自作のクソゲーに「息子への遺言」ラスボスが父親の化身、遺言はマルチエンディング。49歳の個人作者が語る「ただ儲けたい」だけじゃないアプリ開発。

2018年09月26日 |
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自作のゲームアプリに「遺言」を埋め込んだという、個人アプリ開発者を取材しました。「個人開発者特集2018」の第一回です。


※個人開発者のumetaroさん

簡単に自己紹介をお願いします。

個人開発者の「umetaro」と言います。49歳のおっさんアプリ開発者です。これまでコツコツと売れないアプリを5本つくってきました。

アプリ開発は5年前にスタートしました。普段はゲーム会社で働いているのですが、それ以外の時間はもっぱら家事と開発に捧げています。

これまでつくった5アプリの累計でいうと、アプリの収益額は6万円、ダウンロード数は3万ちょっとです。

これまでどんなアプリをつくってきたんですか?

子どもが中学受験した経験を踏まえて、こんなアプリがあれば役に立ったかもしれない、という学習系のアプリを中心につくってきました。

たとえば、筆算の途中式がでてくる「受験の筆算」という電卓アプリ。これは「筆算の答え合わせ」が簡単にできるというアプリです。

おそらくですが、小学生の子がいる親たちが「宿題の答え合わせ」につかってくれていて。収益は月2,000円ほどになっていますね。

今年に入ってひとつだけ「ゲームアプリ」を出しているんですよね。

そうなんです。今年の3月に「新しい昭和」をコンセプトにした、人類未体験のシューティングゲーム「スペースジン」をリリースしました。

ただ、これはたった196ダウンロードしかされず、寂しい結果になっています。評価も散々なんですよ。

なにがダメだったんですか?

まず、ストーリーが「昭和ネタ」ばかりなので、ほとんどの人に理解してもらえなくて。

実際に、試しに妻にあそんでもらったところ「ストーリーの意味がわからない、頭のおかしい人が書いている」と言われてしまいました。笑

それと、40代の友人にあそんでもらったら、老眼でスマホを遠くに離さないとプレイできず、ストーリーを読む余裕もなかったようでした。

そういう、このアプリを気に入ってくれる層がいない、自己満足のクソゲーになってしまって。いまはそれをしみじみと感じているところです。

でも、売れなくてもいいんです。このアプリは息子への遺言状でもあって。自分の頭脳をプログラミングした人工知能として私がつくったものなんです。

一体どういうことなんでしょうか。

この「スペースジン」というアプリは、一見するとただのシューティングゲームです。どこにでもあるシューティングゲームなんですよ。

しかし、ステージ8で銀河のボスを倒して、ボスというのはわたしの分身なんですけど、そいつを倒すと最後にエンディングが待っていて。

そこでの選択肢によって、父から子への「遺言メッセージ」が出現するようになっています。しかもこれはマルチエンディングになっています

それを息子もそうだし、若い世代に向けても残したいなと。そういう気持ちでアプリをつくりました。

なるほど、それは斬新なアイディアですね。

このアプリには、自分のこれまでの人生を詰め込みました。プレイすると「この人はこんなことを考えていた」と分かるようになっています。

だから、このAI時代に「わたしは人工知能を開発した」と言いたいくらいですよ。昔はプログラミングが一種の人工知能だったので、間違ってはいないと思うんです。笑

何も深い話なんてないんですけどね。自分の薄っぺらい人生教訓を。しょうもないんですけどね。だから、売れなくてもいいんです。

いつか息子がこのアプリをあそんだときに、わたしの伝えたかった人生の教訓や考え方を、知ってもらえたらいいなと思っているんです。

息子さんはどう言っているんですか?

息子はわたしの作品を全否定しています。「スーパークソゲーもうやらない」と言っていて。だからこれは一生気づかれないかもしれない。

でも、自分が死んだ後に、このゲームをプレイした息子が「いた・・・どこを探してもいなかったumetaroがこんなところにいた…!」と

ヒカルが佐為を見つけたときのように※、いつか父の想いに触れてくれたらいいなと想像しています。

※「ヒカルの碁」におけるエピソード

遺言というと早すぎる気もしますが「死を意識する瞬間」もあるんですか?

それが、いよいよ40代後半になると、自分の人生が「死の側」から見えるようになって。自分もいつか死ぬんだなと思うようになりました。

やっぱり、歳をとったからだと思うんですよ。好きだった芸能人もどんどん死んでいく。西城秀樹さんが亡くなったり。どんどん死んでいくじゃないですか。

だから、いまは身体がちょっと悪いとかもなくて、死にそうな様子も全然ないんですけど。やっぱりもう死ぬんだなという感覚はあって。

なので、ホントに自分がやりたいとことって何かと、すごく考えるようになりました。遺言状というとちょっと大げさですけどね。笑

umetaroさんは儲かっていなくても、なんだかすごく楽しそうですよね。

そうですそうです。開発することも楽しいんですけど。全部がおもしろいんですよ。

アプリのアイディアを出して、それをつくってみて、誰かにダウンロードされて、収益になったりする。そこまで一体化してるのがたのしい。

全行程をひとりで責任を持ってやる。それってすごい大事なことで。面白くてためになるしほかの仕事にも応用できるじゃないですか。

なので、アプリ開発って素晴らしいなと思っているんです。

「5年間アプリ開発を続ける」というのもスゴイことですよね。

気付けばって感じですね。意外とみんな儲からないから辞めていったり。自分は儲けたいとか職業にしたいというのも違うんですよね。

儲けたいってことだけが、最初にあるんじゃないんです。ある意味プログラミングをやってるだけでも完結している。だから続けられるんです。

これからも一生つくり続けていこうと思っています。誰かの参考に少しでもなれば幸いです。

最後にメッセージがあればお願いします。

今後の活動として、プログラマー、デザイナー、音楽家、プロモーターを見つけて、5人パーティでゲームをつくってみたいと考えています。

もし、一緒にアプリ開発してくれる方がいたら、ぜひ声をかけてもらえたら嬉しく思います。

開発者のumetaroさんのツイッター

(別にお金は儲かっていなくても、5年間アプリをつくり続けて、自分のつくったものについて楽しそうに語る、とても幸せそうな人でした)

スペースジン(iOS

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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