプリ開発は「趣味の感覚」が強いですね。自分の困ったことベースで「こういうのあったらいいな」ってつくるのが好きなんです。
平日夜や休日に家でやっているのですが、昨日もアプリ開発を深夜の2時までやっていて。でもずっとやっちゃうんですよね。楽しくて。
仕事じゃないぶん締切ないので永遠にやっちゃいます。これこうなったら絶対いいなとか。考えているとキリがなくて終わらない。笑
アプリを出してみて「意外だったニーズ」があれば知りたいです。
もともとは、散髪みたいな「長いスパンのもの」を想定していたのですが、もっと「短いスパンのもの」を記録したい人が多かったようで。
たとえば、家事みたいな「定期タスク」の記録につかったり。コンタクトとか髭剃りシェーバーの交換時期の記録としてつかったり。
あと、いろんな植物を育てている人が、植物によって水をあげる頻度が違うから、その記録につかっていたり。熱帯系は7日に1回みたいな。
そういうのを聞いて、たしかに「ToDoアプリ」はたくさんあるけど、定期タスクを管理するアプリって、意外とないのかなと感じました。
アプリの運営で「うまくいったこと」があれば教えてください。
アプリに「意見箱」をつけたことです。これを置いておくだけで、ユーザーの方たちが不具合やほしい機能を、意外と送ってくれるんですよ。
とくに、不具合の報告は「意見箱」に吸収させることで、レビューに書かれて「評価が荒れること」がなくなるというのもすごく良いですね。
ちなみに、意見箱に意見が送られると、LINEに飛んでくるようにしていて。「確かにそうだな」と思ったものは取り入れるようにしています。
この「意見箱」は、前職でつくっていたアプリでも有効でしたし、運用費もほぼ0円で済んでいるので、うまくいっているのかなと思います。
ユーザーが喜んでくれると嬉しいですし、モチベーションが続くというのもメリットです。
※とくに「iPhoneSEだと見づらい」のような端末情報、自分では気付けなかったバグ報告が助かっている
メールとかよりも「意見箱」のほうがいいんですかね。
メールはちょっとイヤだなと思っていて。意見くださいってときに「メールで送れ」って面倒ですよね。楽に送れるようにするべきかなと。
あと、意見箱は「一方通行」なのが良いんですよね。チャットだと「返事しないといけない」みたいな感覚がなんとなくあると思うんです。
それに、チャットで返事をすることで、ユーザーにも「返事したからにはつくってくれるよね?」と、ヘンに期待を持たせてしまうのも申し訳ない。
だから、これはあくまで「意見を投げるだけの意見箱です」みたいな感じにしています。
ユーザーの意見を聞くときに「注意していること」ってありますか。
アプリの中核になるところに関しては、「あまり意見を聞きすぎない」ようにしています。
ユーザーがほしい機能を詰め込むとブレていくからです。すると、初めて来た人が「何ができるアプリか」がわからなくなるってオチになる。
たとえば、要望として「家族で共有する機能がほしい」と言われたりするんですけど、タスク管理アプリなんてクソほどあるじゃないですか。
それならそっちを使えばいいと思うので、なるべく自分が「これはいいな」と思ったものしか取り入れないようにしています。
※意見を聞きまくると「別のアプリ」になってしまうことも。
個人でアプリ開発していて「よかったな」と思うことってありますか。
個人的には、就職の面接などでも「役に立ったな」という感覚がありますね。
面接って「これ自分がやりました」みたいに、いくらでもウソをつけるから、つくったアプリがあるだけで説得力が出るはずなんです。
実際につくっているアプリを見せれば、「何ができるのか」というのもわかるし、僕がつくることが好きなのも、きっと伝わると思うんですよね。
なので、とりあえずつくってみることは、みんなにオススメしたいですね。
開発者の最上さんのツイッター
(休日の深夜まで楽しくてアプリを開発してしまうのだそうです)
Githubやっと月額課金するようになったので、プライベートで開発してるアプリとかを全部Githubに移したけど、休日結構やってるな〜。 pic.twitter.com/2b1rVBN5Eg
— moga👶 (@_mogaming) August 15, 2018
Search Ads、とりあえず登録してみた。$100分突っ込んだけどどうなるかなー。
— moga👶 (@_mogaming) August 2, 2018
いつやった?(iOS)
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