ARR19億円を突破した「FORCAS」が語る顧客を2つに絞って売上が大きく伸びた話。ユーザー起点の「コンセプト変更」で解約率が大きく下がったワケ

2022年12月05日 |
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※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2022年8月29日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/nc1e791bed7b9

ユーザベースさん運営のSaaS「FORCAS」を取材しました。


※株式会社ユーザベース FORCAS事業 執行役員CEO 田口 槙吾さん

「FORCAS」について教えてください。

田口:
FORCASは、顧客戦略をつくって実行して、効果測定ができるツールです。2017年にリリースして、ARR(年間経常収益)は19億円を突破しています。

例えば、既存顧客の企業リストを読み込むと、そこから分析して特徴を抽出できたり、様々な条件で企業を分析できたりします。

もともとは「ABM」と呼ばれる、アカウント・ベースド・マーケティングを強く支援するツールとして訴求をしていましたが、現在はコンセプトを拡張させて「顧客戦略プラットフォーム」と呼んでいます。

ターゲット顧客を2つに絞って「売上が急成長」

これまでのFORCASの運営で「転換点になったこと」があれば教えてください。

田口:
転換点になったのは「誰に売るのか(WHO)」を決めたことでしたね。

初期は大した戦略もなしに、ホワイトペーパーや展示会でリードを集めて、商談をこなして受注しよう、ということをやっていました。

その戦略だと、リードと商談数はすごく増えたのですが、受注数は伸びなかったんですね。受注率が良くないのに、ものすごく忙しかった。だんだんとメンバーも疲弊してきてしまっていました。

それで、明らかに結果が出ていないし、このやり方はもうやめようと。

そこで決めたのが「誰に売るか」を定めること。既存の顧客の約50社を分析してみたところ、2つの属性に売れているとわかったんです。

具体的には、①SaaSのベンチャー企業でマーケティングオートメーションを使っている会社、②BtoBのマーケティングチームがある人材業界の会社。

これがわかったので「この2つ以外は狙わないぞ」と決めたんですね。 2018年にその方向にシフトした。すると、売上が一気に成長しました。

このシフトによって、受注率が3倍くらいに跳ね上がって、商談から受注までの期間も約半分になったんですよ。すると成長率も一気に変わります。

成長率が伸びると生産性が変わる。生産性が上がると社内のモチベーションも変わる。そういうパラダイムシフトが起きました。結果として、ARRは1年で6倍になって、2年越しだと15倍まで成長できました。

ターゲットを決めるとなぜここまで売上が伸びるのでしょう?

田口:
明確に「誰に(Who)」を決めたことで、そこから「どうやって(How)」が適切に決まってきて、結果が出るようになったんですね。

例えば、SaaSベンチャーならFacebook広告を打とう。人材企業ならテーマに沿ったイベントをやろう。誰を決めると手段が決まってきたんです。

実際に、HRのBtoBマーケター向けのミートアップを企画したところ、参加者20名18社のうち、半年間で16社が受注につながったんですね。

BtoBマーケティングに悩みを持った人に集まってもらい、FORCASの事例や情報共有をしたところ、みんなが「やりたい」と思ってくれた。

適切にターゲティングされた企業の「業務の悩み」って似るんですよ。HRのBtoBマーケという条件に絞ると、業務の課題も似てくるわけです。

そういう、FORCASを前面に出さないセミナーを開催して、集まってくれた方に情報や世界観を提供して、受注に至るケースは多かったです。

僕がこれまでの体験から得たのは、「誰に何をどう訴求するか」という仮説をつくって効果検証を繰り返していくこと。これがビジネスを成長させる、唯一無二の法則なのだなという学びです。

なので、僕が伝えたいことを一言で言うと「ターゲットを明確に決めよう」もうこれだけなんですよ。

ユーザー起点の「コンセプト変更」で市場が拡大

ほかにFORCASの運営で「ここはポイントだった」と思うことがあれば教えてもらえますか?

田口:
「顧客起点マーケティング」の著者の、西口一希さんからアドバイスをいただき、ユーザーインタビューは過去100社ほど実施したのですが、これをきっかけにコンセプトを変えたことで、実は売上がすごく伸びたんですよ。

当初は「ABMプラットフォーム」と呼んでいましたが、ユーザーの声を聞いていくと、用途は「マーケティングに限らないな」と気付きます。

経営合宿でFORCASのデータをつかう。自社サービスの顧客を把握するためにつかう。想像より「顧客戦略を立てるため」につかわれていました。

しかもそうしたお客さんが、実はロイヤルカスタマー化していたんですよ。FORCASがないと無理です、定例会議が成り立ちませんと。

それで悩んだのですが「顧客戦略プラットフォーム」という言葉にしたほうがわかりやすいのではと考えて、コンセプトを変更しました。

すると、コンセプトが顧客層を広げてくれて、前は受注できなかったお客様からも受注できるようになり、解約率も大きく下がったんです。

雨宿りしている太古の人に「ノコギリ」を渡しても何も起きないですよね。木を切って屋根をつくって「雨宿り」できてはじめて価値が伝わります。

それと同じで、以前は「ABMプラットフォーム」と言っていたけど、それだと機能はわかるけど「価値や使い方」が伝わらなかった。

使い方が伝わらないと「買い方」もわからないんです。例えば、稟議をどう通せばいいかがわからない。それだと、受注につながりません。

それが「顧客戦略プラットフォームですよ」と伝えるようにしてから、以前よりずっと価値が伝わるようになったんです。

例えば、新しい層としては「新規事業の立ち上げにつかう」「経営戦略の分析につかう」といった用途にも広がりました。新しく層が広がるということは「利用ユーザーの幅」も増えるため、解約率にもヒットしてきます。

