本日は萌えトレーニングアプリ「ねんしょう!」シリーズをつくっているCreativeFreaksさんのインタビュー記事をお送りします。
アマチュア声優の起用法、男女のお金の使い方の違いなど、萌え系・キャラクターアプリをつくりたい人は参考になるのではとおもいます。
(※写真:CreativeFreaks代表の菅田さん)
初代「ねんしょう!」について
開発元「CreativeFreaks」について教えてください。
菅田:
CreativeFreaksは今メンバーは4名、デザイナー1名プログラマー2名、プロデューサー1名で活動しています。主に萌えトレーニングアプリ「ねんしょう!」シリーズの開発をしています。
初代「ねんしょう!」はダウンロード数はどのくらいなんですか?
菅田:
2011年12月にリリースして、有料200円で販売しています、ダウンロード数は値下げや無料セールなど含めて10万ダウンロードくらい、今も1日100DLくらい増えていっています。
収益モデルは有料+アプリ内課金です。有料200円(手数料抜くと140円)×10万DL+アドオン収益で、そこから値引きや無料セール分を引いて、収益は数百万円という感じです。
(※「筋トレでポイント貯める」⇒「エピソード開放」を繰り返していく「筋トレ×ギャルゲ」なアプリ)
リリースしたときは手応えはありましたか?
菅田:
正直そこまで手応えなかったです、1日1ダウンロードの日もあったりして…。ただ熱心なお客さんが付いてくれ たのは肌で感じました。
あとはポツポツとテレビでも一応取り上げて頂いたり。オードリーさんの番組では、イメージしてた「タレントさんが腹筋する画」がそのまま出たんですよ。だからもうちょっと続けてたらいけるかもしれないなとはおもったんです。
声優はどんなふうに集めているの?
菅田:
実は、初代の「ねんしょう!」の3人の声優は全員アマチュアの声優さんなんです。当時はまったくお金がなかったですし、プロにお願いできる信用力もなかったので、アマチュアを起用しました。
声優のポータルサイト「萌えボイス」でサンプルボイスを聴いてキャラのイメージに近い人をリストアップして、「やって頂けませんか」とお願いしていくような形で探しました。
アマチュアの声優さんであれば自宅とかで録音してもらうこともできますし、いろいろと融通がききやすい。
アマチュアの声優さんていっぱいいるんですか。
菅田:
たくさんいますね。声優も厳しい時代で演技がうまい、声が良いだけではなかなか食べていけないようです。
今のアニメ業界はアニメは宣伝媒体みたいなもので、収益源は声優がやるライブイベントだったり、握手会でグッズやCDを売っていたりしますよね。ゲームもその一つだとおもいます。
なのでメディアやイベントへの積極的な露出が必須ですし、声優がアイドル化している状況です。
萌え系アプリでは何が大事ですか、キャラクターの可愛さ?
菅田:
キャラに魅力があることはもちろん。
1つ重要なのはほとんどのスマホゲームでは「思い出」がつくれないということです、つまりキャラクターに感情移入できる設計になっていないものが多い。
ガチャを回してでてきたキャラがいきなり戦うじゃないですか。スマホゲームから生まれる思い出って、キャラクターやストーリー以外の比重が大きいと思うんです。
一方昔のゲームって、例えば私ドラクエ5が好きなんですけど「パパスが死んだシーン」とかめっちゃ印象に残ってるわけです。
今のスマホのゲームってもちろん利益は出ますが「思い出」になりにくくて、何十年も愛されるようなIPはなかなか生まれないだろうと思っています。
(※登場キャラは3人、当時は予算も少なかったためアマチュア声優を起用した)
「ねんしょう!」でキャラと思い出が残るよう工夫しているところは?
菅田:
キャラクターの性格、エピソードを弱点を織り交ぜてつくったり、筋トレがうまくなったら女の子に褒めてもらえて、そして彼女になってイチャイチャできる。
そうしたゲームでの体験を通して思い出が残るようにしています。
「ねんしょう!」に関しては、結果として付き合ったあとの話をいっぱい作りました、最初は腹筋しかやらせてもらえないんですけど、そのあとの腕立て編、スクワット編は付き合ったあとの物語です。
これ要するにラブプラスなんです。あのゲームが新規軸だったのは、付き合ったあとがウリだった。恋愛するまでよりも、実は付き合った後の方をみんな楽しんでいたわけです。ウチの場合、予算や人員の関係で結果的にそうなっただけなのですが(笑)
実際に、初代「ねんしょう!」の上原真優ちゃんは、電撃オンラインさんの人気投票で23位に入ることができています。有料アプリのキャラなのに。これはゲームでの体験を思い出として残してくれているからだと思っています。
※電撃オンライン「美少女ゲームアプリ横断総選挙」で23位にランクイン。
海外とかってどうなんですか?
菅田:
英語版をボイス含めてローカライズしてだして、米国のヘルスケアで14位まではいったことがあります。でもやっぱりアジアの方が反応がいいですね、「萌え」は白人系は難しいのがよく分かりました。
収益については、有料アプリは売れないのでいまいち。やっぱり無料にして広告モデルに持ち込まないといけないかな。
中国語のローカライズも準備中ですが、ボイスは日本語のままにしています。現地の人に聞いてみたんですけど「キャラの声は日本語で聞きたい」っていうんですよね。
日本の声優って海外に対するブランド力も結構あるので、日本語で配信することで海外のアニメ・ゲームオタクのアンテナにも当然ひっかかかってくる。オタク系アプリで海外にいくときは「ボイスはローカライズしない」っていうのも手ですね。
「ねんしょう!for Girls」について
(※第二作目は女性向けゲームに。)
一番ヒットしたのって2作目の「ねんしょう!for Girls」ですか?
