「お金以外の価値をデータで可視化する」メタップス佐藤さんが語る、AKBのサインとベンツが交換できる未来。

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アプリのマネタイズ支援や、手数料0円の決済サービス「SPIKE」を運営する、メタップスさんにお話を聞きました。本記事、後編はアプリの話は直接関係ないのですが、データを可視化することでお金以外の基準が出来るなど、興味深い話がたくさん。

前編はこちらから。
「アプリは何がヒットするかわからない、とにかく出す」メタップスが語る世界で成功するアプリ。

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※メタップスCEOの佐藤 航陽さん。

データをつかって、お金以外の判断基準をつくる。

メタップスとSPIKE(スパイク)はどのようにつなげていこうと考えているのでしょうか、お金がメタップス経済圏で回るような仕組みを作りたいのかなあと思ったんですけど。

佐藤:
それも一部ありますが、すごく長期な話ではあるので今は投資している段階です。よくメタップスやSPIKEを見て「全然違うことしてるんじゃないか」って言われるのですけど、基本的には、広告も決済もそれほど変わりはないと考えています。

決済って「対価」と「商品」を交換するインフラじゃないですか、一方で広告って「広めたい人」と「お金を得たい人」を交換するインフラですよね。

つまり、決済も広告も「データを交換するインフラ」っていう意味では変わらない。メタップスとしては、その「インフラ」の黒子の部分に特化してやっていこうと考えている。

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なるほど、やっているのはインフラ事業なんですね。

佐藤:
はい。あとは、インフラに下がっていくとマーケットがどう動くかが読めるんです。「次が何が起こるか?」の未来が読めるって意味では、インフラに徹する価値ってすごく大きい。

そして、大規模なデータが得られるのもインフラの領域なので、コマースでもアプリケーションでも、下の部分は支えたいなとは思ってますね。直近はそこですね、将来的には経済圏もつくりたいと考えていますが。

データが溜まったらどういうことをやって行きたいですか?

佐藤:
一番やりたいことは「価値って何だろう」というところなんです。今私たちは、これが500円・1000円とかって価値を一元的に決めちゃうじゃないですか。

でも本来であれば、物事の判断基準っていっぱいあっていいはずだと思うんですよね。例えば、「AKBのサイン色紙」と「ベンツ」を交換してもいい人がいるかもしれない。

価値っていうのは「円だ、ドルだ」っていう仕組みで、決められるものではないんじゃないかなと思っているんですね。最終的にはビックデータが普及してくると、もっと賢くトータルで物事を考えられるようになるのかなと。

私たちはそういう「貨幣換算できない価値」をデータとして認識できるようにして、もっと人間がトータルでみたら得をするような価値観を広めたいなと考えているんです。今やっていることはそのための実験だとも思っているので。

具体的に「こういうことが変えられるんじゃないか」っていうことを教えていただけますか?

佐藤:
一番良い例としては「転職」だと思っていて、転職って給与の数字だけでみて、大体のバランスで「こっちがいいか悪いか」って考えるじゃないですか。

でもそれって、トータルでみると判断が変わるかもしれないんです。例えば、得られる人脈や経験なども含めて、数値として目で見れるようになったとしたら?

給与は下がるかもしれないけれど、トータルではこっちがいいんじゃないかとか、もっとわかるようになっていくと思うんです。

「引っ越し」もそうですよね。家賃が安いところに住んでも、2時間かけて通勤していたらトータルでみると損をしているかもしれない。肩が凝るとかもあるし。もしかしたら2倍の家賃であっても近場を選んだ方が良いかもしれない。

いまは見えてない数字やデータが、もっと見えるようになるってことですか。

佐藤:
そうです。まだお金でしか判断基準がないからそうなっているのかなと。今後は変わってくるんじゃないかなと。

データを蓄積することで、分析ができて未来が予測できて、人々があらゆる指標で物事を判断できるようにするのが目的なので、そのために決済や広告は一番近い領域だなと。

逆にエンターテイメントみたいな「ゼロから感動をつくろう!」みたいなのは、私たちの領域ではないなと思ってます。彼らを支えるのが私たちの仕事なのかなと。

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※メタップスの会社概要ページにはこんなことが書いてある。おもしろい。

