本日はガリガリ君でおなじみ「赤城乳業」という会社が、
ヒット商品を生み出せる秘訣を書いた本、
『言える化-「ガリガリ君」の赤城乳業が躍進する秘密』が、
面白かったので紹介します。
プロモーションに多くの予算をかけられない、
アプリ開発者の方々のPRや企画のヒントにもなると感じました。
赤城乳業はアイスの市場が縮小している中、6年連続で増収を達成し、
ここ10年間で売上を2倍に伸ばしています。
赤城乳業は大手メーカーと比べると、
規模も小さい、いわゆる「中堅企業」。
そんな彼らがどうやって、
「ガリガリ君」をはじめとしたロングセラー商品を生み出し、
結果を出すことができたのかが紹介されています。
中でも、商品企画やPR方法がとてもユニークで、
アイディア重視の中小企業ならではの上手な戦い方をしています。
本書で面白かった内容をまとめました。
ガリガリ君コーンポタージュ味ヒットの秘密
記憶に新しい、ガリガリ君コーンポタージュ味。
(出展:ガリガリ君リッチコーンポタージュ)
この商品は「あそび心」と「冒険心」を大事にする、
チャレンジした結果の失敗が許される社風が生み出したものだった。
ガリガリ君コーンポタージュのアイディアは若い20代の社員が考えた、
「うまい棒」のコーンポタージュ味が人気なことから、
「コーンポタージュのアイスはいけるんじゃないか・・・」と企画が生まれた商品。
商品会議で赤城乳業の井上社長は、
こう考えGOサインを出した。
「みんながいいぞというのはたいして売れない。”失敗してもいいから好きにやってみろ”
と社長が覚悟を決めれば、みんな自由に動き出す」
結果、ガリガリ君コーンポタージュ味は、
2012年の発売当初、販売予測を大幅に上回り3日で販売休止となった。
短期間で広まった理由は、
ツイッターなどのソーシャルメディアですぐに話題になったから。
「レンジでチンして飲むとおいしい」など想定外の食べ方も。
販売休止となった9/6のRT(リツイート)ランキングでは、
上位10位のうち5つがコンポタ関連だったという。
ガリガリ君コーンポタージュにかけた宣伝コストは、
プレスリリース配信につかった15万円のみだったが、
ソーシャルメディアを軸に爆発的に話題になり、
広告費換算で5億円以上の露出になった。
商品のクオリティ自体も努力を重ねていて、
通常1~2回しか行わない試作を、何度も続けていた。
攻める商品開発
赤城乳業の商品開発では「普通すぎるとめっちゃ怒られる」
そして、若い新入社員にもアイディアを出すチャンスがある。
新入社員がなかなかアイディアが浮かばない中、
苦し紛れに商品アイディアをだしたときの話。
「これ自分で何点だと思っている?」という上司に、
「60点です」と新入社員が答えると、
「60点のものを売っていいんか!」と怒鳴りつけらる。
無難なアイディアは赤城乳業では絶対に評価されない。
奇抜すぎてもダメ。そのバランスがとても難しい。
ガリガリ君は20年のロングヒット
1981年の発売の「ガリガリ君」が、
今でも支持されているというのは本当にスゴいこと。
これは常に市場の変化や、
ユーザーニーズに柔軟に対応してきた結果。
コンビニが普及する前から「これからはコンビニが伸びる」と考え、
コンビニの販路開拓に力を入れ、
大手メーカーがコンビニに力を入れてきたら、
7本入りのマルチパックを開発し、スーパーへの展開を強化。
ガリガリ君の旧キャラデザインは、
「汗くさい」「歯ぐきが汚い」「田舎くさい」と若い女性に不評であったため、
2000年に抜本的なリニューアルをした。
旧デザイン
(出展:『ガリガリ君』のパッケージに描かれているあの男の子の正体は!? )
そして、キャラデザインのリニューアルにあわせて、初のテレビCMも実施。
「ガ〜リガ〜リ君♪」という印象的なメロディを流した。
結果的に、
2000年は販売本数1億本を突破。
2006年には25周年プロジェクトを実施して、
2007年には2億本、2010年に3億本、2012年には4億本を突破した。
「時代に合わせて変化したから成長し続けた。」と一言でいうと簡単だが、
