本日はエキサイトさんのインタビュー記事後編をお送りします。インタビュー後編では、主に以下の2つのアプリについてのお話を聞いてきました。
・WEBでもおなじみ「エキサイトニュース」のアプリの裏側
・実は50万ダウンロード突破しているヨガアプリ「寝たまんまヨガ」
「エキサイトニュース」がAppStoreのレビューを半年で1000件以上獲得した施策、ニッチなヨガアプリが継続的にダウンロードされている理由など、興味深い話が盛りだくさんです。
取材協力いただいた、エキサイトでアプリ事業を行っているメンバーのみなさん。
(※左から池村さん、岡田さん、小島さん、永田さん)
それでは以下インタビュー内容をお送りします。
エキサイトニュースについて
エキサイトニュースのアプリは現在はどのような状況でしょうか?
池村:
ダウンロード数でいうとiOSだけで50万DLを超えています。(iOS/Android)
DAUは8~9万、MAUで18~19万という状況です。(iPadの比率は、14~15%)
現在はiOS中心なのですが、次回Android版をリニューアルするので、同じような数字にもっていきたいと思っています。
エキサイトニュースは最初のバージョンを2011年11月にリリースして以降、プロモーションをかけて伸ばしてきたわけではなく、
小さい改良を重ねていきつつiOS 6や7への対応をいち早く行ったり、iPhone 5のリリースにあわせて4インチ対応にアップデートして、App Storeにうまく取り上げられていくという形でユーザーを増やし続けて来ました。
特にタブレット版には力を入れていて、iPadのニュースアプリでは一番使いやすいアプリにはなっていると思います。
去年末くらいからは、Facebook ADやiAdなどでユーザーを獲得しつつ、収益性を高めていく施策もはじめているという状況です。AdWordsへの出稿も2月から開始しています。
Facebook Adは30~50代で多く取れましたね、CPIも¥250程度でした。(詳細はブログ参照)
iAdに関しても、デベロッパーから直接出稿できるようになったので、かなり重宝しています。iAdはCPIを低くユーザ獲得ができています、非常にパフォーマンスが良いです。
タブレットとスマホでの仕様の違いは?
池村:
基本、タブレットは画面が大きいので、1記事1記事が見やすく、どこからでも記事にとべるようにしています。
腕を動かすというよりは指を動かして操作できるようにしていて、親指や人差し指を使って片手で操作できるのが売り。
その他の特徴としては、オフラインでも読めることと、最初にアプリを立ち上げたときに数秒ローディングするのではなく、最初の画面をとりあえず見せて、次のリストを見る前にローディングしておくという仕組みにしています。(※但し、実験中なので一部のみ)
岡田:
App Storeの「Best of 2013 今年のベスト」(ニュースカテゴリ)にもiPhoneとiPad両方で選ばれました。端末やプラットフォーム側のバージョンアップ(4インチ対応とか、iOS 7とか)にはすぐに対応するように努力してます。
Best of 2013に選ばれたときはユーザーは伸びましたか?
池村:
期待していましたがそこまでではありませんでした。ただ、数あるニュースAppの中で選ばれたことは光栄に思います。(全社員に向けて、一斉メールで報告しました)
マネタイズはバナー広告のみでしょうか?
池村:
マネタイズはバナー広告と記事広告、基本その2つです。記事広告にも二種類あって、一つはエキサイトに直接出稿してもらう「純広告」型、もう一つは「CPI型」です。
CPI型の記事広告は8クロップスさんと連携していて、8クロップスさんのadcropsに出稿しているアプリの中から、エキサイトニュースと相性の良いアプリを選んでレビュー記事をかいています。(記事広告が入っている時は)エキサイトニュースアプリの「超注目」というカテゴリの3番目くらいにでます。
岡田:
最近ヒットした記事広告は1記事で4,000DLされたこともある。当然アプリによって数百~数千DLと差はでてきますが。
アプリでニュースを読んでいるユーザー層なので、ゲームはそれほど相性は良くないですが、特にツール系アプリの広告効果が高いです。ユーザーにとって価値のある情報になっているかを意識して紹介するアプリを選んでます。
池村:
記事広告に関しては、CTR(クリック率)やCVR(インストール率)もかなり高めになっている。4,000DLあった記事はCVRで50%以上はでています。記事広告だと40~60%くらいはCVRが出ている状況です。
つまり記事中のリンクをふんでApp Storeにとぶと40~60%の人がアプリをダウンロードしてくれるということです。
記事自体が読まれた数(PCでいうPV)でいうと記事によってマックス3万PV、平均で9000~1万PVくらい。CTRも30~40%くらいはでていますね。記事自体の掲載は基本24時間にしているので、これらは1日の数値です。
記事広告を出したい場合は?
池村:
8クロップス(adcrops)にCPI広告を出稿するか、もしくはエキサイトで直接純広告をだすかですね。ツール系アプリだったらかなり相性良いのでおすすめです。
バナー広告のほうの収益額はどうでしょうか?
