11/15に東京(青山一丁目)で開催された、サムライ・インターナショナルさん主催のセミナー「ランキングに上がらなくてもアプリ収益化する方法」のレポート記事です。
本記事では参考になったポイントをまとめていきたいと思います。
ランキングの外に出ても売上があがる
テクノードで一番DL数が伸びたのが、
「Touch the Numbers」という1〜25の数字を早押しするアプリ。リリースは4年以上前(※2009年7月公開)だが、未だに会社の売上の中でも上位を占めている。
5,000DLでも積み上げれば1億円
広告の売上はユーザー1人で月に数円くらい。アクティブユーザーが500万人いたら3か月で1億円の売上。これはものすごいヒットなので難しい。100万人が1年使っても1億円、30万人が3年使っても1億円。
リアルな話に落とし込むと、1万人が3年間使ってくれるアプリが30本でも1億円だし、5,000人が1年使ってくれるアプリが100本でも1億円。
ラッキーゲームスさんは1人で100本以上アプリをつくっているが、平均5,000ユーザーは超えているだろうし使い続けてもらえればいくと思う。
ただ普通にアプリを運営しているとユーザーは逃げてしまう、みんなが使い続けてくれるように工夫することが必要。
広告収益が1DLにつき5円/月ずつだったとして、10,000DLで1年使ってもらえたら年間60万円の収益。(10000DLx月5円x12ヶ月x12本=720万円の年収)
これを月1本ずつつくれば生活できるし、プチヒットするものが10本あれば一年間暮らせる。
長く使えるアプリが安定収益を得られる。
半年続くようなアプリをつくる
短期間で何百万円稼いだという景気のいい話もあるが、すぐに使われなくなって「その後の売上が全然あがらない」というケースも結構ある。2週間で飽きるアプリと半年使ってもらえるアプリは広告売上が10倍以上違う。
瞬間的なネタ系で短期的にヒットするのもいいけれど、半年続くようなアプリをつくったほうがいい。
ただ、短期的にヒットするアプリでユーザーを集めて、長期間使ってもらえる自社アプリや、客単価の高いアプリに誘導するという使い方はメリットがある。
長く使ってくれるユーザーは一定数いる
あるアプリのアクティブユーザーのデータ。リリース後からちょっと上がって、そこから徐々に下がっている。リリースしたては注目されてそこから下がっていくが一定のラインで下げ止まる。
ちょっとメディアに出てユーザー数が上がったけれど、その前後のユーザー数は同じぐらい。使い続けるユーザーは一定のところで残る。話題になったことで一時的に増えるユーザーはあまり価値がない。
2012年1月から2013年10月くらいまで、数万のラインで維持している。これが大きい売上につながる。
何十万DLされるアプリを毎回つくれるのなら良いが、かなり難しい。そこそこのヒットでずっと使ってもらえるアプリをつくると、トータルでみると売上が伸びる。
売上が開発費・運営費を上回っていれば、ずっとアプリ作り続けられる。作り続けていればどこかでヒットが出るかもしれない。ヒット1発で大きく回収もできる。続けられるというところを基準で考えたほうが良い。
最初からギャンブル狙いで大当たりが出ないままだったら、そのうち続けられなくなるかもしれない。とりあえず安定収益をあげられるようにして、その上でチャレンジしたほうがいい。
開発費を抑える
開発費運営費が安くなれば売上小さくてもプラスになりやすいので、出来るだけ押さえていくのが大事。開発費(主に人件費)が大きくなりそうなものをつくるとそれだけリスクが増える。例えば2週間でつくれるのだったら1か月でつくるよりも売上半分でいい。
だったら、こだわるべきところは流行った後こだわったっていいんじゃないか。
クロスプラットフォーム
最近はCocos2d-xやUnityといった、クロスプラットフォームの開発環境が流行ってる。Cordovaを使えばJavaScriptで書いたものから両OSで動くネイティブアプリが作れたりもする。そういったものを活用することで作業量が減る。
外注をつかう
自分で絵を1枚描くのに丸1日かかるくらいなら、2〜3時間で1枚描ける絵が得意な人に多少お金を払ったとしても結果的に安くあがることも多い。クラウドソーシングを使うと安く上がるかも。
翻訳
英語翻訳も専門家つかったほうが安いこともある。最近、グーグルがアプリの翻訳を仲介するサービスをはじめて、大きめのアプリでも150ドルで翻訳できる、小さめだと75ドル。翻訳専門会社でも安いところがある。
最近のアプリマーケットの話
大型開発アプリが増えている
売上全体でみるとアプリ内課金が多い、大体ソシャゲ。ランキングを見てると開発費が1億円を超えていると思われるアプリも結構出ている。無料でアプリ内課金しているようなタイプのもの。
1億円かけているアプリに小規模デベロッパーはグラフィックのクオリティで勝てない。そこ以外で勝負する。アイディアとか機能で勝負する。
