ガラケーアプリは1本で300万円稼げたが、スマホアプリは全然稼げてない。老舗ゲームサークルが体感したアプリ市場の「残酷な変化」とコアファンの偉大さ

2017年09月19日 |
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2名の個人アプリ開発者を取材しました。「個人開発者特集2017」の第三回です。

<目次>
1)ガラケーアプリは1本で300万円稼げたが…ゲームサークルが語る「アプリ市場」の変化。
2)80万ダウンロード「まりも」開発者が体験した、何かを「はじめるタイミング」の大切さ。

1、ガラケーアプリは1本で300万円稼げたが…ゲームサークルが語る「アプリ市場」の変化。


※ゲームサークル「WEAKEND」のしょーたweさん(左)、昼間は会社員として働いている。

「WEAKEND」の活動について、教えていただけますか?

もともと「WEAKEND」は、ガラケーアプリをつくるゲームサークルとしてはじまって、これまで14年ほど活動をつづけてきました。

基本的には、2〜4名でずっと活動してきていて、楽しくゲームをつくっています。最近はスマホのゲームに注力しているところです。

最近の「ゲームづくり」は上手くいっていますか。

ガラケーアプリの時代は、それなりに上手くいっていたのですが、スマホアプリの時代になってからは、なかなか苦戦してる状況ですね…。

当時の「ガラケーアプリ」の頃は、どれくらい上手くいっていたのでしょうか。

2011年にリリースした「ArchAngel」というゲームは、ドコモさんの「dマーケット」でそこそこ人気がでて、売上も300万円ほどになっていました。

ほかには「FinalMagic」というRPGは、全6作でているのですが、シリーズ累計で90万ダウンロードされて、200万円ちょっとの売上になっていたり。

(「FinalMagic」は初代だけでも、30万ダウンロードされて、100万円の売上があった)

そのほかのガラケーアプリも、「WebMoney」で支払ってもらう仕組みで、一本あたり数十万円〜100万円の売上になっていました。

なので、当時は「サークルの活動」として考えると、稼げていたほうだったのかなと思います。


※「ArchAngel」は1ダウンロード200円、追加課金で「経験値」を買うことができた。なお「dマーケット アプリストア」は2015年1月にサービス終了。

すごいですね。スマホアプリのほうはどういう状況なのでしょう。

スマホのほうはホントに不調です…新規ユーザーに全然みつけてもらえなくて。

一番うまくいったのは「FinalMagic」をスマホに移植したもの。これは2万ダウンロードされていて、売上が10万円を超えた唯一の作品です。

あとは、音ゲーの「WeTra」が15,000ダウンロードで、売上が5万円くらい。ほかのアプリはもう数千ダウンロード以下という状況ですね。

ガラケーアプリの時代にくらべると、とても寂しい数字になってしまいました。笑

スマホとガラケーのアプリで「大きく変わったこと」ってなんでしょうか。

ガラケーの頃は、「ふつうのゲーム」を一生懸命につくっていれば、それなりに見てくれる人がいました。

それが、スマホになって「ふつうのゲーム」をつくっただけじゃ、誰も見てくれなくなった。もはや「見向きもされない」という感覚に近いですね。

ガラケーのときは、1〜2週間でつくってだしたら「これはクオリティの高いゲームだ」と言われたけど、いまはそんなことにはなりません。

求められているビジュアル面でもそうですし、ゲームの音楽もそう。ガラケーアプリは「音」がなくても成立したけど、いまは「音がないとさみしい」となってしまう。

なので、スマホになってから「参入するハードル」は下がったと思いますが、求められる「クオリティのカベ」は高くなったのかなと。


※イメージ図

たしかに、そうかもしれませんね。

それと、ガラケーのアプリが良かったのは、個人でも企業と勝負できたことです。なぜなら、アプリの容量がすごく小さかったから。

はじめは30KBとかだったんですよ。いまの感覚でいうと、写真ひとつも入らないくらいのデータ量で、ゲームをつくっていたわけです。

だから、個人であっても「容量は小っちゃいけど、グラフィックは高解像度」といった工夫をすることで、企業に勝つこともできました。

そこから、ガラケーアプリの容量も、だんだん「130KB…230KB…1MB」と上がっていき、スマホアプリで大容量になっていきました。

結果として、個人が企業と勝負するのはむずかしくなったのかなと。当時とくらべると「時代がずいぶん変わったなあ」と感じますね。

ガラケーアプリの時代って、どこからユーザーが流れてきていたんですか?

たとえば、ガラケーのときは「アプリゲット」さんという、アマチュアゲームを紹介するサイトの、影響力が大きかったことを覚えています。

アプリゲットのランキングに入ると、簡単に数万人にあそんでもらえたり、あっという間に10万人まで届いたりすることがありました。

なので、ガラケー時代のほうが「集客が楽だった」というのは間違いないですね。

ガラケーからスマホ時代を経験してみて、いま振り返るとどうでしょうか?

