世界3,200万ダウンロード、単月黒字化も達成。フリマアプリ「メルカリ」が語るマーケティング、検索結果にあえて「売り切れたモノ」を置いている理由。

2016年03月15日 |
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今回は、日米3,200万ダウンロードのフリマアプリ「メルカリ」を取材しました。

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※株式会社メルカリ 取締役 濱田優貴さん(左)、プロダクトマネージャー 山本久智さん(右)、広報 中澤理香さん

「メルカリ」について

「メルカリ」についておしえてください。

濱田:
誰でもかんたんに売り買いできる「フリマアプリ」です。ダウンロード数としては世界3,200万ダウンロード(日本 2,500万、アメリカ 700万)です。OSで見ると、iOSのほうがすこし多いですね。

月次の流通額としては100億円を超えていて、会社としても単月で黒字になっています。(手数料が10%なので、会社の売上は月10数億円くらい)

中澤:
いまスタッフは250名になりました。東京に100人ちょっと(うちエンジニア約50人)、仙台のカスタマーサポートに100人ちょっと、アメリカに30人くらい、という感じです。

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「単月で黒字化したとき」は、社内で盛り上がるものですか?

濱田:
いえ、社内では「あ、黒字化してたんだね」みたいな感じでしたね。というのは、目先のことはあまり気にしていなくて。

いまは「いかにアメリカで成功するか」に、すごく意識が向いています。でてきた収益についても、アメリカで勝つために、積極投資しているところです。

「メルカリユーザーの特徴」について教えてください。

濱田:
「定着率」はすごく良いですね。つまり「1回メルカリで買った人」が、次の月もつかってくれる確率がめちゃくちゃ高い。これは僕が入った1年半くらい前と比べても、ずっと変わっていなくて。

ふつうソシャゲとかって、数ヶ月たつとグンと「定着率」が下がってしまうじゃないですか。それに比べてメルカリは、かなり横ばいのまま、キープしつづけるイメージです。

中澤:
「1日の利用時間」も長いと思いますね。1ユーザーあたり平均1日40分アプリに滞在しています。ピークタイムは、夜21時以降くらいです。通販と一緒で「雨の日」は売上が伸びます。

雑誌のような感覚で「何か良いものあるかな?」と、眺めている人も多いのかもしれません。ツイッター上でも「メルカリ見てたら1時間たった」と、つぶやいている女の子をよく見かけます。

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なるほど。

濱田:
あとおもしろいのが、あらゆる指標(KPI)において、AndroidよりもiOSのユーザーのほうが、よい数字がでていることです。指標というのは、たとえば「定着率」「購入率」などですね。

iPhoneって端末が高いから「ユーザーの所得差がでているのかな?」と思ったのですが、不思議なことに「高価なAndroid端末」にしぼってみても、iOSには勝てなかったんですよね。

最終的に、どうしてなのかわからなかったですね。ファッションなどに興味があって、購買意欲の高い人が、iPhoneユーザーには多いのかもしれません。

そもそもどうして、スマホの時代になって「フリマアプリ」がこんなに盛り上がってきたんでしょう?

濱田:
スマホになって「出品」のインターフェースが、革命的に変わったからだと思います。とくに「カメラ」が大きいですね。スマホで撮ってすぐアップできるので、もうパソコンさえ要らなくなった。

つまり、「出品」がカンタンになって、ハードルが大きく下がったことで、モノがたくさん集まりやすくなり、それを買いたい人たちが集まってくる、という良いサイクルが回るようになったと。

メルカリでは「出品者」と「購入者」の割合が、だいたい半々くらいなのですが、それくらい「出品者」の比率は高くなっているんです。

あと日本では「フリマ」という言葉に、ポップでカジュアルなイメージがあるので、女性が親しみやすかったのもあるかな。これが「オークション」だったら、女性にここまで浸透しなかったかもしれない。

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マーケティングについて

メルカリを運営していて「想定外だったこと」って何かありますか?

濱田:
ひとつありますね、メルカリの「検索結果の画面」の話なんですけど。実はメルカリで検索すると、販売済みになっている「売り切れたモノ」もでてくるんですよ。

でも、これってヘンだと思いませんか? だって「いま買えないモノ」が出てくるわけですから。ユーザーにとってジャマですよね。そこで当時のぼくは、これを消してしまおうと考えました。

メルカリ代表の山田進太郎は「たぶんこっちのほうがいいよ!」と言っていたのですが、ぼくは「そんなことないだろう、これは勝ったな」と思いつつ、検索結果から「売り切れたモノ」を消すテストをしてみた。

そしたらどうなったんでしょう。

濱田:
そうしたらですね、結果的にどうなったかというと、もうぜんぜんダメでしたね。すべてにおいて数字が下がってしまって。ユーザーの購入率もそうですし、継続率さえもやや悪化してしまいました。

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どうしてなんですかね?

