「アプリの速さ」を改善したらユーザーの継続率が2〜3%上がった。ニュースアプリ「カメリオ」が語る「継続率アップ」に効果があった3つの施策。

2015年06月15日 |
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今回はニュースアプリ「カメリオ」を運営している白ヤギコーポレーションさんにお話を伺いました。記事選定のアルゴリズムや、継続率がうまくアップした施策など。

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※株式会社白ヤギコーポレーション CEO シバタアキラさん(ロンドン大学 物理学博士でもある)

「カメリオ」について

「カメリオ」について教えてください。

シバタ:
2014年2月にリリースして、約20万ダウンロード(iOSが約80%)という状況です。Androidは、ようやく社内で開発できるようになったので、これから力を入れていきます。

ユーザーについては80%が男性で、年齢でいうと20代後半〜40代前半くらいがコアユーザーですね。ちなみに「年齢が上の人ほど定着率が高い」という傾向にあります。

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「カメリオ」では300万のテーマがあるとのことですが、記事を選んでくるときの「アルゴリズム」ってどんな感じなんですか?

シバタ:
「記事の選定」については、関連度を複合的に判定していますね。

例えば、基本的な指標としては「タイトルにキーワードが入っているか」「本文の上の方にキーワードがあったら重要」「全体に対して、その話題がどのくらいの割合か」などがあります。

他にも「ソーシャルでどれくらいシェアされているか」「きれいな写真が入っているか」などもスコアリングに入っていますね。

あと「テーマ」によっても評価軸が変わるんです。わかりやすいものだと「ビジネス系」はソース(誰が書いているか)が重要ですし、「時事系」であれば「いつ書かれた記事なのか?」が大事。

他にも「犬」の記事とかは「息抜きで読みたい」という人がほとんどなので、もう写真がすごく重要なんですね。「かわいい犬」の写真がいっぱい出てくると、それはもう良い記事だったり。

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記事の判定で「ここは苦労するな」というところはありますか?

シバタ:
例えば「同音異義語」です。スズキ(車)とスズキ(魚)の話題を見分けるのってすごく難しいんですよ。字面だけでは見分けられないので、文章のコンテクスト(文脈)を理解しないといけなくて。

そのためには、例えば「海」「漁業」「鮮度」などの関連語が入っていたら「これは魚の話だな」と判断できるように、裏側の辞書に「関連語」を地道に手入力していく必要があるわけです。

そうしたテクノロジーだけでは解決できないところは、泥臭く「人の手」を入れていますね。

とくにカメリオの場合、ビジネス〜アニメまで広いジャンルを対象にしているので、いろいろなニーズに対応できないといけなく、そこは簡単ではないなと感じます。

いま「収益」はどのように上げているんでしょうか?

シバタ:
最近、アプリに広告も入れ始めましたが、現在は「カメリオAPI」というAPIが売上の柱になっています。これはカメリオの裏側でつかっている技術を、メディアやアプリに提供しているものです。

例えば、「これを読んでいる人には、この記事がオススメです」といった記事のレコメンデーション、自動アルゴリズムで「記事へのタグ付け」の機能があります。

「継続率」について

ニュースアプリは「継続率」が重要なのだと思いますが、カメリオではどんなことをすると「継続率の向上」につながりますか?

シバタ:
以前はユーザーがフォローする「テーマの数」が増えれば、「継続率」につながるのだと考えていました。

なので、アプリを最初に立ち上げた時に「まずはテーマを3つ選んでね」みたいに強制的なガイドを入れていたのですが、逆にそれで「継続率が下がった」ということがありまして…。

そこで、実際に「テーマの数」と「継続率」の相関を見てみたんです。すると「10テーマくらいまでは相関するけど、そこからは相関しなくなる」という結果になりました。

一方で、「(最初の3日間で)読んだ記事数」を軸にしてみてみると、「継続率」とずっと相関し続けることがわかったんです。なので今は「最初に記事をたくさん読んでもらう」ということを中心に置いています。

やっぱり「テーマを設定する」というのは手段でしかないということに気づきました。当たり前ですが、ユーザーの目的は「いい情報を収集したい」だからですよね。

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※図はイメージです。

ほかに「継続率」が上がった施策などはありますか?

