副業コンビ開発でアプリ収益200万円「太陽人間」突き抜けるために干渉しないゲーム開発と、ツイッター就活に成功した「虚無そだて」作者が内定もらうまで

2018年12月10日 |
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4組のアプリ開発者を取材しました。「個人開発者特集2018」の第五回です。

<目次>
1、コンビ開発で収益200万円「太陽人間」攻略本への情熱
2、育成ゲーム「虚無そだて」作者がツイッター就活で内定
3、夫婦でゲーム会社から独立して「山ごもりゲーム開発」
4、売上1億円のサークルが「初のカジュアルゲーム」に挑戦

1、コンビ開発で収益200万円「太陽人間」攻略本にかけた情熱


※naichiさん、りるをさん。会社で働きながら副業でゲームを開発している。

お二人がつくったアプリについて教えてください。

りるを:
デザイナーのわたしと、プログラマーのnaichiさんの二人で、神様のむすこを育てる「太陽人間」というゲームをコツコツと開発しました。

2017年3月にリリースして、9.5万ダウンロードされています。二人とも働きながらだったので、開発には8ヶ月ほどかかりました。


※9.5万ダウンロード(iOS 8万、Android 1.5万)

二人はどうして「一緒にゲームをつくろう」となったのですか。

naichi:
京都でやっている、Unityのもくもく会で一緒になって。そこで軽いノリで「一緒にゲームつくってみようか」という話になりました

最初の企画時にあったのは、ネオン街のドット絵だけで。「神様の子を育てるゲームなんです」みたいに言われたんですよ。でも、全然わからなくて。笑

そこから「何をしたいんだろう?」と掘り下げていきながら、すこしずつ決めていった感じでした。開発はほぼ完全リモートで進めましたね。

アプリの開発中に「やってよかったこと」があれば教えてください。

りるを:
イベント出展はやってよかったです。遊んでいる人の「指の動き」を観察していると、意図してない動き方を発見できるからです。

お客さんは、口に出して「ココがやりづらい」とは言ってくれませんが、足りていない箇所を見つけて、リリース前にアプリを改善していました。

あとは、メディアの人がきてくれて、リリース前にアプリの記事を2〜3つ書いてくれたのも、イベント出展してよかったと感じる部分です。

※デジゲー博やBitSummitに出展した

アプリの収益やマネタイズはどんな感じですか?

naichi:
アプリの収益については、累計で200万円になっています。マネタイズは広告だけですね。収益の9割を動画リワードが占めています。

とくに、AppStoreのフィーチャーは大きかったです。すぐ1万ダウンロードくらいされて、1日に30万円ほどの収益が上がりました。

逆に、フィーチャーが終わるとスッと下がってしまって。だから、アプリで食ってる人たちって、本当にスゴイんだなと実感しました。

りるを:
わたしは、当時バイトしながら生活してたのですが、ようやくお金が入ったときに「アプリが売れたんだ」という実感がありました。

ちなみにツイッターで見たのですが「太陽人間」って攻略本まであるんですか?

りるを:
わたし、攻略本をみるのが大好きすぎて「太陽人間」の攻略本を自作してしまいました。攻略本ってむっちゃロマンあるじゃないですか

昔のドラクエの攻略本って、書き下ろしの武器イラストが載っていたり、未公開のデータベースが載っていて、ワクワクするじゃないですか。

それを、自分のゲームでどうしてもやりたくて。攻略本をつくって売ってみたら、40部くらい買ってもらえました。原価6割なのでまだ赤字ですが…。

ちゃんと、袋とじもつけましたね。原価が上がってもつけたくて。コロコロコミックの「袋とじカード」ってロマンあったじゃないですか。

あと、帯もつけました。帯つけるとリッチになって、ただの薄い本じゃなくて特別な薄い本になるんです。

最後に、コンビ開発を「うまく行かせるコツ」があれば教えてください。

naichi:
お互いの領域にムリに踏み込まないことだと思いました。僕はプログラムに徹していたし、イラストや世界観はりるをさんに任せていました。

世界観とかは僕には理解できなかったけど、口出しはしないほうがいいと思ったんです。突き抜けたほうが楽しいものができると思ったから

結局、売れたのも間違いなく「イラストの力」だったんですよ。りるをさんのシュールな世界観を信じたからこそ、独特な作品に仕上がったのだと感じます。

開発者のツイッター

(赤字になってしまった攻略本の在庫は通販でも買えるとのこと。naichiさんはゲーム開発者コミュニティも運営されています)

太陽人間(iOS/Android

2、育成ゲーム「虚無そだて」作者がツイッター就活で内定をもらえた話


※個人開発者のトモぞヴP‏さん

簡単に自己紹介と「虚無そだて」をつくった経緯を教えてください。

福島に住んでいる20歳の短大生です。もともと趣味でゲームをつくっていて、アプリを2本だしたものの鳴かず飛ばずという状況でした。

それで、3作目は育成ゲームをつくりたいと思ったとき、イラスト描くのは大変なので「虚無を育てるゲーム」をつくることにしました。

試しに、ゲーム序盤だけつくって、ツイッターに動画をのせてみたら、6千リツイートされて。これはいけるぞという手応えがありました。

そこから、2日くらいで開発したのが「虚無そだて」という育成ゲームアプリでした。

いま「ダウンロード数や収益」はどれくらいになっていますか?