常に変わり続けて支持されるというのは、簡単ではないと思う。
現在の状況と未来を見据えて、うまく舵をきっていかないといけない。あのmixiやGREEなども人員削減を行うなど苦戦しているように、
1度ナンバー1を穫ったとしてもそれを継続するということは非常に難しい。
そして、たった2年で1兆円相当の時価総額とも言われるLINEが出てきているように、
新興プレイヤーが伸びるスピード感もとても勢いがあるのが現代。
アプリでいうと、1年間ランキング入りするアプリなんてそうそうない中、
パズドラは1年間トップチャートを走り続けている訳で、
これはリリース後・ヒットした後も、
裏側では常にアップデートや企画を続けている、努力の賜物だと思う。
ガリガリ君もそうですが、ヒットしたプレイヤーであってもこれだけの努力をしているのだから、
アプリも「つくって終わり」と考えていたら絶対にうまくいかないと思った。
工場見学
工場を一般公開するというのは、
従来、守秘性や衛生面から業界の中ではタブーだった。
しかし井上社長は、
「自分たちのものづくりの姿勢をみてもらうことが大切、
どんなところでどんな商品をつくっているのか見てもらえば、安全で安心な商品とわかってもらえる」
と考え、
工場をオープンにして工場見学を開始した。
2012年には1万3000人もの見学者が来訪した。
話題を事欠かない企画・キャンペーン
国民的なアイスとして成長した後も、
「ガリガリ君はもっとポテンシャルがある」
と常に考えたくさんキャンペーンや企画の手数を打っているのも印象的。
季節限定フレーバーで常に飽きさせない
ガリガリ君は季節毎に限定フレーバーを投入することで消費者ニーズを捉えてきた、
今までに発売してきたフレーバーは80を超える。
2006年からは新商品の投入を、年4回から年6回に変更した。
より多くの話題を提供し、1年中売れる商品を目指すため。
冬対策商品「ガリ子ちゃん」
需要が低下する冬対策の商品として開発されたのが「ガリ子ちゃん」
「ガリガリ」の一歩手前のソフトな食感を売りにした。
ネットでは萌え系論争が巻き起こり、
「ガリ子ちゃん」の知名度も一気にアップしたという。
(出展:ガリガリ君の妹について詳しく聞いてみた)
ガリガリ君リッチ
1本105円の「ガリガリ君リッチ」もリリース。
ちょっぴり贅沢な味を楽しめる商品で、子どもたちのブルジョア感をくすぐった。
アイス売場を楽しくする
店頭のアイス売場を楽しくするための提案にも力を入れた。
異なるフレーバーのアイスを虹色の並べてアイス売場を楽しくする、
「レインボー売場」を提案。店舗からは好評価を得た。
ネット上で話題になりそうな「小ネタ」を仕込む
販促面ではネット上で話題になりそうな「小ネタ」を仕掛けている。
ただし話題作りの目的は「お客様をアイス売場に誘導すること」と言う。
「単なる話題作りは一過性で終わってしまうためやらない」という考えからだそうだ。
オリジナルスプーン
スーパーのアイス売場に「ガリガリ君」のオリジナルスプーンを設置。
「ガリガリ君食べるのにスプーンいらないじゃん!」とネットでツッコミが入り話題になった。
ファンのコミュニティづくり
「ガリガリ部」という携帯コミュニティサイトを立ち上げ、
新商品・懸賞などの情報発信し、部員数は7万人に達した。
ガリガリ君のファンを集めて合宿もおこなった。
小学生〜大人までファン50人を集めて試食会などを実施。
真冬にアイスを配る
真冬の札幌で行ったキャンペーン。
ガリガリ君の着ぐるみが、大雪の降る中アイスを配った。
「雪が降っているのにアイスの試食かよ!」とネットでブログなどで話題に。
受験関連商品として販売
冬の受験シーズンにあわせて投入した「ガリガリ君リッチ紅白いちごミルク」にはおみくじをつけた。
ただの「当たり」ではなく「大吉」「大々吉」「超大々吉」などを用意して予備校の前などで商品を配った。
「ガリガリ君リッチは合格に効く」とクチコミで広がり、
“受験関連商品”として話題になった。
(出展:「ガリガリ君リッチ 紅白いちごミルク」が新発売!!)