以前は、インサイドセールスしかつかっていなかったけど、経営戦略チームでもつかわれるようになったとなれば、解約されにくくなります。

マーケティングチームだけでつかっていたのが、営業とマーケの定例会議でもつかわれると解約率が下がる。そういうことが起きはじめました。

解約率を下げるために「意識しているポイント」

解約を防ぐために「意識していること」はありますか?

田口:
ターゲット戦略を「めちゃくちゃ明確にすること」を大切にしていますね。ターゲット戦略は「解約率」にも密接につながっています。

なぜなら、売れやすい顧客 = 解約されにくい企業でもあり、売りにくい顧客 = 解約されやすい企業でもあるからです。

言い換えると、価値が届きやすいか届きにくいかなので、ターゲット戦略を明確にすればするほど、解約率は低くなるんですよ。

なので、僕らは3ヶ月に1回ターゲット顧客を見直します。そのタイミングで解約率を分析して、解約率が高い属性は一度外してみたりもします。

例えば、数年前に「外資系企業で日本支社のある顧客」にすごく売れていたけど、なぜか解約率がとても高くなっていました。

カスタマーサクセスに聞くと、FORCASをSalesforceと連携させるときに、本社の許諾が必要で「連携できなくて解約に至る」とわかりました。

なので、そこはコントロールできないため、一旦ターゲット顧客から外してみることにしました ※。すると、解約率は当然下がってきます。

このように、必ずカスタマーサクセスの意見も聞きます。解約率を目標に持つチームを置いて、そのチームの意見も取り入れるんです。

※最近は機能の開発も進んだため「外資系企業」も対象にしている。

解約を事前に察知するための「シグナルや指標」など、どんなところを見ていますか?

田口:
ひとつは、単純ですが「ツールの利用率」を見ていますね。

もうひとつはお客様に「継続意向スコア」を聞いていて。「今の継続意向度って10点満点で何点ですか?」と全社に聞いてそれを気にしています。

ちなみに「なぜ解約してしまったか」よりも、僕は「なぜ継続してくれているのか」のほうが、すごく重要だと考えているんですよ。

「どうすれば解約を防げたか?」も微妙で「どうしたら戻ってくれるか?」の問いのほうが適しています。これは似て非なる問いなんです。

解約理由のほうだと「予算凍結したから、担当者が退職したから」などの、打ち手がむずかしい回答も多いのですが、「どうしたら戻ってくれるのか」という問いは、未来の開発の種になるからです。

例えば「この機能があれば戻ってくれるはず」「この訴求でセールスすれば戻ってくれるはず」のように、問いが未来についての会話を生みます。

なので、カスタマーサクセスチームには「お客様に戻ってきてもらうにはどうしたらいいですか?」という問いをよくしていますね。

「チーム名」を変更しただけで売上が伸びた話

FORCASの運営で「成功した施策」を教えてください。

田口:
販売するチームの名称を、「セールスチーム」から「ABMコンサルティングチーム」に変更したところ、割と大きな影響がありましたね。

名前を変えることで「何をすべきか」の意識が変わって、売るよりも「悩みを解決しよう」となったんです。すると、そっちのほうが「顧客の課題」を捉えられるため、結果的に売れていくんですよ。

お店でいうなら「販売員」ではなく「コンシェルジュ」と呼ぶ感じですね。呼び名が変わるだけで「おもてなしをしよう」とか意識の差が出てくる。

具体的には、僕らは2回目以降の商談を「継続商談」と呼ぶのですけれど、そのときにコンサルティングをするようになっていったんです。

例えば、「御社の顧客ターゲットは何ですか?」とか「どんなことに悩んでいますか?」とか、課題を聞くマインドに変わっていきました。

目標は「受注金額」で変えていないですし、説明資料も大きくは変えていませんでした。意識が変わったことで、売上が伸びて解約率は下がっていきました。

【取材協力】
株式会社ユーザベース:https://www.uzabase.com/jp/
FORCAS:https://www.forcas.com/

【告知】もし「FORCAS」が気になった会社さんは、ぜひサイトをチェックしてほしいとのこと。お問い合わせでデモなども実施してくれるそう。
https://www.forcas.com/


※顧客リストをアップすると「特徴」や「重要度」などを分析してくれる。

※続きのマニアックな事例は4つほど、note購読者向けにまとめています。手応えのあったメール施策、過去NGだった企業を受注につなげる方法、ユーザーインタビューで意識しているコツ、などご興味あればご覧ください。
https://markelabo.com/n/nc1e791bed7b9

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