画像のリソースに頼るとか、見た目の派手さとか、そういうところで勝負しない方が良い。
有料売り切りのアプリ
有料アプリは無料に比べて圧倒的に数が出ない。
例えば1万DLに到達したとしても有料100円のアプリでマージン抜かれると70万円、それを定期的に出し続けないと生活は厳しい。有料1万DLは相当なヒット、そこを狙うのはかなり厳しい。
ブースト広告
ストアの無料上位ランキングはブースト使っているアプリばかり。小遣い・懸賞系のアプリからユーザーを誘導してDLを上昇させてランキング上位にいるアプリが多い。
カジュアルゲームでもGoodiaさんはブースト広告だしているという話があったりするが、
ブースト広告は、費用が1DLあたり数十円〜百円以上かかる。アプリの寿命が短いとコスト回収が厳しい。
息の長いアプリのジャンル
「カジュアルゲームの寿命は短い」というのは本当かな?と思っている。
「Touch the Numbers」は未だにアクティブユーザーが20万人以上いる。ランキングからは消えてしまっているが、ユーザーはずっと使い続けてくれている。
瞬間的にドカンといくより長い間薄くても売れ続けるっていうのが安定する。少額でもよいので定期収入がないと心臓に悪い。
放置系とかツール系のアプリは安定する。ツールはツイッタークライアントアプリは「仕様変更に対応していない」とかでない限りは乗り換えない。「瞬間的なネタ感」がないアプリは長く続く傾向。
Q&Aコーナー
Q.長く使ってもらうためにはどうしたらいい?
一番大事なのはユーザーにストレスを与えないこと。よくありがちな失敗は誤クリックを狙うこと。
ユーザーが良いところで間違って広告さわってしまってアプリの外に飛ばされると「もういいや」となってしまう人は結構いる。広告のクリック率だけ追ってしまっている場合、離脱したユーザーの数字が見えないので全体の数字がつかめない。
他にも、誤クリック狙いではないけど広告が多すぎるのもストレスになる。離れないユーザーもいるけど、離れるユーザーもいる。
例えば「アプリ終了時」にでる広告、アプリによっては3割くらいユーザーがいなくなってしまう。
「相互集客しているから総合的にプラスになる」と説明している広告会社もあるが、出すタイミングによってはユーザーにとってストレスになる。
「どういうタイミングで広告をだせばいいか?」というデータがあって、ユーザーが何か満足感を得たタイミングでだす広告はOK。ゲームでクリアして成果があがった瞬間にだすなど。逆にゲームオーバーになったときにでてくるとうっとうしく感じる。
プッシュ通知も出しすぎなければ効果あるがやりすぎるとダメ。アプリのアップデートは定期的に行うとユーザーが逃げづらくなる。アプリアップデートはユーザーに対して開発側が、「ユーザーを見放していない、サポートを続けている」と伝えるようなもので効果ある。
ソシャゲの場合はアップデートをイベントで表現している。イベントがなくなった瞬間、ユーザーは一気に逃げる。
Q.どういう広告会社(アドネットワーク)を選べばいい?その理由は?
「純粋にどこの広告会社が単価が良いか」は一口に言えない。それは時期による。
スマホアプリの広告は半分以上がソシャゲ。次が、携帯キャリア、リクルート、電子書籍。ソシャゲの中でもグリー系モバゲー系がある、例えばモバゲーでビッグタイトルがでるというときには大量に広告が出るのはDeNAの資本が入った広告会社。その時期はそこの会社の単価があがる。
広告会社にも電通と博報堂系というのがあって、例えばDAC系列のアドネットワークは博報堂系の案件が流れてきたら単価が上がる。
広告会社はいろいろ使うと良い。どのタイミングでソシャゲがリリースされるってわからないので。
SSPもたくさんあるので活用すると良い、広告の売上が既に大きいのなら自分で手間をかけて各アドネットワークに交渉したほうが売り上げは大きくなるかもしれないが、そのぶん人件費もかかるので、アプリの本数が多いなら、SSPを使って手間をかけないほうが効率が良いかもしれない。
この辺の話は、アドネットワークの会社の人と飲みに行ったりして仲良くなるのが手っ取り早かったりすると思う。その前に広告収益に貢献できるくらいの人気アプリをつくれば勝手に情報が流れてくるような気もするけど。例えば、アプリではないが広告業界で有名なのだとリクルートは予算が決まっているから余った予算を3月に大量に広告出稿するとか、ユーキャンは1月に死ぬほど広告を出すよねとか、そういうのを結構広告会社の人は知っていたりするんですよね。
聞いてみて感想:
「少ないDLでも継続してもらうことで収益をあげていく」というのを一貫してお話されていた。かなり大事なことを言っていると思う。何のビジネスでも一緒だけど新規の顧客獲得が一番コストや労力がかかる。だから1顧客あたりの単価や継続率をどう上げていくかっていうのは重要。アプリも一緒だ、とても勉強になった。
広告収益を最大化
広告収益を最大化するには
・大量のimpを出す
・impあたりの収益性を高める(eCPMを高める)
※eCPMとは?
