「恋人アリ60%、友だち100人以上」リア充な女子中高生が集まる動画アプリ「MixChannel」300万ダウンロードまでの道のり。

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今回は10秒動画投稿アプリの「MixChannel」さんにお話を聞いてきました。「カップル動画」が有名ですが、実はそれ以外のジャンルのほうが面白いのではと思いました。

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※株式会社Donuts 福山誠さん

「MixChannel」のユーザーについて

「MixChannel」について教えていただけますか?

福山:
動画をつくって投稿できるコミュニティサービスです。「若いユーザーがつくったおもしろい動画」がたくさん集まっているのが特徴です。

また、ユーザーは投稿者の「ファン」になることもできて、「ファン」になると限定の動画が見れたり、深いコミュニケーションをとることが出来ます。

「MixChannel」のユーザー数は、いまどのくらいですか?

福山:
2013年12月にリリースして、アプリは300万ダウンロードです。WEBも合わせたユニークユーザーでいうと月間380万人ですね。いま運営は4人ほどで行っています。

ちなみに、アプリはiOSが7割、やっぱり女子高生ってほとんどiPhoneです。

女子中学生で「初スマホ」はAndroidの人も多いみたいですけど、高校に上がると「当然iPhoneでしょ」みたいな雰囲気になってくるようです。

mixch_downloads

「投稿される動画」にはどういう特徴がありますか?

福山:
「ティーンの文化」が反映されているのが特徴ですね、「人気の動画ジャンル」でいうと大きく分けて2つありまして。

ひとつは「おもしろ動画」です。女子高生や男子校生が「おもしろいことやってみました」みたいなノリで、学校で遊びながらつくった動画などを投稿している。

そして、もうひとつが「カップル動画」ですね。カップルがBGMにあわせて、ストーリー仕立てで動画をつくっている。

特に「カップル動画」は大人たちに強烈なインパクトを与えるみたいで、「MixChannelって、あのカップル専用アプリですよね?」と、よく言われたりします。笑

文化としてはわかりやすくて、「おもしろい」「かっこいい」「かわいい」など、人気者を中心にした動画コミュニティができている感じですね。

mixch_videocontents

やっぱり「高校生ユーザー」が多いんでしょうか?

福山:
そうですね、一言でいうと「女子中高生のメディア」と言えるかなと。ユーザーアンケートを実施したところ、男女比は「女性81%・男性19%」という結果になりました。

年齢で見ると、約50%が高校生(赤)で、35%が中学生(ピンク)です。ほんとに10代一色になっていて、20代のユーザーさえほとんどいないんですよね。

あと、関西や九州のユーザーが多いのも特徴です。案外「関東一強」みたいにはなっていなくて。

これは「おもしろいユーザー」が関西に多いので、それに引っ張られて関西方面のユーザーが伸びているのが理由かなと。

東京の高校生は「見てるだけ」のユーザーが多いのと、「まじめな子」が多いからか、関西にくらべると、常識的な動画を投稿している印象があります。笑

mixch_userdata

「アプリの利用時間」は長そうですが、実際どうでしょうか?

福山:
そうですね、アプリにしてはかなり長いと思いますよ。利用時間は1日でいうと平均25分、1回のアプリ起動あたりでいうと約15分つかわれています。

ちなみにヘビーユーザーは、1日平均1時間15分も使ってくれている。

あと「定着率」もかなり良いですね、ダウンロードから1週間後の継続率で31%。ここも比較的良い数字が出ているかなと思っています。

mixch_usetime

MixChannelって「スキマ時間」につかわれる感じなんでしょうか?

福山:
いや、実は「スキマ時間に見る」というのは、ほとんどないんですよ。

イメージとしては、朝ちょっと使われて、基本的に16時までは使われない、学校だから。ドーンとアクティブ率が上がってくるのは「下校時間~」と「22時50分~」です。

22時50分というのは「テレビも見終わって、さあ寝るか」ってタイミングですよね。なので、利用シーンとして1番多いのは、実は「夜寝る前」なんですね。

「夜寝る前に、自分の部屋(ベッドの上)で、音を出して動画を見る」という意味では、かなり「ユーザーのプライベートな空間・時間」にリーチできているのかなと。

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※イラストはイメージです。

mixch_usescene

他に「ユーザーに関するデータ」って、何かありますか?

福山:
ユーザーの「特性・興味関心」を調査したことがあります。まず「友だちがどのぐらいいますか?」と聞いてみたら「100人以上います」と答えた人が50%以上いた。

これだけだと「ネット上に友だちがたくさんいるのかな?」とも思えますが、「彼氏(彼女)がいますか?」とも聞いてみたら60%が「います」という回答になりました。

つまり、友だちが多くて、彼氏もいてと、ほんと「リア充」が集まるメディアなのかなと。ちなみに「彼氏(彼女)がいる率」って、平均だと20%ぐらいみたいですよ。

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ユーザーが伸びるまで

「月380万人までのユーザー数の推移」はどんな感じだったんですか?

