※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2022年1月26日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/nca01beac7b7f
トレカのライブコマースアプリ「ミニッツ」さんを取材しました。
※株式会社ミニッツ 代表取締役社長 山本 圭樹さん
「ミニッツ」について教えてください。
山本:
トレカのライブコマースアプリです。みんなで話しながらパックの開封配信を楽しめたり、配信でトレカを「オークション形式」で売買できます。
2021年6月からベータ版を開始して、2021年12月に正式リリースしました。サービス内のGMV(流通総額)は「月間で数千万円」になっています。
1会員あたりの購入額(ARPU)は数万円。購入者の翌月の購入率が45%と、何度も購入してくれている方が多いですね。
販売者(配信者)には、カード好きなサラリーマンの方もいれば、カードショップの店長さんもいます。
※トレカの二次流通に注目したのは、① 知人のトレカ販売者の「売れ行き」に感心した、②フリマアプリの「フリル」で働いていたときに「問い合わせの多さ」を体感したから。
サービスを公開したときには、まず「どのようなこと」をやりましたか?
山本:
2021年の6月に、WEB版(ベータ版)をリリースして、検証を進めました。
まず、マーケットプレイスというのは、集客したユーザーが逆側のエンドユーザーを、一緒に連れてきてくれるというのが、重要なポイントなんです。
これは「買い手→売り手」でも「売り手→買い手」でもいいのですが、片方を連れてくるともう片方も集まる、この構造が大事なんですね。
そこで僕らが公開前にやったのは、ツイキャスなどの配信アプリにおいて、トレカを販売している配信者に「ミニッツをつかってくれませんか?」と、声をかけていくことでした。
もともと、ツイキャスでトレカを販売して、PayPayでお金を払ってもらう。このように販売している方がわりといたんですよ。
なので、そのような方に声をかける。すると、売り手の配信者は「買い手」を連れてきてくれる。そうやって「初期のユーザー」を集めました。
でも、どうして配信者は「新しいサービス」にわざわざ来てくれたんでしょうか?
山本:
これは「既存の課題」が解決しやすい場所を、つくれたからだと思います。
既存の販売方法には、やっぱり「課題」があったんですよね。具体的には「決済が即時で行われない」というのが大きくて。
どういうことかというと「配信と支払い」で分かれていると、配信では「買います」と言っておいて、後で「やっぱり払いません」ができてしまう。
あとは、販売者としては信頼も貯まりにくいし、1回不正を働いたユーザーもアカウントを変えれば復活できる、そういう問題もありました。
なので、ミニッツでは「販売者の審査」をきちんと行い、不正のパトロールも徹底する、決済も「クレカ決済に絞る」など、もともとあった課題を解決できる仕組みを入れていきました。
そこから仮説検証していく中で「ターニングポイント」になった瞬間などがあれば教えてください。
山本:
僕らが「PMFした」と感じたのは、フリマ型から「オークション型」に切り替えた瞬間で、わかりやすく「これはいける」という感覚がありました。
実際に、オークション制にしたことで「コメントの量」がめちゃめちゃ増えたんですよ。継続率や購入単価にも影響していると思います。
小さな改善を重ねて「PMFした」というよりは、ユーザーペインのど真ん中を捉えてさえいれば、プロダクトが荒っぽくても、みんなが熱狂してくれるのだなというのを感じました。
山本:
実はオークション制は、はじめは販売者から「反対意見」もありましたが、100円からオークションで出してほしい、もし赤字が出たら僕らが補填しますからと、とにかくお願いしました。
オークション制をスタートしてみると、設計をきちんとすれば、ユーザーは満足しつつも、販売者の利益も出やすいことがわかりました。
オークション型の「誰もにチャンスがある。買わない人も楽しめる」ここのポイントがめっちゃ重要で、これがライブ配信の魅力を高めました。
オークション型のほうが「利益が出やすい」のはなぜなのでしょうか?
山本:
売り手にとって「妥当な価格設定」が難しいからです。トレカは状態によって価値が変動するものなので、「いくらで売れるのか」を予測するハードルが高いんですね。
もし「この10パックを1口3,000円で売ります」というときに、もし3,000円という価格が高かったら、売れにくくて配信も進みません。
それで「売れないので値下げしますね」となると熱も冷めてしまいますが、オークション形式なら、ひとつずつ確実に売ることができます。
そのような仮説検証を終えて、2021年12月にアプリを正式公開したのですね。今はどのようにユーザーが増えていますか?
山本:
ユーザーが「購入報告ツイート」をしてくれて、そこから増えるパターンが多いですね。「ミニッツで○○さんから買いました」みたいな感じです。
購入者としては「どの売り手が信頼できるのか」をSNSで周りに共有したい心理も働くので、こうした口コミが多いのかもしれません。
もし次にサービスをつくるとしても「ここは絶対に抑えよう」と思うポイントがあれば教えてください。
山本:
プロダクトを実際につくってきて、①「代替する方法」が存在しているか、② そこに「熱量」が本当にあるのか、この2つは本当に見たほうがいいなと実感しました。
ミニッツでいうと、ツイキャスとPayPayなどを組み合わせて、配信でトレカを売買する方法が、まず代替手段として成立していたこと。
こうした「代替案の特定」というのは比較的簡単です。
そして重要なのは「熱量」で、ここは見逃しがちなポイントだと思います。僕もここはたくさんのミスをしてきました。
僕らがこの熱量が「本物だ」と信じられたのは、既存の方法には「未払いトラブル」が発生する可能性もあって、配信アプリには売買の機能がないにもかかわらず、何度も売買が行われていたことです。
そういう状況であっても売れていて「うわ、こんなので売れちゃうんだ…!!」となる感覚も、僕は「ひとつの熱量」だと思っていて。
たくさんの人が「おもしろい」と叫ぶだけが熱量じゃない。少人数でもこんなに非合理な方法にお金をつかう。非合理の深さこそが熱量なのかなと。
山本:
なので、逆にいうならそこが「妄想」であるなら、事業をやらないほうがいいのかなと。僕もそこに躓いて何度もサービスを撤退してきました。
例えば、ライザップさんって、LINEで「体重管理」をするんですね。食事したら報告とかを送る。僕はそれを切り出して「サービス化」できると判断し、プロダクトを開発したことがあって。
でもココナラなどで「スポットで3,000円」なら払う人はいたのですけど、熱量を持って「お金を払い続ける人」は少なかったんですね。
なぜ、ライザップだと成立するかというと、はじめに「何十万円という身銭を切る」から。大金を払って痩せないって最悪じゃないですか。
周りに宣言してプレッシャーがかかる。やらざるを得ない環境ができる。だからこそ、LINEでも体重をきちんと報告する。
なので、LINEの「体重管理だけ」を切り出して、安くしても成立しなかったんです。代替手段と熱量の「両方をみること」が大事でした。
—–
【取材協力】
株式会社ミニッツ:https://docs.minute-s.jp/
ミニッツ:https://minute-s.jp/
CEO 山本さん:@keikidesu11
【告知】ミニッツさんでは採用も募集中。採用広報、BizDev、エンジニアなど募集しているそう。トレカのライブコマースに可能性を感じた方は、下記のサイトよりどうぞ。
https://docs.minute-s.jp/467173fa33b241c6891fff02f68b25cc
※続きのマニアックな事例を5つほど、note購読者向けにまとめています。WEBからはじめて「検証コスト」どれだけ削減できた?、コミュニティ熱量を高める工夫、見ているKPIは?、などご興味あればご覧ください。
https://markelabo.com/n/nca01beac7b7f