岡田:
バナーはけっこう大きいですよ。YDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)を入れているのですが、広告単価も高くて収益性は高いです。
ニュース系媒体との相性が良いということもあると思いますが、普通のバナー広告と比べてCPMで2~3倍はでているとおもいます、YDNはオススメですね。
半年で1000件増加のレビュー獲得施策とは…。
その他、うまくいった施策などはありますか?
岡田:
レビューを増やすための施策でうまくいった施策があります。
App Storeのレビューが現在は全部で1500件くらいあるのですが、半年くらい前までは、当時デイリーで7~8万のユーザーが使っていたのに、レビューがたったの100件しかなくて、かつあんまり良い内容ではなかった。
何を行ったかというと、毎日使ってくれるユーザーの声をどうやって可視化できるかを考えて、レビュー依頼ダイアログをヘビーユーザーにだけでるように調整しました。
すぐアンインストールする人の声よりは、一定の利用頻度が有る人のレビューが欲しいですよね。
レビュー依頼ダイアログのパターンに関しても、何パターンも試して最適化したところ、数ヶ月で1,000件以上のレビューを書いてもらうことに成功しました。
Googleアナリティクスで見ていたデータ上では、アプリを気に入ってくれているヘビーユーザーがいることは明確だったので、ヘビーユーザーをうまく狙ってダイアログを出したところ、レビューの評価もほとんど星4か5と、結果的に、満足して使ってくれているユーザーの声をレビューとして可視化することに成功しました。
レビューが良くなれば、App StoreやGoogle Playでの印象も良くなりますし、良いサイクルに入り始めているように感じます。
レビュー依頼のポップアップのコツは?
池村:
いまは20回起動すると1回ダイアログが出る確率にしています。「レビューする」「あとで」「結構です」という3択にしていて、「あとで」を押すとまた10回に1回でてくる、「結構です」を押すともう出てこない。
文言も割とスタンダードなものに落ち着いていますよ、「使い心地いかがですか?」みたいな感じです。
最新ver(2.4.0)では、20記事を読むと1回「お友達におススメしてくれませんか?」というダイアログを出しています。だいたい2週間に1回の頻度です。
ここまで使って頂けるということは、きっと満足度の高いユーザーですので、友達にもすすめやすくなると思い実装しています。これも、一度おススメして頂くと、もう出ないようになっています。※休眠ユーザー(ほとんどアプリを立ち上げないユーザー)に対しても「最新ニュースが届いてますよ」というプッシュ通知を出すようにもしています。
そのほか、レビュー関連で工夫していることはありますか?
岡田:
App StoreやGoogle Playでついた新規レビューが、毎日チーム全員にメールで送られてくるという仕組み(自動ツール)を社内でつくっています。ユーザーの声をそれで常に拾っていますね。「ありがとう」という星5のレビューがつく時なんかは天にも昇る気持ちです。
これは守りの意味でも有効なんです。例えば、星1レビューがつくケースは「落ちる」というのが多いですから、不具合が起きている時にすぐに気づくことができます。
最近はクラッシュした原因を分析できるツールもいれて、ユーザーがどういう理由でクラッシュしたかを分析してアップデートのときに改善するサイクルをつくっています。
通常のASOも大事ですけど、アプリ自体が安定していることも大事じゃないですか、そこを徹底しているところですね。
アップデートをYouTube動画をつかって告知しているそうですね?
池村:
はい、既存ユーザー向けの動画をアップしています。設定のところに「お知らせ」があってそこにアップデート内容を通知していて、通知をすると、2,5000人くらいが気付いて見てくれています。
ネット回線も早くなってきていてYouTube動画の活用はもう当たり前になって来ていると思うので、今後も、動画はうまくつかっていきたいですね。
チュートリアルを文章で読むのは煩わしいという人も多いとおもうので、そうしたところでも、動画を活用していくのはアリかもしれません。
驚異的なクチコミ力!効果絶賛の声で広がり続ける音ヨガアプリ「寝たまんまヨガ」
「寝たまんまヨガ」とは、どのようなアプリですか?
岡田:
「スタジオ・ヨギー」というヨガスタジオさんとのコラボでつくったコンテンツで、元々CDとして発売していたものをアプリ化したものです。ダウンロード数はiOSとAndroid合わせて50万DLを突破しています。(iOS/Android)
50万DLもいっているのですね、どのようにDLを増やしてきたのでしょうか?
