※株式会社ビーワークス ダンボールなめこさん、内海 仁湖さん
「なめこ」が誕生するまで
「なめこ」アプリの状況についておしえてください。
ダンボールなめこ(以下DN):
現在、シリーズ累計で4,100万ダウンロードという状況です。海外のファンも多く、国内70%、海外30%という比率になっています。
ちなみに、先日ちょうど「なめこ」誕生から、5周年を迎えたところです。
※シリーズ6タイトルで、累計4,100万ダウンロード。
「なめこ」のアプリは何人くらいでつくっているのでしょう。
DN:
1つのアプリを2~3人で開発しています。基本はすべて内製していて、小規模なチームでつくっているイメージですね。
ビーワークスの従業員は、全体で230名ほどいるのですが、ゲーム開発部としては15人しかいないんですよ。
初代の「なめこ栽培キット」はどのように生まれたのでしょう?
DN:
もともとは「おさわり探偵 小沢里奈」というゲーム(iOS移植版)を知ってもらうための、「販促アプリ」として企画したゲームでした。
そもそも「なめこ」というキャラも、主人公である「小沢里奈」の、探偵助手(サブキャラ)だったんですよね。
なので、初代「なめこ栽培キット」をつくっていたとき、アプリ単体で収益化しようなんていうことも、まったく考えていませんでしたね。
販促のつもりでつくったアプリが、本家を超えてしまったということですね。
DN:
そうですね。もちろん「販促アプリ」としても上手くいきましたけど、結果的には「小沢里奈」よりもヒットしてしまう形になって。
あともっと言うと、元々「なめこ」って別のゲームの「雑魚キャラ」としてつくられたキャラだったんですよ。スライム的な立ち位置の。笑
結局、そのゲームは世に出なかったのですけど、その「なめこ」というキャラクターだけが、そこからスピンアウトして、「小沢里奈」の助手に抜擢されることとなりました。
いま振り返ってみると、それが「なめこ」のシンデレラストーリーのはじまりでしたね。
※社内のグラフィッカーが描いた、初期の「なめこ」のラフデザイン。
初代「なめこ栽培キット」は開発にどれくらいかけたのでしょう?
DN:
開発期間は1ヶ月くらい、人数は3人でつくりました。とにかく「広く遊ばれるゲーム」を短期でつくることを意識していましたね。
ゲームシステムについては、当時のディレクターいわく、「農園ゲームの楽しさ」のエッセンスだけを、ゲームに閉じ込めたものだそうです。
農園ゲームって、食べ物を育てて、収穫していきますよね。そのプロセスを単純化して、誰でも楽しめるゲームにしたようなイメージです。
「なめこ」はどう広がっていったのか。
初代「なめこ栽培キット」がリリースされたときは、どんな感じだったのでしょう?
DN:
もう、アプリを公開した当初から、「うわ、なんだこれは!」という手応えはありましたね。
とにかくすごい勢いで、クチコミが広まっていて。アプリのダウンロード数も、毎日3〜4万ダウンロードずつ増えていきました。
「クチコミ」というのは、どのように広がっていくんですか。
DN:
友だちにスマホを見せて、「いまスマホでなめこ育ててる」「え?何コレきもい!」という感じで、クチコミされていったのだと思います。
今やこのシステムのゲームって、いろいろ出ていますけど、当時は「ユーザー体験」としても、すごく新鮮だったのかなと。
あと、見た目も名前も「なめこ」なのが覚えやすくて、しかも「アプリストアに一個しかない言葉」だったのも良かったのだと思います。
これまでシリーズアプリを出してきて「想定外だったこと」って何かありますか?