福山:
これが「月間利用者数の推移」なのですが、ちょうど2014年の8月ごろから、ドーンと上がってきて、そこから右肩上がりで380万人まで到達しました。

8月に伸びた理由としては、まず「夏休み」に入って7〜8月にクチコミで広がっていて。

その、じわじわクチコミで伸びてきたタイミングで、プロモーションを実施して、アクセルも踏んだので、その「跳ね返り」も非常に大きかったですね。

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※360万人までのユーザー推移(現在は380万人)。

どんなプロモーションが、効果が高かったですか?

福山:
Twitterプロモーションが、めちゃくちゃ効果が良かったです。

自分たちで「カップル動画」のクリエイティブをつくったり、ユーザーさんのつくった動画をおかりして、プロモツイートで流しました。

YouTube広告などもやったのですが、完全にTwitterに予算を集中せざるをえないぐらい、圧倒的に効果が高かったですね。

ただこれは「相性の問題」が大きいでしょうね。ゲームと違って「拡散しやすい」という特性もありますし、どのアプリでも効果が出るわけではないと思います。

初期の「ユーザーが少ないとき」にユーザーを増やしたり、サービスとして「世界観」をつくるためにやったことはありますか?

福山:
読モの子に協力してもらって、プロモーションをやったりしましたね。そうすることで彼女らのフォロワーが、アプリを使って投稿してくれたりする。

あと、はじめは「ちょっとこの子おもしろいな」と思うような「センスがある投稿者」には、Twitterで声をかけたり、動画が目立つようプッシュしたりしました。

そういう「おもしろい子」がアクティブになると、やっぱり数字にも跳ね返りがあるんですよね。2014年の2〜3月までは、そういう地道なことを繰り返していました。

ただ、やっぱり「コミュニティの流れ」をつくるのには、すごく時間かかりましたね。

「動画のビュー」が伸びると、どのぐらいまでいくんですか?

福山:
「1か月で100万再生」は普通にあって、累計だと「500万回再生」くらいはあると思いますね。(※ループ再生はカウントしていない)

例えば、この動画は5,000シェアされていて、すごいんですよ。「それ全然わからない」というダンスが女子高生のツボにはまって、みんな真似して全国ブームになってる。

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※元ネタ「Forget(元祖)」を真似して(MixChannelでは「リメイク」と呼ぶ)、1,000以上の動画がつくられている。

ちなみに「カップル動画」って、どんな経緯で流行ったんでしょうか?

福山:
もちろん、リリースして最初からカップル動画が投稿されていったわけではありません。

きっかけとしては、リリースして2週間ぐらいのときに、かわいい女の子が「彼氏との思い出」みたいな動画をあげてくれたことがあって。

そしたら、それに対して「いいな~、仲良さそうで憧れます!」などのリアクションが半端なくあって。そこから「わたしも、わたしも」と徐々に火がついていった感じですね。

じゃあ完全に「ユーザーが文化をつくった」という感じだったんですね。

福山:
そうですね。「MixChannel」は、等身大の中高生が、毎日学園祭をやっている感じなんですよね。

そして、スクールカーストではないですが、人気ユーザーを頂点としたピラミッドが存在しています。

ピラミッドでいうと、上層の「影響力のあるユーザー」がつくった文化が、どんどん下層のユーザーに波及していって、次第にブームが終わっていき、新しいブームがまた作られるというイメージ。

だから下層にいる子たちも「コミュニティに参加してる感」があって、動画制作が楽しめているわけです。

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個人的には「紙芝居みたいな動画」が、すごいおもしろいなと思いました。

福山:
あれすごいですよね。スライドショー的に「1秒間隔で画像をならべる」はあると思いましたが、まさか「0.1秒ごとに画像を並べて、アニメーションをつくる」とは思わなかった。

これも完全に、女子高生たちがつくったものですね。「つくり方動画」さえもユーザーがどんどん上げてくれています。

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※ユーザーが「つくり方動画」をアップしている、すごいわかりやすい。

ミクチャは「リアルタイムで動画を撮る」というよりも、「コラージュ的に切り貼りして動画をつくる」に近いと思うのですが、ここは意図があるんでしょうか?

福山:
そうですね。サービス設計としては「Vine」に影響を受けていて。

やっぱり、Vineって「一発撮り」が前提なんですよ。このVineの「よし、今からおもしろいことをやろう!」という設計って、なかなかハードルが高い。

もちろん「一発撮りのカベ」を越えるやつらがいて、Vineも盛り上がっているんですけど、「すそ野を広げる」という意味では難しい。

そこで、MixChannelでは、どちらかというと「動画や画像を取り込んで、ひとつの動画をつくる」という方向に特化して、「Vineの逆張り」でサービス設計をしました。

動画のコメント欄で「どのアプリで加工したんですか?」というのを、わりと見かけますが、そこで話題になったアプリのダウンロードが伸びることってあると思いますか?