3万ダウンロードくらいです。iOSとAndroidを別々に出したので、ネットで話題になったもののそこまでダウンロード数は伸びませんでした。

あと、このアプリには収益がありません。アプリに広告は入っていなくて、代わりに「虚空をみること」ができるようにしてしまったためです。

ただ、アプリからショップに移動する形で、虚無のオリジナル画像やグッズを買えるようにしていて、その収益は5万円ほどになっています。

多くの人が買ってくれるというより、少数の強烈に気に入ってくれた人が、大きく支援してくれました。


※虚無のイラストは29個売れた。グッズはほとんど売れなかった。

虚無そだての運営を通じて「印象に残っていること」はありますか?

ツイッターで自分を知ってくれた人が、20万円くらい「Macを買う費用」を支援してくれたことです。それはめちゃくちゃ驚きました。

家族にそれを話したら詐欺だと思われて、説得してたらツイッターが親バレして、母親がフォロワーになってしまいました。いまも監視されています

ぼくが、なんでも言うことを聞く「トモぞヴPバッジ」をネット販売したら、母親が購入してきて実家の掃除をやらされたりもしました。

「虚無そだて」は運営権も販売しているんですね。

そうですね。いまVRの開発にめちゃくちゃ興味があって。それの元手にしたくて「アプリの運営権を売ろう」と考えたんですよね。

運営権を買ってくれれば「虚無そだて2」みたいな続編をだしてもいいし広告を入れてもいい。それなら誰か買ってくれるかもしれないと。笑

でも、結局売れませんでしたね。ためしに「定価120万円」で販売したら売れなくて。半額セール60万円にしても売れなくて。いまも半額セール中です。


※現在も運営権は半額60万円で販売されている(通販ストア

虚無そだてのおかげで「内定がもらえた」って本当ですか。

はい。ツイッターがきっかけで「面白法人カヤック」という会社に、内定をいただくことができました

もともと、システム会社に内定もらっていて。でも個人でゲームをつくるうちに、クリエイターとして働きたい気持ちが強くなって、内定を辞退しちゃったんですよ。

そこから「虚無そだて」をつくって。軽い気持ちで「誰か雇ってくれませんか」とツイートしたら、ツイッターで内定が決まってしまいました。

リツイートしてくれた人たちには、本当に感謝しかありません。ありがとうございますと伝えたいです。

ツイートはどれくらい拡散されたんですか。

5千リツイート近くしていただいて、メールやDMが20〜30通くらいきて、そこから3〜4社の人とお話させてもらいました。

意外と多くて驚いたのは、「実力あるなら起業したほうがいいぞ」という、起業しろおじさんからのメッセージが山ほど届いたことです。

あとカヤックの場合は、自分の作品を見てくれたのもあり、ツイッターが「履歴書代わり」になる時代も遠くないんじゃないかと感じました

とにかく「知られること」って大事なんだな。何でもつくって「ネットに出してみる」というのは大事なんだなというのは実感しました。

開発者のツイッター

(ツイッターにデモ動画をあげて、反応みながらコンテンツをつくる方法も、アリなのかもしれません)

虚無そだて(iOS/Android

3、夫婦で山ごもりしながら「ゲーム開発する生活」の裏側


※Marumittu(マルミッツ)三橋 彰さん、椎野 央子さん。

簡単に自己紹介をお願いします。

椎野:
Marumittuという名前で、夫婦で山にこもってゲーム開発しています。プログラマーである夫と、デザイナーであるわたし、2人のチームです。

もともとは、夫婦ともにゲーム会社で働いてたのですが、一緒に独立することに決めました。いまは滋賀の山の中で夫婦と猫の3人で暮らしています。

三橋:
独立したのは、やっぱり「つくりたいゲーム」をつくりたかったのが一番です。会社で働いていると「つくりたいもの」はなかなかつくれないですよね。

※2017年7月に独立した

「山でゲームつくる生活」ってどんな感じなんですか?

椎野:
静かで自然が多いのは快適です。散歩しながら仕事の話もできますし。のんびりマイペースに仕事ができるところは気に入っています

そこまで不便でもないんですよ。ネット注文すると届けてくれるスーパーの宅配サービスがあったり、Amazonもつかえるので普通に生活はできますね。

三橋:
住居費についても、京都でマンション借りるよりも、山に広い家を買ったほうが全然安いですし、のびのび仕事もできていると感じます。

開発したゲームアプリについて教えていただけますか?

椎野:
2018年の1月に「StarONE:Origins」という、宇宙を舞台にしたタップゲームをリリースしました。開発期間は半年くらいでした。

累計ダウンロード数としては、約3万ダウンロードです。一番多いのは中国(56%)で、次に多いのが日本(23%)という比率になっています。

アプリ収益は120万円くらいで、課金と広告だと半々ですね。広告については動画リワードのみ。課金のほうは着せ替えアイテムが人気でした。

売上もほとんどが中国からです。動画広告も中国がいい数値を出していました。課金率も日本と同レベルには課金されているという感じです。


※3万ダウンロード(iOS 95%:Android 5%)。AppStoreでフィーチャーされて日本と中国で伸びた。

いまはどうやって生活しているんでしょうか?