話題づくりを提供するというのはとても見習いたい。
今はソーシャルメディアが普及して一人一人がメディアを持っているようなもの。「真冬に大雪の中でアイスを配る」とか突っ込まずにはいられないし、
人に言いたくなってしまう。
人々やメディアがツッコミを入れずにはいられなくなるような、
ネタを常に提供し続けるのが重要。
業種の壁を超えたコラボレーション
「ガリガリ君」はアイスクリームビジネスにとどまらず、
キャラクタービジネスとしても成功している。
モンスターハンター
人気ゲーム「モンスターハンター」とコラボして、
「ガリガリ君ハチミツレモン味」を発売。
長野の山奥で開いたコラボイベントでは、
ガリガリ君がモンスターハンター風の「巨大なアイス」を持って登場し注目を集めた。
ポケモン
ポケモン映画とのコラボレーションで実施した企画では、
当たりが出るとポケモンコラボTシャツがもらえる。
スターウォーズ
「スターウォーズ」とのコラボ商品では、
宇宙をチョコ、砂漠の星をバニラ、隕石をチョコクッキーでアイスをつくった。
夏のひんやりグッズとコラボ
タカラトミーとの「タオル」「冷却シート」コラボなど、
夏のクールアイテムに「ガリガリ君」は欠かせないキャラクターとなった。
読んでみて感想
アプリにしても商品にしても、
特にコストのかけられない中小企業やスタートアップは、
こうしたマーケティング・PRの方法を参考にすべきだと感じた。
戦後のモノがない時代とは真逆で、
やっぱりこれだけ商品やアプリが溢れていると、
何の特徴もないアプリは絶対に話題にならない、
似たようなアプリがたくさんある中、
メディアやユーザーが勝手に歩み寄ってきて、
口コミしてくれるような企画や商品を打ち出していかないといけない。
本書はビジネス書にしては、中学生くらいでも読めるのではないかと思うくらいに、
内容的にはとても易しめの文章で書かれています。
割と文字もビッシリ詰まっていなく、さらっと読める本です。
アイディア重視の仕事をしている人は特にヒントをもらえるのではないでしょうか。
ご興味持った方はぜひ読んでみてください。
先日は「クリームシチュー味」も発売され話題になっていますね。
(出展:クレアおばさんのシチュー味)
何本も買ってきて友達と食べる、人に話したりブログで書くネタとして食べるなど、
単なるアイスクリームというよりは、パーティーグッズのような使われ方をしている。
普通は「おいしいから食べる」ものだけれど、
この場合は「楽しいから食べる」という感情に近い。
そういう意味では、
「おやじ育成キット」「アルパカにいさん」などの、
アプリも同じようなカテゴリに入ると感じた。
ユーザーモチベーションは「純粋にゲームが遊びたい」ではなくて、
「楽しいから」「人に見せて盛り上がれるから」というところ。
こうした付加価値を付けることが出来れば、
単純な、(価格)競争から一歩抜け出ることが出来る。
「コーンポタージュ味」「クリームシチュー味」が話題になった結果、
当然、ガリガリ君の通常の味の売上にも貢献しているのではないでしょうか。