マイクロソフトのタスク管理アプリ「Wunderlist」世界1,900万ダウンロードでわかった「日本特有のタスク文化」と「賛否両論あった機能」

2016年01月28日 |
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ドイツ(ベルリン)で活動している、タスク管理アプリ「Wunderlist」さんにお話を伺いました。2015年6月に買収されて、現在アプリ運営チームはMicrosoftの中にあります。

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※Microsoft プロダクトマーケティング 塚田恵さん

「Wunderlist」について

「Wunderlist」についておしえて下さい。

シンプルさが売りの「タスク管理アプリ」です。イメージとしては、ポストイットや付箋がアプリになったような感じですね。

用途としては「買い物リスト」が一番多いです。あとは仕事のチームにおいて、タスクを割り振って管理するために、Web制作やデザイン会社の人が多くつかってくれています。

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今どれくらいのユーザーがつかっているのでしょうか?

ダウンロード数は、1,900万ダウンロードを超えています。今のところ圧倒的にiOSが多いですね。Microsoftに買収されたのですが、Windowsユーザーは非常に少ないんです。

ユーザーの多い国トップ5はアメリカ、中国、ドイツ、イギリス、ブラジルです。

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かなりユーザーの母数も大きいですが、今はどんな数値(KPI)を重視して見ていますか。

アクティブユーザー数をみています。滞在時間は正直みていないというか、逆に「短いほうが良い」ということもあって。例えば「通知バーからサッとつかってくれている」とか。

マネタイズについては、月500円の「プロ版」(機能が無制限になる)はあるのですが、積極的に推していないんです。だからKPIにもマネタイズは入っていなくて。とにかくいまはユーザー数ですね。

「Wunderlist」の運営チームについておしえて下さい。

Wunderlistのメンバーは60名で、半分はドイツ人で、アメリカ人も多いですね。平均年齢も若くて22〜23歳のメンバーも多いですし、17歳で入社するデザイナーもいたり。

独特なのは「自分がいいと思うモノを、自分の手で進めてください」というカルチャーなんです。ここまで「何もルールがない会社」も珍しい。もはや「一人スタートアップ」をやってる感覚です。笑

そして「それで成功している」というのも、私にとっては衝撃でした。一人一人の「アプリをよくしたい」という強い気持ちで進んでいる感じ。買収後もそこは変わっていないんです。

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※オフィスの写真。

国ごとのユーザーの違い

日本ではどんなときにアプリがアクティブになりますか?

日本で圧倒的にアクティブになるのが「新年」なんですよ。日本は「新年」を一番大事にする国ですね。1月になると「新たに何かしよう」と目標を立てて、タスク管理をはじめる人が多い。

お正月になると、日本であれだけ「資格のコマーシャル」が流れている理由も、よくわかります。笑

欧米では「お正月」という概念がなくて、新年は「Happy New Year!」でおしまいです。祝日も1月1日だけ。どちらかというと「クリスマス」のほうが圧倒的に重要、という感覚ですよね。

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Wunderlistにおいて「日本特有のニーズ」って何かありますか?

「ゴミ出しの日を、確実に管理したい」というのは日本特有のニーズですね。実は「ゴミ出し」って日本独特の文化なんですよ。海外だといつでも捨てられるので。

粗大ごみも、ゴミ出しの日付や時間が決まっていて、忘れてしまうと家にゴミを保管しとかないといけないじゃないですか。海外でこの話をすると「なにそれ!?」と驚かれるくらいです。

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なるほど、他に国ごとに「ユーザーの動き」などに違いは出ていますか?

ブラジルやインドは、良くも悪くも「陽気な人たち」が多いので、タスク管理についてはあまり長続きしないんです。ダウンロード数は多いのですが、すぐに休眠しちゃうんですね。

日本と比べて「時間を守らなきゃ」「細かく管理しなきゃ」という感覚が薄いのだと思います。これは、中国も似たような傾向があるんですけど。

日本のユーザーは、ダウンロードには躊躇しますが、使い出したらずっとつかってくれる。アクティブユーザー率も、他の国より高いです。そこは「日本人の特性」なんでしょうね。

アプリの機能追加について

ずっと「シンプルなアプリ」であるために、意識していることはありますか?

機能を追加・改善するときには「ユーザーのタップ数を減らす」「複雑になりすぎないようにする」ということを意識しています。

とくに、今まででうまくいった機能追加は「簡単追加」というボタンです。これはホームから、ワンタップでタスク入力ができる機能です。ユーザーからも好評で、データ上も良い影響がでました。

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機能をつけるとき「つけるべき」という人と「つけないべき」という人に、意見が分かれることもあると思いますが、そのときはどう判断していますか?

社内ですごく議論しますね。「なぜ必要なのか」「どんな影響がでるか」など。最終的にはお互い理解しあってから実装しています。もちろん最後まで、反論する人がいることもありますよ。

メンバー内で「実装すべきかすごく迷った機能」って何かありますか?

