ブーストの時代はおしまい?Google社員が教えるデータマーケティング -リマーケティングで休眠ユーザー復活の巻-

2014年03月05日 |
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アプリのマーケティングの課題のひとつに、「優良顧客の獲得」という課題があります。カバンを売っているお店があったとします。

Aさん)1,000円のカバンを年に1回しか買わないユーザー
Bさん)10,000円のカバンを年に3回買ってくれるユーザー

同じユーザーでも実はAとBのユーザーの価値は30倍違います。(あくまで数字上の話)例えば、この場合Bのお客さんにだけ絞って、新商品案内のチラシを送ることが出来れば効率が良いはずです。

アプリの世界でもたくさん課金してくれている良質なユーザーにこそ、自社の新作アプリを積極的にアピールしたいところですが、これが難しい。

今回は、GoogleのAdWordsの新機能としてリリースされた、コンバージョントラッキングとリマーケティングを組み合わせた、効率的なプロモーション方法についてGoogleに取材を行いました。

GoogleAdWordsを使って、効率的なプロモーションが行えるようになったとのことですが概要を教えていただけますか?

AdWordsのコンバージョントラッキング(成果を測定する機能)がバージョンアップして、アプリのダウンロード地点だけではなくて、例えばチュートリアル完了、課金などの地点での計測ができるようになりました。

つまり、最近あまりアプリを立ち上げていないユーザーのリストや課金ユーザーのリストを、リマーケティングと組み合わせることで、効率の良いプロモーションが可能になるということです。

会社さんによっては、「質の良いユーザーが獲得できれば、広告費はいくらかけても良い」というケースがありますが、「それでは質の良いユーザーをどうやって獲得したらいいのか?」ということが今までは分からなかった。

これまではわかりやすく「CPI」(1インストールあたりのコスト)という数字に落とし込むのが一般的でしたが、個人を特定しない形で、ユーザーがどのくらいの金額を使ったのかを、把握できるようになったことが最大の強みです。

どの広告クリエイティブからユーザーが獲得出来ているかや、どの配信先アプリ面から流入しアイテム購入を行ったか等を管理画面上で確認することが出来ます。

たとえば、「Aというアプリにだした広告からきているユーザーの課金額はこのくらいです。」「Bというアプリにだした広告からきているユーザーの課金額はこのくらいです。」というデータがたまっていくということです。

AdWordsの管理画面のデモ画像
inappconversion_demo

AdWordsを知らない方も多いと思うので、Google AdWordsについても簡単にご説明いただけますか?

AdWordsはGoogleが提供している広告サービスです。
AdWordsというと、Googleの検索連動型広告 (リスティング広告)を思い浮かべる方も多いと思いますが、

他にもディスプレイ型広告やYouTube の動画広告などがあります。特にアプリのプロモーションにおいてはディスプレイ広告がメインの施策となる場合が多いです。

※補足:ディスプレイ広告とはよく知っているコレ
displayad_images

AdWordsはAdmob 枠と連携しているため、Admobを導入している全メディアに広告を配信することができます。

そして例えば、

・端末(デバイス)
・OSのバージョン
・アプリの広告面単位
・年齢
・性別
・時間帯
・地域

など細かい条件でユーザーを絞って、広告を出稿することもできます。課金体系はクリック課金で、最低出稿金額等はありません。

(※補足:AdWordsを使えば「iOSの30歳の東京の女性ユーザーに訴求したい!」というような、細かい条件で広告が配信できるということですね。)

先ほど説明に出てきた「リマーケティング」とは何かをご説明お願いできますか?

リマーケティングとは、アプリの場合、アプリをインストールしてくれる「新規ユーザーの獲得」ではなくて、既存ユーザーや一度遊んでくれたけど今は離れてしまっているユーザーへのマーケティングです。

例えばゲームであれば「アプリを再度遊んでもらう」ことを訴求したり、何かを販売するアプリであったら「別商品の購入を促す」、このような形のマーケティングをリマーケティングと言います。

(※補足:リマーケティングって何?アプリを1度DLしたけどその後起動していなユーザーや、アプリを1度DLしたけど別のゲームを遊び始んでいるユーザーに広告を訴求するなど。)

remarketing_image

今回のコンバージョントラッキングの機能を使うと、どのようなリマーケティング施策が可能になるのでしょうか?

例えばこんなリマーケティングの施策が可能になります。
『課金したユーザーにのみ、新作タイトルを優先して宣伝する。』
『ゲームアプリAをダウンロードしたが、その後7日間休眠してしまっているユーザーに、「ステージ追加」などバージョンアップのお知らせの広告を流す。』などです。

実際に休眠ユーザーを効率的に復活させた、リマーケティングの事例を紹介したいと思います。

ぜひお願いします、事例を詳しくおしえていただけますか?