濱田:
「売り切れたモノ」を置いておくことで、ユーザーに「これ買いたかったな」とか「マメにチェックしておこう」と思ってもらうための「演出」になるからです。

ユーザーにとっては「こんな商品もあるんだ」と気づくキッカケにもなるし、逆に「いま買えるもの」だけを並べてしまうと、リアリティを感じないというのもありそうです。

そういう経緯で、いまでもメルカリの検索結果には「売り切れたモノ」が出てくるんです。

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なるほど、おもしろいですね。

山本:
これはレコメンド系の施策でも、似たようなことが起きていて。「その人が好きな商品」だけを並べてしまうと、検索の幅が広がらないんですよね。

基本的にはメルカリでは、「検索」をしてからモノを買う人が多いですし、いろんなパターンで検索してもらうためにも、「こんな商品もあるんだなあ」と気づいてもらうのは大事ですよね。

ほかに何か「数字が動いた施策」はありますか?

山本:
このまえ、会員登録の画面デザインを変えたら、登録率が20%くらい上昇しました。これ、もともとは「背景写真」を入れていたのを、ただ「真っ白な背景」に変えただけなんです。

おそらく、背景をシンプルにしたことで、「登録ボタンが目立つようになった」ということかなと思います。入力項目の数とかは、まったく変わっていないんですけどね。

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メルカリの「出品者」の話

メルカリではいまどのくらい「出品」がありますか?

濱田:
1日で数十万品以上が出品されています、累計出品数でいうと1.6億です。ジャンル別シェアで多いのは、レディース(27%)、エンタメ・ホビー(23%)、ベビー・キッズ(12%)などです。

なお、トップクラスの出品者だと、累計で100万円くらい売っている人は、たくさんいると思いますね。

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メルカリで「意外に高く売れるモノ」って何かありますか?

濱田:
僕は個人的に、メルカリで累計100万円くらい売っているのですが、おもしろかったのが「東京マラソンのノベルティ」がわりと高く売れていたことです。

東京マラソンって、走るのに1万円かかるのですけど、参加するともらえる「ノベルティ」が8,000円で売れていました。たしか、メダル4,000円、タオル2,000円、Tシャツ2,000円くらいでした。

ほかに「おもしろい出品物」はありますか?

中澤:
衝撃だったのは「牛乳パック10個 700円」や「サランラップ6本 500円」あたりですかね。これって小学校の先生が工作でつかうために買っているのか、ちゃんとニーズもあって売れるんですよ。

濱田:
あと、おもしろいのは「野菜」です。農家の人がメルカリで、お米とか野菜を売っている。ぼくも買ってみたんですが、ネット通販とかの半額以下で、ふつうに良い野菜が買えました。

メルカリをつかって、消費者に直接売れば、売上の9割が入ってくるわけですから、農家の人にとってもメリットがありますよね。(※腐りやすいものでなければ、食べ物も出品OK)

「プロモーション」と「日米ユーザーの違い」について

メルカリの「プロモーション」については、どのように行っていますか?

濱田:
いまは、Facebook、ツイッター、インスタの広告がメインです。日本に関しては、何度かテレビCMもやっていますが、効率は良いですね。

プロモーションのときに見ている指標としては、アプリ1インストールあたりのコスト(CPI)と、インストールしたユーザーが購入にいたるまでのコスト(CPA)です。

ちなみに日米で比べると、アメリカのほうが1ユーザーの獲得単価は安いんですけど、インストールからの利用率については低い、というデータになっています。

これはメルカリ特有なのか、一般的にそういう傾向になるのか、どちらなのかはわかりませんが、改善を重ねていきたいと思っています。

ほかに日本とアメリカで、違いがでていることはありますか?

山本:
「購入までの経路」には違いが出ていますね。具体的には、日本のほうが検索利用率が高くて、アメリカは(カテゴリ別の)タイムラインを眺める傾向があります。

あと、アメリカのほうが「LIKE」の利用率が高いです。日本では「ブックマーク」としてLIKEする人が多いのですが、アメリカでは「これいいね!」みたく、ライトな感覚でつかう人が多いですね。

濱田:
もうひとつ不思議なのは、なぜかアメリカでは「ブラジャー」の出品が多いこと。そしてすごく売れています。人気ランキングでVictoria’s Secret(女性向け下着等のブランド)が、1位になることさえあります。

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アメリカで700万ダウンロードまで到達してみて、「日本のサービスが、アメリカで成功するのはむずかしい」と言われているのは、なぜだと感じますか?

濱田:
うーん、どうなんでしょう。結局は「誰も成功してないから」じゃないですかね? だからみんな「むずかしいに違いない」とおもっていると。

ひとつハッキリ言えるのは、アメリカの競合アプリを見ていても「やばい、これは勝てないぞ」とは感じないんですよ。すくなくとも「プロダクト(の完成度)として勝てない」というのはないです。

ただ、すごく警戒はしています。「コピーされて一気に資本力でもっていかれる」という可能性もありますし。

最後に、メルカリが世界中で成功したとして、たとえば「日本人とブラジル人が取引をする」という未来はきそうでしょうか?

濱田:
むずかしくはないでしょうね。物流や決済はなんとかなると思うので、課題としては言語のカベとリターンポリシー(返品ルール)ですかね。国をまたいだ取引は、すごく実現したいことですね。

取材協力:株式会社メルカリ

メルカリ
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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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