直近でスマホが普及して「すごい変わりそうだな」と思うことありますか。

佐藤:
デジタルネイティブの人たちの価値観が変わってきていると感じます。スマホって皆さん「携帯」として認識していますけど、実は「超小型コンピューター」だと思うんです。

「Tポイント」とかもリアルの世界からネットの世界へ混ざりつつあって、スマホを操りながらポイントだけで生きてる人もたまにいます。給与とポイントを半分半分つかって暮らしていたりとか。

ある意味、昔からある「小遣い稼ぎのポイントサイト」をやっている人も、貨幣とポイントが混ざり合ってる領域にいる人たちかなと思いますね。

この前、Kindleをつくった人が書いた本を読んだんですよ。そしたら手書き印刷から活版印刷に移行する時って「人間の温かみがない」って批判されていたらしい。それ見てると紙の本、紙のお金も「昔は馬鹿げていたよね」って言われる可能性があるなあと思った。

佐藤:
多分80年後ぐらいの人は、タクシーの釣り銭を30円とか2円とか、小銭でやりとりしているのを「何であんなことしていたんだろうね」って言うんだろうなと思いますけどね。

完全に切り替わるのは、結構時間がかかると思いますよ。未だに紙もペンも使いますし、草刈り機があるのにマサカリとかを使いますし。

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※ちなみに、Kindleをつくった人が書いた本というのは「本は死なない」という本。

気分が最悪なのは「何をやってもうまくいく時」

佐藤さんは元々ウェブのコンサルとかSEOの会社を経営していた。その時は完全に国内向けだったと思うのですけど、メタップスはグローバルですよね。どうしてそこで、スイッチが切り替わったんですか。

佐藤:
一旦ウェブのコンサルティングとかの事業が軌道に乗って、完全にオペレーションで回せるようになって、自分の時間が空いたんですね。

「自分がやるんだったら、確実にグローバルでないとだめだよね」と考えていたので、そのタイミングで世界中を冒険しながら、いろんな人に会ってみたんです。

その時ちょうどAndoroidとiPhoneが出てきているタイミングで、コンテンツがワンクリックで全世界に配信できるシステムができるだろうなと感じた。

それで、「このタイミングじゃないと、もうグローバル展開はできないな」と考えて、いまのメタップスがやっているグローバル事業をはじめました。

世界中にいろいろ話を聞きに行った時に、印象に残っている話はありますか?

佐藤:
一番面白かったのは、やっぱ中国ですかね。中国の人やビジネスをみて「当たり前ってないんだな」ということがよくわかりました。

中国では成長スピードがすさまじくて、自分が「これはできないだろう」って思ってたことを、横で自分と同じぐらいの歳の起業家がぱっとやっちゃってる、みたいな。もう何でもアリの国で、それを見て視野が広がったのはあります。

今でいうと「小米(シャオミ)」とかも信じられない速度で成長しましたよね。1兆円の企業が3年程度でできるなんて誰も思わなかったですよ、実際それをやってしまった会社。

その時に、自分の当たり前をバラバラに壊してくれたって人たちに早期に会えたのはすごくよかった。逆に、彼らと会っていなかったら、今こういう事業をやろうと思わなかったでしょうし、そういう、リスクの限界値を上げてくれる人たちは、今でもすごい大切にしたいと思いますね。

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※小米(シャオミ)は”中国版Apple”的な熱狂ファンの多い新興メーカー。画像:日経新聞の中国・小米、1兆円企業へより

もともと、何でも行動しちゃう派の人なんですか?