シリコンスタジオさんの「MONSTER TAKT」というアプリの事例なのですが、リマーケティング機能を活用しアプリから離れてしまったユーザー(休眠ユーザー)の呼び戻しに成功しました。

補足:「MONSTER TAKT」は主人公がモンスターを操り、敵と戦うシミュレーション RPG。
monstertact_ss

当初はアプリのリリース直後よりGoogle AdWordsを活用して、新規ユーザーの獲得を進めていたのですが、新規ユーザーの獲得には順調な一方で、アプリから離れてしまうユーザー(休眠ユーザー)が増加してしまっていました。

そこで、リマーケティングを活用して施策を行ったのです。まず「ユーザーが休眠してしまった理由」について、以下の3つの可能性があるのではと仮説を立てました。

仮説1)ゲーム内通貨の配布が十分ではなかった。
仮説2)ゲームのステージ追加が遅かった。
仮説3)モンスターの追加が足りていなかった。

この3つの仮説にあわせて広告バナーを作成し、休眠ユーザー向けにリマーケティング広告を実施しました。

monstertact_banner
(左上が仮説1に対するバナー[訴求内容:コインあげます!]、右上が仮説2に対するバナー[訴求内容:ステージ追加したよ!]、左下が仮説3に対するバナー[訴求内容:モンスター増やしたよ!])

この方法で、結果的に多くの休眠ユーザーを、アプリへ復帰させることが出来ました。

結果的に、新規ユーザーの獲得時に比べてクリック率は3~4倍、コンバージョン率は2~3倍となりました。

(※補足:この事例でのリマーケティング時のコンバージョン率の成果地点は、アプリをアンインストールしたユーザー    ⇒アプリの再インストール)

つまりまったくの新規ユーザーを獲得するよりも、一度興味を持ってくれたユーザーに「もう一回遊んでみない?」という訴求をするほうが獲得効率が良かったということですよね。

はい、この事例では、広告の内容については「コイン配布」を訴求するバナーが一番効果が高く、特に休眠期間が2週間以内のユーザーは復帰率が高いということも確認できました。

「MONSTER TAKT」と同じ休眠顧客のリマーケティング施策を実施したい場合、実際の作業は何をやればいいのでしょうか?

Adowordsのアカウント開設(https://adwords.google.co.jp/‎)と、広告出稿の手続きは必要です。

その上で技術的な作業としては、・コンバージョン計測用のSDKの実装。(※設定次第でリマーケティングリストの作成も可能)または・リマーケティング単体のSDKの実装。が必要です。

ヘルプページは以下に用意してあります。
Conversion Tracking for iOS(※英語のみ)
Conversion Tracking for Android(※英語のみ)
リマーケティングリストを作成する

AdWordsを試してみたいけどちょっと難しくてやり方がわからない・・・という場合はどうしたらいいですか?

まずはヘルプページを参考にしていただき、もしわからなければサポートダイヤルまで連絡いただければ、サポート担当が電話で対応いたします。

AdWordsに出稿した時に効果が高いというか、相性の良いアプリのジャンルはありますか?

特にカジュアルゲームやツールといった、広範囲のユーザーに利用されるアプリジャンルでの数字がすごく良いですね。

今後のアプリマーケティングのトレンドの予測があれば教えてください。

従来のアプリのプロモーションは、新規ユーザー獲得に非常に大きなウェイトが置かれていました。これには色々な理由がありますが、大きなところでは技術的な問題があると考えています。

要するに、アプリのマーケティングで注力されてきた「新規ユーザー獲得」は、ウェブマーケティングで置き換えると「サイトへの誘導」ですよね。

しかし、本来ならばその先のユーザーによる購買行動やどのポイントで脱落したか等の分析を行って始めてビジネス拡大に寄与すると思います。

アプリでは、ウェブほどには従来は分析が進んでいなかったので、手探りのプロモーションになってしまっていたと。

リマーケティングもそうですが、各ユーザー層に対して仮説ベースではなく、データを元にしたマーケティングが増えてくると感じます。

今後はCPIからの脱却というか、本質的なマーケティングをきっちりしていきましょうというのがメッセージです。

取材協力:Google株式会社

おわりに

いかがでしたでしょうか?イメージがわきにくい部分もあったかもしれません。

でも単純に考えて、まったくそのゲームのことを知らない新規ユーザーの獲得よりも、一度ダウンロードしたけど何かしら理由で離脱してしまったユーザーを呼び戻したほうが、2~3倍獲得コスト効率が良かったというのは、納得できる話ですよね。

リマーケティングやコンバージョントラッキングというと難しく聞こえるかもしれませんが、本当に自社にとって価値のあるユーザーを効率よく獲得していきましょうというのが今後大事になってくると。

けっこう通販サイトとかだと、リマーケティングつかっているところが多いのですが、やっぱりコスト効率は新規獲得よりも数倍良いっていう事例は割と当たり前にあります。(楽天で商品見てると、追跡されて広告めっちゃ出てきません?つまりアレです)

2014年以降は本質的なマーケティング施策がより重要になり、マーケティングを行うインフラが整ってくることで、

ブーストドーンッッ!
ランキング上位で自然ユーザー、ガサーッッ!

が段々厳しくなっていって、データを読み解く力、仮説をたてて検証を繰り返す力などが必要になってくる、そういう力のある会社が、今後大きなアドバンテージを取っていくのだと感じました。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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