「やればやるほどよくわからない」フリマアプリ米国進出時の苦労、今後の展開をメルカリ・BASEが語る。

2014年09月16日 |
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メタップスさん主催の「スマホ✕EC勉強会」にて開催された『フリマアプリ”メルカリ”と無料ネットショップ作成サービス”BASE‎”のトークセッション』をお届けします。

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メルカリとBASEの競合はどこなのか?

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(トークセッション)メルカリ山田進太郎さん、BASE鶴岡裕太さん
(モデレーター)メタップス佐藤航陽さん

現状の競合はどういうところでしょうか?例えばメルカリとフリルは競合に見えますが、実はユーザー層の住み分けができているのか。

山田(メルカリ):
「フリマ」と見るか「CtoC」と見るかはありますが、フリマという意味ではフリルさんは一応競合関係かなと思います。ただ、女性に特化しているので、そこまで強くは意識していないです。

マーケットプレイス型のサービスという意味では、ヤフオクやLINE MALLなども競合にあたるかもしれませんが、彼らはB to Cの要素も強いので、直接的な競合とは見ていません。

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※補足:フリマアプリ比較図「toshiyukis4.net」より

BASEはどうですか。STORES.jpあたりはかなり競合なのかなという気がするのですが、ユーザー層に違いはあるのでしょうか?

鶴岡(BASE):
そうですね。STORES.jpさんは全く同じようなモデルなので競合だと思っています。

STORESさんはファッション系が多かったりするかもしれないですが、うちの場合は良くも悪くも(ショッピング)モールではないので、露骨にどの分野が多いというのはないです。ユーザーは6割が個人で、残り4割がスモールBと法人という感じです。

メルカリではユーザーが出品する商品に偏りはあるのでしょうか?

山田(メルカリ):
当初は、若い女性を中心に「フリマ」というキーワードに敏感に反応してくれるため、マーケティング的に効率が良いということで、女性が第一のターゲットセグメントでした。

最近は徐々にオールジャンル型になってきています。テレビCM含めてオールジャンルでPRしているので、当初は「女性ファッション」の商品が半分以上だったのですが、今は3割くらいになってきている。

BASEはPCとモバイルだと、どっちで利用する人が多いのでしょうか?

鶴岡(BASE):
「購入」という意味では65%ぐらいがモバイル端末からです。「作成」という意味だと70%ぐらいがPCで管理しています。

うちは「フリマ感覚」というより、通販サイト感覚で使うレイヤーの方がいらっしゃるので。それで、PCを利用してアップされている方が多いのかと。

PCなのかスマホなのかで「売れる物」は変わってきますか。

鶴岡(BASE):
モバイルになるほど単価は安くなっていきますね。ガジェット・3Dプリンタなど数万-数十万円の商品は圧倒的にPCの方が多いです。

「スマホになればなるほど単価が安くなる・ちっちゃい決済が多くなる」というのはあると思います。

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※メルカリ使っているが、もう「女性向け」という感じはしない、中古スマホとかもがんがん出品されている。BASEは自動車から食品までいろんなジャンルが出店していて驚く。

海外展開はどこからやるべきか。

グローバル展開をするとき、決済やECは国の仕組みや法律に阻まれることがありますが、そこはどう解決していくのでしょうか?メルカリの展開状況をお聞きしたいです。

山田(メルカリ):
アメリカは4月からサンフランシスコでオフィスを作って、5-6人ぐらいのチームで展開しています。今まさに、アプリのローカライズ・カルチャライズをひたすらやっています。

決済・物流・法律のところは、各国でかなり対応が違うので合わせていかなきゃいけない。アメリカの場合、マネーロンダリングの問題でお金の法律がかなり厳しいんです。

僕らも会計士や弁護士30人くらいに意見を聞いているのですが、みんな言っていることが微妙に違っていたりして苦労している。

今アメリカで話題になっている、Uber・AirBnb・スクエアとか、シェアリングエコノミー系のサービスは、コンプライアンスの問題で国と闘ったりもしている。実際スクエアは、一度何千万円単位のペナルティを課されている。