内海:
なめこアプリの「通信なしであそべる」というところが、実はユーザーさんに評価されていたこと、これがひとつ想定外だったことです。
具体的には、昨年「なめこ栽培キットSeasons HD」というアプリを出したとき、シリーズで初めて起動時に「通信が必要な仕様」にしていたんです。もはや「通信なんて当たり前だろう」と。
ところが、いざリリースしてみると「通信しないと開けないって、どういうこと!?」と、問い合わせがたくさん来てしまいました。
つまり「通信なしであそべること」を、ユーザーさんはなめこアプリの良いところとして見てくれていたんです。それで、急いで「通信なし」の仕様に改修したということがありました。
グッズ展開について
グッズ展開についてお聞きしたいです。いろんな「なめこグッズ」を出されていますが、最初はどのようにはじまっていったのでしょう?
DN:
「グッズ展開」については、メーカーさんから「なめこグッズつくりませんか?」と、声をかけていただき、実現していったような形ですね。
アプリの公開から1ヶ月たった頃から、ちらほらと声が掛かりはじめて、どんどんグッズが増えていったようなイメージです。
※本、ぬいぐるみ、リアルなめこ栽培キット、アニメ、CDなどに展開している。
CDまで出ているんですね。
DN:
はい、「なめこのうた」というCDが出ています。「まいんちゃん」で有名な、福原遥さんが歌ってくれています。
福原さんってネットの人気も高くて、何かやると絶対にネットで話題になるんですよね。「あの、まいんちゃんが何々に挑戦」という風に。
もともと、お母さんと女児に認知度があって、ネットでの人気もあるということで、すごく「なめこ」にも合っているなと思っています。
ちなみに、いまNHKで「なめこ」のアニメも放送しているのですが、主役の「なめこ」の声も福原さんが演じてくれています。
グッズ展開してわかったコツ
これまでいろんな「グッズ展開」をしてきて、わかったことなど教えていただけますか?
1、在庫を持たず「ライセンス形式」でやるべき。
DN:
まず、アプリをつくっている会社さんが、グッズ展開をするのであれば、在庫をもたずに「ライセンス形式」でやったほうがいいと思います。
なぜなら、グッズをユーザーに届けるための「販路の開拓」がむずかしいからです。「グッズをつくる」まではカンタンなんですけどね。
たとえば「ファンシーショップに置いてもらう」「ゲームセンターに置いてもらう」こうした販路の開拓というのが、予想以上に大変なのです。
2、1国に1社「ライセンスエージェンシー」を置くのもアリ。
DN:
グッズなど「ライセンス展開」の話が増えてきたら、外部の「ライセンスエージェンシー」と提携してしまうのもひとつの方法です。
「なめこ」の場合は、国内に1社、台湾に1社といった形で、信頼できる「ライセンスエージェンシー」を1国に1つずつ置いています。
そうすることで、現地企業とのやりとりなどは、自社で対応する必要がなくなります。日本でやることは「デザインの監修」などだけですね。
3、「メインキャラ」のグッズを増やすほうが売れる。
DN:
いままで「なめこ」のグッズを、たくさん出してきましたけど、結局はどのグッズもメインの「なめこ」が圧倒的に一番売れるんです。
なので、グッズをつくるときには、いろんなキャラをグッズ化するよりも、メインキャラのグッズの種類を増やしたほうが、売上は良くなると思います。
たとえば、帽子をかぶらせたり、ラーメンを食べさせたりして、バリエーションを増やしていくようなイメージでしょうか。
※「なめこ」のキャラは全700種類ほどいる。
4、グッズ展開は「UFOキャッチャー」からはじめる。
DN:
これはおもしろいなと思った話ですが、グッズの展開をしていくときって、まず「ゲーセンのUFOキャッチャー」から入るんだそうです。
なぜかというと、「UFOキャッチャー」のぬいぐるみって、そのキャラのことを知っていなくても、商売として成立しやすいためです。
お店で買うぬいぐるみって「このキャラが好きだから買う」ですけど、UFOキャッチャーって「ゲームやりたいからお金を払う」じゃないですか。
だから「無名に近いキャラ」でも、お店にも置いてもらえやすいし、キャラの人気指針をはかるためにも、まず「ゲーセン」からはじめるらしいですよ。
5、海外でうまくいっているのは台湾。
ダンボールなめこ:
「なめこ」がグッズ展開も含めて、海外でうまくいっている国は台湾です。本当に台湾という国は、日本に趣向が近いんだなと感じます。
ちなみに、台湾の展開をスタートするとき、すでに偽物のぬいぐるみが「夜道の露店」で大量に売られていたので、びっくりしました。
ラーメンマンみたいな顔の「偽なめこ」も勝手につくられていました。笑
※台湾では「なめこ列車」まで走った。
海外展開について
「なめこ」のアプリが、海外に広まっていった経緯をおしえてください。
DN:
海外は「マカオ→香港→台湾・シンガポール」という順序で火がつきました。おそらく、中華圏のコミュニティで広がっていったのかなと。
欧米の国だとこういったテイストだと厳しいと感じますか?
