「課金しているのは医者やキャバ嬢。女性向けゲームでは『つけま』が売れる」元大手ゲーム企業プランナーに聞くソーシャルゲームの裏側。

2015年06月09日 |
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書籍「あなたはなぜパズドラにはまったのか」の著者でもあり、元某大手ゲーム企業のソーシャルゲームプランナーである、鈴屋二代目さんに、ソーシャルゲームについてのお話を伺いました。

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※鈴屋二代目さん

ソシャゲに課金するユーザーってどんな人たちですか?

鈴屋:
ソーシャルゲームに一番課金するのは、いわゆる「ファミコンおっさん世代」です。つまりゲームに親しみがあって、お金に余裕がある、30代半ば〜40代前半の人たちですね。

同じ「おっさん」といっても、独身者とお小遣い制の既婚者による「自由につかえるお金」の格差があって、「お金に余裕のある層」が札束で殴り合っている。

一方で「課金はしないけど時間がある」というのが10〜20代です。この「時間に余裕がある若者」と「お金に余裕があるおっさん」が対立することで、ゲームが盛り上がっているのです。

一般的には「ソーシャルゲームで課金するユーザー比率」というと、全体の10〜20%くらいでしょうか。

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※イラストはイメージです。

課金者に「職業の偏り」はありますか?

鈴屋:
よく言われているのは、弁護士・医者・マンションオーナーなどの「高所得で仕事中にスキマ時間がある」という人たちですね。

他には、タクシー運転手、キャバクラ嬢など「一般的な会社員と休みが合わない。仕事中に1〜2時間の待ち時間がある」という職業にも、課金者が多いのではと言われています。

いわゆる「廃課金者」の人たちって、どのくらいの金額を課金するんでしょう?

鈴屋:
ソーシャルゲームでは、月に十万円以上つかう高額課金者が約1%はいて、売上の半分を支えていることも少なくないです。

例えば「某アイドルゲーム」の話でいうと、「自分の好きな子たち」に対して、車一台分程度のお金をつぎ込んでいるユーザーは多々います。

そうした売上データを見ることで、ユーザー毎の好みの女の子の属性がわかったりもしますね。

ソーシャルゲームで売上が上がる時期は?

鈴屋:
やっぱり売上があがるのは「ヒマな時期」ですね。例えば一番売上が高いのは「正月」です。ガラケー時代には、「福袋セット」という課金アイテムが、3万円で売れていた時期もありました。

あとは、月で言うと「1日」です、月初は売上が高くなります。実は、給料日の後の「月末」はそうでもありません。

休みの日でいうと「休日の最終日」の売上が高いです。例えば「3連休の最終日」「日曜の夜」などですね。遊びから帰ってきて落ち着いた頃に、遊んでいるのだと思います。

ソーシャルゲームを運営していて、印象的だったことは?

鈴屋:
2011年の大震災の後の売上が、あまり変わらなかったことですね。ソーシャルゲームって緊急時には一番いらないもの。ところが、実際はそうではなかったのです。

もちろんゲーム企業側としては、震災後の3月いっぱいくらいまで、「イベント開催」などを自粛しているところが多かったわけですが、ユーザー(あそぶ側)としては、あまり変わらなかった。

これは、会社が休みになったり、自宅待機になったことで、逆に「ヒマな時間」が増えてしまったからなのかなと推測しています。

課金アイテムの「おもしろい売れ方」は何かありますか?

鈴屋:
アバターのアイテムが「男女で売れる傾向が違う」というのはおもしろいですね。

男性の場合は「天使の羽」「鎧」などファンタジー系のアイテムが売れ筋なんですね。一方、女性は「派手なドレス」「盛った髪型」のような、リアルで着られないアイテムがよく売れます。

ちなみに「女性向けのソーシャルゲーム」を運営していたときに、「パッチリつけまつげ(200円)」が一番売れたのをよく覚えています。

「派手な髪型」や「ゴージャスなドレス」を身につけるよりも、「まずは、目が大事」ということを女性が理解しているからなのだと思いました。

ソーシャルゲームのイラストって、レアカードだと1枚数十万円するんですよ。ところが「つけまつげ」の場合は、デザイナーがただ線を描いただけのものですからね。

当たり前ですが、ユーザーにとっては「カードの原価」なんて関係ないということですよね。

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※イラストはイメージです。

ゲームプロデューサーの人は「独立してゲームつくろう」とはならないんですか?

鈴屋:
もちろん、そういう人もいると思いますよ。その話でいうと、勤めていたゲーム会社で、成果報酬でボーナスがもらえる「インセンティブ制度」がつくられたことがありました。

収益をあげたゲームのプロジェクトチームには、「利益の何%」みたいな感じでボーナスが入るシステムですね。

実際、それをやったところ「儲かっていないゲーム」のチームから不満がでてしまいました。「アイツは大して働いてないのに、あのプロジェクトにいるだけで、大金をもらっている」と。

やっぱり「人気IPもの」「シリーズもの」などもそうですが、「売上が確実にでるタイトル」って決まっているわけじゃないですか。そうなってくると、みんなそういう作品をやりたがってしまう。

結局そういう経緯があって、その「インセンティブ制度」はなくなってしまいましたね。

あと「独立する」という意味では、資金も多く必要なのでリスクも高い。ガラケーのソーシャルゲームは2,000〜5,000万円でつくれましたけど、いまスマホだと1億円は超えますからね。

取材協力:鈴屋二代目

余談:「安眠ひざまくら」について

鈴屋二代目さんが、プロデュースしたアプリについて聞いたところ、一番のヒット作は「安眠ひざまくら」というタイトル。約40万ダウンロード(iOS80:Android20)で、収益は「広告と課金で半々くらい」。

ちなみにこのアプリ、アップルの審査で「10代にご奉仕させるつもりか?」という理由で何度もリジェクトされてしまった。結局「高1設定」「制服コスチューム」などを削除し、審査を通過したらしい。

また、なぜか海外でのダウンロードが多い(日本24%:海外76%)ため、現在は中国のAndroidストアで配信元になってくれる方を探しているとのこと。

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編集後記

鈴屋二代目さんの著作「あなたはなぜパズドラにハマったのか?」も読んでみたところ、以下のような小ネタが楽しめました。(ゲーム業界の人にとっては、知ってることだらけかもですが)

・アダルト系のソシャゲは1日後の継続率は10%だが、一人あたり課金額(ARPPU)が一万円超え。
・アイテム受け渡しが「プレゼントボックス」方式なのは、間違ってしまったときに回収できるから。

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