-1000impあたりの収益性。
eCPM(収益性)を高めるには?
-広告のCTR(クリック率)の改善
-広告のCPC(クリック率)の改善
⇒SSPによるアドネットワーク運用を推奨
アドネットワークの選択基準について
どのアドネットワークが今この時期に、「単価の高い」「自分のアプリと相性が良い」広告案件を持っているかが重要。
7/10〜7/17の各アドネットワークの推移をグラフにしたもの。アプリ1はアドネットワークAがいいけど、アプリ2はパフォーマンスが良くない。アプリとアドネットワーク・案件との相性があるので出してみるまで最終的にはわからない。
1社のアドネットワークのみを使っていたら、選ぶアドネットワークによって「4.7倍」の収益性の差になることも。
アドフリくんの特徴
アドフリくん:https://adfurikun.jp/adfurikun/
広告収益を最大化するツール(SSP)元々自社開発アプリに使っていたものを、今年の2月から他社に提供し始めた。
1SDKで複数アドネットワークに対応
たくさんのSDKを入れるのはアップデートの手間になるし難しい。ADmobメディエーションを親としてアドフリくんを使えば、AdmobとiAdを併用できる。
見やすく透明性のあるレポート
全アドネットワークの収益推移が一括で見れるので収益比較が簡単。レポートは1時間毎に更新される。(※一部未対応のアドネットワーク有)
公平なeCPMでアドネットワークを評価
アドネットワークによって実はインプレッション(及びeCPM)の定義が違う。基準をそろえて表示。
広告の先読みにより空き枠検知機能
表に出ている広告に加えて、裏に広告を用意しているので広告の切り替え表示が早い。広告の空き枠を独自に検知して別のアドネットワークに差し替える機能。
配信比率の変更は手動&自動
配信比率の変更は手動or自動ロジックに任せる事ができる。
タグの発行から入金までワンストップ
使いたいアドネットワークを利用申請すれば申請完了、タグ発行〜タグ設置までアドフリくん側で行う。
Twitterなどウォッチしてみている限りは、アドフリくんは割と評判の良いサービスに見える。
なんかステマっぽいのでマイナスの口コミも参考までに載せようと思ったけど見当たらない。別のSSPと比較している訳でもないからどのサービスが良いかとかはわからないですが。
アドフリくん楽やわー。全面広告もアイコン広告もバナー広告もCPI広告も、これだけで設定できる。各アドネットワークと契約もいらんし。楽やわー。
— まぃこーぱみゅぱみゅ (@puipui_16) November 14, 2013
アドフリくんサポートさんの対応が迅速丁寧すぎてやばい。 絶賛されるのも納得だわー。
— naichi (@naichilab) October 2, 2013
アドフリくん導入してから、比較と調整が簡単にできるのと自動調整の結果を確認するのとので、余計広告にかける時間が増えている結果に! 便利過ぎて逆に使ってしまう、的な。
— uehara (@UeharaLabo) September 28, 2013
adfurikunの管理画面がドンドン使いやすくなって行ってる。 ぱっとみわからない細かい部分だけど、こういうフットワークの軽さすごい安心する。
— いたのくまんぼう (@Kumanbow) September 9, 2013
以下の記事も割と興味深い。
・SSP『アドフリくん』を使ったアドネットワーク運用について
・ゲーム開発:アドフリくんの実力!同じクリック数で収支が今の2倍を超える!?