佐藤:
そうかもしれないですね。とにかく一つの場所にいるのがとても我慢ができない。ある一定期間その場所にいると、もう飽きちゃうんですよ。「心地良い場所」ってのが嫌なんです、変な話なんですけど。

うまくいかなくなることよりも、脳のパフォーマンスが落ちていくのがわかる時が一番怖い。同じことずっとやってると脳みそって使わなくていいじゃないですか、だからどんどん思考力が落ちていく。

今日も明日も同じ日がずっと続いてくのを認識できると、このままいくと脳がぼけていくなと、「あ、これはまずいな」と思います。これ以上の恐怖はない。

なるほど、そこに危機感をもっているのは非常に興味深いです。

佐藤:
新しいところに放り出されるとすごい脳みそって回転するし、「やべえな・・・」って冷や汗が出るじゃないですか。

例えば、私も田舎から東京に出て来て、最初はメトロに乗るのも怖かったんです。でも、1ヶ月もすれば慣れちゃうじゃないですか。頭を使わなくてよくなっちゃうんですよね。

これがまたニューヨーク行くと「やばいなこれ・・・帰れるのかな」って思う訳ですが、その状態で常にいたいっていうのが、自分の願望なんです。

そう思わなくなっちゃったら「もう自分の居場所じゃないんだな」って考えるようにしていますね。何も考えなくなって、毎日同じことしているのは、ある意味で動物と同じなのかなって。

なるほど、たしかにそうかもしれないですね。

佐藤:
大人になると子どもの頃に比べて、自分が何者で何をしたくて、自分がどういう存在でって考えなくなってるじゃないですか。

昔ってもっともっと考えてたはずなんですけど、いつの間にか当たり前にこう受け入れてしまってる。「思考の自由度」っていうのが失われていっちゃう。そういう意味では、子どもの方が大人より頭が良いんじゃないかって思います。

起業家の人とかって、客観的にみてると中毒みたいにも思うんですよ。アル中じゃないですけど刺激を求めてる。

佐藤:
そうかもしれないですね。そうじゃないと自分の輪郭が確認できないんじゃないですかね。自分と他人の境目がわからなくなったら、基本個性ってなくなるじゃないですか。

それに抗いたいがゆえに「自分が自分である」っていう何かしらの活動がしたいんじゃないかなと思いますけどね、起業家も。

佐藤さんはすごいエネルギーに溢れているように見えますが「もうやる気なくなっちゃった」という日はあるんですか。

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佐藤:
それはありますね、「何をやっても想定通りでうまくいく」って時が一番気分は最悪ですね。うんざりです、ほんとに。

なぜなら「自分がもうやらなくていいんじゃないか」って思っちゃうんです。多分、高校生が小学2年生ぐらいの算数を解かされている感覚に近い。

ずっと100点だと思うんですよ。最初は嬉しいと思うんですけど、一週間続くともうモチベーションを維持できない。とにかく、予定調和なことは絶対やりたくないんです。

仮にですけど、今メタップスから追い出されてしまったら、何の事業をやりたいですか?

佐藤:
二つこれは決まりかなというのがあります、一つは「宇宙」でもう一つは「ロボット」です。

ロボットだったら、ロボットをつかったサービスをやりたいですね。例えば介護もそうですし、ホテルのドアを開けたりする案内人も、人間である必要がない。警備会社もドローンが飛んでいれば、別にALSOKの人たちが走らなくてもいい訳です。笑

今のハードウェアの領域って、ハードをつくって売ったり、受託をうけるみたいな領域だけじゃないですか。もう5-10年するとそれを使ってどうサービスを改善しようかって領域が大きくなってくると思っています。

ロボットとか宇宙は、まだフロンティアが広がっていて、退屈しないはずですし、劇的に改善できる領域なので、すごく興味がありますね。

取材協力:metaps

編集後記

「AKBのサイン色紙とベンツの交換が成立するかもしれない」という例え話を聞いて、田舎のおばあちゃんがモミジ拾って、東京の料亭がそれを高く買って、年収1,000万円みたいな話を思い出した。

データが大量に集まることで、お金を介さない「価値感のマッチング」をすることも出来るってことなんだろうな。

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※画像はちいきごとより。

metapsさんでは人材も募集されている、ご興味ある方はどうぞ。
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非常に示唆に富んでいる話が多くて、おもしろかったです。こういうチャレンジしている方たちをもっと取材していきたいですね。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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