日本のゲームはぬるくて、キャラクターは弱々しい!欧米から見た日本のコンテンツとローカライズの重要性-「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?より

2013年11月25日 |
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「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?という本が、
とても興味深かったので紹介したいと思います。

この本は2011年に出版された本で少し古いのですが、
日本のメーカーなどの、海外展開やローカライズ事例が紹介されています。

TOTOがウォシュレットをどうやって欧米に広めたか、
海外ではファイナルファンタジーのような細身の主人公は弱そうでバカにされる、
など、なかなか興味深い話が多く書かれています。

もちろん、アプリの本ではないのですが、
これを読んでいると「アプリの海外ローカライズも単純に翻訳すればOKという発想じゃダメだな」という気持ちになってきます。

海外展開を考えているデベロッパーさんの何かのヒントになるかと思ったので、
印象的だった部分を以下にて紹介したいと思います。

日本のゲームはぬるい?

イタリアで育った子どもがこういった。
「日本のゲームはなんかぬるいね、あんまり好きじゃない」

しかし彼はDSの「マリオ」に夢中になっていて、言っていることとやっていることが違う。
つまり欧州でも熱狂的に受け入れられる日本のゲームだってある。

CEDEC運営委員会委員長を務める吉岡氏が、
海外と日本のゲームの違いについて語っていた内容。

Q、日本のバトル系ゲームは「ぬるいからつまらない」と言われる。これはローカライズすべき?

確かにそういうことを言われる。特にレーシングやアクションはタイミングがシビアすぎて日本のユーザーにとって難しすぎるくらい。
予算に余裕があればそこまで踏み込んでローカライズすることもある。

しかし一方で、日本でもマリオや格闘ゲームのように、結構シビアなゲームがヒットしている。「難しさ」で判断するのではなく「受け入れられやすさ」で見るべきなのかもしれない。

例えばチュートリアル。ゲームの中にチュートリアルを巧みに取り込んだのは実は日本のゲームが先駆。その最高傑作は「スーパーマリオブラザーズ」である。

Q、日本と海外でのゲームの違いは?

日本のユーザーは「ゲームを攻略する」ことに夢中になる。
だから、攻略本を勝ったりプレイヤー同士で情報交換したりする。
そのため同じゲームでも何度を変えて遊ぶことを想定してゲームをつくっていくことが多い。

海外のユーザーは、「ゲームをクリアする腕前を競う」傾向が強い。だから最初からゲームの難易度が高い。戦いのルールが統一されているという意味では「スポーツ的」

しかし、日本はやはり違う。
「難しいものをクリアする」より「美しくクリアする」ことに重きを置く、武術のようなイメージ。

Q、スポーツゲームはどうか?

欧米ではスポーツゲームは大きな市場。
W杯などにあわせて各社が競うようにゲームを投入している。

実際のスポーツ中継で友人が集まって騒ぐように、ビデオゲームでもみんな大騒ぎして遊んでいる。サッカーゲームであれば欧州のほうが日本よりリアル要求度が高い。

ただ実はこれは理解するのが難しい。
例えば海外の映画に登場するサムライをみると日本人は「何か違う」と違和感を覚える。
この感覚を外国人に理解してもらうのは難しい。

Q、日本と海外でウケるキャラクターは違いますか?

「ポケモンやマリオが欧米でも人気」という現実を考えると視覚的な要素はあまりないかもしれない。もちろんターゲットとキャラクターのミスマッチがあると受け入れてもらえない。

「ファイナルファンタジー」は日本なら中高生〜大人まで受け入れられている。
しかし米国の男子中学生はマッチョ志向が強いのでFFの繊細なビジュアルにあまり喜ばない。
逆に「おまえあんなゲームが好きなのかよ」という感じで回りにバカにされてしまう

イメージ。

一般的に日本のアニメ風キャラクターは主人公が細身で「強そうじゃない」と言われる。
漫画的な表現はそれだけで子ども向けと見られがち、
特に北米のコアユーザー層が少年〜青年男性のため、その声が強いのかもしれない。

補足:
日本のヒーローとアメリカのヒーローを比較した、
こんな画像を見つけました。確かにこんなイメージだ。

日本とアメリカのスーパーヒーローの違い。
us-japanhero1
日本のヒーローリュウ「地球で最強の存在となるために鍛錬に鍛錬を重ねる」

us-japanhero2
「宇宙人が襲来しリュウがその連中と戦闘していると、助けが!」

us-japanhero3
リュウ「強いな。君たちはよほど鍛えたんだろうね」
アイアンマン「ただ金持ちで天才だっただけ。当然ハンサム」
スパイダーマン「クモに噛まれただけですがw」
スーパーマン「元から強いんで」

出展:外国人「日本とアメリカのスーパーヒーローの違いはこんな感じ」海外の反応

日本人には海外の人の感覚はわからない

「東京のイタリア料理ってイタリアで食べるよりおいしい」という日本人のセリフがある。
しかし「東京のイタリア料理」はイタリアの基準で「おいしい」と思えるような味ではないことが多い。