菅田:
知名度でいうと抜群にフォーガールズですね、無料アプリで約40万ダウンロード。収益でいうと初代の「ねんしょう!」のほうがいいですが。
内訳は広告とアプリ内課金で50:50という感じ。ダウンロード数は2:1でiOSのほうが多いですが、課金はiOSとAndroidで同じくらいある。これはAndroidはキャリア決済の優位性があるためだと思います。(※つまりAndroidユーザーのほうが、約2倍課金したということ)
女性って基本課金しないんですよね、「追加エピソードは課金しないと次に行けません」だとやめちゃうんです。
やっぱりその設計はダメだと思ったので、基本的には最後まで遊べるようにして、より楽しみたいならボイスを買ってくださいというふうにしました。
アイテムで一番売れてるのはなんだかんだでボイスですね。「無料(広告)モデルはウチのアプリには向いていない!」というのが現時点での結論です。
「ねんしょう!for Girls」って最初何で火が付いたんですか。
菅田:
「よう、デブ」というセリフです。ねとらぼさんや、ネイバーまとめ、2chまとめサイト などネットで話題になりました。
その時感じたのが、やっぱり女性って口コミ力が男性の比じゃないということ。彼女らの心に火が付いたらTwitterや口コミで一気に拡散していく。
乙女系ニュースのTwitterアカウントで「ねんしょう!for Girls」についてのツイートのリツイートが2万超えてたこともあるんですよ。
課金は男性のほうがしてくれるのですが、そのかわり拡散力は圧倒的に女性というのを痛感しました。
他に男女でおもしろい違いはありますか?
菅田:
女性は課金してくれないんですが広告をタップしてくれる。広告に嫌悪感がそんなにないんだとおもいます、男性は広告を意地でも押さないじゃないですか。
それと、男性は「俺はこれが純粋に好きだから」とキャラクターや作品にどーんとお金を払うんですが、女性は作品ではなくて好きな俳優さんにお金を払う。
最近、男性声優さんもアイドル化してるので、PS Vitaの乙女ゲームとかに握手会のチケットがついてくるらしいですよ。笑
それが欲しくて2本も3本もゲームを買っちゃう人もいる。もうオタクマーケットの収益構造って、1人にたくさんのお金を払って頂くのが必勝法なのだとおもいます。
「ねんしょう!for Girls」はプロの声優を起用したんですよね?
菅田:
はい、女性はブランドが大好きなのでプロじゃないとダメなんです。言い方は悪いですけど、男性は素人も結構好きじゃないですか。笑
ただ、無名の我々がプロの声優を起用しようとしてもやっぱり門前払いで、結局Visualworksさんという実績ある会社さんと業務提携させて頂き、豪華声優のキャスティングが実現できました。
プロの声優さんってどういう報酬契約なんですか。
菅田:
本作品では「出演料」という形です。
声優さんの何がいいかって、ファンが既にいるからアプリの集客に貢献してくれるところなんです。
バナー広告に30万円かけるのと声優さんに30万円かけるのなら、絶対声優さんにお金かけたほうがいいと思っています。アプリの中にボイスというコンテンツが財産として残りますし。
「ねんしょう!for Girls」でお願いした声優さんはどのくらい有名な人なんですか。
菅田:
アニメ好きの人に言うとみんな「おぉー!」ってわかるくらいです。
三人とも業界では人気のある方ですが、浪川さんはロードオブザリングの吹き替えなど、木村さんは最近だと「黒子のバスケ」の黄瀬くんが有名です。小西さんはマクロスFなどに出演されていますね。
うまくいかなかったプロモーションなどはありますか?
菅田:
「ねんしょう!2」でブーストを1回だけやりました、有料ランキングで10位ぐらいまで上げましたが、ぜんぜんダウンロードされず失敗しました。目的意識を持った人しかやらないアプリなので、やっぱり検索(ASO)などでとらないとダメ。
AppStoreの有料ランキングのブーストは、1位が約3,000ダウンロード、トップ10は1,000ダウンロードあれば入れますね。
ブーストの1DLあたりの広告単価400-500円かかりました、高いですね。有料100円のアプリだとブースト費用はそのくらいかかるみたいです。
今後やっていきたいことなどありますか?
菅田:
問題提起というかやりたいこととしては、顧客に愛されるIP・ブランドをつくりたいんです。カジュアルゲームってバズってヒットしたとしても、やっぱりどこまで行っても一過性のものだと思うんですよ。
「タイガー&バニー」みたいにキャラクターが企業の商品を着ているみたいな感じで、キャラクターがゲームの中で商品を自然にPRしたり、そういうBtoBのマネタイズができないかなって考えています。
今後もまだ誰も出来ていないことに、積極的に挑戦していきたいです。
取材協力:CreativeFreaks
編集後記
「よう、デブ」であれだけネットでバズったことを考えると、演出やセリフひとつが起爆剤になる可能性があるということですね。
あと、声優サイトの「萌えボイス」をみてみたのだが、レベル高いというかプロとアマの判断がつかなかった。依頼料金も高くなくて1文字1-2円で受けてくれる方も多いみたいです。