貯金1,000万円つかって、6年で20アプリつくったが、年収は15万円。どん底アプリ開発者、コンテストで賞金250万円を獲得し、人生初勝利をおさめる。

2016年05月16日 |
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名古屋で戦いつづけている、個人アプリ開発者さんを取材しました。

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※個人アプリ開発者の、伊与田貴司(Takashi Iyoda)さん。

年収15万円、6年間の貧乏アプリ開発

簡単に自己紹介をお願いします。

伊与田です。名古屋で6年ほど、アプリをつくっている個人開発者です。アプリで独立する前は、いろんな会社で働いていました。

月400時間はたらいて、年収300万円という、システム開発会社で働いたこともありますし、コンビニの店長やったこともあります。

そんな伊与田さんは、どうして「アプリ開発」で独立しようと思ったんですか?

もともと、独立するつもりなかったんですよ。ひとつ前の会社で「これからずっと営業」と言われて。それで、技術がやりたかったので、やめてしまいました。

そのとき、iPhone3GSが出ているのを見て、「これは自分でもつくれそうだ」と思って、アプリ開発をはじめたんです。

それで、なんとなくアプリをつくりはじめたら、食べれるようになったんでしょうか?

いや、食べれてないですよ。独立して6年くらい、貯金をつかって暮らしています。ほとんど収入がないので。貯金も1,000万円くらい、消えていますね。

もうないです、お金ないんですよ。いままで20アプリくらいだしましたけど、ここ最近の収益なんて、月2,000〜3,000円ですから。

とくに最初の1〜2年はひどくて、収入も月に数百円レベルでした。 2014年は11本アプリを出しましたが、合計1万円にも届きませんでしたね。

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貯金していた1,000万円をくずしながら、6年間も生き抜いてきたんですか。

そうです。だから、ずっと月10万円くらいの節約生活です。独身で一人暮らしだから、なんとか。いま45歳なんですけどね。自炊もはじめて、友だちの誘いもほぼ断って。

冬の食事は、鍋に鳥肉(58円)と白菜(128円)に、「ほんだし」入れて終わり。これを毎日食べています。あと、ときどきエノキダケ。

外食については、月に1回「かつや」に行くくらいですかね。100円の割引券をつかって、400円でカツ丼を食べる。これが月1の楽しみ。

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いままでつくったアプリの売上はどのくらいですか?

20アプリだして、累計80万円くらいです。だから、独立してからの平均年収でいうと…年収15万円レベルということです。現実は厳しい。

ここまでくると、管理画面も、見る気にならないですよ。どうせお金入っていないですし。見てもしょうがないから。笑

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比較的「うまくいったアプリ」というのはありますか?

「ソード&ドラゴン」というゲームは、中国のAppStoreで、1週間フィーチャーされたおかげで、広告収益が5万円ほどになりました。

あと、一番うまくいったのは「ガチャニャン」というアプリ。これは自信作で、約5万ダウンロードで、60万円ほどの収益になりました。

ほかのアプリは悲惨です、1アプリ数千円いけば良いほう。20アプリつくってもこれなので、もうどうしたらいいかわからないですよ。

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アプリコンテストに応募し、奇跡の優勝を果たす。

どうして「アプリコンテスト」に応募しようと思ったんですか?

それなりに、高いクオリティのアプリは、つくれていると思ったので、「ユーザーに見つけてさえもらえれば、評価されるはず」と考えました

それで、コンテストを探していて、たまたまFacebookで見つけた、AppLovinという会社が主催する、「Apple TV」のアプリコンテストに応募しました。

コンテストはどのように進むんですか?

とりあえず、WEBでエントリーをするんです。そのときは「ダンジョンタイルズ」というパズルゲームをつくって、エントリーしました。

それで、結果を待っていたら、ある日「あなたは10人のファイナリストに選ばれました」とメールが来て。

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※コンテストにだしたパズルアプリ「ダンジョンタイルズ」

すごいじゃないですか。

それで「決勝戦はサンフランシスコでやります」と言われて。つまり「決勝やるからアメリカまで来てくれ」ということですよね。

でも、あれですよ。ぼくお金ないじゃないですか。旅費は自腹ですから。もし、賞金とれなかったらヤバイと。だから、すごく迷いました。

「コンテストの賞金」はいくらだったんですか?

ぼくが応募した「オリジナルアプリ部門」は、1位 250万円(25,000ドル)、2位 50万円(5,000ドル)、3位 10万円(1,000ドル)でした。

だから、最低でも3位に入らないと、サンフランシスコまでの旅費が回収できない。

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※AppLovin社の「Apple TV App Challenge」というコンテスト。

なるほど、結局いくことにしたんですよね?

そうですね。なんとか節約して。アメリカ滞在中も、5ドルのタコスを、ちょっとずつ食べたり、空いたペットボトルを水筒代わりにしたり。

なんだかんだ、旅費は10万円くらいかかりましたね。

決勝戦(ファイナル)はどのように行われたんですか?