もっとはやく、スマホアプリに移行すればよかったなと思います。当時はガラケーアプリのファンも多くて、なかなか移れなかったんですよ。

ガラケーとスマホが逆転してきた2011年頃にも、ガラケーアプリのチューニングをやったりしていて、そのまま「スマホの波」に乗り遅れてしまった

ただ、ガラケー時代のファンの人たちには、いまでも支えられていて。未だにイラストや誕生日プレゼントを送ってくれたりもするんですね。

やっぱり「ファンの応援」って、大きなモチベーションにもなりますし、すごく感謝もしています。そういう意味では、長く活動してきてよかったなと感じます。

ArchAngel(iOS/Android

 

2、80万ダウンロード「まりも」開発者が体験した、何かを「はじめるタイミング」の大切さ


※個人開発者の小川航佑さん。宮崎の会社で働きながら、個人でアプリをつくっている。

小川さんは「個人でのアプリ開発」はどれくらいやっているんですか。

基本的には、会社員として働きながらですが、7年ほど個人でアプリをつくってきました。

いまは宮崎県に住んでいます。今年に「自然の多いところで子育てする」という夢を叶えるため、東京から宮崎に移住しました

宮崎、すごくいいですよ。とくに、電車通勤をしなくなって自転車通勤になったのが、ものすごく精神的には楽になりましたね。

一方、ハードルだったのは年収です。東京とくらべると平均年収は大きく下がる。でも、物価は安いですし、アプリの収入もあって暮らせています。

つくっているアプリについて、教えていただけますか?

代表作は、2010年にだした「まりも」というアプリ。これは、もともと「mixiアプリ」でだしていたものを、移植するような形でつくりました。

現在のダウンロード数は、80万ダウンロードです。僕が最初につくったアプリであり、唯一ちゃんとした収入になっているアプリでもあります。

数年前にくらべると、さすがに収益は落ちてきていますけど、いまでも「1人だったら食っていける」くらいの収益にはなっていますね。


※ユーザーは「ほぼ日本」。マックスむらいさんに、YouTubeで紹介してもらって、2万ダウンロードくらい増えた日もあったそう。

ずっとアプリを運営してきて「印象的だったエピソード」などありますか。

アプリにはじめて広告を入れたときに、レビューが荒れてしまったことです。レビューが「星1だらけ」になって、「作者は金に目が眩んだ」とまで言われました。笑

そのときは、広告を「画面の上部」に入れていたのですが、それがあまりに不評だったので「画面の下部」に変更することにしたんですね。

そしたら、まったく荒れなかったんですよ。意外と「広告が上にある」ほうが、目立ってしまって邪魔に感じやすいのかなと思いました。

あと、同時にアップデート文で「広告をいれます、コストもかかるし分かって欲しい」という告知をしたのもよかったのかもしれません。

なるほど、そういうこともあるんですね。

あと、2012年にデザインを大きくリニューアルして、まりもと水槽のデザインを「イラストからリアル調」に変更したことがあって。

そのときも、「またレビューが荒れるんじゃないか」って、すごくビビっていたんですけど、リリースしたらまったく荒れなかったんです。

むしろ、喜んでくれる人のほうが多かった。念のため「旧バージョン」に戻せる機能もつけていたのですが、結局ほとんど使われなくて。

なんだかんだ、ユーザーの反応って「出してみないとわからないもんだな」と思いました…笑

これから「アプリ開発する人」に何かアドバイスできるとしたら?

何かを「はじめるタイミング」というのは、とても重要なんじゃないかということです。

自分のケースでいうと、mixiアプリもiPhoneアプリも「初期のころにはじめた」というのが、共通してよかったところなんです。

mixiアプリの「まりも」(11万ユーザー)も、当時は収益が「新卒の給料の半分くらい」になっていました。いまはもうほぼゼロに近いんですけど。

2017年に「まりも」を出していたら、絶対に売れていないと思いますし、すごくいいタイミングで出せていたなと感じますね。

なので「はじめるタイミング」というのは、少し意識してみても良いところかもしれません。

まりも(iOS

開発者の小川さんのツイッター

(「まりもアプリ」の傾きセンサーをつかって、家が傾いていないかを調べる人もいるのだとか)

個人開発者特集2017

【第一回】草野球ゲームで収益300万円。アプリに「チケットと対人戦」を入れて安定収益を上げるコツ
【第二回】女子高生が開発した勉強アプリと、収益120万円の「zipアプリ」チャットサポートの利点

【お知らせ】アプリの取材については「取材申請」のページから受付しています!

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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