三橋:
いまは、リモートでゲーム開発の仕事をこなしながら、自分たちのゲームをつくっていますね。リモート業務で生活費を確保している感じ

⾃分はプログラマーなので、フリーランスでの仕事はある程度はみつかります。なので、現状はわりと楽観的に捉えてはいますね。

椎野:
ちなみに、独立当初は貯金を削って生活していました。毎月の給料がなくなって、貯金がゴリゴリ削られていくと、ちょっとした不安はありました。笑

わたしも、いまの生活は苦しいより「楽しい」という気持ちが強くて。今後もいろいろ試しながら、ゲームの収益を伸ばしていけたらなと考えています。

これまでアプリを運営してみて「やって良かった」と感じることはありますか。

三橋:
BitSummitは、本当に出展して良かったと感じます。韓国パブリッシャーさんとの提携や、Nintendo Switch版のお話もそこから決まったんですよ。

椎野:
日本のストアの担当者さんや、同業のアプリ開発者さんなども、イベントブースに来てくださって、いろんな人と知り合いになれたのは大きかったですね。

※「StarONE:Origins」は韓国パブリッシャーから再リリース予定(ストアからは一時取り下げ中)

タップ!キャプテンスター(iOS/Android

開発者のツイッター

(ゲーム開発の仕事が捗る「ねこのいる仕事場」がみられるアカウント)

4、累計売上1億円のゲームサークルが「初のカジュアルゲーム」を出してみた話


※ゲーム開発者のEIKI`さん、京都在住。

簡単に自己紹介をお願いします。

普段は、illuCalab(いるからぼ)という、PCゲームを中心につくっている、ゲームサークルとして活動しています。

代表作としては、魔法の女子高生、幻走スカイドリフト、HEART of CROWN PCなどで、合計10万本ほどの販売本数になっています。


※売上ベースだと1億円以上。すべて買い切り作品。サークルは2名+協力スタッフで運営(設立約8年)

今回は「初のカジュアルゲーム」をつくられたのですよね?

はい。9月に「はむころりん」という、丸っこい動物を転がすゲームをリリースしました。ほぼ1人でつくったゲームで、半年かけて開発しました。

3Dのステージについては、Unityにある「ProBuilder」というツールで骨組みをつくって、最後にテクスチャを貼って完成させています

外出先では、ノートにステージ案をメモしておいて、帰ってからガーッと集中して作業することで、効率的に開発できるように工夫しました。


※キャラの原案だけ友人に手伝ってもらい、それ以外は一人で開発したとのこと。

アプリを出してみて状況はどうですか?

中国語版のリリースなども控えていて、まだまだこれからかなという感じですね。

収益比率は「広告50:課金50」です。意外と買ってもらえたのが、広告削除+開発者を支援できる「工事費支援」というアイテムでした

とくに、海外の配信者さんから「広告削除するアイテムを入れてくれ」ってよく言われるんですよ。配信中に広告が出ないようにしたいのだと思います。

あとは、ファンの人が「ご祝儀」のような感覚で、買ってくれたのかなと感じています。


※価格帯を3つ用意したら、上と下の価格(360円と1,080円)が売れた。

はむころりんは「動画広告の入れ方」が自然だなと思いました。

ランキング上位のゲームを見ていると、結構バンバン広告が出てきますけど、ユーザーが選択していないのに、広告を見せるっていうのは、自分的にはやりたくなくて。

収益を考えると「広告を多く入れたほうがいい」とは思うのですけど、いまのような形に落ち着きました。

開発中に「これはやってよかったな」と思うことはありますか。

リリース前から、イベントに出展していたのはよかったです。イベントって「初見の人」に説明しないといけないから、足りないところを掴みやすくて。

PCゲームって、コントローラー操作なので、難しくても乗り越えてもらいやすいんですよ。方向キーとAボタンを押すことがほぼ確実なので。

でも一方、スマホゲームって「何をすれば何が起きるか」がわかりにくいから。ちゃんと誘導してあげないと、操作に詰まりやすいんですね

なので、スマホゲームは「試してもらう」っていうのが大事だと思っていて。初見の人がどこを難しいと感じるか、実地で試し続けるしかないなと感じます。

開発者のツイッター

(ゲームの開発風景って面白いですよね。ライブ配信でやっていたらみてしまう気がします)

はむころりん(iOS/Android

個人開発者特集2018
【第一回】自作のクソゲーアプリに「息子への遺言」を埋め込んだ49歳の個人開発者
【第二回】勉強しないと止まらない目覚ましアプリと運用費ほぼゼロ「意見箱」の効果
【第三回】個人開発の高校野球ゲームが収益1,290万円超えるまでにやった3つのこと
【第四回】パチスロ生活しながらアプリ開発で1,500万稼いだ男と電卓アプリ収益推移

【お知らせ】アプリの取材については「取材申請」のページから受付しています!

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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