明らかに日本人向けにローカライズされていて、日本人がおいしいと思うのは当然。
逆に日本人がおいしいと思う和食は海外にはなかなかない。

なので単純に「日本でおいしいものは世界に通じる」とはならない。
それぞれに味覚が違うということを理解しないといけない。

グローバル展開時はデザインはシンプルに

26カ国に拠点を持つ翻訳会社ライオンブリッジの永島さんは、
グローバル展開時のデザインについてこう述べている。

デザインはできるだけ簡素にし言語表現のみという形を目指すべき。
最近のグローバルサイトでは、イラストなどの視覚表現を減らす傾向が見られる。
まずはニュートラルなデザインで国際化し、各地域でイラストを付加してローカライズする。
代表的なのはGoogleやFacebookのトップページ』

翻訳とローカリゼーション

翻訳とローカリゼーションは違う。

翻訳とは、
「ある言語を別言語に置き換えることでドキュメントなどを言語変換すること」

ローカリゼーションとは、
「外国語市場向けにドキュメントを翻訳し適合させること。正しく内容が伝達されているかを確認、製品が機能面と言語麺の両方で異文化に適合していることを確認するプロセス」

ローカリゼーションの重要性を語っていると、
「ローカリゼーションってそんなに必要なんですか?」と聞かれることがある。

その時の答えは2つ。

1、必ずしもしなくてもいい。まず市場のユーザー目線に立ってみる。
すると目に入らなかったことがたくさん分かってくる、その上でローカライズすべきか考えれば良い。

2、ローカライズはいわば「相手のミニマムの期待値」をクリアすること。
「こいつ俺たちのこと何もわかっていない」と思われないようにすること。

勝手にローカライズされたマルちゃんのカップラーメン

マルちゃんはメキシコで支持されている。
1つの要因は1980年代にアメリカに出稼ぎに来ていた移民が、
家族や友人へのお土産として大量に持ち帰ったこと。

そこから、勝手に辛くして食べたり独自の文化に染まりながら、
国民的な食べ物として定着していった。

mexico-maruchan
出展:「マルちゃんする」とメキシコで独自解釈されたカップ麺

ちなみに、メキシコでは会議は早く終わったときは「会議がマルちゃんした」と言ったり、
サッカーメキシコ代表の素早いカウンター攻撃を「マルちゃん作戦」と呼んだりする。

それくらいマルちゃんという食べ物が浸透している。

(補足:ネットで調べてみてもメキシコ関連のマルちゃん情報がたくさん出てきますね)

この間「がっちりマンデー」で即席麺の特集をしていましたが、

日本の即席麺は世界中で大人気だそうで、特にメキシコでは「マルちゃん」イコール「早い」を意味する言葉になっているとのことで、とても嬉しく感じました。

引用:即席麺「いやぁ、議会がマルちゃんしたねぇ」

いまや『マルちゃん』を知らないメキシコ人はいないのではないかというくらい有名です。人気の理由は「保存も調理も楽、安い、おいしい」3拍子そろっているから。

また、『早い、手軽、簡単』という意味の動詞でつかわれることもあります。

引用:メキシコではマルちゃんが人気

日本と海外でモノの捉え方が違うことも。

日本人はラーメンは麺に注目して、スープは塩分・油分を気にして残す傾向、
外国ではラーメン=スープという認識があるためスープも残さない。そのため味も薄めに設定されている。

日本やアジアでは冷蔵庫=家電だが、
ヨーロッパでは冷蔵庫=「冷えるキャビネット」(インテリア)として見られる。
そのため、ヨーロッパでは「冷蔵庫のドアは2枚」が当たり前で、
日本のようにドアがたくさんに分かれた冷蔵庫は冗談にさえ見えてしまう。

海外でのユーザーリサーチを行う会社ベルウッドの鈴木さんはこういう。
『ある製品が使いやすいかどうかは国による大きな違いがほとんどない。
ただし「なぜ使うのか?」「どうやって使うのか?」によって使い方が大きく変わる。当然これは国によってまったく違う』

ウォシュレットは一度使ってもらわないと良さがわからない。

TOTOはウォシュレットを海外でどうやって広めたか?
ウォシュレットは使ってみないと良さがわからない。
でも一度使ってもらえると外国人にも快適だと理解される。

ウォシュレットは、いきなり個人が自宅に設置するような商品ではない。
そのため、まずはホテル、スポーツジム、レストランなどに設置して、
一度多くの人に体験してもらうというところを重視した。

イギリスの公文は教会の中に教室をつくっている。

公文の教室は英国では95%が教会の中にある。開催中は入り口に小さな案内をだしている。
英国では告知するにあたり町並みの景観問題から看板をだしづらいという問題がある。
しかし、ランドマークである教会であれば人の目が向くため、教会の中で教室を開いている。

まとめ

この本は読む前はローカライズに関する本だとは知りませんでした。
たまたま本著に触れたことで、グローバル展開しているメーカーとかゲーム企業のローカライズ事例を見ていると勉強になることが多いと気づかされました

一番印象的だったのは、
「ローカライズは、こいつ俺たちのこと何もわかっていないと思われないようにすること」というところでした。

たしかにこれは日本人としても、
海外のコンテンツ・商品に対して思う時はありますよね。

個人的にはスーパーセルの「clash of clans」は日本では受けないと思っていました。
(しかし、結果的に非常に大きく売上をあげています)

clashofclan

本記事では端折っていますが、事例がとてもたくさん書かれていて
海外文化ってこんなに日本と違うんだな、と感じることができる本です。
ぜひ気になった方は読んでみてください。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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