聞いてみて感想:
アドネットワークによって「4.7倍ものパフォーマンスの差が出る」っていうのは顕著な例にしてもこれは見えないところで起こり得ていること。金額にしても10万円と47万円と考えると恐ろしい機会損失。特に考えもなくアドネットワークは1社しか使ってないという人は複数ADNW併用、およびSSP導入は要検討だと思う。
2009年からアプリ開発をしている会社、累計DLは400万DL。最近AdTickerというアドネットワークをはじめた。2億imp達成。
1事業者あたりの平均広告売上
ファンコミュニケーションズさんの決算説明資料で150万円。個人ならいいけれど企業ならもっと売上が欲しい。
気になって探してみた。以下の資料のことをおっしゃっていたのかな..?また違うデータのことを言っているのかもしれないが、このデータに関してはnendの売上データなので1事業者あたりの平均広告収益額とはちょっと違うような。ここでは関係ないがnendのサービスとしての全体収益の伸びは相当好調ですよね。
(出展:2013年第3四半期決算説明資料ファンコミュニケーションズ)
自社アプリの収益化方法について
・320×50最適化
・その他の追加収益
320×50広告
あるアプリの実績で320×50のバナーの収益は全体の1/3くらい。Admobメディエーションで複数のアドネットワークを使っている。
・毎日数字をチェックして配信比率変更。
・運用が面倒な場合はSSPに任せる。
広告主に効果を返せるよう最適化する
・広告ローテーション時間
ユーザーが内容を理解してタップできる十分な時間を与える。30〜60秒にすると良い。
・設置場所
ミスタップを防ぐ。広告を誤タップするような配置は良くない。広告主が出稿をストップしてしまう可能性も。
追加の収益化方法
アフィリエイト
モバイルのアフィリエイト案件はかなりたくさんある。A8ネット、imobileアフィリエイトを使っている。アプリとアフィリエイトのページに受けページを用意する。アフィリエイトで収益の1/3を占めているアプリもある。
これはさらっと話していたけどかなり良いアイディアだと思う。アプリ開発者さんとかだとアフィリエイトってなじみが薄いかもしれないけれど、例えば「保険の無料相談」に誘導してあげると1成約10000円もらえたり、「求人サイトの無料登録」に誘導して8000円もらえたりと高単価の案件もあって、アフィリエイターと呼ばれる人たちはこういうのにマッチする紹介サイトをつくって主に検索エンジンからアクセスをもってきて月に数十万〜数百万円稼ぐ人もいる。ASPと呼ばれるサービス(A8とかバリューコマースとか)に登録するとそういう案件がたくさんあって簡単につなぎこみが出来る。
ユーザー層と掲載案件をマッチさせればアプリでも、アドネットワークよりアフィリエイトのほうが圧倒的に収益性が高いというのはあり得ると思う。
アイコン型広告
あまり売上があがらなかった、導線の途中においてしまったのでおそらく置き場所が悪かった。
テキスト広告の併用
320×50バナーとテキスト広告AdTickerを併用することで広告収益が1.8倍になった。
青が320×50バナー、赤がAdTicker。
テキスト型アドネットワークAdTickerの特徴
(補足:AdTickerが使われているアプリのスクリーンショットを撮ってみました、意外に画面になじんでいるというか文字も読みやすくて鬱陶しくないので感覚的には良さげな感じはします。)
1、既存のバナーと併用可能
2、併用時に食い合いなし
320×50バナーと併用しても、クリックを食い合うことはない。CTRは文字を読ませて広告を訴求するため高いCTRが出ている。
3、在庫切れ保証
広告在庫がない場合、Amoadのウォール型の広告が出る。
聞いてみて感想:
アプリ内の「テキスト型広告」って今回初めて実際に見たけれど、意外に画面になじんでいる感じがした。PCサイトのアドネットワークでもテキスト型が案外クリックされたりするし、試してみる価値はあるんじゃないかな。こういうのはユーザーが慣れてない新鮮なうちが一番効果良かったりもするだろうし。
クラウドソーシング系のサービスを活用するのはとてもオススメ。筆者は割と使い込んでいるのだが、使いこなせればコストが数分の一になることもザラにある。有名なものだとランサーズ・クラウドワークスなどがある。
正直当たりハズレはあるが良い人を見つけるコツをつかめてくるとめちゃ便利、WEBサイトの制作なんかは従来のコストの半分以下でつくれるようになったと思う。
あとはイラストだと、ココナラというサイトで頼むと、プロアマの人が500円で信じられないくらいのクオリティのものをつくってくれたりする。
以前つくってもらったゆるいイラスト。これも500円。
pixivとかで好みのテイストの絵師を見つけて、オファーをかけるという作戦もある。ソシャゲの会社とかはそういうことやっているみたいだけど。