個人開発の高校野球ゲームが収益1,290万円超えるまでにやった3つのこと。引退かけたアプリ開発者が語る「課金収益10倍」ドラフト課金の思わぬ効果。

2018年10月12日 |
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名古屋で野球ゲームをつくっている個人開発者を取材しました。「個人開発者特集2018」の第三回です。


※furuApplications 古田 悠さん

月100万円いかなければ「アプリ開発者をやめる」

簡単に自己紹介をお願いできますか?

名古屋で活動している個人アプリ開発者です。いまは野球シミュレーションゲーム(シリーズ3作品)を主につくって生活しています。

独立して1〜2年は、貯金を食いつぶしながら生活してたのですが、シリーズ2作目の野球ゲームで、月に30万円はなんとか稼げるようになって

そこでようやく、アプリで生活できるようになりました。

それはそれでスゴイですよね。

ただ、厳しい状況から脱したものの、結婚していて子供もいたので、正直なところ「節約すれば暮らしていける」状態でしかありませんでした。

やっぱり、その状態だと「いつか苦しくなるな」という危機感があって。早いうちに答えをださないといけないと考えていました。

それで、1年以内に月100万円いかなければ、専業のアプリ開発は引退しようと決めて。時間もなかったためシリーズ3作目に賭けることになりました。

それでリリースしたのが「私を甲子園に連れてって」なんですね。

はい。2017年11月に、シリーズ3作目になる「私を甲子園に連れてって」という、高校野球をテーマにしたゲームをリリースしました。

僕も野球が好きなのですが、やっぱり「高校野球の監督」ってやってみたいんですよ。自分なら甲子園に行けると考えてる人も多いはずで。笑

そういう、現実では出来ないことを体験できるのが、ゲームのいいところだと思うので、高校野球ゲームはおもしろいのではと考えました。

1、バグ報告に「お礼」で改修がラクに進んだ

リリースしてからの手応えはどうでしたか?

実は、リリース当初はバグだらけでした。かなりひどかったですね。

ただ、アプリの中に「バグ報告するとお礼がもらえるかも」と書いたところ、ユーザーの人たちが「バグ報告」を思った以上にしてくれて。

詳しい発生条件や、黙ってスクショを送ってくれる方もいて、本当に「この人デバッガーなのかな?」と思うような人もいました。笑

おかげで、大きなバグもすぐ発見できるようになり、問い合わせサポートの工数も減らすことができ、改修をラクに進めることができました。

報酬はなにをあげていたんですか?

課金アイテムの「ダイヤ」をプレゼントしていました。よくてダイヤ50個くらい(約50円相当)です。それでも喜んでもらえましたね。

バグって見つけても「いつか直るだろう」と、大半の人は報告しないと思いますが、気づいたら送ってくれるという流れをつくることができた。

それで、最初の数ヶ月でバグを直していって、落ち着いたところで機能を追加していきました。

2、課金を10倍に伸ばした「ドラフト指名チケット」

そこから追加したもので「うまくいった施策」があれば知りたいです。

途中で入れた「登録チケット」という課金アイテムは、収益に大きな影響を与えました。

もともとは、高校野球のゲームなので、甲子園が終わると3年生は引退してしまい、せっかく育てた選手が消えてしまう設定だったんです。

それを、登録チケット(100円程度)をつかうと、対人戦でつかえる「OBチーム」に確実に登録できるようにしたところ、課金収益が10倍に跳ね上がりました。

心理的には、手に入れるときよりも「失うときの動機」のほうが強いかもしれません。深く考えずに実装したので結果には驚きましたが。

このシステムのおかげで、月に数十万円だった売上が、月100万円を超えるまでになって、月100万円の目標も達成することができました。


※選手にドラフト指名されれば無料、課金してチケットをつかうと確実にチーム登録できる

ほかに「課金システム」にはどんなものがありますか?

課金アイテムの「スカウトチケット」をつかうと、自分の高校に「天才型の強い選手」が入ってくる確率を、上げられるようになっています。

あとは、トーナメントの試合で負けてしまったときに、ダイヤをつかうと「試合をなかったことに」することが出来るようにしています。

課金システムについては、アズールレーンのような、ガチャに頼らないマネタイズ手法を、採用しているゲームを参考にするようにしました。

強いキャラで煽って課金させるよりは、まずはゲームを楽しんでもらって、満足したらちょっと課金してもらえる、という感じにしたかったからです。

なるほど。広告マネタイズについてはどうでしたか。

広告マネタイズに関しては、動画広告が好調でした。

試合に勝利した後に「動画をみると体力回復」できるようにしたところ、1ダウンロードあたりの動画リワード広告の収益が2倍になりました。

あとは、たまにメーカーの人が「体力回復ドリンク」を持ってきてくれるのですが、そのときに動画をみるとポイントが獲得できるようにもしています。

いま「収益やダウンロード数」はどれくらいになっていますか?