そういう風にならないようにと思いますけど、現実的には「そもそも使ってもらわないと意味がない」というところなので、そこに全力を尽くしていく。

アメリカでの競合はどこになるのでしょうか?ブラウザ時代からやっている「eBay」のようなサービスなのか、アプリで成長している先行者がいるのか。

山田(メルカリ):
アメリカだと「eBay」が日本のヤフオクみたいなポジションにいる。craigslist(クレイグズリスト)という、地域で個人間がやりとりするサービスもかなり普通に使われている。両方とも基本的にはPC中心っていう感じですね。

アプリでいうと「女性向けファッション」「子ども向けの服」とかカテゴリー特化のC to Cのアプリが出てきていて、大体VCから1億円以上は調達している。先ずはそういうサービスにどう対抗していくかを考えています。

craigslist_ebay
※craigslistは「ペットゆずります」「家貸します」みたいな個人掲示板サービス。eBayは有名かと思いますが米国の大型オークションサイト。

アプリファーストでやっているUSの新興C to C系サービスって、UBERやAirbnbに比べると「そんなに認知度がないな」という感じがしますがどうでしょうか?

山田(メルカリ):
そうですね、まだまだアーリーアダプター層が使うような状況です。例えば、「ネット企業に勤めている女性」あたりが使ったことがあるというレベル。

そういう意味ではチャンスがある。なるだけ早くアメリカでサービスリリースしたいと考えていて、今は月の半分以上は僕もアメリカに行っています。

アメリカ市場を取れれば大きいです、大体eBayの流通もヤフオクに比べると10倍ぐらいある。

アジア展開はどう考えていますか?

山田(メルカリ):
「アメリカで成功する」って誰も成し得たことがなくて、一番難しいと思っているので、先ずはそこに全力を尽くします。

その次はEUにいきますね。なぜかというとコマースって「物流」と「決済」という大きな二つの壁を乗り越えないといけなくて、その二つは先進国の方が圧倒的に整備されている。なので、先進国からやるべきだと考えている。

アジアにいくとしたら、台湾あたりはあり得ると思うのですけど、もっと南の方の国々に関しては、本気でやろうと思ったら「物流と決済をつくる」というところからやらなきゃいけない。

BASEはどうでしょうか。物流などに関しては、C to Cのほうが近いほどやりやすくなってくるかなと思うのですが。

鶴岡(BASE):
そうですね、物流に関しては「当たり前のように物が届かない国」ってあるじゃないですか。

そして、お金を一旦預かるエスクローズの仕組みもあるので「届いたか・届いてないか」の判別も難しくなる。そこは考えないといけない。

山田(メルカリ):
日本だと郵便局が至る所にあるし、コンビニでも発送できるんですよね。日本って国土が狭くて、メール便を使えば200円以下でどこでも小さい物を送れるインフラがある。

アメリカはすごく広いからそういうのが意外になくて、個人があまり自分で配送する経験を持っていない。そこは(アメリカの)物流のハードルが高いと思っている部分です。

女性向けのファッション系アプリとかは、大体日本から台湾に飛び火するじゃないですか。グローバル展開する際に、台湾にいかないのはなぜなんでしょう?

山田(メルカリ):
単純に市場規模ですよね。「どうせやるんだったらアメリカの方がでかい」っていう、それだけですね。台湾はカルチャー的には絶対マッチするし、物流・決済も整っています。

ゲームや写真などのアプリ、つまりApple、Googleの経済圏の中で完結しているものは、海外進出しやすい。それが物流・決済・法律みたいなところ全部に関わってくるとなかなか厳しい。

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※補足:少し前のだがAppAnnieさんによる世界アプリ市場データ「2013年のアプリ市場9つのトレンド」より

今後のプロモーションや課題。

国内のプロモーションについて2社は反対のスタンスですよね、メルカリさんはプロモーションで一気に市場シェアを取って、一方でBASEはバイラルで広がった。BASEではガンガン、プロモーションする流れはあるんですか。

鶴岡(BASE):
うちは大規模なプロモーションはやらなかったんですよね。それこそお金の使い方がわからなかった。

(山田)進太郎さんに「メルカリはめっちゃお金使いますね」って言ったら「逆に、なんでお金使わないの?」って言われたんです。もう何も言えなくて・・・完璧に器の差なのかなと感じました。

山田(メルカリ):
それは、ソーシャルゲームをやっていた時の経験からかもしれません。ソシャゲのKPI分析はどんなサービスでも活きると思っています。

特にモバイルになって「1インストール」という明確な基準が出きてから、インストールして気に入ってもらえれば、ある程度リテンションも予測できる、そこはすごいやりやすくなった。

ウェブだと「1ユーザー当たりの価値」ってよくわからないんですね。検索エンジンのSEOがうまくいって売上が出たけど、1年後にアルゴリズムが変わってしまって・・・という不確定要素が強い。

アプリはApple、Googleにある程度コントロールされてしまうっていうのはあるんですけど、スマホというプラットフォームが変わらない限りは続くと思うので、めちゃめちゃチャンスだなと思います。

BASEは出店してくれている店舗への啓蒙活動に力を入れていますか、状況はどうでしょうか?