シバタ:
2つほどあります。まず一つは「記事の精度」が上がったときです。「記事の精度」をあげるために、一般の方々にオフィスに来てもらって、「カメリオが拾ってきた記事の質」を判定してもらったことがあって。

例えば「テーマと関連している」「テーマと関連していない」「単語は入ってるけど関連してない」みたいな感じで、何万件も人力で判定してもらいました。

その結果をもとに、アルゴリズムのチューニングを繰り返しまくっていたら、精度が上がって継続率の向上にもつながりましたね。

なるほど、もうひとつはなんでしょう?

シバタ:
二つめは単純に「アプリの速さ」の改善です。以前は「テーマの読み込み」に5〜10秒かっていたのですが、これを1.5秒まで短くしました。これだけで継続率が2〜3%上がったんですよ。

やっぱり「時間はかかるけれど、サービスの価値につながること」を地道に改善していくことが一番効く。ショートカットはないんだなとすごく実感しました。

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なぜ「カメリオ」をつくったのか。

そもそも「カメリオ」をつくったのは、なぜだったんでしょう?

シバタ:
「カメリオ」をつくったのは、「特定のテーマ」で情報が追いかけられるサービスが、必要になってくると思ったからですね。

というのも、いまのネットコンテンツって、記事単位でバラバラに消費されるようになっているんですよね。

昔は「どこが出版した」「新聞の1面に載ってる」とか、色々あったと思うんですけど、もう今は「誰が書いてるか?」とかって、ほとんど気にしないじゃないですか。

じゃあ、結局「コンテンツの価値」が何で決まるかというと、「その人のニーズに合っているのか」で決まる時代になってきている。

加えて「コンテンツの質」にも真価が問われるようになってきていて。ソーシャルでバズが起きたりもそうですけど、すごくコンテンツの消費が、民主化されてきているのだと思います。

そういう中で、「カメリオ」のようなサービスが必要になってくると感じたんです。

「特定のテーマで情報を追う」という意味で、ユーザーの「カメリオの使い方」で印象に残っているものはありますか?

シバタ:
ありますよ、例えば、ユーザーさんに「カメリオで、どんなテーマを設定してるか見せてください」といったら、ものすごい嫌がられたことがあって。

「え、どうしてですか?」と聞いてみたら、「カメリオを見せるなんて、人前でパンツ下ろすようなものだよ・・・」と言われたんですよね。笑

それは僕らからするとすごく嬉しいことです。「見せたくないくらいに、パーソナライズして使いこんでいる」ということですから。

あともうひとつ、とあるユーザーさんが、カメリオの「健康」というテーマで入ってきた「漢方のワークショップ」の記事がきっかけで、「ワークショップで友だちができた」と言っていました。

その「友だちが出来る」って、すごく価値として大きいことじゃないですか。情報をつなげていくことで、そうした価値にもなるのは、すごく面白いですよね。

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「Applewatchアプリ」も出されていますが、調子はどうですか?

シバタ:
AppleWatchのアプリは、自画自賛ですが「いいアプリをつくれたかな」とは思っています。でも、ダウンロード数でいうと全体の1割もないですね、2万ダウンロードもいかないくらい。

まだまだ、ウォッチの普及までは遠いと思いますが、個人的には「プッシュでニュースを届ける」というのは可能性があるなと感じました。

パッとプッシュでニュースがとんできて、「気になるな」「あとで読みたいな」と思ったら保存だけできるようなもの。これなら仕事中のジャマにもならないし便利だなと。

最後に、今後「カメリオ」で実現していきたいことを教えてください。

シバタ:
ひとつは「複雑な概念」を扱えるようにしたいです。例えば「老人の性」「ちょいワルおやじ」とかですかね。こういう「そもそも何なのかわかりにくいもの」にも対応出来るようにしたいです。

そしてもうひとつは「受け身の人」にも、価値を提供できるようにしたい。

いまのカメリオは「テーマを自ら積極的に設定できる人」との相性は良いのですが、逆に「なんとなく受け身で生きてる人」との相性はよくないんです。

ただ世の中には後者の人のほうが多いので、究極的にはぼんやりとカメリオを使っているだけで「ハマれるものが見つかった」「人生が楽しくなった」となるようにしていきたいです。

取材協力:株式会社 白ヤギコーポレーション

カメリオ
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編集後記

「時間はかかるけれど、サービスの価値につながること」を地道に改善していくのが大事と。言葉でいうとカンタンだけど、つい忘れたり、ずれたりしがちなことだと思いました。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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