賛否両論あったのは「スマート期限日」という機能ですね。これはタスク名のテキストから「期限」を読み取る機能なんですけど。

たとえば、タスク名に「明日6時にクライアントに電話する」と入力すると、自動的に期日が「明日の6時」に設定され(タスク名から時間は消える)、3時にリマインダーが届くような感じです。

これは社内でも賛否両論でしたし、ユーザーさんからも「これは迷惑だ」という意見が一定数ありました。結果的に、今は実装はしているのですが、「オン/オフ」が切り替えられるようにしています。

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※便利な反面「タスク名から時間が消えてしまう」ため、文脈がわからなくなる可能性もある。

なるほど、他には「賛否両論だった機能」は何かありますか?

もうひとつ賛否両論の結果、「Web版にしか実装されていない機能」があって。それはタスクに追加できる「サブタスク」を消化すると、それに合わせて「進捗バー」が表示される機能です。

これに関しては「ユーザーさんの意見」VS「わたしたちの意見」でもあって難しいんです。一部のユーザーは「進捗がわかって良い」と気に入っていますが、デザイン的には改善の余地があります。

だから、それはアプリにはまだ実装していなくて、判断を見極めているところです。

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ローカライズについて

アプリのローカライズ状況について教えてください。

ローカライズは32言語に対応しています。ただコレって「ひとつひとつ、丁寧にローカライズしている」という訳ではなくて、ユーザーさんが勝手に翻訳してくれているんですよ。

ユーザーが自分で翻訳文を入力すると、それがアプリ全体に反映されるシステムになっていて。一応、運営側でも承認はしますけど、ユーザーさんを信じて任せています。

なるほど。

なので、とりあえず全部英語で公開しておくと、英語がわかるその国のユーザーが、ちょくちょく勝手に自国語に翻訳してくれるわけですね。

だから国によっては、英語と現地語がごっちゃになっていたり、翻訳の質が低い国もあるはずです。翻訳ってカンペキじゃなくても、まったく問題はないんです。笑

ただ「日本語」については、完璧に翻訳するようにしています。日本のユーザーは細かい言葉の使い方や、フォントにさえも敏感で、しっかり対応しないと使うのを辞めてしまうからです。

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※アプリの機能はすべての国で共通

日本は「積極的にローカライズしてるアプリ」が多くないと思うのですが、それについてはどう思いますか?

不思議というか、もったいないなと思います。正直、ローカライズすれば流行るアプリもあると思いますし。いまドイツだと「日本のアプリ」として認知されているのは、LINEくらいですかね。

そこまで戦略的に考えなくても「適当な翻訳でやってみる」という意識でいいのかもしれません。日本人ほど細かいところを気にしないんですよね、ほかの国の人たちは。

たぶん「翻訳してストアに公開する」これだけで良いと思います。それでも意外につかわれます。Wunderlistも「どこかの国でいつのまにかフィーチャーされてた」ということはよくありますし。

ただそういうのも、外にでて初めて実感したことです。ベルリンにいると「世界に出て行く」が、あまりにふつう過ぎて、特別なことをしている感覚はないですね。

ドイツ(ベルリン)について

ちなみにドイツで働いていると、日本についてどんなことを聞かれますか?

ドイツで日本について一番聞かれるのは「食事」ですね。「日本のご飯は美味しそう」というイメージがあるみたいで。スシ、お好み焼き、たこ焼きに興味を持つ人は多いです。

でも、一番おもしろいのは「日本人はみんなスシが握れる」「毎日スシをたべている」と思われていることですかね。だから「今度パーティーでスシ握ってよ!」とよく頼まれます。笑

あと、日本の間違ったイメージは電車ですね。「満員電車の映像」のインパクトが強烈みたいで。「日本の電車はすべて満員なので、押し合って乗っている」と思われています。

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ドイツ(ベルリン)のアプリ開発者は、「ヨーロッパ市場」を狙うことが多いんですか?

いえ、基本的には「英語でつくってグローバル展開」というパターンが多いです。

EU圏ってすこし難しくて。なぜなら、言語がぜんぶ違うからですね。ドイツ語圏は、ドイツ・オーストリア・スイス・ルクセンブルクあたりなんですけど、それだとマーケットが小さすぎるので。

最後に「ベルリンでアプリをつくる魅力」などあればおしえて下さい。

ベルリンは「スタートアップ」や「アプリ開発」の環境としては、すごく良いと思いますよ。ビザの取得も簡単なので、アメリカから引っ越してくるエンジニアも多くて。

あと「食費や家賃が安い」というのが魅力ですね。家も55平米(家具付き)で、9万円くらいで借りられますし、ビールなんかは100円以下で買えます。

ドイツの割には英語もかなり通じますし、実際3年くらい住んでみて「すごくインターナショナルな街だな」と実感しています。

取材協力:Microsoft

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。有料マガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。【配信提携】LINEニュース【過去連載】週アスPLUS、マックピープル。アプリの取材申請はコチラのページから。
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