福山:
あると思いますよ。「MixChannelの『人気動画』で紹介されたアプリが、1日1,000ダウンロードされる」とかって、割とあることなんじゃないですかね。

実は、過去に「動画加工アプリ」と相互送客をやってみたことがあって。

MixChannelユーザーに、1回のプッシュ通知で「動画加工アプリ」を宣伝したら、数日で3,000ダウンロードくらいされていました。やはり動画・写真系アプリとは相性が良いですね。

ティーン(10代)のスマホの使い方

10代のスマホの使い方で「全然文化が違うな」と感じることはありますか?

福山:
「アプリへの没入感」が違うなと日々感じます。「お風呂いってくるわ」みたいに「ミクチャいってくる」とか言ったりもするし、その世界にすごく入り込んでいるなと感じます。

SNSって大人にとってはツールですけど、若い子にとっては「もうひとつの世界」みたいになっているんだと思います。

「10代に一番使われているSNS」って、どれだと思いますか?

福山:
TwitterとLINEですかね。「拡散性」という意味では、Twitterが1番影響力があるとは思いますけど。

Facebook は中高生は全く使っておらず、最近は大学生すらもアカウントを持っていない率が増えたなと感じます。日本では30~40代というか「社会人のツール」みたいになっていますよね。

なるほど、ほかにありますか?

福山:
あとは「通信制限」ですね。やっぱり若い子って、スマホをすごいヘビーユーズするし、実際アンケートをとってみても、「通信制限」をめちゃめちゃ気にしている

女子高生ってYouTubeみたり、ツイキャスみたり、わりと一瞬で5GBとかつかっちゃうんですよ。大人ってほぼ月2GBくらいでおさまるんですけど。

MixChannelの場合は、1動画みると1.5~2MBかかるんです。ってことは1日500回動画を見たら「3日で1GB」の通信制限にひっかかっちゃうんですよね。

制限がかかるとネットが遅くなって、ほとんどのアプリがまともに使えなくなるので、それを気にして、通信量をセーブしている子は多い。

それでいま、MixChannelでは、ファイルの重さを圧縮して動画をみられる「低品質モード」をつくろうと考えていますね。

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※スマホの通信制限は「月7GB」、キャリアによっては「3日で1GB」で制限がかかる。イラストはイメージ。

「通信制限」がなくなったら、もっと動画サービスに時間が流れると思いますか?

福山:
ですね、それはもうめちゃくちゃ流れると思っています。日本でモバイル動画コンテンツが完全にブレイクするのは、そのタイミングだと考えているくらいです。

今こんな状況なので、「通信容量制限」に関しては、各キャリアで激しい競争が起こると思うんです。

モバイルで動画コンテンツを、いつでもどこでも好きなだけ楽しめるようになるのは、時間の問題だと思います。

まとめ。「若者向けサービスに正解はない」

これからスマホサービスをつくりたい人に、アドバイスをおくるとしたら?

福山:
「若者向けのヒットサービスをつくる」という意味では、今回1年半ぐらいやってみて、わりと「正解はないな」と思いました。

「もう一回同じ現象を起こせ」と言われても、同じくらい苦しむし、時間がかかると思います。

そして「正解がない」ということは、「つくりなおしが必ず発生する」ということで、それを前提にプロダクト設計・開発・チームビルディングをする必要があると感じます。

つまり「真実に向かおうとする意志」が、プロダクト開発において最も重要ということです。

なるほど。「つくりなおし」は絶対発生すると。

福山:
はい。あともうひとつ、「議論」はオススメしません。「こういうサービスが女子高生に刺さる!」と、おっさんたちが議論しても、何もはじまらないのではないかと。

特に、女子高生向けのサービスは「頭の良い人」がロジカルにつくるのは、むずかしい気もしています。

「SnapChatが北米で流行っているから、時間制限共有は日本でも流行る!」みたいなロジックのもと、いくつかのサービスがリリースされました。

しかし、実際に若者に支持されることはなかったと思います。なかなか難しいものです。

そもそも「若い子になぜウケているのか?」って、つくってるほうもイマイチわからないんですよ。「後づけの説明」はいくらでもできますけどね。笑

なので、まとめるとやっぱり「正解がない」し、ホントわかんない。ただ、彼ら彼女らが「熱狂的にいいねと思う何か」があると、一気に広がるなというのは感じましたね。

取材協力:株式会社Donuts

MixChannel
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編集後記

なお、4/6より「動画広告メニュー」もスタートしたとのこと。

他にも「レシピ」「メイク」「モノマネ」とかもすごく良い、「gifアニメと動画の中間」みたいな感じ。会議の資料とかも、パワポより10秒動画のほうが、良い気がした。

レシピは「こういう感じ!」って文字では書いて、あとは動画と写真を見せていたり、直感的に理解しやすい。これは「チーズケーキ」と「スコーン」のレシピ動画。
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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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