鶴岡(BASE):
そうですね。1店舗ずつ「どう売ってもらうか」という啓蒙活動に力を入れていて、ウェブでもリアルも月に3回ぐらいやっています。

(その甲斐もあって)平均の1店舗当たりの流通額は露骨に上がってきています。

最後に「今後の課題」をお聞きしたいです、先の展開も踏まえてお願いできますか?

山田(メルカリ):
うちは「アメリカがどうなるか」がものすごく分かれ道なので、そこに力を入れています。実際、今半分以上の開発陣がUSの業務に時間をつかっているのですが「やればやるほどよくわかんない」っていう感じです。

やっぱり日本だと、人脈もあるし、何が盛り上がっているかという肌感覚もありますよね。でも、USの場合はキャッチコピーひとつとっても、どっちが良いのか見当がつかない。アメリカのデザイナーが作るデザインも良いか悪いか全然わからない。そこは試行錯誤でやっています。

ただ「アプリの使い勝手のよさ」に関しては、ある程度共通だと思うので、そこはできる限りのことをやる。そしてある程度トラクションを得られるようにしながら、海外で良い人を雇って任せていく、という感じにしたい。

それがうまく出来るかはここ2、3ヶ月が勝負だと考えています。もうすぐアメリカ版もリリースできると思います。(※9/12にアメリカ版をリリースした)

BASEの今後の課題はどうですか?

鶴岡(BASE):
直近では「(BASEに出店している)店舗の流通をどう支援していくか?」ですね。

「商売したい・ネットショップ作りたい」と思った時に、今も比較的1位に近い選択肢に入れていると思っているので、長期的にこのポジションを維持していけるかが大事だと考えています。

まだまだ出店してくれる人たちは、東京や大阪の方が多いんですけど、最近は地方の増加率も上がってきている。そういう意味では地方のおじいちゃん、おばあちゃんのような方々に使っていただくことが一番大事かなと思っています。

会場からの質問

メルカリのマネタイズはどのようにしていく予定ですか、またマネタイズのスイッチをONにするタイミングのイメージはありますか?

山田(メルカリ):
もともと「手数料を10%頂く」と出品者にも言っているし、出品する画面にも今も書いてありますが、それがマネタイズ手段です。

ただ、トランザクション(手数料)だけでなくて他にも広告とかもあり得ると思いますし、そこにこだわっているわけではないですね。

タイミングに関しては、基本的には「満足度」がすごい重要だと思っている。「(手数料を)10%払ってでも使いたい」っていうユーザーさんが大部分になってきている確信が得られたらやろうと考えてます、いま結構近いところまできていると思う。

都内にいるとあまり気づかないかもしれないですけど、郊外ではBook Offとかのリサイクルショップがたくさんある。実際、そこに持っていっても全然高く売れなくて、お店で並ぶときの売値は倍以上みたいな世界なんです。

なので「10%の手数料ってすごい安い」というか、「リサイクルショップで売るよりは(メルカリで売る方が)全然いい」っていう価値感を持ってくれている方が結構いると思っていて、アプリの中でのユーザー体験がキレイに出るようになってきたら課金させて頂きたい。

取材協力:株式会社メルカリ、BASE株式会社、株式会社メタップス

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編集後記

2社とも求人されているので興味あればぜひ。
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メルカリは500万ダウンロード突破し、9/12に米国版もリリースして出品数も順調に伸びているよう。日米でジャンルや利用用途の違いがどこにでるのか気になる。(THE BRIDGE参照)「アメリカはやればやるほどよくわからない」というのも印象的、みんなわからない中でチャレンジしているんだな。

BASEはドメイン名でググると店舗がたくさん出てきて、眺めているだけでおもしろい。既存ECでなくBASEならではの文脈をもった出品ジャンルもでてきているのかな?

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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