2018年9月末時点で、ダウンロード数は4.8万ダウンロード、累計収益は1,290万円になっています

収益比率としては「課金76%:広告24%」です。最高収益は月257万円で、8月の甲子園シーズンに伸びて、9月になると落ち着きました。

1ダウンロードあたりの収益は260円くらい。課金ユーザー率は5〜6%程度。直近の課金ユーザー1人あたりの収益は3,000円ほどでした。

ちなみに、Androidのほうが全体的に数値がよかったです。ダウンロード数も課金率も。年齢層が高いからそうなったのかなと思います。

どちらかというと、ソシャゲに疲れてきた層が、のんびり遊ぶゲームだと思うので、そういう層がAndroidに多かったのかもしれません。


※ダウンロード数は4.8万(iOS 4割:Android 6割)、現在のDAUは3,000人程度。

3、ゲームのやめどきを観察してボーナスを入れる

ゲームを継続してもらうために「工夫したこと」は何かありますか。

試合に負けた後に、練習の効率が上がる「練習ボーナス」を入れました。なぜなら「試合に負けたとき」にアプリを終了する人が圧倒的に多かったからです。

友達にアプリを渡して、ずっとみてると「やめどき」って絶対あるんですよね。それが練習して試合をやって「負けたとき」だったんですよ。

それをみて「ここがやめどきなんだな」と気づいて。そこにやめにくくなる仕組みを入れて、ゲームを続けてもらえるように工夫しました。

集客についてはどんなことをやりましたか?

地道に、アプリストアの検索キーワードの、最適化をやっていました。どのキーワードで設定すると有効なのかずっと記録していましたね。

もともと「甲子園」と検索しても出なかったのですが、キーワードを「サブタイトル」に入れたところ、いまは上位に表示されるようになりました。

あと、レビュー依頼は、最初の試合に「勝ったときだけ」お願いするようにしました。GooglePlayでは2,500件のレビューが集まっています。

個人アプリ開発者が生き残っていくには

アプリ業界では「個人は厳しくなってる」とも言われてますがどう思いますか?

僕としては、個人開発はやりやすくなっていると思います。昔よりはアプリに課金してくれる人も増えて、広告に文句をいう人は減りました

ランキングとかバズって儲けるとか、そういうスタイルは難しくなったと感じますが、マネタイズは本当にやりやすくなったと感じます。

最近は「課金して支援する」という形も出てきていますよね。作家性に対してお金で支援してもらえたり。むしろ幅は広がっているのかなと。

僕も、polcaというアプリで、ゲームの製作費を募ってみたら、3,000円ほど集めることができました。

金額的には、大きくないかもしれないですが、それより応援してもらえた感覚がうれしく、気持ち的な部分ですごく背中を押してもらえました。

最後に、個人で生きていくために「意識してること」があれば教えてください。

「個人開発アピール」をすることを意識しています。法人感ではなくて個人感を出したほうが、フレンドリーに接してもらえると思うからです。

自分の場合、ストアの説明文にも「一人でつくっています」と書いているのですが、意外と優しい声をかけてくれる人がいるんですよ。

例えば「一人で頑張ってるんですね。応援しています」と声をかけてくれたり。バグが出てしまったときにも大目に見てくれる人がいたり。

僕としては、ストーリーがないと個人は食っていけないのではと感じています。クオリティでは法人には勝てないわけじゃないですか。

なので、つくっている人の想いを発信して、それもひっくるめて「一つの作品」として見てもらえるようにすることが、大事なのかなと思っています。

開発者の古田さんのツイッター

(ツイッターみていると、2015年から野球ゲームをつくってきた、過程を垣間見ることができます)

私を甲子園に連れてって(iOS/Android

個人開発者特集2018
【第一回】自作のクソゲーアプリに「息子への遺言」を埋め込んだ49歳の個人開発者
【第二回】勉強しないと止まらない目覚ましアプリと運用費ほぼゼロ「意見箱」の効果

【お知らせ】アプリの取材については「取材申請」のページから受付しています!

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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