4周年を迎えた「モンスト」さんに、動画マーケティング施策について聞きました。
※株式会社ミクシィ XFLAG スタジオ 渡邉 静さん(左)、平 彩七さん(右)
最近の「モンスト」について教えてください。
渡邉:
おかげさまで「モンスト」は、2017年1月時点で、世界累計利用者数が4,000万人、国内累計利用者数が3,500万人になりました。ちょうど10月で4周年を迎えます。
お二人が所属している「デジタルマーケティンググループ」では、どのようなことに取り組んでいるのでしょう。
渡邉:
わたしたちの部署では、新規ユーザーを呼び込むこと、離反しているユーザーに戻ってきてもらうこと、この2つに取り組んでいます。
基本的に、広告配信に関してはクリエイティブ制作から運用まで、すべて社内で行なっていて、各媒体の数値管理も徹底しています。
なお、広告の制作者に対しても「クリエイティブの良し悪し」を伝えるべく、常にクリック率などの数字も共有しています。
最近「力を入れていること」って何かありますでしょうか?
渡邉:
モンストから離反しているユーザーの、復帰施策(リエンゲージメント)に力を入れています。
最近は広告予算の内訳でも、新規ユーザーに向けたもの(新規獲得)と、離反ユーザーに向けたもの(休眠復帰)では、5:5くらいになってきています。
ユーザー復帰(リエンゲージメント)で効果的だった5つの広告施策
1、動画広告のほうが「7.5倍」も復帰効果が高い
渡邉:
ユーザーの復帰(リエンゲージメント)においては、静止画よりも動画を広告に活用したほうが、圧倒的に良い効果がでています。
広告のクリック率(CTR)でみても、アプリへの復帰率(CVR)でみても、動画広告のほうが7.5倍も良い数値が出ているんですね。
いまや、リエンゲージメントの獲得数のうち「半数近くは動画広告から」になりつつある状況です。
平:
あとは、クリエイティブによっては、静止画よりも動画のほうが、戻ってきた「ユーザーの継続率」も2倍程良い、というデータも出ていますね。
2、動画の長さは「5秒」より「30秒」の効果が良かった
渡邉:
モンストの動画広告は、基本「30秒」の尺で制作しています。
なぜなら、実験的に「5秒」と「30秒」の動画を比較してみたところ、クリック率も復帰率も「30秒」のほうが高い結果が出ました。
長い尺の動画で、世界観やメッセージをしっかりと伝えたほうが、有効なのだろうと仮説を立てて運用しています。
3、動画内でキャラを動かしたら「再生率が4.5倍に」
平:
キャラクターの魅力を伝えるために、動画広告内で「キャラを動かす」ということを実施したところ、再生率が4.5倍になりました。
動画のなかに「キャラが動く」という、フックとなる要素があるだけでも、ユーザーが動画広告を視聴する確率が、大きく上がったということですね。
渡邉:
なお、この「再生率」というのは、30秒の動画広告において「最初の6秒を見てもらう」ということを、途中指標として置いているものです。
理由としては、「最初の6秒」まで視聴してもらえると、完全視聴率が上がる傾向にあるためです。
平:
それから、動画を制作する際には、制作者に対しても「キャラの世界観」を丁寧に伝えるようにしています。
渡邉:
ちなみに、XFLAG スタジオには「ユーザーサプライズファースト」という、どれだけユーザーにまだ見ぬ刺激や驚きを届けられるか、という考え方があります。
そのため、まずは一人のユーザーとして「自分自身がワクワクしているか?」ということを意識して、広告クリエイティブを制作しています。
※動画広告内で「そのキャラの世界観」を表現するようにしている。
4、休眠ユーザーは「早めに復帰してもらうこと」が大事
渡邉:
モンストから「離反してしまったユーザー」については、出来るだけ早めに復帰してもらえるように、施策を打っていくことが重要です。
なぜなら、ユーザーの「離反している期間」が長ければ長いほど、1ユーザーあたりの「復帰コスト」が、膨らむ傾向にあります。
離反しているユーザーを、「離反している期間」によって3つにセグメントしているのですが、以下のように「復帰までの広告コスト」に大きな違いが出ています。
簡単にいうと、離反しているユーザーは「30日以内」に呼び戻さないと、なかなか復帰してもらえなくなってしまう、ということです。
※静止画広告の「31日以上離反している人」を100とした場合の復帰コストデータ。30日以内に復帰しない場合「広告コスト」が高くなってしまう。
渡邉:
なお、ユーザーの復帰施策において、広告費の回収は意識していますが、それよりもユーザーの継続率を優先しています。
まずは「熱量の高いユーザー」に再度楽しんでいただくことで、そのユーザーが起点になって、周りの友達も協力プレイで遊んでくれるかもしれません。
そういった、単純な費用対効果だけでは、測りきれない要素もありますし、「継続率の高いユーザー」を優先することが、本質的な価値につながると捉えています。
5、静止画バナーは「オーブ訴求」の効果が高い。
渡邉:
静止画のバナー広告では、一番効果が高くなるのは「オーブ訴求」です。
たとえば、「今ならオーブ○個プレゼント」のようなクリエイティブは、シンプルに広告効果(クリック率・復帰率)が高くなりやすいんです。
休眠ユーザーにとって「ガチャを引きたいけど、オーブが足りない」といったニーズの影響は大きいと感じますね。
最近の「スマホゲーム業界」について
スマホゲーム市場において「この2年くらいで、ココが変わったな」と感じることってありますか。
渡邉:
新しいゲームが、売上ランキングの上位に入っても、定着しにくくなったと感じます。ユーザーさんの「課金ハードル」が年々高くなっているのかなと。
とくに最近、スマホゲームの開発コストが上がって「終了タイトル」も増えた結果、ユーザーに迷いのようなものが生まれていると思うんですね。
たとえば、「さあ、新しいゲームに課金しよう」と思った瞬間に、「でも、このゲームいつなくなるかわからないよね…?」と不安がよぎるような感じ。
だから、みんな「決まったアプリ」を遊ぶようになっているというか。
そういう意味では、全体の「課金ユーザーの割合」は変わっていなくても、その分「1ユーザーあたりの課金額」というのは、伸びているんだろうなとも思います。
なるほど、そうかもしれません。
渡邉:
あと、広告という意味だと、昔に比べると全体的に「広告のクリック率」が低くなったと思います。
昔は、インタースティシャル広告などもクリック率が良かったけど、最近はみんな広告に慣れていて、無意識に広告を避けるようになっている。
そのため、もう「広告を出せば良い」という時代じゃなくなったなと感じます。丁寧につくり込まないと反応してもらえないし、広告費も無駄になってしまう。
平:
動画広告はとくにそうですよね。社内でも「広告っぽくない方が、効果が良いのではないか」と話していたりもします。
いかにも広告っぽく「アプリをあそんでよ!」と伝えるよりも、「楽しいよ・カッコイイよ」というのを感じてもらえるかが重要というか。
どんどんスマホの広告が「クリエイティブなもの」に近づいてきているなと感じます。
取材協力:株式会社ミクシィ
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