決勝については、ブースに「デモ」を置いておくと、審査員が5〜6人歩いてきて、質問してくるんですね。それに答えるような形でした。

結果発表のときはどんな気持ちでしたか?

結果発表のときはですね、「きっと、7〜8位だろうな」と思っていました。周りのアプリのグラフィックのクオリティが高かったので。

3位、2位と発表されて、「やっぱりダメか…」と思ったら、1位「ダンジョンタイルズ」って書いてあって。ウソでしょ?って思いました。

ぼく、いままで「運」のない人生を送ってきていて。人生で勝ったことがないんです。小学校からこれまでずっと。なんの賞もとったことない。

だから、びっくりしましたね。「ダンジョンタイルズ」は操作性のシンプルさが、評価されたようです。基本「スワイプ」だけで遊べるので。

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※コンテストに優勝したときの写真(2016年 4/17)

「ダンジョンタイルズ」をつくるときは、どんなことに気をつけましたか?

やっぱり「操作性」ですかね。「Apple TV」のコントローラーって、最初にさわったところがゼロ、そこからどれだけ移動したか、という仕様なんですよ。

つまり、キャンディクラッシュみたく、「どこを」っていうピンポイントの操作が難しい。そういう特徴を踏まえて、ゲームをつくりました。

あと、TVアプリらしさを出すために、「二人対戦モード」も入れました。リビングには「二人以上」でいることのほうが多いと思ったので。

なるほど。

iPhoneのアプリって、毎日2,000も出ているんです。それに比べて「Apple TV」って、まだ計5,000アプリほどしかない。

だから、個人にもチャンスがあると思います。今回、優勝できたのも、競合が多くなかったから。あと、審査員がたまたま気に入ってくれたから。それだけです。

コンテストで優勝すると何が起きるのか。

コンテストで優勝したら、何か変化はありましたか?

親が「アプリ開発」という仕事を、わかってくれました。6年間ずっと「なに遊んでるんだ、はやく働け」って叱られていたんですけど。

いままでは、アプリのこと説明しようとしても、見てくれなかったんです。うちの親は80歳くらいなので。それが何なのかさえ、わからないからですよね。

それがようやく、アメリカのサンフランなんとかシスコにいって、チャンピオンになって、250万円もらった、となって認めてもらえた

父親に「優勝したよ」って連絡したら、「おめでとう、帰ったら祝勝しようか」と、はじめて言ってもらえました。

なるほど、それは良かったですね。

あと、Facebookですかね。Facebookに「いいね」がたくさんつきました。

いままで、ぼくのFacebookには「いいね」が、ほとんどつかなかった。つくったアプリの動画をアップしても、ほとんど反応がなくて。

ところが、「優勝しました」と写真を投稿したときには、「110いいね」もついたんですね。コメントも40くらいつきました。

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人生ではじめて「ちはほや」されてみてどんな気分でしたか?

まあ、そうですねえ…「ありがとう」っていうだけですかね。もう「現実の厳しさ」が体にしみついてるので、浮かれてる余裕がないんですね。ちょっと冷めすぎていますかね。笑

なぜアプリ開発をつづけるのか。

どうして6年も「どん底の貧乏状態」で、アプリ開発をつづけてこられたのでしょうか?

なんでしょうね、単純に「仕事」だと思っているので。ヒマがあるなら、つくらなきゃって。それだけです。それで、ずっとつくり続けてきました。

楽しいときですか? あんまり楽しいときもないですね。もう苦痛ばっかりですよ。開発しているときもつらいですから。

もともと、ゲームもそれほど好きではないですし。実はマリオやドラクエでさえ、やったことないんです。

アプリ開発をやめて「あたらしく、つぎのことをやろう」とはならないんですか?

うーん、「つぎのこと」をはじめるのは怖いです。いままでの蓄積がゼロになるし。つぎにいっても、うまくいくかわからないじゃないですか。

たぶん「損切り」できない性格なんですよ。だからずーっと、ズルズル続けちゃうんですね。

伊与田さんみたく「アプリで独立したい」という人がいたら、なんてアドバイスしますか?

あっ、ふつうに「やめたほうがいい」と言いますね。ご覧のとおり、まったく成功してないので。人にオススメなんてできないですよ。笑

正直、あまり個人にはチャンスを感じないです。でもヒットしてる人もいるんですよね。それは知りたいんですよ、どうしてなのかは。やっぱり「運」なんですかね?

今後について「意気込み」を聞かせてください。

この「ダンジョンタイルズ」に賭けています。このチャンスを逃したら、一生ヒットしないかもしれないので。勝負のアプリですね。

そもそも結果がでないと、再就職できるかもわからない。いま45歳なので。これを逃したら、もう終わりかもわからないですね。

※「ダンジョンタイルズ」は、6月にスマホとTVアプリで、リリース予定とのこと。

取材協力:iyoda

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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