岡田:
例えば、「寝たまんまヨガ」はAppStoreの「アフターワークにチェックしたいApp」という特集にはいっています、ライフスタイル系でずっとしつこくやっている会社は多くないので、そうした特集で選ばれやすいというのはあります。
池村:
メディアで取り上げられることも多いですね。特にこのアプリは「雑誌でとりあげさせてください」という依頼が本当に多い。
スマホポリスという番組で芹那さんが紹介してくださっていたり、高橋あいさんがブログで愛用していますって書いてくださってたり、ムック本で知らないうちに紹介していただいていたり。
なので次期アップデートでは「友だちにすすめてみませんか?」ダイアログを実装する予定です。
岡田:
普通、アプリってリリースしたらどーんとDLが伸びて、それでおしまいというものが多いじゃないですか。
このアプリはApp Storeのヘルスケアカテゴリで25位前後を2年間くらい継続していて、不思議なくらいずっと同じ場所に居ます。
毎月1万〜3万DLというのが22ヶ月継続しているんです。最近ダウンロード数がまた伸びていて、1月は2.5万DLを超えました。※ちなみに、ノンプロモーションです。
ユーザーのレビュー評価も非常に高いようですが。
岡田:
評価めちゃくちゃ良いんですよ。全体の8割が星4と星5で、毎日3件くらいレビューが増えていっています。
池村:
面白いものだと「良く寝れて就活きまりました」というレビューもあります。ヨガのおかげかどうかわからないですけど。笑
あと「うつ病がなおったような気がします」というレビューがあったり、こちらで意図していないところで力を発揮している。
岡田:
「寝付きが良くなって朝起きた時にすっきりする」という声は多いですね。
あくまで「ヨガの呼吸なり瞑想なりでリラックスしてもらう」というメリットでうちだしているのですが、ユーザーがクチコミでそのようなことを書いてくれています。高い評価のレビューを見るとやっていて幸せだなと思いますね。
他にはこのアプリならではの情報などはありますか?
岡田:
他はユーザーの声をApp Storeの説明文にも活用しています。よくユーザーがレビューに書くキーワードで「寝落ちする」というワードがあって、逆にそれをキャッチコピーとして採用しました。
あとユーザーで意外と多いのが若い女の子で、ツイッターで検索すると友だちにつぶやいてくれている。「@xxxxx このアプリやってみ」みたいな。
アイコンがだいたいプリクラで、フォロワー数とフォロー数の関係が30前後くらいでリアルな友だちとツイッターでコミュニケーションしている子たちの間で広まっているようです。
寝たまんまヨガのアプリすごい。2日使ったけど、最後を聞く前に寝落ちした。慢性睡眠不足の状況下で寝付けないもないんだけど、眠るたいせいに入れるのがよい。
— あられん (@amearare) 2014, 2月 16
@krkr_39 寝たまんまヨガってアプリいいよ眠くなるよ←
— AZU韬 (@ason68) 2014, 2月 9
ビジネスモデルはフリーミアムモデルですよね?
池村:
はい、基本的には無料ダウンロードで追加コンテンツは有料になっています、割合的には、無料ユーザーが70%、課金ユーザーは30%くらいです。
4つの課金アイテムがありますが、全部買う人もいる?
池村:
基本的に無料でつかって、効果があって気に入れば100円だけ課金するという人が多いですね
課金アイテムを4つ(100円のものが1つ、400円が3つ)用意していて、アプリ自体の無料ダウンロード数は50万ですが、有料アイテムの累計の販売数は35,000個を超えています。
ヨガというとかなりニッチだと思っていましたが、ここまでDLが伸びているのはびっくりです。
岡田:
そうですね、我々も予想外の部分は多く有ります。IT系の人が注目していないけど広がっているアプリって結構あると思いますね。
人間として根本的な欲求である「眠り」に関するアプリは、年間でApp Storeのランキングみていても毎年定番で入ってきている、それも世界共通で。
そこを解決するアプリでヒットしているアプリは結構あると思いますね、健康・睡眠アプリはニーズとしては根強いです。
アプリでビジネスを展開したい会社がエキサイトさんに相談するのはあり?
岡田::
ぜんぜん歓迎ですね、議論するだけでもいいですし声かけてもらえると嬉しいですね。基本的に情報もオープンにだしています。ビジネスのかたちとしては受託はやっていないので、協業モデルで取り組める形がベストです。
まだまだスマホ・タブレットはこれからだと思うので、業界全体を盛り上げていきたいですね。
今後注目しているジャンルとかはありますか?
永田:
あんまりテキストに依存しないサービス、例えば動画系サービスとかに挑戦してみたいですね。
岡田:
他社さんのアプリで注目しているのはツイキャスとかアンサーとかですね。つかっているユーザーの世界がおもしろい。
アンサーだとQ&Aサービスとはいえ「いまひまー」みたいな質問がメインじゃないですか。特に答えは見つかっていないけど、誰かと触れあうことを求めているみたいな。
不思議な世界でおもしろいなと、ツイキャスも深夜帯の時間になってくるほどほんとにおもしろい世界がありますね。今後「動画×何か」は大きいジャンルになってくるとおもいます。
取材協力:エキサイト株式会社
編集後記
エキサイトニュースのレビュー獲得施策は勉強になりました、確かにヘビーユーザーからのレビューをうまく集められれば良質な声を中心に拾えそうです。これは他のいろんなアプリでも応用ができるはずです。
また「寝たまんまヨガ」は派手さはないものの、堅実にダウンロードを集め続けて50万DLというところで、非常に興味深いと感じました。
実は、お話を伺う前に「寝たまんまヨガ」のAppStoreのレビューを見たときは、失礼ながら「サクラじゃないの・・?」と思ったくらいのレベルでユーザー評価が高いアプリです。
インタビュー前篇はこちらからどうぞ。
・アプリで配信しても紙の部数は減らない?「週刊Dモーニング」が挑戦するスマホ時代の漫画雑誌
※イラストはイメージです。