DN:
そうですね。アジア圏に比べるとそう感じます。海外の企業さんに「なめこ」を見せると「赤とかにならないの?(地味だよね)」とよく言われます。
欧米のキノコキャラって「赤と白のキノコ」がテンプレなんですよね。しかも、毒キノコ系のイヤな感じの敵が多いという。笑
そもそも、ここまでキノコの種類を「なめこ、ひらたけ、しいたけ」と答えられるのって、日本人くらいなのかもしれないですね。
アプリのデータを見ていて「国ごとの傾向」が出ているところはありますか?
内海:
GooglePlayで、各国でフィーチャーされたときに、わかったことなのですが、アプリの継続率には、国ごとに傾向が出ていまして。
たとえば、ドイツは日本と似て「我慢強い人」が多いのか、アプリの継続率が高いんですよ。ちゃんと待って、収穫までしてくれるんですね。
一方、ブラジルなどのラテン系の国では、すぐアンインストールされてしまうんです。国民の気質的に、あまり待てないのかもしれません。
そういった数値から「ゲーム性と国民性」にも相性があるのだろうなと感じました。
「なめこ」の人気がでた理由を分析
この5年を振り返ってみて、ここまで「なめこ」というキャラが人気になった理由で、何か感じることってありますか?
内海:
ユーザーさんから、言われることが多いのは「表情」ですかね。「なめこ」の顔って見る人によって、表情がちがって見えるんです。
たとえば、自分が嬉しいときには、笑ってくれているように見えるし、悲しいときには悲しんでくれているように見える。
だから、なんていうんですかね、親しみを感じやすいというか、「人の気持ち」に寄り添っているように、見えやすいのかもしれません。
実際に「入院のとき、なめこを連れて行ったら癒された」といった声も、たくさんいただくんですよ。
※「なめこ」のなんともいえない表情、見る人によって違って見えると。
それはおもしろいですね。
内海:
ちなみに、カップルの方から「なめこがキッカケで、付き合って結婚しました」みたいな、ご報告もかなりいただくんです。
いままで、10組くらいは「結婚のご報告」をいただいています。そうした場合は、結婚式用の「お祝いビデオレター」をつくって、お送りすることもあります。
なるほど、すばらしいですね。
DN:
あと「なめこ」って男女の区別がないんです。だから、男の子のファンも多いし、女の子のファンも多くて。
「男の子向け」みたいに限定しなかったことが、パイが広がった要因のひとつかなと。そういう意味では、アンパンマンに近いですよね。
あと、意外に大事だと思うのが「真似して描きやすい」ことです。子どもでもカンタンに絵が描けるからです。
これからも「なめこ」のアプリは出てくるんでしょうか。
DN:
はい、秋には「なめこの巣」という最新作のリリースも予定しています。今までとは変わったシステムのゲームになっていますので、ぜひ楽しみにしていてください。
取材協力:株式会社ビーワークス
【お知らせ】アプリ企業の取材などは「取材申請」のページから受付しています!